株式日記と経済展望さんのサイトより
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<転載開始>

1180名の隊員をフィリピンに送るのに自衛隊の輸送能力の半分が必要な事を、
かなりカツカツで予備の輸送リソースに欠けるのではないかと思います。


2013年11月20日 水曜日

不足と過剰の間で揺れ動く、自衛隊の輸送能力 11月19日 dragoner

フィリピン中部を襲った台風30号における災害ですが、各国による支援が本格化し、日本も自衛隊員1180名と航空機、ヘリコプター、護衛艦を現地に送り、医療活動等の救援活動を開始しております。

ところが、この救援活動による派遣が、自衛隊の業務に波紋を与えているようです。先日、こんな報道がありました。

国内外で多発する台風被害への対応に追われる自衛隊が、相次ぐ訓練中止に頭を悩ませている。 沖縄県で実施中の大規模演習では、伊豆大島やフィリピンでの救援活動に輸送艦を派遣したことから、メーンの離島奪還訓練を一部取りやめ。米軍輸送機MV22オスプレイを使う予定だった高知県での日米共同訓練も、台風の接近で中止された。自衛隊の輸送力不足も明らかになり、幹部は「今後、訓練の穴をどう埋めていくかが課題」と複雑な表情だ。

出典:自衛隊訓練に部隊不在、欠点も浮上…台風余波

国内外で相次ぐ災害派遣により、予定されていた訓練が実施できない状況に置かれているようです。自衛隊に限らず、平時の”軍隊”(自衛隊が軍隊かどうかの議論はここでは置いときます)の仕事の大部分は、教育と訓練に費やされています。言うならば、自衛隊の平常業務が災害派遣で滞る事態になっているのです。

その原因は、自衛隊の輸送能力を超えた派遣にあります。現在のフィリピン国際緊急援助統合任務部隊に組み込まれている自衛隊の輸送機は、航空自衛隊が保有する主要輸送機の半数近くに登っており、また輸送能力の高い艦艇についても、おおすみ型輸送艦の3分の1、とわだ型補給艦の3分の1、ひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦の半数と、自衛隊の輸送能力の半分近くを今回の派遣に費やしている事が分かると思います。

1180名の隊員をフィリピンに送るのに自衛隊の輸送能力の半分が必要な事を、輸送能力が足りないと見るか、足りていると見るかは意見の別れる所かもしれませんが、現に訓練に支障が出ている事を考えると、かなりカツカツで予備の輸送リソースに欠けるのではないかと思います。

しかし、単に輸送能力を増やせば済むという問題でもありません。例えば、運送会社は普段から自社の運送能力のほとんどを業務に使用していると思います。しかし、自衛隊の輸送能力はその特性上、平時は全体から見ればわずかな能力で活動し、有事にはその能力を100%発揮するようになっています。言い換えれば、平時はリソースが過剰にならざるを得ない宿命にあり、有事に必要な能力を確保すると、平時にはその分維持コストがかかる事になります。自衛隊輸送能力の現状は、平時は過剰、有事は不足という事態になっているのかもしれません。

では、コストを抑えつつ、輸送能力を強化するのはどういう手段があるでしょうか。一つは、民間の輸送能力を使うことです。現在、自衛隊の演習で移動する場合でも、民間の運送会社を利用する事が増えています。

しかし、民間で輸送する場合、平時の輸送リソースとして期待できても、有事に利用できるかは不透明です。そのため、特別目的会社を設立し、平時は民間航路を運行し、有事や訓練の際に自衛隊が輸送船として利用する事を防衛省が構想していると報じられています。

防衛省が、海兵隊機能の柱として導入する「高速輸送艦」について、PFI方式での民間フェリー導入を検討していることが25日、分かった。PFI法に基づき特別目的会社を設立し、平時は定期運航などの運用を委ね、有事や訓練の際に自衛隊が使用する。厳しい財政事情を踏まえ装備導入費を効率化するためで、有事での自衛隊の優先使用権も確保する方針。

出典:海兵隊機能「高速輸送艦」 有事に民間フェリー転用 防衛省検討、PFI方式

この案のメリットは自衛隊側が必要な時に輸送船を使えて、それ以外は民間業務に使うので維持コストを大幅に抑えられる上、運行会社側にも繁忙期に民間輸送に使い、閑散期には自衛隊の訓練に貸し出す事で自衛隊から収入を得られるメリットがあります。有事での使用については民間人保護の問題も含め、検討しなければいけない側面も多いのですが、厳しい財政状況の中で官民共に効率的にリソースを使えるので、問題をクリアしてくれればと思います。

今回のフィリピンの台風災害は予期せぬことでしたが、災害も紛争も予期せぬ時に発生することがあります。その有事に100%の能力を出せる能力は、普段からの取り組みにかかっています。厳しい財政状況が続きますが、効率的にリソースを活かせる方策を見出して欲しいと思います。



(私のコメント)

現代戦の本質は輸送力にあるのであり、大東亜戦争においては海軍には輸送護送船団用のフリゲート艦を持っていなかった事からも分かるように、海軍の優秀な作戦参謀は輸送戦に対する認識が全くなかった。第一次世界大戦でもイギリスはドイツの潜水艦によって海上輸送が危機的な状況になりましたが、日本海軍は何も学ばなかった。

アメリカ海軍の潜水艦の能力を見くびっていたからでしょうが、戦争に入ってその損害の大きさに驚いて慌てて海防艦の大量建造に踏み切った。しかし海防艦はできても対潜水艦に対する戦闘訓練が出来ている海軍の兵員はあまりにも少なかった。多くが商船学校出身者で作戦が行われた。

海軍も民間の商船を徴用して輸送に当てましたが、戦地に行くまでに多くが潜水艦によって沈められてしまった。海軍が民間の輸送船護送を嫌がる気持ちも分かりますが、戦艦大和を作る位なら海防艦と乗組員の養成に充てるべきだったのだろう。空母にしてもレイテ沖海戦では空母があっても乗り組む戦闘機パイロットがいなかった。海軍の兵士にしてもパイロットにしても養成するには数年かかり、赤紙で徴兵した兵士に小銃を渡せば兵士になれる陸軍とは異なる。

戦艦や空母などの正面装備は立派に整っても、燃料や物資の供給が無ければこれらの軍艦は動かない。大戦末期でも戦艦や空母が残っていたが燃料が無くて戦えなくなってしまった。これらはロジスティックスの重要性が分かっていなかった帝国海軍軍人のミスであり、その時点で敗戦は開戦前に決していた。

現在においても海上自衛隊には商船護衛用の護衛艦がなく、海上自衛隊が保有している護衛艦は駆逐艦であってフリゲート艦ではない。航空機輸送も自衛隊にはC-130が16機あるだけですが、今回のフィリピン台風災害復旧でも半数の7機が出動している。KC-767も4基のうち2機が派遣されている。交代を考慮すれば災害復旧に全部隊が出動する形であり、これが自衛隊の限界だ。

フィリピンと言う比較的近い地域への派遣でも、1200名足らずの自衛隊への補給にこれだけかかるのだから、イラクやアフガニスタンへ10万人以上派遣しているアメリカ軍の補給力は驚異的ですが、軍事超大国アメリカでも10万程度の軍を派遣するには膨大な軍事費がかかり10年もそんな戦争を続ければアメリカも破産するだろう。

戦前の日本軍も今の自衛隊も正面装備には関心を払っても、輸送部隊などの装備は貧弱なものだ。日米安保体制下では自衛隊は専ら輸送作戦に従事すると思われますが、輸送機も輸送船も数えるほどしかない。対策としては民間の船や輸送機をチャーターする事ですが、平時ならできますは有事には民間の船や飛行機は使えない。

現在の日本経済は中東からの石油輸送に依存していますが、それらを輸送するタンカーのシーレーンが危機に陥るという危険性を考えているのだろうか? アメリカ海軍が財政上の都合でインド洋や西太平洋から引き揚げた場合、日本のタンカーは丸裸で航行しなければならない。そして中国海軍の嫌がらせの臨検を受けるようになれば、日本のエネルギー事情は一変してしまう。

日本にはタンカーなどの商船団を護送するノウハウもなく経験もほとんどない。従来ならば高性能な護衛艦を何隻も付けるしか方法がなかったが、大型タンカーにヘリポートをつけてオスプレイを搭載すれば、大型のレーダーをつけて対空対艦対潜哨戒機として使える。場合によっては対空対艦対潜ミサイルを搭載して護送すれば効果的だろう。

中国はオスプレイ配備を嫌がるのは、オスプレイの多用途性でありコピーして作る事は不可能だろう。アメリカ軍にしても実戦配備したばかりであり、今回のフィリピン台風災害にも出動していますが、その実用性の高さが証明されることになるだろう。「おおすみ」や「いせ」はオスプレイの母艦としても活用する事が証明されるだろう。

<転載終了>