世相を斬る あいば達也さんのサイトより
http://blog.goo.ne.jp/aibatatuya/e/a2f3521c2d9430b04e635a5b5eea3008
<転載開始>
●転ばぬ先の杖(知恵) 一寸先は分らない「生活保護」とは?

 “まさか”と云う事態に陥らないように生きていこうと思うが、時には“まさか”と云う事態に遭遇することもある。その“まさか”が想定内のものであれば、多くの人は、自己責任で対応するのは、まあ、大人な人間ということだろう。おそらく、多くの日本人は、そのように考えていると思われる。小生も、その一人だ。中には、生活保護制度を悪用して生活している連中もいるだろうが、それは目立つだけのことで、日本人の多くは、それを避けようと云うマインドがあるようだ。

 たぶん、「生活保護」と云う言葉に、国民がアレルギーを持っているのだろう。“貧乏人”、“情けない”、“恥さらし”等々の言葉を、他者に向けていた自分が、その言葉を受ける身になるのは、忸怩たる気持ちになるに違いない。まあ、上述は筆者の感想が多く含まれるので、「生活保護」と云う言葉を聞いて、どう思うかは、人それぞれだろう。しかし、万が一にも、生活が困窮しないと断言出来る人は、どのくらいいるのだろうか。筆者を引き合いに出す必要はないが、友人の奥さんのケースなどを見聞きすると、案外、人生には落とし穴はあるものだと痛感する。

 彼女の場合、自業自得なのだが、詐欺に遭って、5千万円近くあった夫婦の老後資金をパーにしてしまった。ここで止めておけば、夫婦の大喧嘩で済んだかもしれないが、彼女はその後、W詐欺グループのカモとなり、知らぬ間に、3千万の借金までしてしまった。自分の僅か年金を注ぎこんでも返済は滞り、友人親戚からも借金の山。ついに自己破産する羽目になった。無論、御亭主である小生の友人も、堪忍袋の緒が切れたらしく、協議離婚と云う経緯を辿る。離婚した以上、家も出なければならない。しかし、収入は数万円。年齢も70歳を超えているので働くといっても容易く職に就ける筈もない。挙句に持病もあり、手のつけようがない。まあ、彼女の場合、有能な民生委員が面倒を見てくれたお陰で、生活保護を受け取り、無事養護老人ホームに入居したらしい。

 しかし、友人の家は、その辺では有名な素封家であった。そして、家も立派なもので、到底、そこの奥様が、このような事態になるとは、想像すらしない出来事だった。まあ、欲を掻いて詐欺に遭ったわけなので、典型的自己責任で、同情に値しないが、現実には、この詐欺に引っかかる部分を、癌や難病に置きかえても、似たような事態が生まれるのが現代社会だ。おそらく、老々介護の積み重ねから、似たような事態が起きることも想定内である。つまり、絶対に大丈夫と思っていても、“まさか”は起きるわけで、以下の「生活保護情報」のコラムを読みながら、転ばぬ先の杖ではないが、いざと云う時の知恵程度には頭の片隅に入れておいて損はないようだ。

 ネトウヨ的言説に従うと、生活保護の不正受給をネタにして、生活保護受給者の多くが、不正受給者、怠け者みたいな雰囲気を作りだしていたが、最近はどうなのだろう?片山さつきとか云う議員はあいかわらず、ネトウヨと変わらぬ狭い料簡で、世間を眺めているようだが、多くの受給者は、止むにやまれぬ事情があるわけで、所謂、弱い者いじめは程々にするべきだろう。ネトウヨさんの中には、事実、己が不正受給者であることも多いらしいので、何をか況やなのである。


 ≪ いざという時のために知っておきたい「生活保護」
   老後の暮らしを守る最後の砦

■家があっても受給できる
「まさかねぇ、この歳になって、自分が生活保護を受けるようになるなんて、60歳の頃には思いもしませんでしたよ」
 こう話すのは、東京・練馬区で親の代から八百屋を営んできた、高森吉彦さん(71歳・仮名)。現在は廃業しているが、元店舗兼住宅の敷地8坪、築 45年の自宅に暮らしている。自動車は持っていないが、食卓の横には小ぶりの液晶テレビもあり、整理整頓された室内は明るく清潔だ。
 生活保護を受け取っている人は、資産など一切なく、極貧の状態にあるはず——。そんな一方的なイメージを持っていると、高森さんが生活保護を受け取っているようには見えないだろう。だが、懐事情は非常に厳しかったと高森さんは話す。

「駅前にスーパーができてから、開店休業状態。4年前に店を畳む直前なんかは、毎日赤字が積み重なる状態でしたね。そんなときに女房が乳がんになって……。
一昨年、女房を看取りましたけれども、気がついたら銀行には30万円くらいしかなかった。年金は国民年金だけです。未払いの時期もあって、もらえるのは月4万円程度。電気、ガス、水道払って、おまんま食べたら足が出る。そんな状態でした……」

 子供のいなかった高森さん夫婦。親類縁者に面倒を見てくれる人もいない。長年の知人である商店会の元会長が見かねて、渋る高森さんを福祉事務所の生活保護の相談窓口に連れていった。
 現在、高森さんは約4万円の国民年金に加え、生活保護として月3万5000円を給付されている。年金額の9割近くを補助されている計算だ。
 そもそも「生活保護」とは、厚生労働省が地域ごとに細かく指定している「その場所で暮らすための最低限の生活費」に収入が届かない人に対して、収入との差額を補助する制度。
 年金収入があっても、この「最低生活費」に満たなければ受給することができ、無年金などで収入がゼロの場合には、最低生活費の額を全額受給できる。
 さらに生活保護を受給していると、上下水道の基本料金はタダ、住民税、固定資産税、NHKの聴取料も免除される。国民健康保険に加入できなくなるため、保険証がなくなるが、代わりに福祉事務所で発行される医療券を提示すると、医療費の自己負担もゼロだ。
 自治体によって他にも減免される料金があり、都民ならば、都電・都営地下鉄・都営バスの共通無料パスももらえるため、「こんなにしてもらっていいのかと驚いた」(高森さん)。
 長年、掛け金を払ってきた年金に匹敵する金額を受け取ることができ、さまざまな減免措置まで受けられる生活保護。
 だが「生活保護」と聞くと、「戦後でもあるまいし、働ける人間が働きもしないで公金をむさぼっている」などと、ネガティブな印象を持っている人も少なくないだろう。
 実際には、生活保護の受給世帯約163万5000世帯のうち、半数を超える50・8%は65歳以上の人を中心とする高齢者世帯。うち9割は単身世帯となっている(厚生労働省統計・'16年3月現在)。
 「働けるのにサボっている」のではなく、これまで長年、働いてきたが、20年、30年と長い老後を生き抜かなければならない人々が頼りにする制度と言っていいだろう。
 では、いざというときこの最後の砦を使うには、どうしたらいいのか。


 


■タンス預金までは調べない
生活保護に詳しい社労士の林智之氏は、大きく4つの条件があると話す。
「地域の福祉事務所や市町村の福祉課などを訪れたときに、まず問われるのが、次の4つです。『援助してくれる身内がいないか』、『資産を持っていないか』、『働けないか』、『月の収入が最低生活費を下回っているか』。
 第一の『身内』とは、法律で扶養義務のある、3親等以内の親族です。
 同居している親族に収入がある場合は、同じ家計として扱われるので、まず申請は通りません。
 別居していて、その人を扶養したくない、没交渉だというような親族の場合、かつては 『借金があるので扶養できません』と言えば、あまり調べられることもなく、申請が通っていました。しかし、例の芸能人の家族が生活保護を受給していた問題で、平成26年の法改正以降は『具体的にどんな借金があるのか』と問われるようになりましたね」
 続いて、2番目の『資産がないか』を見てみよう。前出の林氏は言う。 「資産とは、預貯金や株、有価証券、金や宝石、不動産、自動車などです。
東京近郊では無理でしょうが、車がないと生活できないような地域では、自動車の所有が認められることもあります。
不動産に関しては、自宅に住宅ローンが残っているとアウトです。生活保護費を借金の返済に充てることはできないと決まっているため、売却して清算してください、となります」
 ローンがなく、自ら居住している不動産がある場合には、福祉事務所の担当者との相談になる。
売却して賃貸に移り、家賃を払うとしても、心もとない売り値にしかならないと判断されれば、持ち家に住み続けることが許される。前出の高森さんもこのパターンだ。
 「ただ財産を調べると言っても現金については、自宅に踏み込んでヘソクリがないかまで調べたりはしません。悪質な受給者の中には預金を引き出してタンス預金にし、数年寝かせて、財産がないと主張する例もある」(都内の福祉事務所職員)
 3番目の『働けないか』については、20代、30代ならいざ知らず、65歳を超えた人については問われないのが普通だ。
 そして最後が、『最低生活費以下の収入しかないか』。この最低生活費とは、どのような金額なのか。前出の林氏が続ける。
 「最低生活費は、厚生労働省が定めているもので、地域ごとに細かく決められています。東京など大都市と地方では、生活費に差がありますから、それを反映しているのです。
 たとえば、夫婦とも60代で、東京23区在住の場合を見てみます。すると、1人あたりの生活費が3万8990円。2人世帯では、その88・5%が支給されます。さらに世帯当たりの加算が5万180円。合計11万9190円です。
 賃貸暮らしの場合は、さらに住宅扶助が加わります。2人世帯では6万4000円になりますから、計18万3190円。この金額より月の収入が少なければ、生活保護を受け取ることができます」

 ■月単位でも申請できる
 もし、この夫婦が2人とも国民年金を満額、月6万5000円受け取っていたとしよう。世帯の収入は月13万円だ。すると、差額の5万3190円を生活保護費として受け取ることができる。
 夫婦とも国民年金を満額もらってもなお、生活保護を受け取ることができる計算だ。
 「それでも、誰でも受給しているわけではないのは、自宅を売却しろと言われても先祖代々の家でなかなかできないなど、条件をクリアするのが難しい事情があるからでしょう」(林氏)
 知っているようで、意外と知らない生活保護の仕組み。若い頃には想像もできなかった長寿を謳歌できる現在だが、一方で70歳以降は家計が火の車という方も多いはず。使えるものは遠慮せず、上手に使って人生を乗り切るしかない。
 『プチ生活保護のススメ』などの著書がある河西保夫氏は、こう話す。
「これも意外と知られていませんが、本来、生活保護の申請と受給は月単位でできます。たとえば、タクシーの運転手として働いていて、普段は27万円ある収入が、ある月だけ10万円で最低生活費を下回ったとなれば、差額分の生活保護費をもらうことができる。
仕事を持っている人でも、国が目安を定めた最低生活費を下回る収入しかなければ、セーフティーネットの恩恵にあずかれるのです」
 年金をもらっていても、収入があっても、条件さえ満たせば月単位で受け取れる生活保護。家計が厳しい日々が続くようなら、「これで我が家も極貧に転落か」と思い込んであきらめるのではなく、まずは福祉事務所の窓口で相談してみよう。
  ≫(現代ビジネス>社会>社会保障>生活保護・「週刊現代」9月17日号より)



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