櫻井ジャーナルさんのサイトより
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201802100001/
<転載開始>
アメリカ主導軍が参加したデリゾールにおける2月7日の攻撃で100名以上の親政府派部隊の戦闘員が攻撃されたと伝えられた​。現地からの情報として、殺された戦闘員の中にはヒズボラやロシア人傭兵も含まれているというが、ロシア国防省は25名のシリア人戦闘員が負傷しただけだとしている。

攻撃は自衛のためだったとアメリカ軍は主張しているが、ロシア国防省によると、攻撃された部隊は敵部隊の砲撃地点を特定するためにアル-イスバ石油精製施設を偵察中だったという。つまり親政府派部隊から攻撃を仕掛けていないという説明だ。その偵察部隊が砲撃やミサイルで攻撃され、続いてアメリカ主導軍の戦闘ヘリに空爆されたとしている。

まず確認しておきたいことは、そこがシリア領であり、アメリカ軍は無断で軍隊を侵入させて基地を建設している侵略者にすぎないということだ。2016年9月にインターネット上を流れた音声の中で国務長官だったジョン・ケリーがシリア情勢について語っている。​ロシアは正当な政権に招き入れられたが、われわれは招かれていない​とケリーはその中で口にしているが、これは事実である。

バラク・オバマ政権が侵略を正当化するために「民主化」、「人道」、「化学兵器」といったタグを使ってきたことは本ブログでも繰り返し書いている。そうした嘘が発覚する過程でオバマ政権は支援しているのは「穏健派」だと弁明しているが、これはアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)が否定している。

2012年8月に政府へ提出された報告の中で、​シリア政府軍と戦っている戦闘集団の中心はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI(DIAはアル・ヌスラと実態は同じだとしている)だと指摘​している。つまり「穏健派」は存在しないということ。

また、「穏健派を支援する」というオバマ政権の政策が継続されると、東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告、それは後にダーイッシュという形で現実になった。退役後、​この問題をアル・ジャジーラの番組で問われたフリン中将は、ダーイッシュの勢力が拡大したのはオバマ政権が決めた政策によると語っていた​。食い物にしようと決めたターゲットへ碌でもない連中を送り込んで暴れさせ、その連中を押さえてやると言って乗り込む犯罪組織の手口とアメリカ支配層の遣り方は酷似している。

デリゾール周辺でアメリカ軍主導軍はシリア政府側の少なからぬ戦闘員を殺してきた。例えば、​2016年9月17日にアメリカ主導軍のF-16戦闘機2機とA-10対地攻撃機2機による攻撃で80名以上の政府軍兵士が死亡​している。空爆の7分後にダーイッシュの部隊が地上でシリア政府軍に対する攻撃を開始していることから、両者は連携していると見られている。28日には2つの橋を、30日にも別の橋2つをそれぞれ爆撃して破壊して政府軍のユーフラテス川渡河を困難にした。川を渡った先には油田地帯が広がっている。その1年後にはロシア軍のバレリー・アサポフ中将がデリゾールで砲撃により戦死した。アメリカ側からアサポフ中将の位置に関する正確な情報が戦闘集団側へ伝えられていたと言われている。(つづく)    


エネルギー資源から見たアメリカの世界戦略(その2)

アメリカが中東やアフリカを侵略する大きな理由は石油や天然ガスを含む資源にあるとする推測する人がいる。そうしたひとり、ロバート・ケネディ・ジュニアは1968年6月6日に暗殺されたロバート・ケネディ(RFK)の息子だ。RFKジュニアによると、2000年にカタールはサウジアラビア、ヨルダン、シリア、トルコを経由してEUへ天然ガスを運ぶパイプラインの建設をシリア政府へ持ちかけたのだが、09年にこの提案をシリア政府は拒否、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟が計画していたシリア侵略に参加することになった。シリア政府がカタールの申し出を拒否した直後、CIAはシリアの反政府派に資金を提供しはじめたことをWikiLeaksは明らかにした。




イスラエルが軍事侵略に力を入れている理由のひとつも天然ガスだ。地中海の東側に湾岸なみの天然ガスや石油が存在していることが明らかになり、2001年からイスラエル沖で調査が実施され、09年に天然ガスが発見されている。USGS(アメリカ地質調査所)の推定によると、エジプトからギリシャにかけての海域には9兆8000億立方メートルの天然ガスと34億バーレルの原油が眠っているという。この地域には、リビア、エジプト、パレスチナ(ガザ)、イスラエル、レバノン、シリア、トルコ、ギリシャといった国が並んでいる。イスラエルが執拗にガザを攻撃する理由のひとつはここにあると見る人もいる。





その天然ガス田発見に関わった会社のひとつ、ノーブル・エナジーのロビイストとして仕事をしているひとりがビル・クリントン元大統領。ウォール街の大手金融機関が開発資金を出す意向を示している。2016年の大統領選挙でノーブル・エナジーはヒラリー・クリントンに多額の寄付をしていたようだ。

天然ガス田の調査が始まった2001年に石油の探査/掘削技術を持つ人間がイスラエルへ入ったと言われている。当時、ロシアではウラジミル・プーチンが実権を握り、政府を私物化して私腹を肥やしていたオリガルヒの粛清に乗り出していた。そこで少なからぬオリガルヒが国外へ逃げている。その主な逃亡先はロンドンとイスラエルだった。イスラエルへはロシアの巨大石油企業ユーコスの幹部も逃げ込んでいる。

アメリカの支配層、特にネオコンは1992年2月に国防総省のDPG草案として作成された世界制覇プラン、いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンに基づいてい行動しているのだが、そのベースになっている理論が存在する。1904年にイギリスの学者で地政学の父とも呼ばれているハルフォード・マッキンダーが発表したハートランド理論だ。ズビグネフ・ブレジンスキーもこの理論に基づいて戦略を立てていた。

マッキンダーは世界を支配するためにロシアを制圧しなければならないと考える。広大な領土を有し、豊富な天然資源、多くの人口を抱えているからだ。そのロシアを締め上げるため、西ヨーロッパ、パレスチナ、サウジアラビア、インド、東南アジア諸国、朝鮮半島をつなぐ内部三日月帯を、その外側に外部三日月地帯をマッキンダーは想定した。イギリスと日本は外部三日月地帯に分類されているが、その位置はイギリスが内部三日月帯の西の端、日本は東の端だ。

中東支配はこの戦略を実現するためにおいて重要な場所だが、エネルギー資源も大きな意味を持っている。アメリカは基軸通貨のドルを発行する特権で生きながらえている国だが、そのドルの流通量を調整するために石油取引が重要な役割を果たしてきたことを本ブログでも再三再四、指摘してきた。このペトロダラーの仕組みはハイパーインフレをバブルに転換させる金融システムと同じようにアメリカの支配システムを支えてきた。

こうした仕組みに石油などエネルギー資源が使えるのは、社会を維持するためにエネルギー資源がどうしても必要だからだ。エネルギー資源の取り引きは国と国を結びつける。アメリカがウクライナでクーデターを実行した一因は、ロシアとEUの天然ガス取引を潰すことにあった。さらに、ポーランドなどを使ってアメリカはノード・ストリーム2を葬り去ろうとしている。アメリカや日本が東シナ海を制圧し、中国の海上輸送路を支配しようとしている理由も同じだ。(了)    



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