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千成記

食品新基準・まだ大甘の日本vs厳しいベラルーシ、そしてベラルーシではチェルノ原発から200km以上離れた村でも子どもに恐ろしい被害が起きていた

4月から一般食品の放射線安全基準が100Bq/kgになりますね。ところが、それに対して文科省の放射線審議会がふざけた意見を述べたというニュースがありました。2/16付けの産経新聞の記事から(強調はわたし)。

商品の放射線量新基準値案 文科省“注文付き”了承
産経新聞 2月16日(木)22時14分配信

 文部科学省の放射線審議会は16日、食品に含まれる放射性セシウムについての厚生労働省の新基準値案を了承した。ただ審議では、基準が「厳しすぎる」との意見が相次ぎ生産者への配慮などを求める異例の意見も付いた。新基準値は厚労省の審議会を経て、4月から適用される見通し。

 新基準値では、食品による年間被曝(ひばく)線量を5ミリシーベルトから1ミリシーベルトに厳格化。「一般食品」は1キロ当たり100ベクレル、「牛乳」と粉ミルクなど「乳児用食品」は同50ベクレル、「飲料水」は同10ベクレルとなり、暫定基準値の4分の1から20分の1になる。

 これに対し、審議会の答申では、「差し支えない」としたものの、福島県産の農産物などの流通に影響する可能性もあり、地元の生産者らの意見を最大限尊重して運用すべきだとの意見が付いた。

 検査の精度や検査数の確保などの重要性も指摘。乳児用食品と牛乳を一般食品より厳しくしたことについては「特別の基準値を設けなくても子供への配慮は十分」とした。

 これまでの議論では、最近の調査で食品のセシウム濃度は十分に低いとして、厳格化のデメリットが指摘されていた。国産食品の大半が汚染されているとの仮定で算出されたことに対し、「実際に比べて汚染割合が大きい」として「基準値が低いほど良いというイメージが先行している」との意見も出た。検査体制も「測定時間が長くなり、サンプル数が減る」と見逃しの可能性が指摘された。

 健康被害だけでなく生産者の生活への影響も考えるべきだとの声も上がった。

 1月の審議会に出席したコープふくしまの佐藤理(おさむ)理事は「新基準が施行されれば広範な田畑が作付け制限を受けることは必至。農業県である福島の復興を閉ざすに等しい」と訴えていた。

 こういった指摘に、厚労省は「実態に対応できない基準を作ることはあり得ない。農林水産省と十分に協議し、福島であっても大きな影響はないと聞いている」と説明している。

 放射線審議会は新基準値案が安全かどうかを判断するのが目的のため、意見を添えた上で、答申がまとまったが、ある委員は「食品の流通だけを考えるのではなく、政治が福島の復興の全体像を描くべきだった」と批判した。

もう……なんていうか……金魚並みにパクパクしちゃいます。子どもを特別厳しくしなくてもいいと? 見逃しの可能性だってたしかにあるかもしれませんが、それは今だってまったく同じこと。太字をつけていて、ほぼすべての一行一行に腹が立ちました。

そもそも放射線審議会ってナンなんですか? と思って文科省内のサイトを見てみましたら(こちら)、こうありました。

 放射線審議会は、「放射線障害防止の技術的基準に関する法律(昭和33年5月21日法律第162号)」に基づき、放射線障害の防止に関する技術的基準の斉一を図ることを目的として、文部科学省に設置されている諮問機関です。
 関係行政機関の長は、放射線障害の防止に関する技術的基準を定めるときは、放射線審議会に諮問しなければならないこととされています。また、放射線審議会は、放射線障害の防止に関する技術的基準の斉一を図るために関係行政機関の長に意見を述べることができるとされています。

だったらテクニカルな側面だけを考えればいいじゃないの。なんで政治や社会や農政にまで口を出して新基準にケチをつけるのさ。

そもそも、厳しくなるといったってベラルーシの比ではないんです。ベラルーシは事故当初、非常に高く設定してしまったために、大変な被害を受けました。その苦い経験を踏まえて厳しくした数字には重みがあります。たとえば子どもが食べていい基準は37Bq/kgだそうです。

そこで、金吾さんが日本とベラルーシの対立がくっきり際立つように、ベラルーシと日本の動画を見事に合体させた動画を作成してアップしてくださいました。

しかも、食品の基準の問題だけではありません。ベラルーシではチェルノ事故後10年で子どもたちにどんな恐ろしい健康被害が起きていたかも語られます。必見です。



………………。

最初のベラルーシ側の動画は、1998年にスイスのTSIが作成し、それをNHKのBS1が過去に放送したものの一部です(NHKの放送年をご存知の方がいらっしゃいましたらご教示下さい)。恐ろしい事実を語っているのは、ベラルーシの物理学者、故・ワシリー・ネステレンコ博士。Wikiには

チェルノブイリ原子力発電所事故後、政府当局に対抗して、住民の健康被害の防止に努めた。事故の実態調査をしようとすると、圧力がかけられ脅迫を受け、研究所の放射線モニタリング装置が没収されたこともあったという[1]。1990年、民間のベラルーシ放射線安全研究所(ベルラド研究所、fr:Belrad)を設立、終生所長として放射能被害防止のための活動を続けた[2]。

とあります。

一方、日本側の映像は、2月16日に放送されたNHK福島のローカルニュース番組からの抜粋です。

かたや、70Bqの魚ですら食べてはいけないと命じるネステレンコ博士。かたや、100Bqだって大丈夫だとうそぶく丹羽大貫(変わった名前だ)氏。エライ違い。

そしてベラルーシの村で起きていた恐ろしい健康被害の数々。しかも、原発から200km以上離れている! なのに、この障害の発生率の高さはどうでしょう。改めて該当箇所の書き起こしを金吾さんちから転載します(強調はわたし)。

残念なことに多くの子どもたちの身体が今も放射能にむしばまれています。
例えば事故現場から200キロ以上離れた村でも、子どもたちのうち23パーセントが白内障にかかったり、失明したりしています。その村では84パーセント以上の子どもたちに不整脈が見られました。まるで心筋梗塞の予備軍です。というより、すでに多くの若者が心筋梗塞にかかっているような状況です。
およそ80パーセントの子どもが、胃炎や潰瘍を患っています。特にひどいのは12歳から15歳の子どもたちです。胃の粘膜が萎縮し、まるで70過ぎの老人のようになっています。つまり放射線の影響を受けた子どもたちは、命の炎を急速に燃やし尽くし、将来病気になることが確定しているんです。

(中略)科学者の放射線被曝許容量は、一般市民の十倍とされています。いろいろな自衛手段を知っているためです。普通の人よりも健康で、放射線に強いからじゃありません

………………。

これは1998年の番組だから、このとき12~15歳ということは、事故当時は0~3歳くらいでしょうか。200km以上離れていても、その年齢層の子どもに後にひどい症状が出る。どれくらいの線量の地域だったんでしょうね。恐ろしくてなりません。

今、仕事の合間を縫ってこのビデオに英語字幕を付けるべく作業中です。

大元の番組「チェルノブイリ原発事故その10年後」はYouTubeにあります。
  その1はこちら
  その2はこちら(上のビデオの前半部分は「その2」からの抜粋です)
  その3はこちら
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