株式日記と経済展望さんのサイトより
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<転載開始>
2016年4月1日 金曜日

ポール・クルーグマン 『私が東京で言ったこと』 3月27日 niconicoffee

(クルーグマン教授) 4点を申し上げたく存じます。第1は、「我々はいま、経済的な弱さの蔓延した世界 the world of pervasive economic weakness の中にいる」ということです。多くの面で、我々はみな日本になってしまったのです we are all Japan now 。これが、日本も含め、みんなにとって政策を難しいものにしています。

第2は、「主要経済大国 major economies どうしの結びつきが強まっている」ということです。従来の経済学上の議論が提起してきた以上にということです。私がそう主張しますのは、主として資本移動 capital flows という面からであります。これについてお話しするのは非常に大事なことです。

第3は、今ここで特に懸案となっていることかとも思いますが、「非常に大胆かつ非伝統的な金融政策 monetary policy を通じてさえ、目標を達成することが難しく思われるようになった」ということです。黒田さん Kuroda-san もここにおられるのですから、我々がこれについて話さねばならないのは明らかであります。

第4がなにかと申しますと、「金融政策は財政政策 fiscal policies の助けを必要とし、できればその他の諸政策の助けも必要とする。しかし、間違いなく財政面で必要とするのであり、反対方向へと動いている財政政策と格闘する必要はまったくない」ということです。この点は、ただ日本だけの問題ということではなくて、いまや、きわめて全世界的な問題なのであります。

では、これら4点について敷衍させていただき、そして、そこから何が言えるのかということを、二つ三つ、お話しさせていただきたいと思います。

日本以外の主要経済大国が「日本化 Japanification 」しているとも称される、この〔経済の〕弱さというのは、――このような単語が使われているのは不幸なことではありますが、いまはとりあえず有用なものとしまして――きわめて重大であります。

ユーロ圏はいま大いに、1998年、1999年ごろの日本のように見えているのであります。経済の基礎条件 fundamentals 〔経済指標〕が似ているのです。労働年齢の人口は縮小しつつあります。投資のけん引役となる技術革新 Technological drivers of investment は、強力であるようには思われません。ただひたすら、弱さがずっと続いているように思われるのです。

欧州中央銀行は、非常に賢明な人物によって運営され、非常な効力を持っているのではありますけれども、インフレ目標を達成することができずにいます。

欧州経済が改善されたようにみえる時期がくることもあるのですが、その状況というのはまさに…。成長というのが…。ますます「長期的停滞 the secular stagnation 」という概念そのものに見えるようになってきているのです。マネーがジャブジャブなのに弱さが続いているのですから persistent weakness despite very easy money 。

アメリカ合衆国はマシに思われますし、ずっとうまくやってきました。とはいっても、それもいろいろな比較の中に置いて見なくてはなりません。雇用の増加は良好でしたが、生産量の伸びは大したものではありません。

我々〔米国〕へも弱さが入り込みつつあるのだという、いろいろな兆候があるのです。インフレは依然として目標値以下ですし、賃金も大して伸びはしてません。ということは、我々〔米国〕も絶好調とはとても言えないのです。その理由はすぐあとで説明いたします。よその国の問題によって我々の足が引っ張られるであろうと考えられる、一つの理由があるのです。

そして、さまざまな新興市場は、大いに問題を抱えています。とりわけ最大の新興市場がそうなのです。つまりあなた方のお隣の国です。中国は暴発寸前であると言われ…。何年にも渡って、調整が大きな問題となるであろうこと、非常に高い投資の…経済を支え続けることはできないであろうということが、周知のことでありました。彼らは、いまだこれに対処する方策を見いだしてはいません。中国の政策はそうとうに危なっかしいもの erratic に思われます。いま起きつつあることと併せて考えると、それはよい兆候ではないのです。

主要経済大国どうしの相互依存 interdependence は、私の意見では、極めて広範なものです。通常は、私やその他〔の経済学者〕の見解というのは、「相互依存性は限定的なものである。なぜなら、こんにちでさえ、国際的な取引の流量というのはそれほど大きくないからだ」というものです。今日でさえ、主要経済大国のそれぞれは、GDPのほんの数%を他国へと輸出しているにすぎないのです。ですが、投資家たちの認識 perception が「弱さがこれからも続きそうだ」という方へ傾くならば、そこからの影響はずっと大きなものとなるのです。

もしも、ユーロ圏の諸問題が、いまだけのものではなく、非常に長期間にわたるものになりそうだと考えられるようになったならば、ユーロ圏の金利はきわめて低くなります。長期債さえもです。いま現在、ドイツの十年国債の利率は約0.2%です。

これが何を意味するのかというと、どの国であれ、その経済が比較的に〔他国よりは〕強いとみなされたならば、その国は大量の資本の流入の受け手となりがちなのであり、それによって通貨は押し上げられるということです。そして通貨高は、その国の競争力を弱くして、〔経済の弱さという〕問題を分かち合うことになってしまうのです。

ドルが猛烈に上昇したのはご存知のことと思います。さほど好ましからざる経済状況にある国でさえ、自国が他国からの資本の流入の受け手となっていることや、財政拡大〔景気拡大?〕の努力 efforts to expand や、…掘り崩されていることを目の当たりにしているかもしれないのです。

ですから、我々の知るとおり、黒田氏があらゆる手を尽くされているにもかかわらず、日本円が上昇したことは――それは日本の視点からは非常に不幸な現象なのですけれども――、他の主要経済大国の弱さによって引き起こされたことなのです。

中国には特別な問題があります。大きな困難を抱えているのです。中国は〔世界経済の〕強さの源泉であるとみなされてきた一方で、つい最近までは――私が正しければ――通貨を安く抑える操作をしていると非難されてきました。ところがそれとは反対に、いまや中国は巨額の資本流出に直面しており、通貨を支えるために介入しています。2015年の資本逃避は約1兆ドルにも上ったと我々は推測しています。

中国は莫大な準備金を保有してはいますが、莫大と無限大は違います。どういう意味かというと、人民元の下落ということが現実味のある見通しとなり、そうなれば我々みんなの生活に困難が降り掛かってくるということです。このように、相互依存性のすべてがここにあるのです。

金融政策というのが、ほとんどの国で、「不本意ながら唯一の可能な手段 the only game in town 」となってしまっています。財政政策は政治のせいで麻痺してしまっているから、というのが彼らの口癖です。

ここ日本では、さほどそういうことはないのですが、それでもやはり、「3本の矢〔金融政策、財政政策、成長戦略〕」のうち圧倒的に最大のものは、これまでのところは金融政策でした。黒田氏はこの重責の大部分を遂行なさいました。

我々が目の当たりにしつつあるのは、金融政策の限界です。

非伝統的な手法を試みるとき、我々はそれを議論することができますが…。効果はだんだんと小さくなり、困難なものとなることを、我々は知りつつあるのです。

マイナス金利についてですが、これが可能であると判明したのは注目すべきことです。私はまさしく、これは正しい動きであったと考えますが、しかし、これをさらに推し進めてゆくことは非常に難しいのです。マイナス金利の影響は限定的なものであることが明らかになりつつあるからです。

他の国にも目を向けてみましょう。ヨーロッパにも非常に有能で本質的なバンカー〔マリオ・ドラギ〕がいるのですが、にもかからずECB〔欧州中央銀行〕は牽引力を失いつつあるように思われます。ここ日本でも、私よりもみなさんがご存知の通り、インフレ期待は後退しつつあるように思われます。賃金上昇も、あるべき数値より低いのです。

我々は、世界的な弱さへの対処の試みとなるべき、最大のテコ principal lever たる政策が、我々が希望していたほどの効力を持っていなかったことを目の当たりにしつつあるのです。それどころか、ひょっとしたら、このところ発揮しているように見えた効果さえも実は持っていないのかもしれないということを目の当たりにしているのです。

では財政政策についてです。

過去7年間に我々が目にしたことのすべてが、財政政策は有効であり続けたことを示しています。それも、こうした状況のなかではとりわけ有効なのです。これを採用するのは非常に難しいことであります。数年間は不良債権を抱えることになり、政治的な対立があり、ヨーロッパは国ごとに分断されており、アメリカは政党間の分断があり…。それでも、財政政策は有効であり、目下の世界的な状況こそはまさに、諸国の経済が本当に、本当に財政の支援を必要としているときなのです。

財政による支援よりも、長期的な予算問題を優先すべし、という考えは、今は極めて見当違いなものと私には思われます。私が申し上げておりますのは、言うまでもなく、消費税のことであります。

これら全てのことがらから、2つのことを言うことができます。

〔その一つ目は、〕私が構造改革 structural reform について何も申し上げなかったことにお気づきかと存じます。私が構造改革に反対であるからというわけではありません。そうではないのですが、需要を押し上げる boosting demand という最重要課題 critical issue からはだいぶ的を外れたものと考えられるからなのです。

ある種の構造改革は民間投資に拍車をかけることもあるかもしれません。それはよいのですが、多くの場合はそこに重点があるわけではないのです。

また他の種類のいろいろな改革、つまりアベノミクスですが、将来の労働力を拡大することは、経済が直面している人口動態的な逆風を相殺する助けにはなります。

ですから、そうしたことの全ては良いことなのですが、私がたいへんに心配しているのは、構造改革の話は、ときに、第一に差し迫った問題に対処しないための口実になることがあるということです。第一に差し迫った問題とは、十分な需要、デフレや低インフレとの戦い、不十分なインフレとの戦いといった、金融政策にかかわるものなのです。

しかし、私が申し上げましたように、それ〔金融政策〕には限界があるのですから、財政政策の面で、この差し迫った必要に、いままでよりももっと焦点を当てる必要があるのです。

そして最後の一点となりますが、これは非常に大事な点です。なにかと申しますと、この状況下では「リスクが非対称である the risks are asymmetric 」ということを理解するのがきわめて重要である、と論じさせていただきたいのです。

私が悲観的すぎるだけであって、いろんなことがうまくいって、需要はもっと強くなり、自然に回復する、ということだってありえなくはありません。〔しかしその反対に、〕私が描写したよりもさらに事態が悪化するということだってありえなくはないのです。中国が爆発的な崩壊をするとか、ただ単純に需要が私のかなり陰気な予測よりもさらに弱くなる、とかいったふうにです。

この2つの状況〔良い方か悪い方か〕では、運命 consequenses はまったく異なるものとなってしまいます。もし世界経済が成長を始めてインフレ率が上昇したならば、我々は何をすべきかわかっています。黒田氏も、イエレン氏も、ドラギ氏も、それに対処する手段を持っていることでしょう。なんら問題はありません。〔しかしその反対に、〕もし世界がもっと弱いことが明らかになったならば、我々は深刻なトラブルに陥っていることになります。というのも、そのとき我々は有効な手段を持っていないからです。

これが何を意味するかというと、もし間違うならば、財政拡大的すぎた more expansionary という方へ間違うことが非常に大事だということです。

私の古くからの同僚であるラリー・サマーズがよくしていた議論があるのですが、それを私も述べさせていただきたいのです。〔つまり、〕何が起きるだろうかと予測することだけが大事なのではなくて、どう予測するにせよ、予測が間違っていたら何が起きてしまうのか、ということが大事なのです。かりに事態が悪い方へ転んだ場合にも、それに対処する余地があるということが、非常に、非常に重要なことなのです。

ですから、いまは財政拡大をすべきときなのです this is the time for expantion 。できるかぎり協調的 coordinated であるべきです。G7が近づいていることは存じ上げています。理想は、みんなが強調的な財政拡大政策 fiscal expansion について合意することですが、実際にはそれは日本とカナダということになるかもしれません。それ以外の誰かに今の時点で実行の用意があるかどうか、私にはわかりません。ですが、議論 the language 〔声明?〕をその方向へ押し進めるよう試みることはできるはずです。

日本こそまさに集中しつづける必要があります。アベノミクスの最初からの諸目標が今でも最重要 primal なのです。デフレのサイクルから脱出することが「最重要目標 Goal Number 1」なのです。他の全てはそれを待たねばなりません。

それでは以上をもって、討論へと供したく存じます I will throw it open 。ありがとうございます。(中略)

(クルーグマン教授) 
まさしくその通りです very much so 。債務があろうとも今こそ支出をという主張は、たいへん強力なものです。これは複数の理由から真なのであります。

第1に、財政による刺激策は、デフレ脱却の金融政策への一助として非常に重要です。金融一本でやるのは難しいということを、我々は目の当たりにしてきたのです。

第2に、金利が非常に低い。低いどころか、日本における実質金利は、非常に長期の債券にいたるまでマイナスです。引き受けられるべき支出があるのです。ある企業 a buisiness が、非常に低い借入コストと、実物への投資 real investment の機会に直面したならば、「これはまさに支出の好機である」と考えることでしょう。これは日本〔という国〕にだって当てはまるのです。

第3に私が指摘したいのは、債務についての懸念という点です。私はこれをただ無視しようというのではありませんが、我々が日本のみならず他の先進国からも学んだことがあります。それは、安定した先進国が自国通貨で借入をしたならば、財政危機に至るまでは非常に長い道のりがある、ということです。

人々は2000年ごろから、日本国債が下落するほうへの賭け〔日本国債の空売りなど〕をしてきました。その人たちはみな、ひどい損失を被りました。市場〔国債市場〕の頑健性 robustness は非常に強いのです。そういう〔日本国債暴落という〕シナリオを描くのさえ難しいのです It is even hard to tell a story 。

もし誰かが「日本はギリシャみたいになる」と言ったならば、「どうしたらそうなるの」と聞き返すのみです tell me how that happens 。日本は自国通貨を持っているのです。起こりうる最悪のことといえば、円が下落 depreciate するかもしれないというですが、それは日本の視点からはよいことなのです。私としましては、心配すべきことではないと考えます。

最後に、長期的な財政状態への懸念という点についてです。デフレ、あるいは不十分なインフレから起こる問題の一つに、少なくとも、日本の実質金利 real interest rates は高すぎるのだということがあります。そこから脱出する方法は、持続的なプラスのインフレ率を達成すること to get a sustained positive inflation rate です。

みなさんがご存知のように、私は2%以上であるべきだと考えます。その数字が2であるべきかどうかは別にして、ともかくそれ〔プラスのインフレ率〕を達成する必要があります。この目標と比較するならば、今後2、3年の財政バランス fiscal balance がどうであるかというのは、ずっと重要性が低いのです。

それどころか、いま現在が低金利であるということは、次のことを意味します。つまり、将来の〔財政〕状態の負担 weight ――それはデフレ脱却に掛かっているわけですが――というのは、現在の予算とくらべてずっと高いものになるということです。

私に言わせていただけますなら、いまは財政バランスを心配すべきときではないのです。(中略)


(クルーグマン教授) 第二次世界大戦ということをマクロ経済学的な視点からみるならば、そのもっとも重要な点は、それが非常に大きな財政刺激策 fiscal stimulus であったということです。それが戦争であったという事実は非常に不幸なことであるのですけれども。しかし単純に言って、その戦争は財政刺激策となったし、他の方法ではそうならなかったということなのです。

それどころか、1930年代に起きたのはこういうことだったのです。つまり、ニューディール政策において、ルーズベルト大統領は財政刺激策を1937年に引っ込めます。なぜかというと、現在とおなじく、予算をバランスさせよという声が多数だったからです。それは恐ろしい過ちでした。不況の大きな第二波を引き起こしたのです。

言うまでもなく、我々が求めているのは、戦争ではなしにそのようなことを達成するということです。

日本の民間部門における賃金を上げさせるためのインセンティブとして、これまでなされてきたであろう道徳的な呼びかけ以上の手段を用いようという話が、盛んになされてきました。私は、なにが有効なのかという制度設計上の詳細についての知識はないものの、そうした手段を試みることには確かに賛同するものであります。それは一つ起こりうることであります。

〔しかし、〕そうした手段を別にしますと、企業の収益と企業の投資とのあいだの結びつきというものは、これまでもつねに弱いものでした。生産能力を拡大すべき理由を見出さないかぎりは企業はそうしないのですから、「高収益な企業は投資をすべきであると期待してもいい」ということは、今までもなかったのであります。

そしていま起きているのは、彼らがデフレマインドを持っているということです。日本の成長は弱いだろうと、彼らは考えているのです。賃金の振る舞いを見れば明らかなことですが、彼ら〔企業〕は、日本が非常に低い〔低インフレ、または〕、マイナスのインフレ〔つまりデフレ〕へと逆戻りするであろうと予測している――あるいは少なくともそういう恐れを抱いている――のです。

脱却するための衝撃 a shock to break that ということが、今もなお必要なのです。脱出速度 escaping velocity です。 「やり過ぎるくらいやる archieving enough ことによって脱出速度を得る」ということで私が言いたかったことの一部がこれなのです。ロケットが地上に逆戻りしないための十分な速さという意味での脱出速度です。(中略)


(私のコメント)

日本政府が財政を拡大させることが出来るのは、日本国債を買う人が居るからであり、日本のバカな経済学者がいくら「日本国債が大暴落する」と騒いでも状況は変わらない。たとえ日本国債が大暴落して金利が急騰したり、償還が来た国債は1万円札を刷りまくって支払うことが出来る。

円建て国債が外人によって売り叩かれても、政府日銀は1万円札の束を渡すだけでいい。同時に円も暴落しますが大幅な円安になれば、世界中に日本製の製品が溢れて中国や韓国が破産するだけだ。1ドルが1000円になってトヨタカローラ1台輸出すれば1000万円の売り上げになればトヨタ自動車は大儲けだ。

これがドル建ての日本国債しか売れないとなれば財政は拡大させることは難しいでしょう。新興国は自国通貨では国債が売れないからドル建債で資金を調達している。世界中が経済が停滞して長期不況が避けられなくなれば、世界の銀行やファンドは信用ある通貨の国債を買わざるを得なくなる。だから円建ての国債も世界に売って行けばいい。

日本はデフォルトしたくても円建て国債なら円で償還すればいいだけだからデフォルトしたくても出来ない。ギリシャなどがデフォルトで問題になっているのはユーロ建てであり、自国通貨でないから自由に発行することが出来ない。ドイツやフランスからユーロを調達しなければなりませんが、調達できなければギリシャは破産する。

クルーグマン教授もユーロのせいで景気刺激策が取れないと指摘していますが、ユーロと言う通貨制度は欠陥のある制度であり、柔軟な経済政策に足かせとなってしまっている。更にヨーロッパには難民問題と言う問題が起きて社会不安を巻き起こしている。メルケル首相も課題山積で財政どころではないにもかかわらず、安倍首相はドイツに財政拡大を求めようとしている。

ユーロは明らかに破綻した通貨政策であり、通貨だけ統合して政治は統合されなかった。だからギリシャはユーロ建ての国債を乱発して使い込んでしまった。オリンピック競技場はぺんぺん草が生えていて、国債は公務員などの給料に消えてしまった。ギリシャには観光しか産業が無いからだ。

イギリスはEUからの離脱を国民投票にかけますが、経済が統合への動きがあるのに対して政治は分離の動きがあり、ヨーロッパ各地でも分離独立運動が起きている。クルーグマン氏が言うにはG7でまともなのは日本とカナダぐらいであり、アメリカはリーダーシップがあっても議会に問題を抱えていてデフォルト騒ぎを起こしている。

現在起きている経済現象は、教科書に書かれている答えは無く、クルーグマン氏やスティグリッツ氏にも明快な答えは無い。昔なら戦争で需要を掘り起こす事も出来ましたが、現代ではそれは出来ない。ならば長く続く停滞を前提とした対策を立てるべきであり、消費を刺激するには富の不均衡を是正しなければならない。

経済格差が出来れば富める者は1%であり、99%の貧しい者にはカネが無い。富める者にベンツ1台は売れても貧しい者にはカネが無いから車は売れない。貧富の格差が出来たのは所得の分配に問題があり、企業は安い労働力を求めて国内の工場を閉鎖して中国に移転させてしまった。それだけ国内の工員があまり賃金は低迷するようになった。

ホワイトカラーもOA革命で事務員が要らなくなりリストラが行われている。企業は工員も事務員もいらなくなり企業は儲けても従業員は非正規化が進んで不安定化した。新しい職業の創出はなかなか進まず、地方には職場が無いから都市集中化も進む。日本が直面している問題が世界にも広がりを見せている。

日本は少子高齢化が進み、高齢者への福祉が負担になり若い人に負担がしわ寄せされている。若い人の職場がOA化で少なくなり消費税がかけられて年金や健康保険も入れない若い人が増えて、生活保護受給者が増え続けている。国民は高福祉低負担を求めているが、現実は低福祉高負担になっている。

1%の富める者にとってはデフレ社会は天国であり、物価は安いし安定しているから使わずに銀行に貯めておけばいい。貧しい者は借金して生活をしのいでいるからますます生活は苦しくなる一方だ。何らかの形で所得の再分配が行われなければ生活の歪が社会に溢れるだろう。少子化もその一つですが、昔は貧乏人の子沢山だったが今は結婚もせず引き籠りになっている。

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