アルさんのサイトより
http://blog.livedoor.jp/artevita/archives/2013-06-26.html
<転載開始>
まだ6月ですが、イタリアではこの時期人と会えば必ず、「バカンスどこ行く?」
の話になります。
まず、「今年の夏ってっちょっと肌寒いよね」のお天気の話から始まって、
今時の不景気と政治家の愚痴になって、それからおのずと互いの経済的状況
お披露目会になり、どちらがより厳しい立ち位置かを競い合ってから、
一呼吸置いたところで、
「バカンスどこ行く?」 になります。

どんなに厳しい状況であっても、無職になりそうでも、国が経済破錠したとしても、
医者から不治の病と言われたとしても、取りあえずバカンスはやる、というのが
基本的イタリア人のスタンスです。
甘い物は別腹と言っている女の子と同じです。

VACANZA(バカンツァ)の語源は、ラテン語のVUOTO(ブォート、空の状態、無)
から来ており、イタリア人のバカンスというのは日々の鬱憤やしがらみから離れて、
心を空にして心身共にラックスするためのものです。

日本人の私からすると、アンタらとっくにリラックスしてるじゃないかと、思うん
ですが、彼らは更なる真のリラックスを求めます。

で、リラックスが、5月頃からウォーミングアップし始め、6月になるともう本番に
向けての助走が始まるので、この季節のイタリア人というのは脳味噌がすでに
バカンス地に到着しているような緩慢ムードを醸し出してきます。
そしてリラックスが本気を出せば出すほど、街の機能はスローモーションになって、
8月ともなればストップモーションになります。

さて、イタリア人達が一般的にどのようなバカンスを過ごすかと言うと、
海辺に行って、日中は浜辺に横たわり、夜は遅くまで飲み歩いたり踊ったり
映画見たりして、次の日はまた日中浜辺に横たわり、を毎日のように
繰り返します。

私もイタリアに来たばかりの頃、真っ先に、この憧れのイタリア式バカンス
というものをやってみました。まず海辺に1週間ばかし安宿を取って、朝食の
後で水着に着替えてバスタオル抱えて浜辺に降り、皆がやっているように、
貸しベットの上にバスタオルを敷いて太陽の下に寝そべってみました。
周りの人達は寛いだ顔をしてアザラシのように寝っころがったまま動かず、
サウンドは波の音だけ。 ああこれがイタリア式バカンスってやつか、と優雅な
雰囲気に満足したのも束の間、全然リラックス出来てない自分に気付きました。
なにしろ太陽が暑くて、居ても立ってもいられない暑さで、本とかスケッチ帳とか
持って来てるけど、そういうのにも一切集中出来ない暑苦しさで、頭を空に
しようと勤めても、暑さを我慢している自我に邪魔をされ、悶えそうになりながら、
いち早く海にじゃぶじゃぶ入って行きました。 
で、海に入る人というのは大半が子供達です。
そして、一人で海の中で入ってるというのは、レストランで一人飯するよりもずっと
手持ち無沙汰であるということを知りました。なのでまたいそいそと自分のベッド
に戻り、しばらくすると暑苦しさに我慢出来ずに、また海に飛び込むを繰り返し
ているうちに、長時間サウナみたいに、へとへとになりました。

結構ショックでした。自分がイタリア人達のようにリラックス出来ないことに。。
だってこれイタリア人達、心身滅却すれば火もまた涼しの状態になっている
ということでしょう? 脱帽だと思いました。

で、そのバカンス第一日目の夜、熱が40℃近く出まして、重度の熱射病と解り、
フラフラになりながら薬屋に行き解熱剤を買いました。

そして次の日は、ベッドの他に奮発してパラソルも借り、守りに入ってみたわけ
ですが、流石に昨日のような悶絶感は訪れないものの、やっぱりリラックスが
出来ないのです。今度は退屈で。
なので文庫本を取り出すんですが、なんか退屈だから仕方がないから読むって
のが、バカンスくんだりして自分が退屈してる事実を突きつけられてるみたいで、
ちょっと許し難くて、しかも横溝正史がイタリアの海岸に合わなさすぎて。。
結局ボーっと時間が流れていくわけですが、
何にも考えずただ寝そべるだけで大切な一日が過ぎ去って行くことに対し、
何か焦りのようなものさえ生まれます。
日本人でこんなことを堂々とやるのは、のび太君か病人しかいないのに、
果たしてこの状況に自分の成長を見出すものはあるのだろうか、という焦り。
それから、周りの人達はこんな寛いだ顔してんのに、何で私だけ葛藤してんの?
みたいな、置いてけぼり感。。。
ああ、こういうタイプのリラックスの仕方を全然教わってこなかった、と深々思い
ました。

それから15年以上が経った今の私は、すっかりイタリア人の感覚が備わって
きましたので、イタリア式にリラックスするのもお手の物となりましたが、
Hがイタリア人のくせに日焼けが大嫌い、時間の無駄遣いも大嫌いで、俗世間も
大嫌いときているために、海辺にはめったに行かなくなりました。
それでも何度か無理やり夏の海辺に連れて行くことがありますが、
誰しもが水着姿なのに、たった一人だけ長袖長ズボンのHが岩陰に藤壺のように
張り付いているという状況に、こっちは全然リラックス出来なくて、終いには
喧嘩になってしまいます。

リラックスするには色々条件が揃わないと難しいってことで、まだまだリラックス
初心者の自分です。

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<転載終了>