社会科学者の随想さんのサイトより
http://blog.livedoor.jp/bbgmgt/archives/1054453708.html
<転載開始>
【米日軍事同盟関係下の日本国隷属状態に観る自国体制の毀損状態】
【アメリカ・日本総督府による日本国に対する内面指導の中身を解説するマイケル・グリーン〔など〕の身勝手な発言内容】
①『日本経済新聞』に登場するジャパン・ハンドラーズの実例-ジョン・ハムレ(戦略国際問題研究所〔CSIS〕所長)
まず最初,以下に紹介するのは「ハムレCSIS所長に聞く 米大統領候補の政策と人脈」という記事である(『日本経済新聞』2016年1月17日付朝刊「日曜に考える・政界面関連インタビュー」)。

2016年11月の米大統領選の予備選に出馬する民主,共和両党有力候補の対日政策について,ジョン・ハムレ米戦略国際問題研究所(CSIS)所長に聞いた。
註記)John Hamre は,米上院軍事委員会専門スタッフを経てクリントン政権で国防次官,国防副長官を歴任,2000年1月から現職,65歳。
http://blog.livedoor.jp/bbgmgt/archives/1054453708.html
<転載開始>
【米日軍事同盟関係下の日本国隷属状態に観る自国体制の毀損状態】
【アメリカ・日本総督府による日本国に対する内面指導の中身を解説するマイケル・グリーン〔など〕の身勝手な発言内容】
①『日本経済新聞』に登場するジャパン・ハンドラーズの実例-ジョン・ハムレ(戦略国際問題研究所〔CSIS〕所長)
まず最初,以下に紹介するのは「ハムレCSIS所長に聞く 米大統領候補の政策と人脈」という記事である(『日本経済新聞』2016年1月17日付朝刊「日曜に考える・政界面関連インタビュー」)。

2016年11月の米大統領選の予備選に出馬する民主,共和両党有力候補の対日政策について,ジョン・ハムレ米戦略国際問題研究所(CSIS)所長に聞いた。
註記)John Hamre は,米上院軍事委員会専門スタッフを経てクリントン政権で国防次官,国防副長官を歴任,2000年1月から現職,65歳。
1)ヒラリー氏のTPP不支持表明「まったく失望した」
◆ ヒラリー・クリントン前米国務長官が大統領になった場合,対日政策をどうみますか。
◇ 「まず誰が大統領になるかは分からないという前提で質問に答えたい。キャンベル前国務次官補やスタインバーグ元国務副長官が再び政権に戻るだろう。ベーダー前大統領補佐官(国家安全保障会議・上級アジア部長)は戻らないかもしれないが,上級アドバイザーになる可能性はある」。
「シャーマン前国務次官,バーンズ前国務副長官や,アジアの専門家ではないが,フロノイ元国防次官も政権に戻ることはありうる。いいたいのは,これらの人びとはクリントン氏が大統領になれば政権で要職につく公算が大きいということだ」。
◆ 夫のビル・クリントン元大統領は親中派との見方もあります。
◇ 「それは過度に単純化した見方で,親中派ではないと思う。ビル氏もヒラリー氏も地政学的な文脈で中国をとらえようとしている点で類似している。台頭する中国と建設的な関係を築くことが重要だと考えていることだ。日本が心配すべきようなことではない」。
◆ ビル氏には大統領在任中の1998年に中国に9日間滞在したにもかかわらず,日本に寄らずに米国に戻った「ジャパン・パッシング」(日本無視)の印象があります。
◇ 「その行動が親中,反日を反映したものとは考えていない。当時,クリントン政権の国防副長官だったので,そのときのことは覚えている。私たちは大統領に日本に立ち寄るべきだと進言した。寄らなかったのは,中国との関係に希望を抱いていたからではない。(日本との関係に)かなり楽観的だったのだろう」。
◆ ヒラリー氏は環太平洋経済連携協定(TPP)に「現時点で不支持」と表明しました。
◇ 「政治家が従来の態度を翻すのは,かなり難しいことだ。私の個人的な経験でもほとんどみたことがない。私はヒラリー氏のTPPへの態度にはまったく失望した。間違いだ。TPPの巨大な地政学的重要性を反映した態度ではない」。
2)トランプ氏「日米安保をしらないのでは」
◆ ドナルド・トランプ氏の対日観は,1980年代の日米貿易摩擦が続いているような認識です。
◇ 「私はトランプ氏という候補者には本当に当惑させられている。彼の主張は理屈抜きの感情であり,政策ではない。日本との関係において話していることはまったくの時代遅れだ。私はまだ個人的には米国の世論が次期大統領についてよい考えが浮かぶと信じている」。

◆ 日本をたたけば票が増えると思っているのでしょうか。
◇ 「米国の世論は日本に怒っていない。中国にもいくつかの点で懸念はあるが,激しい怒りはない。日本には懸念もない。トランプ氏が票を獲得するためにいっているとも思えない」。
註記)このハムレのいいぶんは意味不詳。トランプの檄に反応する選挙民たちの感性を,まったく理解するつもりのないハムレの理解と思われる。
◆ トランプ氏は日米安全保障条約も不公平だと批判しています。
◇ 「彼は日米安保についてしらないのではないか。思いついた言葉をいっているのだろう」。
補注)たしかにトランプは日米安保の中身・実際をほとんどしらない様子に映る。かといって,アメリカの一般国民・市民次元のその理解が,トランプよりもすこしでもより高い水準にあるのかといえば,とうていそうは思えない。ここには,ハムレの理解では「理解しづらい問題」がありそうである。
◆ テッド・クルーズ上院議員やマルコ・ルビオ上院議員の対日政策をどうみていますか。
◇ 「クルーズ氏とは話したことがないので,分からない。ルビオ氏も私のスタッフは働いた経験があるが,私は会ったことがない」。
補注)この文章の意味じたいが分かりにくい。「ルビオ氏」と「私のスタッフは働いた経験がある」という文句の意味が読みとれない。要は,知己の間柄ではないということらしいが,日本語としてどう,前後関係を理解したらよいのか迷う表現(「て・に・を・は」の)である。
◆ ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事は父や兄の政権時の人脈を引きついでいるといわれています。
◇ 「ジェブ・ブッシュ氏は思慮深いし,いい大統領になるだろう。彼は自立した人間だ。兄や父と同じ道をたどっているわけではない」。
補注)ジェブ・ブッシュは,パパの泣き虫・ブッシュやあの軽薄な兄貴・ブッシュとは異なり,より〈賢い〉という評価なのか? ジョン・ハムレのこれらのものいいは,いちいち尊大に感じられ,「この人物は何様か」という印象を受ける。
◆ ブッシュ氏が大統領になったら,知日派のマイケル・グリーンCSIS上級副所長は政権に入る可能性があるのではないですか。
◇ 「誰が大統領になってもグリーン氏を起用したがるだろうが,私はそれを望んでいない。彼にはまだ私のために働いてほしい」。
(聞き手はワシントン=吉野直也)
②「ジョセフ・ナイ氏『米,岩礁に主権認めず』」(『日本経済新聞』2015年10月29日朝刊)
中国が「領海」と主張する南シナ海の人工島12カイリ(約22キロメートル)内の海域で米海軍が駆逐艦による哨戒活動に乗り出し,米中関係は緊迫の度合いを強めている。米国の意図,思惑,狙いはなにか。

2016年の米大統領選有力候補,ヒラリー・クリントン前国務長官の選対本部でアジア委員会の共同議長に就任したジョセフ・ナイ米ハーバード大学特別功労教授に聞いた。
註記)Joseph Samuel Nye, Jr. は,1958年に米プリンストン大学に卒業後,米ハーバード大学で博士号を取得,国務次官補,国家情報会議(NIC)議長などを経て,クリントン政権で,国防次官補に就任,日米同盟の再強化などに尽力した
◆ 南シナ海で米中両国による対立の度合いが強まっています。
◇ 「先にワシントンでおこなわれた米中首脳会談で,習近平国家主席はサイバー問題について従来の立場を百八十度転換したが,南シナ海をめぐる問題についてはなんの進展もえられなかった。だから,われわれは論争の対象となっている(人工の)島々の近辺で,航行の自由が確保されているかどうかを確認する作業に着手した」。
◆ 米国はどのような立場ですか。
◇ 「われわれは岩礁などに主権の存在は認めず,公海は海洋法にのっとって治められるべきだという見解,立場をとっている。海洋法は岩礁や砂を移動させることを認めておらず,それを領土,領海とみなすことも,排他的経済圏と呼ぶことも禁じている」。
◆ 中国がすべての人工島を完成させれば,南シナ海における米国の制海権は低下し,この地域における米中間のパワー・バランスが崩れるという見方もあります。
◇ 「そうは思わない。実際,人工島はとても脆弱で,『動けない空母』のようなものだとする声も多い。固定された攻撃目標であり,沈めるのは容易だ」。
◆ 具体的な方策は。
◇ 「ある米軍OBの友人によれば,たとえばフィリピンに弾道ロケット施設を新設し,狙いを定めることができる。それによって,(人工島を)軍事的には完全に無意味なものにすることは可能だ」。
「われわれが航行の自由を確かなものにすることができれば,(人工島が)情勢を大きく変える『ゲーム・チェンジャー』にはなりえない。そのために(人工島の)12カイリ以内で艦船を航行させ,上空に航空機を送りこんでいる。こうした行動は今後,数週間は続くことになるだろう」。
◆ 2001年に海南島で発生した米中両国軍機による接触事故のような危機は招きませんか。
◇ 「たしかに,EP3(偵察機)事件のような問題が起こる可能性はつねにある。ただ,それは首都(政府)の決断にかかっているともいえる。EP3事件もきっかけは,1人の中国人パイロットが(米側に)タフであるとみせつけようとしたことに過ぎなかった。問題は北京(中国政府)が事態をエスカレートさせたいと思っているかどうかだ」。
「中国ではいま,経済成長が減速しつつあり,そうした中で米国との紛争はもっとも望んでいないはずだ。米国との紛争に足を踏み入れるなら,習氏は相当なリスクに手を染めることになる」。
◆ 習指導部による人民解放軍の統制に疑問符も付きはじめています。
◇ 「中国には政争があり,習近 平はつねに自身の政治的統制力を心配しなければならない。反腐敗のキャンペーンは政敵を追いこむ武器であり,実際,多くの人間が『つぎは自分では』とおびえて
いる。習氏の統制力に問題があることはたしかだが,鄧 小平氏以来,もっとも強い権力を握っていることもまた,事実だと思う」。
(聞き手は編集委員 春原 剛)
補注)春原 剛(右側画像)は,ジャパン・ハンドラーズに対する日本経済新聞の接待掛り,みたいな記者である。
出所)画像は,http://www.jcie.or.jp/japan/gt/murasememorial/
③「元米国務副長官『日米同盟,強化を』富士山会合閉幕,合意文書を採択」(『日本経済新聞』2015年11月24日朝刊)
日米の政府関係者や専門家らが参加して国際問題を協議する第2回年次大会「富士山会合」(日本経済研究センター,日本国際問題研究所共催)が2015年11月23日,合意文書を採択し閉幕した。日米双方は「日本が新しい安全保障法制の下で前向きで,より建設的な役割を果たす」などの認識を共有。アジア地域の安定のため,日米同盟を一層緊密化することなどで一致した。
リチャード・アーミテージ元米国務副長官ら会合の参加者が同日,東京都内のホテルで記者会見した。合意文書では米国によるアジア・太平洋地域での強固な関与を歓迎するとともに,関係国に対し「環太平洋経済連携協定(TPP)の迅速な批准」も促した。
アーミテージ氏は日本の安保法制について「米軍と自衛隊が連携するさい,すべての指揮レベルでスムーズな意思疎通ができるなど『切れ目のない同盟関係』の強化が重要だ」と主張した。その上で「日米同盟は防衛に限らず,外交や経済,エネルギー問題など幅広い分野を含む」と語った。
補注)ここで日米両軍間の「『切れ目のない同盟関係』の強化」が強調されているが,この「切れ目のない」という平面的な表現は「日米同盟は防衛に限らず」という〈非限定性の有無〉にかかわらず,実態=中身としては立体的な軍事面に関する内容を意味すると受けとるほかない。
抽象的ないい方になるほかないが,その「切れ目なく」「意思疎通ができる」「米日両軍の同盟関係」というものの実体は,いままでの日米安保条約体制のなかで,この米日両軍がいちおうは他国同士の軍隊編制としてであっても,どれほど親密な間柄をもって存在してきたかを,現実的に思い浮かべての話題としておく必要がある。
会合の共同議長を務めた米戦略国際問題研究所(CSIS)のジョン・ハムレ所長は「オバマ政権は米国史上初めて,欧州ではなくアジアを外交の最重要地域と位置づけている」と指摘。日本も安保法制の制定をしたことで「日米関係は歴史的に重要な転換点にある」と述べた。
補注)これは,中国が経済力を付け,軍事力も強めてきた動勢を受けての話題である。アメリカによるこれまでアジア方面の外交〔とはいっても軍事が基盤にある〕は,日本にも,ほどよく分担させたい魂胆を隠したことはない。この点は「日米関係は歴史的に重要な転換点にある」と述べるところにも,より明らかに透視できる。かといって,アメリカが日本が出過ぎたマネをすることは欲していないゆえ,安倍晋三という日本国首相の使い勝手を事前に推し量っておくためのアドバルーン:観測気球が揚げられている。
日本側はアメリカの軍事的要請にかなった自衛隊の組織編成面に関する対応を検討してもいる。『朝日新聞』2016年3月2日朝刊は,見出し「統合司令部の創設検討 河野統幕長」という記事は,こう報道していた。
富士山会合は21日から長野県軽井沢町で始まり,3日間にわたり日米関係や女性の社会進出など幅広い議題について討論をおこなった。来〔2016〕年6月に第3回大会を開く予定。
--以上の記事に関しては,若干ながらでも奇妙に感じることがある。それは,アメリカ合衆国の〈元〉だとか〈前〉だとかの肩書きをかかげていながら,あたかも現職であるかのように,つまり,その元あるいは前のU.S.A. の政府関係者でありながらも,いま現職である立場から発言をしているかのような存在である「彼らがいる」ことである。
要は,知日派という名のジャパン・ハンドラーズであるという人物たちが,日本を高所・大所から意見し,指導しているらしい様子が,それもかなり厚かましく,かつ相当に図々しい態度を,ありありとひけらかせながらの言動なのである。
すでにその氏名が出ていたが日本経済新聞の編集委員春原 剛のような人物であれば,ジャパン・ハンドラーズとは相性がよく,なんでもかんでも喜んで聞きいれられる度量をもちあわせているのかもしれない。だが,筆者のようにものごとを批判的見地を忘れずに観察したい立場にとっては,摩訶不思議な様相が目前に繰り広げられている。
たとえば,昨日〔2016年3月22日〕の本ブログ記述中で参照した『「ジャパン・ハンドラーズ」が「日米安全保障研究会」(笹川平和財団主催)に勢揃い 2013.6.24』(https://www.youtube.com/watch?v=iHHC5Ia3rpA&feature=youtube)に登場する人物たち〔本日の記述でとりあげている者たちでもある〕の,壇上においてみせる態度は,いかにも鷹揚であり,そして傲岸な雰囲気を上塗り的に漂わせていた。
なかでは,昨日とりあげたマイケル・グリーンのように日本滞在が長い体験をもつ人物は(フルブライト奨学金給付留学生となり東京大学に留学し,岩手日報の記者や,椎名素夫の秘書なども務めた),冒頭で紹介されたさいには,きちんと頭を下げるような挨拶ができていた。
だが,日本語での紹介であったせいか,ジョセフ・ナイともう1人(アーロン・フリードバーグ)は,司会の進行ぶりなど完全に無視した態度であった。自分の氏名を呼ばれたときでも,ただ前をみているだけであった(→日本語での司会進行とはいえ,自分の氏名が呼ばれたときぐらい,日本語風の発声であっても聞きとれるのではなかったか?)。
あとの,リチャード・アーミテージは顔を多少前へ傾げる程度には挨拶していた。ジョン・ハムレは頭をほんの少しだけ傾げただけであった。
そのあたりの映像を上に切り貼りしておいたが,彼らから感じとれる雰囲気は傲岸不遜そのものであり,「オレたちは日本を指導してやっている」立場にあるのだという気分を漂わせてもいる。このように感じとっても過剰な反応にはならない。
④「ケネディ大使,関係強化に意欲 日米対話『富士山会合』式典」(『日本経済新聞』2014年11月1日朝刊)
こちらは第1回年次大会「富士山会合」(日本経済研究センター,日本国際問題研究所共催)に関する報道である。駐日米国大使キャロライン・ケネディが登場していた。
日本経済研究センターと日本国際問題研究所は2014年10月31日夜,国際関係や安全保障に関し,日米の政府関係者や専門家らが対話する第1回年次大会「富士山会合」の開会記念レセプションを東京都内のホテルで開いた。安倍晋三首相やキャロライン・ケネディ駐日米大使らが出席した。年次大会は11月1~2日の日程で神奈川県箱根町で開催する。
レセプションであいさつした安倍首相は「富士山は裾野が広いから美しい。日米関係も裾野を広げることが重要だ」と述べ,政府関係者にくわえて学識者や企業経営者らも一堂に会し,安保や経済などを議論する富士山会合へ期待感を示した。
ケネディ大使も「日米の協力関係は比類なく広いが,当然とみなしなにもしないわけにはいかない」として,関係強化への意欲を示した。レセプションには,自民党から福田康夫元首相や麻生太郎副総理ら,民主党からは玄葉光一郎前外相らが出席した。
ジョン・F・ケネディの娘であるキャロラインが日本大使になったが,いままでに受けている日本側の印象では「アメリカが日本に使わした客寄せパンダ」の役目以上に,具体的にどのような機能を果たしているのがあやしいところであるが,この記事に書かれているような〈出番〉はあった。
⑤「〈インタビュー〉知日派が見る日本外交 米コロンビア大学教授,ジェラルド・カーティスさん」(『朝日新聞』2015年12月19日朝刊)
このインタビュー記事は,日本経済新聞ではなく朝日新聞に掲載されていた。日経のアメリカ追随路線は当然の主義なのであるが,朝日もその路線からまったく外れているのではない。ジャパン・ハンドラーズの1人であるジェラルド・カーティスのご意見を拝聴するこの記事であった。
註記)米国随一の日本政治研究者であるコロンビア大学教授のジェラルド・カーティス(Gerald Curtis)は1940年生まれ,専門は政治学,衆院選の実証研究「代議士の誕生」で一躍有名になった。2015年12月8日の最終講義を終え,47年間の教職に終止符を打ち,同年内で教授を退任する。それを機に,半世紀におよぶ日本とのつきあいを振り返りつつ,日本政治,日米関係,アジア太平洋地域の国際関係など,幅広く意見を聞いた。
出所)画像はジェラルド・カーティス,http://minnie111.blog40.fc2.com/blog-entry-1560.html
◇ 「日本の戦後の安全保障政策の進化を示すものであって,大きく逸脱するものではない。安倍晋三首相はその変化を加速したが,政策の方向を変えたわけではない」。
「しかし,安倍氏が今年4月に訪米して語った内容と,帰国後の国会答弁とでは論調にだいぶ違いがあった。米議会での演説では『日本は世界の平和と安定のため,これまで以上に責任を果たしていく』と語った。これはその2日前,ジョン・ケリー米国務長官が記者会見で述べた『日本は自国の領土だけでなく,必要に応じて米国やその他のパートナー国も防衛できるようになる』という米側の期待を,裏書きするものと受け止められた」。
「ところが安倍氏は帰国後,批判を浴びると『専守防衛が基本方針であることにいささかの変更もない』『用いうる武力の行使は,あくまで自衛の措置であって,他国の防衛を目的とする集団的自衛権の行使を認めるものでもない』などと軌道修正した」。
補注)この解釈は過敏である。安倍晋三の基本的な立場は,アメリカ側に告白しているとおりであって,反面で,日本国民に対しては平気でそれとはズレた内容を語っている。要は,舌先三寸でなんとでもいえる特技が,政治家としての唯一とりえである安倍晋三の立場に照らしてみれば,安倍流の常習的な使い分け的便法は,それじたいとして把握・識別していれば,それほど気にする必要もない点である。
「法案の審議は予想を超えて長期化したが,安全保障環境の変化に関する議論は深まらなかった。野党が時間切れを狙って審議を長引かせる作戦をとる一方,政府の方は,国際情勢の変化について一般国民が理解できるような説明をしなかったからだ。10本の法案を一本化するというやり方も,個々の法案を十分に議論することを難しくした。日本国民が不安と懸念を感じたのも無理はなかった」。
◆ かねて日本の平和主義は「奇妙だ」と指摘しています。今回さらに変質したのでしょうか。
◇ 「日本の平和主義が消滅したとは思わないが,英語の pacifism と意味が一致しているとも思わない。pacifism は本来,国家の防衛のために武力を使うことを認めないという考えだ。日本は軍事力の必要性を否定していない。そうでなければ,米国が通常兵器にとどまらず核兵器の使用まで保障する日米安保条約に,国民の広い支持が集まるわけはない」。
「要するに日本の平和主義とは,自衛隊の役割を自国領土の防衛だけに限定し,外交政策の目的達成のための手段として使うことは許さないということだ。安保法制に対する国民の反応をみると,平和主義は依然として,日本の軍事力行使に対する重要な制約要件になっていることが分かる」。
補注)カーティスのこの発言は,④ までとりあげた内容と大きく異なる説明であるが,このような発言をするアメリカ側のジャパン・ハンドラーには,かえって注意して聞く余地がある。
◇ 「明治維新以降の日本外交は,基本的に『対応型』だと思っている。みずから国際政治のアジェンダ(協議事項)を決めようとしないし,国際関係のルールを定めることもない。まして,特定のイデオロギーを広めたりはしない。むしろ,存在する世界秩序を所与のものとして受けとめ,そのなかでリスクを最小化し,利益を最大化するにはどう対応したらよいか。その分析に集中するのだ」。
「この手法は世界秩序が明確で安定している時には成功を収めることができる。明治時代の富国強兵や,第2次大戦後の米国との同盟重視がその例だ。しかし国際情勢が流動化すると窮地に陥る恐れがある。日本の外交用語では『時流に乗る』が昔からよく使われてきたが,1930年代には『時流』のみきわめを誤った。ナチスドイツと手を結び,大東亜共栄圏を構築しようとして失敗した」。
「いままた世界秩序は流動化している。安保法制は,米国との同盟を強化することで,いままで数十年にわたり日本の安全を確保してきた安全保障体制を,さらに強化しようとしている。一種の『対応型』戦略の表われだ」。
補注)前段の言及に照らして判断する。いまだに「21世紀の日本の外交は,アメリカ主体」である。つまり,この日本は再び,しかもこんどは,対米従属路線の「大東亜共栄圏を〔再び〕構築しようとして失敗し」そうな道に,迷いこんでいるといえそうである。もっとも,アメリカと手を組むこと,その手先に日本国がなることが間違いではないと,カーティスはいいたいのか? いずれにせよ,かなり身勝手な理屈が展示されている。
◆ 安倍首相は「対応型」から脱却しようとしているのでは。
◇ 「東アジアで指導的な役割をえようとする願望ものぞく。近隣諸国との緊張を悪化させずに達成できるかどうかが課題だ」。
◆ その日中関係の現状は。
◇ 「1年前に比べれば改善している。安倍首相が,中国や韓国の神経を逆なでするような発言や,靖国参拝を控えているのはその理由のひとつだ。中国の指導層が,いき過ぎた反日キャンペーンは日本からの直接投資の急減や対中意識の悪化,さらに日米同盟の強化を招くと気づいたこともある」。
「しかし,今〔2015〕年に入ってから明らかになっている関係改善の流れは,あくまで戦術的な決定の結果に過ぎない。今後,さらに国力を強め野心も深める中国と,良好な関係をどう保っていくか。日本が直面する長期的,戦略的な課題は変わらない」。
◆ 韓国との関係は。
◇ 「韓国が日本の誠意の欠如を批判するのに対し,日本は韓国が関係改善に向けて求めるものがはっきりしないと不満を抱く。その違いを克服するには感情の要素が最大の障害となっている。しかし,私は日韓関係が近いうちに好転するのではないかと期待している」。
「朴 槿恵(パク・クネ)大統領と安倍首相は関係悪化を食い止めることの重要性を理解しているからだ。2人が慰安婦問題を解決する政治的勇気を示せば,歴史問題をめぐる感情的な議論ではなく,国益に対する合理的な配慮が今後の両国関係を導いていくようになると信じている」。
◆ 東シナ海や南シナ海での行動をみると,中国は覇権的になっているともいえます。対応は。
◇ 「中国が東アジアで覇権の確立をめざしていると判断するのは,まだ早い。経済的影響力や政治的重みに応じたかたちで,国際関係で指導的役割を果たしたいと思うのは当然だ。中国に覇権を求めないよう思いとどまらせるには,米国の強固なプレゼンス(存在)を示すとともに,中国に国際システムの管理でより大きな役割を与えるという両輪の戦略が必要だ。その意味で,アジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を拒否した日米の反応は,目先のことにとらわれた誤りであった」。
◆-3 日米関係の現状は。
◇「非常に良好だと思う。同盟が強固だということにとどまらず,両国関係は相当な深さと広さをもっている。米国民の間で日本は人気が高く尊敬もされている。大学生の間でも関心は高い。高校でアニメや漫画,コスプレといった日本のポップカルチャーに魅了され,コロンビア大学に来て,日本の政治,経済,社会,文学などの授業をとる学生が多数いる」。
補注)日米関係が基本的に安保関連法体制として問題になっているなかで,このように身近な話題を全面に打ち出すのは違和感がある。表層での意見である。
◆ しかし,沖縄の米軍普天間飛行場移設問題は,返還合意から20年近くたつのに解決しません。
◇ 「そもそも県内に新たな基地をつくろうとしたのが間違いだった。米国政府内で国防総省に対し,嘉手納空軍基地内への移設を強く求めるか,日本政府が,反発を覚悟のうえで他県への移設を進めればよかったと思う」。
◆ 今後の進め方は。
◇ 「日米ではなく,日本政府と沖縄の問題だ。安倍首相は最終的に勝つかもしれないが,沖縄県民の間に強い反発を残す。沖縄の基地問題は時限爆弾のようなものだ」。
◆-4 米国の力が相対的に低下する一方,中国の台頭は続くとの見方をおもちです。米国はリーダーシップをどう維持するのですか。
◇ 「米国の東アジア戦略は力の均衡を維持することがその中核だ。しかし均衡と封じこめは異なる。中国を封じこめるのではなく,既存の国際システムのなかでより大きな役割を担い,ルールや規範を尊重するよう促すべきだ。それが日米中3国の国益にも資する」。
◆ 中国は従いますか。
◇ 「それがもっとも重大で,かつまだ答えの出ていない問題だ。もし中国が従わず,国際秩序に挑戦すれば,周辺国は米国との安全保障関係強化に傾斜していく。南シナ海での中国の威嚇的,攻撃的行動に対する東南アジア諸国の反応として,すでにみられることだ」。
補注)日本はすでに中国の海洋進出によって圧力を受けつづけている東南アジア諸国に対して,軍事面の意味あいもある支援をおこないはじめている。
◆ そもそも米国は優位を維持できるのでしょうか。
◇ 「米国の軍事力は今後とも他のどの国より強いに違いないが,米ソ2極構造の世界秩序のもとで,米国が圧倒的な優位性を誇った時代は終わった。これから米国は,より不安定で複雑な多極構造のアジア,そして世界で指導的役割を果たさなければならない。われわれは潜在的な危険を等閑視してはならない。だから,日本や地域諸国は,『時流』への対応に,慎重を期さなければならないのだ」。
補注)結局,アメリカは,その「より不安定で複雑な多極構造のアジア」のなかでこそ,日本が担うべき役割を強調したいのであるが,このように遠回しでの表現しか,直接には口に出していない。その手始めの段階である日米軍事同盟関係の「日常的な深化現象」は,着々と進展させられ根づいているが……。

◆-5 取材を終えて
「時流に乗る」ことを旨とする日本外交は,国際情勢が流動化すると危うい。これが,カーティス氏の指摘だ。世界はいままさに揺れ動いている。「時流」を正しく読み切れるか。核心は中国のみきわめだ。日本政治の専門家ではあるが,インタビューは中国に収斂していった。日本の将来に一抹の不安を感じつつの引退とみえた。(編集委員・加藤洋一)
--アメリカが日本に対して軍事面でどのような貢献を「させたいか」は,いまでは一目瞭然の事実である。その動員体制のために必要である,米日軍事同盟関係における上下関係的な日米間の政治秩序も,着実に形成されつつある。
いままでは「時流に乗る旨」の日本外交を,端的にいえばこのまま日本に強要してきたアメリカの立場・利害が,最近は打って変わり「時流を正しく読め」などと,日本に対して強要する主張に映っている。けれども,そのどちらであっても,アメリカから日本に対して向けられる〈政治的な圧力〉の介在だけは,鮮明に共通している。
日本国首相の安倍晋三は「戦後レジームからの脱却」を正式に唱えていながら,このレジームのなかに,よりいっそう深くはめこまれていく対米従属路線を走っている。結局,しっかりとテイネイにアメリカ側の要望に応えているのが,安倍晋三の外交である。
盲目的な愛国心を無条件に強調したがるこの首相ではあるが,日本国の指導者としては,露骨に対米追随の外交・内政しか指揮できていない。その点でいえば基本から完全に自家撞着の政治家である。積極的平和主義は,けっして国民・市民・住民・庶民たちのためのものではなく,アメリカさんのための〈平和的戦争主義〉なのである。
積極的平和主義を貫徹するには,積極的な戦争主義を不可欠とする。この必然的な因果実在は,世界の警察官を自負してきたアメリカ合衆国による帝国主義的な他国干渉や,このために在日米軍基地が果たしてきた歴史を回顧するまでもなく,自明に過ぎる事実である。
安保関連法の成立以後のこの国は,防衛省自衛隊3軍を,アメリカへの奉仕者(下請け軍隊)とみなして,より高度・強度に運用させられざるをえなくなる。
⑥ アメリカの政治体制にとって『困った君』,共和党の大統領選候補トランプ
本日の記事である。つぎに「トランプ氏,海外駐留米軍『意義ない』日韓に負担増要求 米紙に語る」(『日本経済新聞』2016年3月23日朝刊7面「国際2」) を引用する。
--米大統領選の共和党候補指名を争う不動産王ドナルド・トランプ氏(69歳)は,3月21日の米紙ワシントン・ポストの外交政策に関するインタビューで,日本や韓国など海外に駐留する米軍が米国にとって意義ある存在かどうかを問われ「個人的にはそうは思わない」と述べた。駐留米軍の費用負担について「よりよい取引をする」と表明し,駐留先の各国に負担増を求める考えを明らかにした。

トランプ氏は「米国は力強い豊かな国だったが,いまは貧しい。債務超過国だ」と指摘。日韓やドイツ,サウジアラビアなど米軍の駐留国に対して「絶えず艦船や航空機を送り戦争ゲームをしているのに,費用のほんのわずかしか支払われていない」と不満を述べた。
出所)左側画像資料は「米大統領選:共和党 主役はトランプ氏 人気,不動」『毎日新聞』2015年12月16日朝刊。
「北大西洋条約機構(NATO)には大金がかかっている」とも語り,「これ以上の余裕はない」と米国の関与を引き下げる方針を示唆。ウクライナ危機についてはドイツなど近隣諸国がロシアと対峙すべきだと主張した。
過激派組織「イスラム国」(IS)に対しては「なんらかのかたちで徹底的にたたく」とする一方で「米軍は使いたくない」と話した。核兵器の使用については否定した。「信じられないほどの野心をもっている」と評する中国を「米から多くの金を奪い,自国を立て直した」と批判。過去には中国からの輸入品に45%の高関税をかける政策も口にしている。
ワシントン・ポスト紙はトランプ氏の外交政策を「海外の国づくりよりも米国の再構築に関心がある」としたうえで「干渉主義者というより孤立主義者だ」と論評した。またトランプ氏は自身の外交顧問団として,ジェフ・セッションズ上院議員を筆頭に5人の安全保障・エネルギー専門家の名を挙げた。トランプ氏が顧問団の存在を明らかにしたのは初めて。
トランプ氏は3月21日,ユダヤ系ロビー団体の米イスラエル広報委員会(AIPAC)の総会で演説し,自身が大統領に就任すれば,オバマ大統領が推進したイラン核合意を破棄すると表明した。これに対して,民主党候補指名レースでトップを走るヒラリー・クリントン前米国務長官(68歳)は「月曜日に中立といい,火曜日にイスラエルを支持する人が,水曜になんというだろうか」とトランプ氏の発言のぶれを批判した。
--トランプは素人目にみても「政治・外交の素人」である点が理解できる。さて,ジャパン・ハンドラーズの面々,このトランプをどう観ているか? 『日本経済新聞』2016年3月11日朝刊には,こういう報道がなされていた。
リチャード・アーミテージ元米国務副長官は3月11月の米大統領選の共和党候補に,不動産王ドナルド・トランプ氏(69歳)が指名された場合,本選では民主党候補の指名の可能性が高いヒラリー・クリントン前米国務長官(68歳)に投票する考えを示した。日本経済新聞との会見で明らかにした。
補注)この記事の内容はこのように,「日本経済新聞との会見で明らかにした」アーミテージの個人的な見解である。しかし,その報道の仕方は,忠実な代弁者である新聞社の立場からのもののようにも読める。『日本経済新聞』は彼の意見を,つぎのように紹介していた。
アーミテージにとってみれば,それこそ〈とんでもない奴〉が共和党の大統領候補に選ばれそうな気運である。自分たちがジャパン・ハンドラーズとして日本を操作してきている現状にも,悪い影響がでそうになる。彼らは,トランプ大統領の出現を歓迎できない様子である。彼にとってトランプは攪乱分子である。
他方で『朝日新聞』2016年3月9日朝刊は,見出しに「『病根は日本の対中認識』中国外相,安倍政権に不信感」と付けた記事を報道していた。米中の力比べのあいだで安倍晋三君は,右往左往させられている。
しかも彼はもっぱら,アメリカさんの顔色を気にした外交しかできない。ある意味でいえば,気の毒といえば気の毒な立場である。だが,要は「力量不足」が顕著であるこの首相に,もうこれ以上,日本国の内政・外交は任せられない。
選手を交代させる時機を逸してはいけない。
◆ ヒラリー・クリントン前米国務長官が大統領になった場合,対日政策をどうみますか。
◇ 「まず誰が大統領になるかは分からないという前提で質問に答えたい。キャンベル前国務次官補やスタインバーグ元国務副長官が再び政権に戻るだろう。ベーダー前大統領補佐官(国家安全保障会議・上級アジア部長)は戻らないかもしれないが,上級アドバイザーになる可能性はある」。
「シャーマン前国務次官,バーンズ前国務副長官や,アジアの専門家ではないが,フロノイ元国防次官も政権に戻ることはありうる。いいたいのは,これらの人びとはクリントン氏が大統領になれば政権で要職につく公算が大きいということだ」。
◆ 夫のビル・クリントン元大統領は親中派との見方もあります。
◇ 「それは過度に単純化した見方で,親中派ではないと思う。ビル氏もヒラリー氏も地政学的な文脈で中国をとらえようとしている点で類似している。台頭する中国と建設的な関係を築くことが重要だと考えていることだ。日本が心配すべきようなことではない」。
◆ ビル氏には大統領在任中の1998年に中国に9日間滞在したにもかかわらず,日本に寄らずに米国に戻った「ジャパン・パッシング」(日本無視)の印象があります。
◇ 「その行動が親中,反日を反映したものとは考えていない。当時,クリントン政権の国防副長官だったので,そのときのことは覚えている。私たちは大統領に日本に立ち寄るべきだと進言した。寄らなかったのは,中国との関係に希望を抱いていたからではない。(日本との関係に)かなり楽観的だったのだろう」。
◆ ヒラリー氏は環太平洋経済連携協定(TPP)に「現時点で不支持」と表明しました。
◇ 「政治家が従来の態度を翻すのは,かなり難しいことだ。私の個人的な経験でもほとんどみたことがない。私はヒラリー氏のTPPへの態度にはまったく失望した。間違いだ。TPPの巨大な地政学的重要性を反映した態度ではない」。
2)トランプ氏「日米安保をしらないのでは」
◆ ドナルド・トランプ氏の対日観は,1980年代の日米貿易摩擦が続いているような認識です。
◇ 「私はトランプ氏という候補者には本当に当惑させられている。彼の主張は理屈抜きの感情であり,政策ではない。日本との関係において話していることはまったくの時代遅れだ。私はまだ個人的には米国の世論が次期大統領についてよい考えが浮かぶと信じている」。

出所)http://blog.livedoor.jp/zzcj/archives/51912672.html
◆ 日本をたたけば票が増えると思っているのでしょうか。
◇ 「米国の世論は日本に怒っていない。中国にもいくつかの点で懸念はあるが,激しい怒りはない。日本には懸念もない。トランプ氏が票を獲得するためにいっているとも思えない」。
註記)このハムレのいいぶんは意味不詳。トランプの檄に反応する選挙民たちの感性を,まったく理解するつもりのないハムレの理解と思われる。
◆ トランプ氏は日米安全保障条約も不公平だと批判しています。
◇ 「彼は日米安保についてしらないのではないか。思いついた言葉をいっているのだろう」。
補注)たしかにトランプは日米安保の中身・実際をほとんどしらない様子に映る。かといって,アメリカの一般国民・市民次元のその理解が,トランプよりもすこしでもより高い水準にあるのかといえば,とうていそうは思えない。ここには,ハムレの理解では「理解しづらい問題」がありそうである。
◆ テッド・クルーズ上院議員やマルコ・ルビオ上院議員の対日政策をどうみていますか。
◇ 「クルーズ氏とは話したことがないので,分からない。ルビオ氏も私のスタッフは働いた経験があるが,私は会ったことがない」。
補注)この文章の意味じたいが分かりにくい。「ルビオ氏」と「私のスタッフは働いた経験がある」という文句の意味が読みとれない。要は,知己の間柄ではないということらしいが,日本語としてどう,前後関係を理解したらよいのか迷う表現(「て・に・を・は」の)である。
◆ ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事は父や兄の政権時の人脈を引きついでいるといわれています。
◇ 「ジェブ・ブッシュ氏は思慮深いし,いい大統領になるだろう。彼は自立した人間だ。兄や父と同じ道をたどっているわけではない」。
補注)ジェブ・ブッシュは,パパの泣き虫・ブッシュやあの軽薄な兄貴・ブッシュとは異なり,より〈賢い〉という評価なのか? ジョン・ハムレのこれらのものいいは,いちいち尊大に感じられ,「この人物は何様か」という印象を受ける。
◆ ブッシュ氏が大統領になったら,知日派のマイケル・グリーンCSIS上級副所長は政権に入る可能性があるのではないですか。
◇ 「誰が大統領になってもグリーン氏を起用したがるだろうが,私はそれを望んでいない。彼にはまだ私のために働いてほしい」。
(聞き手はワシントン=吉野直也)
②「ジョセフ・ナイ氏『米,岩礁に主権認めず』」(『日本経済新聞』2015年10月29日朝刊)
中国が「領海」と主張する南シナ海の人工島12カイリ(約22キロメートル)内の海域で米海軍が駆逐艦による哨戒活動に乗り出し,米中関係は緊迫の度合いを強めている。米国の意図,思惑,狙いはなにか。

2016年の米大統領選有力候補,ヒラリー・クリントン前国務長官の選対本部でアジア委員会の共同議長に就任したジョセフ・ナイ米ハーバード大学特別功労教授に聞いた。
註記)Joseph Samuel Nye, Jr. は,1958年に米プリンストン大学に卒業後,米ハーバード大学で博士号を取得,国務次官補,国家情報会議(NIC)議長などを経て,クリントン政権で,国防次官補に就任,日米同盟の再強化などに尽力した
◆ 南シナ海で米中両国による対立の度合いが強まっています。
◇ 「先にワシントンでおこなわれた米中首脳会談で,習近平国家主席はサイバー問題について従来の立場を百八十度転換したが,南シナ海をめぐる問題についてはなんの進展もえられなかった。だから,われわれは論争の対象となっている(人工の)島々の近辺で,航行の自由が確保されているかどうかを確認する作業に着手した」。
◆ 米国はどのような立場ですか。
◇ 「われわれは岩礁などに主権の存在は認めず,公海は海洋法にのっとって治められるべきだという見解,立場をとっている。海洋法は岩礁や砂を移動させることを認めておらず,それを領土,領海とみなすことも,排他的経済圏と呼ぶことも禁じている」。
◆ 中国がすべての人工島を完成させれば,南シナ海における米国の制海権は低下し,この地域における米中間のパワー・バランスが崩れるという見方もあります。
◇ 「そうは思わない。実際,人工島はとても脆弱で,『動けない空母』のようなものだとする声も多い。固定された攻撃目標であり,沈めるのは容易だ」。
◆ 具体的な方策は。
◇ 「ある米軍OBの友人によれば,たとえばフィリピンに弾道ロケット施設を新設し,狙いを定めることができる。それによって,(人工島を)軍事的には完全に無意味なものにすることは可能だ」。
「われわれが航行の自由を確かなものにすることができれば,(人工島が)情勢を大きく変える『ゲーム・チェンジャー』にはなりえない。そのために(人工島の)12カイリ以内で艦船を航行させ,上空に航空機を送りこんでいる。こうした行動は今後,数週間は続くことになるだろう」。
◆ 2001年に海南島で発生した米中両国軍機による接触事故のような危機は招きませんか。
◇ 「たしかに,EP3(偵察機)事件のような問題が起こる可能性はつねにある。ただ,それは首都(政府)の決断にかかっているともいえる。EP3事件もきっかけは,1人の中国人パイロットが(米側に)タフであるとみせつけようとしたことに過ぎなかった。問題は北京(中国政府)が事態をエスカレートさせたいと思っているかどうかだ」。
「中国ではいま,経済成長が減速しつつあり,そうした中で米国との紛争はもっとも望んでいないはずだ。米国との紛争に足を踏み入れるなら,習氏は相当なリスクに手を染めることになる」。
◆ 習指導部による人民解放軍の統制に疑問符も付きはじめています。
◇ 「中国には政争があり,習近 平はつねに自身の政治的統制力を心配しなければならない。反腐敗のキャンペーンは政敵を追いこむ武器であり,実際,多くの人間が『つぎは自分では』とおびえて

(聞き手は編集委員 春原 剛)
補注)春原 剛(右側画像)は,ジャパン・ハンドラーズに対する日本経済新聞の接待掛り,みたいな記者である。
出所)画像は,http://www.jcie.or.jp/japan/gt/murasememorial/
③「元米国務副長官『日米同盟,強化を』富士山会合閉幕,合意文書を採択」(『日本経済新聞』2015年11月24日朝刊)
日米の政府関係者や専門家らが参加して国際問題を協議する第2回年次大会「富士山会合」(日本経済研究センター,日本国際問題研究所共催)が2015年11月23日,合意文書を採択し閉幕した。日米双方は「日本が新しい安全保障法制の下で前向きで,より建設的な役割を果たす」などの認識を共有。アジア地域の安定のため,日米同盟を一層緊密化することなどで一致した。
リチャード・アーミテージ元米国務副長官ら会合の参加者が同日,東京都内のホテルで記者会見した。合意文書では米国によるアジア・太平洋地域での強固な関与を歓迎するとともに,関係国に対し「環太平洋経済連携協定(TPP)の迅速な批准」も促した。
アーミテージ氏は日本の安保法制について「米軍と自衛隊が連携するさい,すべての指揮レベルでスムーズな意思疎通ができるなど『切れ目のない同盟関係』の強化が重要だ」と主張した。その上で「日米同盟は防衛に限らず,外交や経済,エネルギー問題など幅広い分野を含む」と語った。
補注)ここで日米両軍間の「『切れ目のない同盟関係』の強化」が強調されているが,この「切れ目のない」という平面的な表現は「日米同盟は防衛に限らず」という〈非限定性の有無〉にかかわらず,実態=中身としては立体的な軍事面に関する内容を意味すると受けとるほかない。
抽象的ないい方になるほかないが,その「切れ目なく」「意思疎通ができる」「米日両軍の同盟関係」というものの実体は,いままでの日米安保条約体制のなかで,この米日両軍がいちおうは他国同士の軍隊編制としてであっても,どれほど親密な間柄をもって存在してきたかを,現実的に思い浮かべての話題としておく必要がある。
会合の共同議長を務めた米戦略国際問題研究所(CSIS)のジョン・ハムレ所長は「オバマ政権は米国史上初めて,欧州ではなくアジアを外交の最重要地域と位置づけている」と指摘。日本も安保法制の制定をしたことで「日米関係は歴史的に重要な転換点にある」と述べた。
補注)これは,中国が経済力を付け,軍事力も強めてきた動勢を受けての話題である。アメリカによるこれまでアジア方面の外交〔とはいっても軍事が基盤にある〕は,日本にも,ほどよく分担させたい魂胆を隠したことはない。この点は「日米関係は歴史的に重要な転換点にある」と述べるところにも,より明らかに透視できる。かといって,アメリカが日本が出過ぎたマネをすることは欲していないゆえ,安倍晋三という日本国首相の使い勝手を事前に推し量っておくためのアドバルーン:観測気球が揚げられている。
日本側はアメリカの軍事的要請にかなった自衛隊の組織編成面に関する対応を検討してもいる。『朝日新聞』2016年3月2日朝刊は,見出し「統合司令部の創設検討 河野統幕長」という記事は,こう報道していた。
自衛隊制服組トップの河野克俊・統合幕僚長は〔2016年3月〕1日,東京都内で講演し,陸海空3自衛隊に分かれている部隊運用を一元的に指揮する「統合司令部」の創設を検討することを明らかにした。陸海空の運用機能をまとめた上級司令部を設けて,有事や大規模災害への対応能力を高めるのが狙いという。合意文書には「すべての国は国際法を尊重・順守して平和的に問題解決する義務を負う」ことも盛りこんだ。南シナ海で中国が領有権を主張して進める岩礁の埋め立てなどの活動に対し「公海上の航行の自由」を定めた「国連海洋法条約」などにもとづき日米が協調して国際法を順守するよう求めていく考えを示した。
註記)デジタル版では,http://digital.asahi.com/articles/DA3S12236336.html 参照。
出所)https://shanti-phula.net/ja/social/blog/?p=97057 これは,2015/09/05 ころに流れた画像である。統合幕僚長の河野克俊とアーミテージが写っている。
富士山会合は21日から長野県軽井沢町で始まり,3日間にわたり日米関係や女性の社会進出など幅広い議題について討論をおこなった。来〔2016〕年6月に第3回大会を開く予定。
--以上の記事に関しては,若干ながらでも奇妙に感じることがある。それは,アメリカ合衆国の〈元〉だとか〈前〉だとかの肩書きをかかげていながら,あたかも現職であるかのように,つまり,その元あるいは前のU.S.A. の政府関係者でありながらも,いま現職である立場から発言をしているかのような存在である「彼らがいる」ことである。
要は,知日派という名のジャパン・ハンドラーズであるという人物たちが,日本を高所・大所から意見し,指導しているらしい様子が,それもかなり厚かましく,かつ相当に図々しい態度を,ありありとひけらかせながらの言動なのである。
すでにその氏名が出ていたが日本経済新聞の編集委員春原 剛のような人物であれば,ジャパン・ハンドラーズとは相性がよく,なんでもかんでも喜んで聞きいれられる度量をもちあわせているのかもしれない。だが,筆者のようにものごとを批判的見地を忘れずに観察したい立場にとっては,摩訶不思議な様相が目前に繰り広げられている。
たとえば,昨日〔2016年3月22日〕の本ブログ記述中で参照した『「ジャパン・ハンドラーズ」が「日米安全保障研究会」(笹川平和財団主催)に勢揃い 2013.6.24』(https://www.youtube.com/watch?v=iHHC5Ia3rpA&feature=youtube)に登場する人物たち〔本日の記述でとりあげている者たちでもある〕の,壇上においてみせる態度は,いかにも鷹揚であり,そして傲岸な雰囲気を上塗り的に漂わせていた。
なかでは,昨日とりあげたマイケル・グリーンのように日本滞在が長い体験をもつ人物は(フルブライト奨学金給付留学生となり東京大学に留学し,岩手日報の記者や,椎名素夫の秘書なども務めた),冒頭で紹介されたさいには,きちんと頭を下げるような挨拶ができていた。
だが,日本語での紹介であったせいか,ジョセフ・ナイともう1人(アーロン・フリードバーグ)は,司会の進行ぶりなど完全に無視した態度であった。自分の氏名を呼ばれたときでも,ただ前をみているだけであった(→日本語での司会進行とはいえ,自分の氏名が呼ばれたときぐらい,日本語風の発声であっても聞きとれるのではなかったか?)。
出所)左側がマイケル・グリーン,右側がジョセフ・ナイ。
https://www.youtube.com/watch?v=iHHC5Ia3rpA&feature=youtube
https://www.youtube.com/watch?v=iHHC5Ia3rpA&feature=youtube
あとの,リチャード・アーミテージは顔を多少前へ傾げる程度には挨拶していた。ジョン・ハムレは頭をほんの少しだけ傾げただけであった。
そのあたりの映像を上に切り貼りしておいたが,彼らから感じとれる雰囲気は傲岸不遜そのものであり,「オレたちは日本を指導してやっている」立場にあるのだという気分を漂わせてもいる。このように感じとっても過剰な反応にはならない。
④「ケネディ大使,関係強化に意欲 日米対話『富士山会合』式典」(『日本経済新聞』2014年11月1日朝刊)
こちらは第1回年次大会「富士山会合」(日本経済研究センター,日本国際問題研究所共催)に関する報道である。駐日米国大使キャロライン・ケネディが登場していた。
出所)http://matome.naver.jp/odai/2139941588959630101
なお,引用の記事とは直接関係のない画像である。
なお,引用の記事とは直接関係のない画像である。
日本経済研究センターと日本国際問題研究所は2014年10月31日夜,国際関係や安全保障に関し,日米の政府関係者や専門家らが対話する第1回年次大会「富士山会合」の開会記念レセプションを東京都内のホテルで開いた。安倍晋三首相やキャロライン・ケネディ駐日米大使らが出席した。年次大会は11月1~2日の日程で神奈川県箱根町で開催する。
レセプションであいさつした安倍首相は「富士山は裾野が広いから美しい。日米関係も裾野を広げることが重要だ」と述べ,政府関係者にくわえて学識者や企業経営者らも一堂に会し,安保や経済などを議論する富士山会合へ期待感を示した。
ケネディ大使も「日米の協力関係は比類なく広いが,当然とみなしなにもしないわけにはいかない」として,関係強化への意欲を示した。レセプションには,自民党から福田康夫元首相や麻生太郎副総理ら,民主党からは玄葉光一郎前外相らが出席した。
ジョン・F・ケネディの娘であるキャロラインが日本大使になったが,いままでに受けている日本側の印象では「アメリカが日本に使わした客寄せパンダ」の役目以上に,具体的にどのような機能を果たしているのがあやしいところであるが,この記事に書かれているような〈出番〉はあった。
⑤「〈インタビュー〉知日派が見る日本外交 米コロンビア大学教授,ジェラルド・カーティスさん」(『朝日新聞』2015年12月19日朝刊)
このインタビュー記事は,日本経済新聞ではなく朝日新聞に掲載されていた。日経のアメリカ追随路線は当然の主義なのであるが,朝日もその路線からまったく外れているのではない。ジャパン・ハンドラーズの1人であるジェラルド・カーティスのご意見を拝聴するこの記事であった。

出所)画像はジェラルド・カーティス,http://minnie111.blog40.fc2.com/blog-entry-1560.html
右上の画像を借りたブログの記述中には,こういう段落があった。--「ジェラルド・カーティス氏が書いた」「記事を読むと,これはますます政府,官僚からかなりの報酬をもらっている日本政府御用学者というか,ただ単に日本語が達者な米国の回し者に違いないと思わずにはいられな」い。◆-1 〔2015年〕9月に成立した日本の安全保障法制の評価は。
註記)http://minnie111.blog40.fc2.com/blog-entry-1560.html
◇ 「日本の戦後の安全保障政策の進化を示すものであって,大きく逸脱するものではない。安倍晋三首相はその変化を加速したが,政策の方向を変えたわけではない」。
「しかし,安倍氏が今年4月に訪米して語った内容と,帰国後の国会答弁とでは論調にだいぶ違いがあった。米議会での演説では『日本は世界の平和と安定のため,これまで以上に責任を果たしていく』と語った。これはその2日前,ジョン・ケリー米国務長官が記者会見で述べた『日本は自国の領土だけでなく,必要に応じて米国やその他のパートナー国も防衛できるようになる』という米側の期待を,裏書きするものと受け止められた」。
「ところが安倍氏は帰国後,批判を浴びると『専守防衛が基本方針であることにいささかの変更もない』『用いうる武力の行使は,あくまで自衛の措置であって,他国の防衛を目的とする集団的自衛権の行使を認めるものでもない』などと軌道修正した」。
補注)この解釈は過敏である。安倍晋三の基本的な立場は,アメリカ側に告白しているとおりであって,反面で,日本国民に対しては平気でそれとはズレた内容を語っている。要は,舌先三寸でなんとでもいえる特技が,政治家としての唯一とりえである安倍晋三の立場に照らしてみれば,安倍流の常習的な使い分け的便法は,それじたいとして把握・識別していれば,それほど気にする必要もない点である。
「法案の審議は予想を超えて長期化したが,安全保障環境の変化に関する議論は深まらなかった。野党が時間切れを狙って審議を長引かせる作戦をとる一方,政府の方は,国際情勢の変化について一般国民が理解できるような説明をしなかったからだ。10本の法案を一本化するというやり方も,個々の法案を十分に議論することを難しくした。日本国民が不安と懸念を感じたのも無理はなかった」。
◆ かねて日本の平和主義は「奇妙だ」と指摘しています。今回さらに変質したのでしょうか。
◇ 「日本の平和主義が消滅したとは思わないが,英語の pacifism と意味が一致しているとも思わない。pacifism は本来,国家の防衛のために武力を使うことを認めないという考えだ。日本は軍事力の必要性を否定していない。そうでなければ,米国が通常兵器にとどまらず核兵器の使用まで保障する日米安保条約に,国民の広い支持が集まるわけはない」。
「要するに日本の平和主義とは,自衛隊の役割を自国領土の防衛だけに限定し,外交政策の目的達成のための手段として使うことは許さないということだ。安保法制に対する国民の反応をみると,平和主義は依然として,日本の軍事力行使に対する重要な制約要件になっていることが分かる」。
補注)カーティスのこの発言は,④ までとりあげた内容と大きく異なる説明であるが,このような発言をするアメリカ側のジャパン・ハンドラーには,かえって注意して聞く余地がある。
古村治彦(ふるむら・はるひこ)は,ジェラルド・L・カーティス(Gerald Curtis)をこう解説している。「米国の国益のために日本を管理するアメリカ人の日本専門家たちであるジャパン・ハンドラーズのなかでも重鎮としてしられている」。◆-2 日本の外交政策は「対応型」とも述べています。
註記)古村治彦「日本政治研究の学者たち:チャルマーズ・ジョンソンとジェラルド・カーティス (2) 」『副島隆彦の論文教室』「0114」論文,2010年11月15日。
◇ 「明治維新以降の日本外交は,基本的に『対応型』だと思っている。みずから国際政治のアジェンダ(協議事項)を決めようとしないし,国際関係のルールを定めることもない。まして,特定のイデオロギーを広めたりはしない。むしろ,存在する世界秩序を所与のものとして受けとめ,そのなかでリスクを最小化し,利益を最大化するにはどう対応したらよいか。その分析に集中するのだ」。
「この手法は世界秩序が明確で安定している時には成功を収めることができる。明治時代の富国強兵や,第2次大戦後の米国との同盟重視がその例だ。しかし国際情勢が流動化すると窮地に陥る恐れがある。日本の外交用語では『時流に乗る』が昔からよく使われてきたが,1930年代には『時流』のみきわめを誤った。ナチスドイツと手を結び,大東亜共栄圏を構築しようとして失敗した」。
「いままた世界秩序は流動化している。安保法制は,米国との同盟を強化することで,いままで数十年にわたり日本の安全を確保してきた安全保障体制を,さらに強化しようとしている。一種の『対応型』戦略の表われだ」。
補注)前段の言及に照らして判断する。いまだに「21世紀の日本の外交は,アメリカ主体」である。つまり,この日本は再び,しかもこんどは,対米従属路線の「大東亜共栄圏を〔再び〕構築しようとして失敗し」そうな道に,迷いこんでいるといえそうである。もっとも,アメリカと手を組むこと,その手先に日本国がなることが間違いではないと,カーティスはいいたいのか? いずれにせよ,かなり身勝手な理屈が展示されている。
◆ 安倍首相は「対応型」から脱却しようとしているのでは。
◇ 「東アジアで指導的な役割をえようとする願望ものぞく。近隣諸国との緊張を悪化させずに達成できるかどうかが課題だ」。
◆ その日中関係の現状は。
◇ 「1年前に比べれば改善している。安倍首相が,中国や韓国の神経を逆なでするような発言や,靖国参拝を控えているのはその理由のひとつだ。中国の指導層が,いき過ぎた反日キャンペーンは日本からの直接投資の急減や対中意識の悪化,さらに日米同盟の強化を招くと気づいたこともある」。
「しかし,今〔2015〕年に入ってから明らかになっている関係改善の流れは,あくまで戦術的な決定の結果に過ぎない。今後,さらに国力を強め野心も深める中国と,良好な関係をどう保っていくか。日本が直面する長期的,戦略的な課題は変わらない」。
◆ 韓国との関係は。
◇ 「韓国が日本の誠意の欠如を批判するのに対し,日本は韓国が関係改善に向けて求めるものがはっきりしないと不満を抱く。その違いを克服するには感情の要素が最大の障害となっている。しかし,私は日韓関係が近いうちに好転するのではないかと期待している」。
「朴 槿恵(パク・クネ)大統領と安倍首相は関係悪化を食い止めることの重要性を理解しているからだ。2人が慰安婦問題を解決する政治的勇気を示せば,歴史問題をめぐる感情的な議論ではなく,国益に対する合理的な配慮が今後の両国関係を導いていくようになると信じている」。
◆ 東シナ海や南シナ海での行動をみると,中国は覇権的になっているともいえます。対応は。
◇ 「中国が東アジアで覇権の確立をめざしていると判断するのは,まだ早い。経済的影響力や政治的重みに応じたかたちで,国際関係で指導的役割を果たしたいと思うのは当然だ。中国に覇権を求めないよう思いとどまらせるには,米国の強固なプレゼンス(存在)を示すとともに,中国に国際システムの管理でより大きな役割を与えるという両輪の戦略が必要だ。その意味で,アジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を拒否した日米の反応は,目先のことにとらわれた誤りであった」。
◆-3 日米関係の現状は。
◇「非常に良好だと思う。同盟が強固だということにとどまらず,両国関係は相当な深さと広さをもっている。米国民の間で日本は人気が高く尊敬もされている。大学生の間でも関心は高い。高校でアニメや漫画,コスプレといった日本のポップカルチャーに魅了され,コロンビア大学に来て,日本の政治,経済,社会,文学などの授業をとる学生が多数いる」。
補注)日米関係が基本的に安保関連法体制として問題になっているなかで,このように身近な話題を全面に打ち出すのは違和感がある。表層での意見である。
◆ しかし,沖縄の米軍普天間飛行場移設問題は,返還合意から20年近くたつのに解決しません。
◇ 「そもそも県内に新たな基地をつくろうとしたのが間違いだった。米国政府内で国防総省に対し,嘉手納空軍基地内への移設を強く求めるか,日本政府が,反発を覚悟のうえで他県への移設を進めればよかったと思う」。
◆ 今後の進め方は。
◇ 「日米ではなく,日本政府と沖縄の問題だ。安倍首相は最終的に勝つかもしれないが,沖縄県民の間に強い反発を残す。沖縄の基地問題は時限爆弾のようなものだ」。
◆-4 米国の力が相対的に低下する一方,中国の台頭は続くとの見方をおもちです。米国はリーダーシップをどう維持するのですか。
◇ 「米国の東アジア戦略は力の均衡を維持することがその中核だ。しかし均衡と封じこめは異なる。中国を封じこめるのではなく,既存の国際システムのなかでより大きな役割を担い,ルールや規範を尊重するよう促すべきだ。それが日米中3国の国益にも資する」。
◆ 中国は従いますか。
◇ 「それがもっとも重大で,かつまだ答えの出ていない問題だ。もし中国が従わず,国際秩序に挑戦すれば,周辺国は米国との安全保障関係強化に傾斜していく。南シナ海での中国の威嚇的,攻撃的行動に対する東南アジア諸国の反応として,すでにみられることだ」。
補注)日本はすでに中国の海洋進出によって圧力を受けつづけている東南アジア諸国に対して,軍事面の意味あいもある支援をおこないはじめている。
◆ そもそも米国は優位を維持できるのでしょうか。
◇ 「米国の軍事力は今後とも他のどの国より強いに違いないが,米ソ2極構造の世界秩序のもとで,米国が圧倒的な優位性を誇った時代は終わった。これから米国は,より不安定で複雑な多極構造のアジア,そして世界で指導的役割を果たさなければならない。われわれは潜在的な危険を等閑視してはならない。だから,日本や地域諸国は,『時流』への対応に,慎重を期さなければならないのだ」。
補注)結局,アメリカは,その「より不安定で複雑な多極構造のアジア」のなかでこそ,日本が担うべき役割を強調したいのであるが,このように遠回しでの表現しか,直接には口に出していない。その手始めの段階である日米軍事同盟関係の「日常的な深化現象」は,着々と進展させられ根づいているが……。

出所)『朝日新聞』2015年3月30日朝刊。
◆-5 取材を終えて
「時流に乗る」ことを旨とする日本外交は,国際情勢が流動化すると危うい。これが,カーティス氏の指摘だ。世界はいままさに揺れ動いている。「時流」を正しく読み切れるか。核心は中国のみきわめだ。日本政治の専門家ではあるが,インタビューは中国に収斂していった。日本の将来に一抹の不安を感じつつの引退とみえた。(編集委員・加藤洋一)
--アメリカが日本に対して軍事面でどのような貢献を「させたいか」は,いまでは一目瞭然の事実である。その動員体制のために必要である,米日軍事同盟関係における上下関係的な日米間の政治秩序も,着実に形成されつつある。
いままでは「時流に乗る旨」の日本外交を,端的にいえばこのまま日本に強要してきたアメリカの立場・利害が,最近は打って変わり「時流を正しく読め」などと,日本に対して強要する主張に映っている。けれども,そのどちらであっても,アメリカから日本に対して向けられる〈政治的な圧力〉の介在だけは,鮮明に共通している。
日本国首相の安倍晋三は「戦後レジームからの脱却」を正式に唱えていながら,このレジームのなかに,よりいっそう深くはめこまれていく対米従属路線を走っている。結局,しっかりとテイネイにアメリカ側の要望に応えているのが,安倍晋三の外交である。
盲目的な愛国心を無条件に強調したがるこの首相ではあるが,日本国の指導者としては,露骨に対米追随の外交・内政しか指揮できていない。その点でいえば基本から完全に自家撞着の政治家である。積極的平和主義は,けっして国民・市民・住民・庶民たちのためのものではなく,アメリカさんのための〈平和的戦争主義〉なのである。
積極的平和主義を貫徹するには,積極的な戦争主義を不可欠とする。この必然的な因果実在は,世界の警察官を自負してきたアメリカ合衆国による帝国主義的な他国干渉や,このために在日米軍基地が果たしてきた歴史を回顧するまでもなく,自明に過ぎる事実である。
安保関連法の成立以後のこの国は,防衛省自衛隊3軍を,アメリカへの奉仕者(下請け軍隊)とみなして,より高度・強度に運用させられざるをえなくなる。
⑥ アメリカの政治体制にとって『困った君』,共和党の大統領選候補トランプ
本日の記事である。つぎに「トランプ氏,海外駐留米軍『意義ない』日韓に負担増要求 米紙に語る」(『日本経済新聞』2016年3月23日朝刊7面「国際2」) を引用する。
--米大統領選の共和党候補指名を争う不動産王ドナルド・トランプ氏(69歳)は,3月21日の米紙ワシントン・ポストの外交政策に関するインタビューで,日本や韓国など海外に駐留する米軍が米国にとって意義ある存在かどうかを問われ「個人的にはそうは思わない」と述べた。駐留米軍の費用負担について「よりよい取引をする」と表明し,駐留先の各国に負担増を求める考えを明らかにした。

トランプ氏は「米国は力強い豊かな国だったが,いまは貧しい。債務超過国だ」と指摘。日韓やドイツ,サウジアラビアなど米軍の駐留国に対して「絶えず艦船や航空機を送り戦争ゲームをしているのに,費用のほんのわずかしか支払われていない」と不満を述べた。
出所)左側画像資料は「米大統領選:共和党 主役はトランプ氏 人気,不動」『毎日新聞』2015年12月16日朝刊。
「北大西洋条約機構(NATO)には大金がかかっている」とも語り,「これ以上の余裕はない」と米国の関与を引き下げる方針を示唆。ウクライナ危機についてはドイツなど近隣諸国がロシアと対峙すべきだと主張した。
過激派組織「イスラム国」(IS)に対しては「なんらかのかたちで徹底的にたたく」とする一方で「米軍は使いたくない」と話した。核兵器の使用については否定した。「信じられないほどの野心をもっている」と評する中国を「米から多くの金を奪い,自国を立て直した」と批判。過去には中国からの輸入品に45%の高関税をかける政策も口にしている。
ワシントン・ポスト紙はトランプ氏の外交政策を「海外の国づくりよりも米国の再構築に関心がある」としたうえで「干渉主義者というより孤立主義者だ」と論評した。またトランプ氏は自身の外交顧問団として,ジェフ・セッションズ上院議員を筆頭に5人の安全保障・エネルギー専門家の名を挙げた。トランプ氏が顧問団の存在を明らかにしたのは初めて。
トランプ氏は3月21日,ユダヤ系ロビー団体の米イスラエル広報委員会(AIPAC)の総会で演説し,自身が大統領に就任すれば,オバマ大統領が推進したイラン核合意を破棄すると表明した。これに対して,民主党候補指名レースでトップを走るヒラリー・クリントン前米国務長官(68歳)は「月曜日に中立といい,火曜日にイスラエルを支持する人が,水曜になんというだろうか」とトランプ氏の発言のぶれを批判した。
--トランプは素人目にみても「政治・外交の素人」である点が理解できる。さて,ジャパン・ハンドラーズの面々,このトランプをどう観ているか? 『日本経済新聞』2016年3月11日朝刊には,こういう報道がなされていた。
☆ トランプ氏指名なら「クリントン氏に投票」 共和重鎮 アーミテージ氏 ☆
リチャード・アーミテージ元米国務副長官は3月11月の米大統領選の共和党候補に,不動産王ドナルド・トランプ氏(69歳)が指名された場合,本選では民主党候補の指名の可能性が高いヒラリー・クリントン前米国務長官(68歳)に投票する考えを示した。日本経済新聞との会見で明らかにした。
補注)この記事の内容はこのように,「日本経済新聞との会見で明らかにした」アーミテージの個人的な見解である。しかし,その報道の仕方は,忠実な代弁者である新聞社の立場からのもののようにも読める。『日本経済新聞』は彼の意見を,つぎのように紹介していた。
アーミテージ氏はブッシュ前政権時代の国務副長官をはじめ米政府の主要外交ポストを歴任した知日派の重鎮で,共和党内では主流派に位置づけられる。アーミテージ氏は米大統領選の本選で「もし私がトランプ氏とクリントン氏を選択できるとしたら,クリントン氏に投票するだろう」と明言した。その理由として「トランプ氏の発言や行動には軽蔑の感情しかない」と説明した。トランプがもしもアメリカ大統領になったときには,現状の米日軍事同盟関係にも波乱が起きない保証はない。アーミテージがトランプをひどく心配・憂慮するのは,その点である。
「トランプ氏が大統領になる可能性はあるが,明らかなのは共和党員の60%以上,いまでは3分の2がトランプ氏を支持することができない」と指摘した。そのうえで「多くの共和党員は少なくとも外交政策で,トランプ氏ではなく,クリントン氏に投票するだろう」と述べた。「もしトランプ氏が大統領になれば,危険な人物を政府の様々な地位につけるだろう」との懸念も指摘した。
アーミテージ氏は「日米関係のためにも(トランプ氏よりも)クリントン氏だ」と力説した。「彼女は一生懸命働くし,仕事をしっている。多くの人は彼女に好感をもっていないかもしれないが,彼女が有能でないという人は誰もいない」と述べた。トランプ氏については「多くの人は好ましく思っていないし,どの程度の能力があるかもたしかではない」と語った。
現在,共和党の候補指名争いに出ている保守強硬派のテッド・クルーズ上院議員(45歳)にも「軽蔑の感情しかない」と批判した。一方で主流派のマルコ・ルビオ上院議員(44歳)やオハイオのジョン・ケーシック州知事(63歳)を評価。「本当に評価しているのはケーシック氏だ」と述べた。
アーミテージにとってみれば,それこそ〈とんでもない奴〉が共和党の大統領候補に選ばれそうな気運である。自分たちがジャパン・ハンドラーズとして日本を操作してきている現状にも,悪い影響がでそうになる。彼らは,トランプ大統領の出現を歓迎できない様子である。彼にとってトランプは攪乱分子である。
他方で『朝日新聞』2016年3月9日朝刊は,見出しに「『病根は日本の対中認識』中国外相,安倍政権に不信感」と付けた記事を報道していた。米中の力比べのあいだで安倍晋三君は,右往左往させられている。
しかも彼はもっぱら,アメリカさんの顔色を気にした外交しかできない。ある意味でいえば,気の毒といえば気の毒な立場である。だが,要は「力量不足」が顕著であるこの首相に,もうこれ以上,日本国の内政・外交は任せられない。
選手を交代させる時機を逸してはいけない。
田布施部落血統の上に
下寝たで脅かされ。
トランプも充分にカネ基地仲間。不動産屋王は主にジュードを相手にする。
日本もアメリカもろくでもないのばかりしか居ない?
カネで手に入れる、カネ関係は選挙資金が馬鹿高い。
誰でも為らせないぞ!の意図がある!!!
ユダアメリカが儲かるTPPは、
当選してから翻し締結では?
日本では、コソコソ閣議決定がまかり通る。
TPP関連法案 3月10日閣議決定
あす閣議決定されるTPP=環太平洋経済連携協定の本文や関連法案が、合わせて5,200ページ以上に上ることが分かりました。関連法案は、特許法や商標法など11の国内法を改正するもので、農業関連では、牛や豚を飼う農家の経営を安定させる対策や、砂糖価格の調整策などを改正します。また、著作権関係では、現在、作者の死後50年の保護期間を70年に延長することなどが盛り込まれています。TPPの関連法案は通常国会後半のメーンテーマとなる見通しで、政府与党は安全保障関連法の時と同様に11本の法律改正をひとつの法案にまとめて審議する考えで来4月下旬には衆議院を通過させたい考えです。サテライト東京ネットニュースより