社会科学者の随想さんのサイトより
http://blog.livedoor.jp/bbgmgt/archives/1058305200.html
<転載開始>
 【雑誌『世界』2016年7月号に,福島第1原発事故を考える会稿「解題『吉田調書』連載第12回-所長命令に違反 原発撤退1-」が掲載されていた】


 a) 岩波書店ホームページは,この『世界』7月号における記事「解題『吉田調書』所長命令に違反 原発撤退1」(213-223頁)に関する解説を,こう書いている。
    2014年,日本のジャーナリズムを揺るがせた,朝日新聞による「吉田調書」スクープとその記事「取り消し」。いわゆる「撤退問題」の本質とは,なになのか。好評連載の新シリーズ第1回は,「撤退以降」の福島第1原発に焦点を当て,その内部の動きを克明に追う。
世界2016年7月号表紙 --『世界』7月号のこの記事を実際に読んでみたが,説得力ある論旨であった。2年前に大騒ぎされていた,この「誤報した」と勝手に「誤認された」報道問題に対する「朝日新聞叩き(バッシング)」現象は,いったいぜんたい,なんのための一大騒動〔蠕動(ぜんどう)〕であったのか。

 この問題の本性は,単純な不思議さを通りこして結局,安倍晋三とこの政権を囲む独裁的政治が起こさせた,きわめて幼稚かつ暴力的な世論操作の醜業・悪態に集約的に現出していたというほかない。しかも,安倍政権に言論機関として密着する新聞社である読売新聞(この新聞社は反「社会の木鐸烏」の代表格)などの報道・経営姿勢にもとづく全体の論調は,あまりにも醜悪な本質を,それもみずから充満させていた。
 ネット空間においてはいまだに,たとえば,つぎのような語り(騙り?)を放つのが当然であるかのような雰囲気が充満している。
    マスコミ, 反日左翼。 [ 反日・捏造 朝日新聞 ] 「所長命令に違反 原発撤退」「福島第一 所員の9割」の記事 → 世界中で「実は,日本人は福島第1原発から逃げ出していた」と報道(2014年7月30日 gofar:memo)。
 註記)http://gofar.skr.jp/obo/archives/10913
 事実にもとづかないで,しかも虚説・空想などに彩られた意見や主張が,あたかも本物・事実であるかのように,それも問題になっていた「吉田調書」に関して「誤報とされた問題点」をめぐっての「朝日新聞叩き」のためだったとすれば,それはもうしゃかりきになって,手段すらあれこれ選ぶ余裕もないくらい,総攻撃のために必死になって刻苦奮励する姿をみせていた。

 いかにももっともらしく報道されていたその報道内容であったが,実は問題がありすぎた。事実の理解・解釈において重大な錯誤を犯していたのである。2年前,2014年中は,この問題で日本社会は大騒ぎだったという印象が,われわれの記憶にはまだ残っている。( ↓  画面 クリックで 拡大・可)
植村隆表紙
 この文章を記述・準備している最中に,植村 隆『真実-私は「捏造記者」ではない-』(岩波書店,2016年2月)を読んでみた。この本のカバー・帯びを画像で紹介しておくが,この帯びに書かれているとおりである。

 「吉田調書」の場合は,さらにもう少し緻密な資料解読と冷静な判断力があれば,それほどむずかしくはなく,こちらでも朝日新聞叩きが見当違いであった点(朝日新聞側に基本的な間違いはないこと)が理解できるはずである。この点を説明し,かつ批判した文献3点は後段にかかげてある。

 自分の考えに合わない者を「反日左翼」と決めつけるこの感性・品性・知性・悟性のなさには,大いに感心(寒心)する。だが,そうした意見の表明のしかたしかできない者たちの,思慮の浅さ・常識というモノの完全欠落には,ヘドが出るそうになるほど呆れる。同じ批判(非難)をするにせよ,もっと別のいい方があるはずである。英語でいう smart さ(沈着冷静な賢明さ)とは完全に無縁の所作ばかりがめだつのである。

 本ブログだけではないと思うが,コメント欄に送られてくるそのコメントのなかには「人間のモノ」とも思えないほど程度が悪い,人間以前の,すなわち,動物レベルよりも低いような文句を連ねてくる者もいる。もっとも,こちらは無視だけしておけば済むことである。しかし,「吉田調書をめぐる朝日新聞叩き」は,異常・異様を通りこして狂気・錯乱状態にひとしい言動・行為が,オンパレードに,たとえていうならば阿波踊りのように実演されつづけていた。

 前段の『gofar:memo』の放っていた汚言のなかで感じることがある。こういう疑問である。ところで「東電の社員たち」がどうしたら「イコール〔多分,全員が〕〈日本人〉」になりうるのか? 東電には外国〔籍〕人本社員は1人もいないのか? さらにいえば,日本人には聖人君子しかいないのか? 同じ日本人でも「自分に反対する者」はこのすべてが「反日する悪者の非日本人」になりうるらしい理屈が堂々と披露されているのだから,不思議も不思議である。

 関連して指摘すると,東電には外国人株主はいくらでもいる。日本の電力会社ならば「日本人従業員と日本人株主」しかいないという屁理屈も登場しそうにも思えるのだが……(いまの時代にこのような偏屈な考えははじめから成立しえない妄想)。

赤塚不二夫と愛猫画像 要は,発想がエキセントリック(奇矯)に偏倚(へんい)している。とりわけ,独りよがりの決めつけの専横度だけは,ひどく突出的に異常発達している。日本国に住んで・生きているのは「日本人」(←この「中身じたい」を厳密に定義したことがあるのか?)だけではない。
 出所)画像は若き日の赤塚不二夫と愛猫「菊千代」,https://twitter.com/369doughnut/status/560048049469149184

 いい加減,バカばかりいうのは,もうヤメテほしいネ……。対話が成立しにくいどころか,これならウチで飼っているペットの犬・猫との会話のほうが,よほど通りがよく,その「話の内容」も成立しているといいたくなる。

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 b)   前段にとりあげた『gofar:memo』というごとき〈人間類型の範疇〉に属する連中は,ものごとに関していいたいことを的確に表現するための頭脳(発想の独創性・巧みな表現力)を,ほとんどもちあわせていないらしい。ユーモアのセンスが皆無である。また,自分の立場を適切に工夫しながら相手に伝達するためのの脳細胞の動きが,極度に欠落しており,ほぼ完璧に冷凍状態である。もしかしたら,もともと永久停止していたのかもしれない。

 原発事故現場に遭遇した「日本人」ならば,放射能から絶対に逃げないという保証でもあるのか? 東電の社員でも怖いものは怖い。だから「3・11」のとき逃げて問題になっていた(⇒吉田所長の命令に違反しての撤退し,逃亡した従業員が大勢出た)。この問題に関する朝日新聞の報道が「誤報問題」となり,これが「バッシング:国を挙げてのイジメ」現象の対象になっていた。念のため繰りかえし断わっておくが,朝日新聞は誤報していなかった。

 ひたすら他者を罵倒するだけの発言(手前勝手な雄叫び)がめだつ。「反日・捏造」をいうなら,従軍慰安婦問題では「読売新聞も産経新聞も朝日新聞と同じ〔に間違っていたとされる〕報道を,朝日新聞とまったく同じにしていた」のだから(おまけに訂正記事を出していない,この点は前掲,植村 隆『真実-私は「捏造記者」ではない-』がなんども指摘・批判する事実である),自社の不都合(失策)は棚挙げしておいたまま,その同じ材料でもって他社のことだけ責めあげていた。これはまことにタチが悪い,極悪だったと評価するほかない読売新聞・産経新聞の報道姿勢であった。この点にこだわってただちに判断すれば,読売と産経のほうが朝日新聞以上にまったくひどい「反日・捏造」の新聞社である。

 朝日新聞が独自に早く入手していた吉田調書を,安倍晋三政権側がのちにこの2社にあとで,そっと特別に別途「流しこんでいた」。このことは,いまとなっては疑う余地のない,安部側流の薄汚い情報操作(資料提供)の行為の一環であった。いまのこの政権,「目的のためであれば手段を選ばない」デタラメをいくらでも行使する。
サミットG7国道表示板2016年5月25日
出所)2016年5月25日の某国道電光掲示板,
http://plaza.rakuten.co.jp/09210422/diary/?ctgy=0


 もっとも,伊勢志摩サミットG7で安倍晋三は「いま,リーマン・ショック以来の危機が再来している」などといった虚妄の経済観を,先進国首脳に対して披露していたものの,イギリスのキャメロン首相やドイツのメルケル首相らは,その安倍晋三の《デッチ上げ世界経済観》を聞かされたときすぐに,否定的な反応を示していた。
伊勢志摩サミットG7各国首脳集合写真
 出所)http://www.chunichi.co.jp/article/feature/iseshimasummit/list/CK2016051902100023.html

 かように,世襲3代目の政治家ともなれば,ここまでひどく堕落していた自分であっても,皆目恥じることをしらないで,思う存分に晒せるのである。またいえば,これが彼の誇示しうる人間的・人格的な一大特性であるともみなしてよい。

 さて,朝日新聞が潰れたら日本の政治社会がよくなると請け合えるのか? 『原子力村の強力なる1員である〈読売新聞〉』(この新聞社は大昔から,原発:核発電を先導して推奨し,日本産業社会のなかに普及させるために大いに働いてきた新聞社である)が潰れたほうが,朝日新聞が潰れるよりはまだマシではないか。相対的な比較をしていえば,そう断定してもいい話題として提示できる。

 「従軍慰安婦問題」や「吉田調書」の問題に対する報道では,大の付く新聞社が “ヘイトスピーチばりの報道” しかおこなっていなかった。その程度の,たいそう貧相な「脳内構造の造り」をみずからさらけ出してきた新聞社が,現にいまも存在しつづけている。

 従軍慰安婦問題のときは,朝日新聞叩きをおこなうためであれば,手段選ばぬ集中攻勢をかけていた読売新聞であったが,その結果はとみると,実はこの読売新聞が一番多くの新聞定期購読者を失っていた。皮肉も皮肉な顛末であった。
★ 読売,半期ベースでは2010年下期最後に
1000万部割れ続く ★


 日本ABC協会がまとめた2014年下期(7~12月)の平均販売部数によると,産経新聞が161万5209部(前年同期比0.1%減),日本経済新聞が275万534部(同0.9%減),毎日新聞が329万8779部(同1.5%減)と「ほぼ横ばい」または「微減」に踏みとどまっている。

 だが,「2強」といわれた朝日・読売は様子が違う。朝日が710万1074部(5.9%減)で,読売が926万3986部(6.1%減)と,明らかに減り幅が他の3社よりも大きい。
 註記)http://www.j-cast.com/2015/03/11230114.html
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 c) 以上の能書き的な議論はさておき,冒頭に挙げた記事「解題『吉田調書』所長命令に違反 原発撤退1」(『世界』7月号)の最後の頁を,画像資料で紹介しておく。『朝日記事は誤報ではない』と議論した論稿の結論部分である。(画面 クリックで 拡大・可)
世界2016年7月号吉田調書223頁
 また,この記事が朝日新聞の正しさを議論する文献を3冊,参考文献として挙げていたので,これも画像資料も添えて紹介しておく。

  ◇-1 鎌田 慧・花田達朗・森まゆみ編集代表『いいがかり-原発「吉田調書」記事取り消し事件と朝日新聞の迷走-』七つ森書館,2015年3月。(画面 クリックで 拡大・可)
いいかがり七つ森書館表紙
 ◇-2 海渡雄一・河合弘之・原発事故情報公開原告団弁護団著 『朝日新聞「吉田調書報道」は誤報ではない-隠された原発情報との闘い-』彩流社,2015年8月。
海渡・河合表紙
 ◇-3 報道を考える読者の会と仲間たち『誤報じゃないのになぜ取り消したの?』彩流社(ブックレット),2016年4月。( ↓  画面 クリックで 拡大・可)
   誤報じゃないのに裏表紙 (2)誤報じゃないのに裏表紙 (1)
 安倍晋三政権になってからのこの日本国は,まさしく「石が浮かんで木の葉が沈む」ような時代を迎えている最中である。一国の品位・品格を集中的に代表する人間が首相であることに変わりはないが,これほど低品質の首相は明治以来「初」である。

 アベノミクスも完全に失敗した結論が出ている。憲法改定をしたいこの総理大臣の欲望追求は,来〔7〕月に実施される参議院選挙に大きく左右される。この男によってこの日本は,めちゃくちゃに破壊されつつある。それも対米従属路線だけは,さらに深めつつでのそれである。

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 d)「補 足」
吉田昌郎画像
 ◇-1 東電福島第1原発事故当時の所長は吉田昌郎(まさお)。
  出所)画像は,http://minkara.carview.co.jp/userid/361287/blog/30556402/

 ◇-2 慰安婦問題で著書が問題となった筆者は吉田清治(せいじ)。
 吉田清治画像
  出所)画像は,http://katintokei.at.webry.info/201305/article_60.html

 --つぎの画像資料は,大月書店,2016年4月発行である。従軍慰安婦問題に関しても,このような反論が提起されている。吉田清治の書いた内容は,従軍慰安婦の事実に関するものであって,けっして,その認識に関するものではなかった。くわしくはこの本を実際に読めば理解できる。まともに勉強している人であるならば,氷解すらする「疑問の部分」もあるはずである。
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