異端医師の独り言さんのサイトより
http://blog.livedoor.jp/leeshounann/archives/51962234.html
<転載開始>
2007年3月7日号のニューズウィーク日本語版です。≪≫内は僕のコメント。

とんでも科学に踊らされる人々  うたい文句は、頭がよくなる、みるみるやせる…。インターネットやテレビが流す誇大広告に、人々はころっとだまされ、健康グッズやサプリメントが一大ブームを巻き起こす。科学の衣をまとった悪徳ビジネスの実態に迫る。
 ジョージ・W・ブッシュにとっての「悪魔」はイランやイラクだったかもしれないが、10年ほど前から ≪少なくとも20年以上前から≫ アメリカの消費者を振るえ上がらせている悪魔は「脂肪」だ。スーパーの棚には低脂肪チーズや低脂肪アイスクリーム、低脂肪牛乳が所狭しと並んでいる。多くの家庭では、朝食のテーブルから卵とベーコンが追放された。脂肪の摂取を控えれば元気で長生きできる ― 人々はそう信じた ≪食塩もまたしかり≫。問題はただ一つ、低脂肪の食生活が体に良いことを実証した科学的な研究がないことだった。06年2月、衝撃的な調査結果発表された。NIHの研究プロジェクト「女性の健康調査」が、2万人の女性を対象とした調査の結果として、低脂肪ダイエットが心臓や肝臓などの病気を予防する効果は確認できないと報告したのだ。「低脂肪食品イコール健康食品という考えは改めたほうがいい」。調査をチームを率いたマルシア・ステファニックはそう語る。低脂肪ダイエットの信者となった何百万ものアメリカ人は、どうやら偽情報に踊らされていただけらしい。こんなに多くの人々が、科学的根拠のない「とんでも情報」に飛びついたのはなぜか。
 エセ科学の流行は今に始まったことではない。しかしアメリカでとくに最近、この大きな現象が問題になっている。インターネットで噂が増幅し、テレビのCMで火がつき、人々はあっという間にブームに巻き込まれる。
癒されるはずがアレルギー症状に
 科学の理論は、厳密な観察と推論に基づき、仮説を立て、慎重に検証を重ねて初めて確立される。だが、エセ科学はまさに科学と似て非なるもの。科学を装った誇大宣伝、作り話、偶然にすぎない。「エセ科学は今や、アメリカでは手に負えないほどはびこっている」と、テキサス大学オースティン校のロリー・コーカ教授(物理学)は言う。
 最近、話題をさらったエセ科学は「マイナスイオン効果」だ。イオンという科学用語を使っているところがミソである。マイナスイオンを発生する「髪にやさしい」ヘアドライヤーが商品化され、なぜ「イオン化された分子」が髪に良いのか理解できないまま、多くの消費者が買いに走った。
 アロマセラピーに科学的な「癒しの効果」があると宣伝されたとたんに、香りつきのキャンドルが飛ぶように売れはじめた。だが医学界が効果を認めた事実はない。精油の配合割合も、原料の植物名も表示されていないことが多く、「アレルギーを起こした例が報告されている」とNC!は警告している。
 古いところでは、アルコール依存症自主治療協会(AA)がある。ここで行われている「治療」の効果を検証しようにも、禁酒希望者が氏名をを伏せて話し合い助け合うことを原則とする AAの世界に、第三者が立ち入る余地はない。AAは 1935年に、アルコール依存症から回復しつつ 2人の男が創設した。今ではアメリカの「自助」信仰の代表的存在といっていい。医学界での評価は割れているが、客観的な検証がなされていないのは事実。したがって科学的とはいいがたい。
 いわゆる「モーツアルト効果」、赤ちゃんにクラッシク音楽を聞かせると頭が良くなるという説は、科学的データねじ曲げられたケースだ。93年にアーバインダ医学のゴードン・ショー教授(物理学)がラットを使った実験で、モーツアルトを聞かせると「短期的に IQが高まることを発見した。ショーは後に、人間の大人でも一時的に集中力が高まるなどの効果が期待できると語った。だが、頭がよくなるというのは誤解で、そのおかげで自分の研究がエセ科学にされてしまったと嘆いている。研究者自身が警告しても、騒ぎは収まらなかった。97年にドン・キャンベルが音楽療法に関する著書を出したこともブームをあおる結果となった。「音楽はストレス発散に役立ち、活力を与え、苦痛を軽減する」と、キャンベルは述べている。ただし、知能を高める効果については口を濁している(測定法の問題もあるから断定的なことは言えない、とか)。それでも親たちはモーツアルト効果を信じ、子供向けのクラッシク音楽の DVDは今も大人気だ。
 しかしエセ科学が最も横行しているのは、おそらく健康食品の分野だろう。なにしろダイエット食品やサプリメントは、処方薬と違ってFDAの承認が必要とされていない ≪エビデンスに基づくサプリメント≫。おかげで、いわゆる「サプリメントの」のたぐいは食品業界で最も成長率高い分野の一つとなった。上場している専業大手ハーバーライフ社の株式時価総額は 27億ドルに達する。だがこうした業者の業績は、商品の質よりも販売戦略の巧みさに依存しているようだ。たとえばネット通販のヌートラサナス社は、体形や健康を気にする人たちに濃縮魚油のサプリメント「スーパーオメガ」などの商品を売り込む。1瓶 30錠入りで価格はたったの 17ドル。これで「健康にいい(とされる)脂肪酸」を摂取できるのだから安いものだ。しかしサイト上にには、ダニエル・コズグローブ博士なる医師による「推薦の言葉」も掲載されている(この人物はヌートラサナスから報酬を受けている)。」だがよく見ると、小さな文字で注意書きが付されている。いわく、「(商品の効能についての医学的な)評価はなされていません」本誌が電話で問い合わせると、ヌートラサナスの担当者は「どの商品にも同じ注意書きをしている」という。「サプリメントを摂取するときは、(政府の)受けた商品でないことを承知してほしい。政府がすべてのサプリメントを規制することは不可能だ」
セレブのCMと専門用語を駆使
 科学的な裏づけがないにもかかわらず、アメリカ人はこの手の商品を買い続けている。それが危険な結果をもたらす場合もある。たとえば植物のエフェドラ(マオウ)は減量効果があるとされ、ダイエット系サプリメントに使われた。その後、エフェドラには心臓発作や脳卒中などの危険な副作用があることが判明。消費者からの苦情を受け、本来はサプリメント類を規制対象にしないFDAも、04年にエフェドラ配合製品の販売禁止を命じている。だがエフェドラ製品が店頭から完全に姿を消したわけではない。最近もテキサスで16歳の少年がエフェドラ配合サプリメントを購入。これを服用した後に脳卒中を起こす事故が起きている。
 エセ科学の売込みには、往年のセレブを起用したテレビCMも「貢献」している。たとえば70年代に人気ドラマに出演していた元セクシー女優のスザンヌ・ソマーズ(60)は、今やエセ科学の広告塔的な存在だ。ソマーズは80年代、太もも引き締め器「サイマスターズ」を数百万セット売った「実績」の持ち主。最近では著書『エージレス』の中で、医師の処方するホルモン剤ではなく、より天然の女性ホルモンに近いという「バイオアイデンティカル・ホルモン」を使って若さを保とうと提唱している。専門家はその効果を繰り返し否定しているが、ソマーズは意に介さない。「医者って、自分にわかららないことは無視したがる」と、彼女は最近のインタヴューで語っている。反対論を無知な懐疑論者と片付けるのは、エセ科学の常套手段といっていい。
 現代アメリカ人の科学に対する理解度は大きく進歩している。アメリカ科学振興協会(AAAS)によると、今の米国民の約28%は一般誌に載る科学記事を完全に理解する知識をもつ。20年前には10%程度だったことを考えると、飛躍的な伸びだといえる。だが皮肉にも、科学への理解が深まる一方で科学への誤解も増えている。エセ科学の感染力は衰えず、本物の科学的研究の基礎を学んだことのない人たち次々に侵している。「単純な答えを求める人は、いつの時代にもいる」と言うのは、ミシガン州立大学にある科学理解力推進国際センターのジョン・D・ミラー所長だ。「そして彼らをターゲットにする巨大ビジネスが存在する。調査によれば、教育水準が高い人はエセ科学を信じにくいが、高校中退者はインチキに引っかかりやすい」実際、エセ科学は本物の科学用語を駆使して嘘を真実のように描き、無知な人をだまそうとする。学者でマジッシャンであるジェームズ・ランディは、いわゆるエセ科学の商品や主張の信憑性を科学的に実証した人に100万ドルの賞金を贈る基金を設立した。しかし今のところ、誰一人としてこの賞金を獲得できていない。「エセ科学商法は人間を破滅させる」とランディは言う。「エセ科学商法は、消費者の金も心も奪い取ってしまう」
 ランディによれば、人がエセ科学を信じるのにはそれなりの理由がある。たとえば、身体の特定の位置に磁石を置くことで痛みを和らげるという磁気療法。誰もが知っているように、磁石は鉄を引き寄せる。ならば、痛みを吸い取る力があってもいい…。もちろん科学的な実験で磁石の鎮痛効果が確認された例はない。ランディは言う。「数えきれないほどのテストをし、具体的にどんな病気や症状に効くのかを問い合わせたが、具体的な答えは一つも返ってこなかった。こんなのは科学じゃない」
 超現象などを批判的に検証する団体、懐疑的調査委員会(CSI)もエセ科学との戦いに取り組んでいる。NPOである CSIは 1976年、科学的知識の啓蒙活動を重視した天文学者で作家のカール・セーガンらによって創立された。CSIのジョー・ニケル上級研究員の元には、エセ科学の被害を訴える電話が数々寄せられる。二ケルは報告事例の科学的真偽を調査し、自分たちのウェブサイトやテレビ番組を通じて、真の科学の啓蒙を行っている。
人気の「筆跡学」も科学的根拠なし
続く

<転載終了>