愛詩tel by shigさんのサイトより
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<転載開始>

HEALTH PRESSより
2018.04.24

高齢でも若々しい「脳」を維持できる!? 今日から始める脳の老化対策とは?

 認知症の問題をいち早く取り上げ、1972年にベストセラーとなった有吉佐和子の長編小説『恍惚の人』。その英訳名は『The Twilight Years』という――。

 いまや「ボケ老人」の俗称も死語と化し、「認知症」の呼び名が定着したが、
それでもやはり「The Twilight Years(黄昏時)」という表現のほうが何倍も洒落ている。

 その黄昏現象の呼び名は別としても、人間も高齢になると「脳細胞が減る一方で、決して増えることはない」、そう考えて疑わないというのが一般的な脳(細胞)の捉え方だろう。

 ところが、その一般常識を覆すに足る新知見が『Cell Stem Cell』(4月5日オンライン版)に掲載されて話題を集めている。

 これは急死した各世代の男女28人(14~79歳)の脳の海馬を剖検を経て、米コロンビア大学の研究陣が導いたかなり画期的な結論である。

 サルやマウスを用いた従来の基礎研究では、高齢を迎えるに従って脳細胞を新しく生成する能力は失われることが示されてきた。
ところがヒトの脳の研究においては異なる結果が得られてきたものの、結論には至っていなかった……。
 

高齢者も海馬で新しい神経細胞を生成

 脳の海馬はヒトの記憶や学習に重要な役割を担う。
その海馬で、前駆細胞から新しい神経細胞(ニューロン)を生成する能力がある。
その点は高齢者においても若い人と変わらない可能性が強い――。

 このような示唆が、今回の研究でなされたのだ。

 28人の剖検対象者には、「認知症」やその他の神経疾患、精神病性障害の診断を受けた人は皆無だった。

 剖検に際し、高齢層と若者層の脳を比較した結果、中間型の前駆細胞と未熟な神経細胞がほぼ同数見つかった。
加えて、海馬の容量に関しても年齢における差はとくに見られないとの結論も得られた。

 ちなみに神経細胞は、電気信号を発して情報のやりとりを行なう特殊性に富み、脳を構成するいわば「主役」だ。
その数は大脳で数百個、小脳で1000臆個、脳全体では千数百臆個にものぼる。

 一方、前駆細胞は、幹細胞から発生し、体を構成する最終分化細胞へと分化することのできる中間位置の細胞だ。
主に、古くなったり傷ついたりした組織の再生に利用される。

 研究を主導した同大学准教授のMaura Boldrini氏は、成果の意義を次にように語る。

 「今回の結果は、ヒトの場合は高齢になっても脳内に前駆細胞が存在することを示唆できた。これは高齢者にとって朗報と呼べるだろう」

 ただし、健康な79歳の人の脳と、50歳も開きのある29歳の若々しい人の脳とが、「全く同じでいうわけではない」と、Boldrini氏は説明する。
 

「若々しい海馬」を維持している高齢者の生活習慣とは?

 今回の研究では、高齢者の脳においては「血管新生」が少なく、一部の海馬領域については静止期(G0期:細胞分裂も分裂準備も行なわれていない状態、ないしは細胞周期から分かれた活動停止状態)の前駆細胞ポールが小さいことも判明した。

 米ウェイル・コーネル医科大学のEzriel Kornel氏は、今回の知見に関して専門家の立場から「高齢者の脳においても、若い人の脳と同様に新しい神経細胞同士が信号を伝達したり、機能したりするものなのかどうか。その点は詳らかにされていない」と指摘。

 反面、Kornel氏は「彼らの成果を有望視している」という評価派の一人として、こう語る。

 「高齢者の脳において神経細胞を生成させ、細胞同士の信号伝達を促進する因子に関してはさらに研究を進めていく必要性と意義は大いにあるだろう。私の立場から願わくば、健康な高齢者と認知症の高齢者同士の脳を比較することにも期待したい」

 こうした意見に当のBoldrini氏も同意を示しており、次のような見解を述べている。

 「アルツハイマー病の死亡例として、脳の海馬においては神経細胞の数が減ることが従来の研究で判っている。しかし、その理由がはたして神経細胞が生成されなくなったためなのか、神経細胞が死滅した結果によるものなのか、その点は明らかにされていない」

 その点も、今後、専門家筋が期待する比較研究を実施すれば、「高齢でも認知機能が衰えない人がいる理由を突きとめられる可能性」や「新しい認知症治療の開発につながる可能性がある」と言及する。

 そしてBoldrini氏は「高齢になっても若々しい海馬を維持している人が実践している生活習慣を知ることも大切だろう」と加える。
 

今日から始める脳の老化対策

 多くの示唆や研究報告が寄せられるアルツハイマー病協会(Alzheimer’s Association)によれば、認知症リスクとの関連で推奨されている生活習慣例は下記のような事項だ。

 ①喫煙をしない

 ②適正体重や正常血圧の維持

 ③健康的な食生活

 ④定期的な運動

 ⑤社会活動や知的活動

 さらに、ニューロジェネシス(神経新生)を研究する神経科学者が提唱している「神経細胞を増やすための習慣」を補足紹介しておけば、

 ⑥20~30%のカロリー制限

 ⑦(食事と食事の間隔を空けるなどの)断続的断食法

 ⑧(サーモンなどの)脂身の多い魚に含まれるオメガ3脂肪酸の摂取

 ⑨ブルーベリーやダークチョコレートに含まれるフラボノイドの摂取

 対して、飽和脂肪酸の摂り過ぎや飲み過ぎは、「神経細胞の形成」に悪影響を与える食習慣となる。

 海馬の神経細胞の生成も「一日にして成らず」、生活習慣の見直し時期に、それこそ「年齢差」はない。
(文=編集部)


<転載終了>