匿名さんより情報を頂きました。

ダイヤモンド・オンラインさんのサイトより
https://diamond.jp/articles/-/113889
<転載開始>
2017.1.12 5:00

新年早々、カジノ関連で「政治的意図」がぷんぷん臭う記事が出た。暴力団が暗躍するとして、警察当局が警戒を強めているというニュースだ。しかし、周辺事情を丹念に読み解けば、実はOBの天下り先不足に困っている警察がカジノを“活用”しようとしているのではないか、と考えられる。(ノンフィクションライター 窪田順生)

警察の「政治的意図」が臭う
新年早々に出た記事

競輪とオートレースは経産省、競艇は国交省、競馬は農水省、TOTOは文科省で宝くじは総務省が所管、そしてパチンコは風営法のもとで警察が指導・管理――「ギャンブル=お上の利権」という構図は日本では当たり前だが、海外に目を転じればカジノ運営は相当に厳格なルールで行われており、どこかの役所が権限を掌握して天下り先を確保できるような代物ではない。当然、日本のカジノでも同様の仕組みづくりを前提として議論が進められているのだが…

 昨年、本連載の記事『マスコミがカジノ解禁法案で犯した情報操作の罪深さ』で、IR推進法が成立したことでさまざまな形での「情報戦」が激化していくだろうと予想をしたが、さっそくその口火が切って落とされたようだ。

 《カジノ解禁「新たなシノギ」 暴力団手ぐすね…周辺職参入、貸金業、資金洗浄》(産経ニュース1月9日)

 ヤフートピックスに載っていたのでお読みになった方も多いと思うが、要するに暴力団がカジノや、その周辺産業に参入しようと虎視眈々と目論んでいるため、警察当局が警戒し、暴力団排除の仕組みの検討を始めているという記事だ。

 これのどこが「情報戦」なのだ、我々の安全を守る警察官のみなさんの頑張りを国民に教えてくれる立派なニュースじゃないか、というお叱りの声が聞こえてきそうだが、記事に登場する警察官僚の方たちの発言をかみしめていただくと、そこには胸焼けしそうなほどこってりとした「政治的意図」が込められていることがわかる。

 まず代表的なのは、「捜査幹部」なる人物の、「時間はまだある。骨抜きにされないような対策を十分練れば、暴力団の介入は防げるはずだ」という発言と、昨年12月15日に坂口正芳警察庁長官が記者会見で述べた「暴力団排除や風俗環境の保持などの対策を検討する必要がある」という発言だ。

 この2つの発言を耳にして、このような印象を抱く方が多いのではないだろうか。

 “ああ、カジノが解禁されたら、そこに反社会勢力が入り込まないように目を光らせるのは、やっぱり警察の役目なんだなあ”

 だが、これは完全なミスリードだ。近く策定されるIR実施法のなかでは、「カジノ」の規制は、警察組織が主導権を握れるようなものになっていない。

 推進法を提出した国際観光産業振興議員連盟(以下、IR議連)の「IR実施法に関する基本的な考え方」(以下、実施法の考え方)には、カジノの規制と監視は、「立法府・行政府から独立した権限を保持する」という「カジノ管理委員会」を内閣府の外局に設ける、とあり、公正取引委員会のような「三条委員会」になる。

日本の公営ギャンブルと
世界のカジノの違い

 つまり、全国都道府県の警察は、この独立機関に「協力」する連携先のひとつに過ぎないのだ。

「えぇ!そうなの?」とビックリする人も多いだろうが無理もない。実はこのあたりは、マスコミ業界でさえあまり理解が進んでおらず、IR推進法が通過する際に筆者のもとに取材にきた記者さんたちの中にも、こういう質問をしてくる人がちょくちょくいた。

「カジノができたらパチンコみたいに警察の利権になるんですよね?」

 心情はよく理解できる。

「ギャンブル=お上の利権」という構図は、「日本人の常識」といっても差し支えないだろう。公営ギャンブルの競輪とオートレースは経済産業省、同じく競艇は国土交通省、競馬は農林水産省、TOTOは文部科学省、宝くじは総務省が、それぞれ所管している。そして、「民営ギャンブル」であるパチンコは風営法のもと、警察が指導・監督している。カジノにはパチンコメーカーが積極的に参入しているイメージがあるからやっぱり警察のシマでしょ、と思うのは自然の流れだ。

 しかし残念ながら、もしそのようなことになったら、日本は世界中から笑い者になる。

 カジノを運営しているのはマフィアのボス、というのはもはやハリウッド映画の中だけの話であって、ほとんどの国ではネバダ州ラスベガスのカジノ規制にならって、先ほどの「カジノ管理委員会」のような独立機関を設け、事業者オーナーの個人資産から反社会勢力との関係まで、すべてチェックされるなどの厳しい規制が敷かれている。そこまで民間に厳しさを求めるのだから当然、規制する側も丸裸にされる。

 そういう「世界の常識」に反し、どこかの役所がすべての権限を掌握して、アメとムチを使い分けながら、退職者の再就職先として確保する、みたいな「癒着」がまかりとおるような制度設計をしたら「日本の官僚の腐敗ぶりはハンパないね」と、諸外国からバカにされるのは間違いないのだ。

「捜査幹部」は声高に
暴力団のリスクを叫ぶが…

 日本のカジノ規制の方向性をご理解していただくと、さらにこの記事のなかにちりばめられた「政治的意図」に気づかされるだろう。たとえば、「捜査幹部」がこのようなこともおっしゃっている。

「皮肉な言い方だが、国内で唯一、カジノを運営した経験があるのは暴力団。そのノウハウを使って関与を試みるはずだ」

 先ほども申し上げたように、これから日本にできる「カジノ」は、これまでの日本国内の企業や経営者が味わったことがないような厳しい規制の下で運営される。「実施法の考え方」でも、カジノに機器やサービスを納入する業者は、企業だけではなく個人も「国際基準」と同等の審査をおこなう、としている。

 一方、暴力団が運営してきたのは、法律も規制も無視した「違法カジノ」である。その運営ノウハウがIRにおいて、まったく役に立たないとまでは言わないが、現実問題としてノウハウはまったく異なる。つまり、先の「捜査幹部」の見立ては、「ヤミ金のノウハウを使えば、メガバンクに入っても頭取くらいまでは出世しますよ」というのと同じくらい、飛躍したロジックなのだ。

「国際基準」では、反社会勢力との関係があった時点で、カジノライセンスが剥奪される。果たして、そんな大きなリスクをとってまで、暴力団の違法カジノ運営ノウハウが欲しい事業者などいるのか。ましてや、世界中でカジノ運営をして独自のノウハウを有するラスベガス・サンズやMGMリゾーツのようなIRオペレーターからすれば、日本の“YAKUZA”など「百害あって一利なし」の存在だ。

 カジノには、まったく暴力団が関与する恐れなどないと言いたいのではない。「実施法の考え方」でも、「入場者全員の本人確認を義務付ける」とあるように、暴力団関係者の排除を徹底しているが、ジャンケット(ハイローラーと呼ばれる、高額の賭け金で遊ぶギャンブラーを斡旋する業者)や高額のヤミ金など、「カジノの外」では、暴力団が暗躍できるようなシノギがゴロゴロあるからだ。

 ただ、現時点で想定されるカジノ規制を踏まえると、「連携先」のひとつでしかない警察の幹部たちがここまで声高に「暴力団リスク」を訴える記事が出てくるのは、明らかに「不自然」だ。

パチンコ店激減で
警察OBの再就職が危機に

 警察幹部たちが、こういう「不自然」な言動に走る「動機」はある。この記事と時を同じくして、こんなニュースをご覧になってはいないだろうか。

 《全国のパチンコ店が遂に一万店舗を割る。止まらない店舗減少の流れ》(ハーバービジネスオンライン1月9日)

 全日本遊技事業協同組合連合会(通称:全日遊連)の発表によれば、加盟店舗数が16年11月末時点で1万店舗を割って9993店舗になった、というのだ。

 若者のクルマ離れが叫ばれているが、離れっぷりで言えばパチンコの方が深刻で、20代の新客は激減している。最盛期の1995年に全国に1万8200店舗あった店舗が、この20年で45%まで減少した。

 そう言うと、もうピンときただろう。先ほどの記者さんが質問をしてきたように、パチンコといえば警察官の再就職先にもなってきたのはご存じのとおりである。つまり、パチンコ店舗が減少していることで、警察OBたちの雇用が「危機」に瀕しているのだ。

 団塊世代を超えてピークは過ぎたが、実は警察は「大量退職時代」を迎えている。今でも全国の警察では、年間およそ1万人弱が退職者となっている。

 そこで悩ましいのが再雇用先だ。警察幹部たちは銀行をはじめ、名だたる大企業の総務部などで代々引き継がれる椅子に座れるが、一般の警察官たちの行き場は十分と言えないのが現状だ。そこにパチンコ店が減るというのは、かなり苦しい。

「そんなの自分でどうにかするしかないでしょ」と思うかもしれないが、公務員の再雇用先は、組織が紹介しなくてはならないという不文律がある。その「約束」があるから、組織としてのガバナンスが保たれている側面もある。つまり、毎年膨大な数の警察OBを生み出す警察にとって、大規模で安定した雇用先の確保というのは、喫緊の課題なのだ。

暴力団のいるところに
警察官の仕事がある

 そういう警察の内情を踏まえて、再度この記事を読むとまったく趣が違う。

「儲かる商売に暴力団は目を付ける。カジノであろうがなんであろうが関係ない」とうそぶく「指定暴力団幹部」が登場するほかには、これまで紹介したような警察幹部しか登場しない。警察担当記者が書いたのは明らかだ。

 官僚が記者を利用して、自分たちの組織を利する「世論誘導」をおこなう、というのは霞が関では珍しくない。むしろ、「常套手段」といっていい。

 暴排条例の後、警察OBを受け入れる企業が増えたように、暴力団リスクのあるところには、常に警察OBのニーズが生まれる。これは裏を返せば、どうしても警察OBの椅子をつくりたいのなら、暴力団の恐怖を煽ればいいということでもある。

 そんなの陰謀論だと呆れるかもしれないが、事実として、カジノやIRのまわりは警察OBが活躍できそうな「宝の山」がある。

 先ほども申し上げたように、カジノの暴力団リスクは周辺にこそ多い。もしそのあたりを監視・取締りするのに警察の手が足りないとなれば、警察OBを中心として組織をつくろう、となるのは容易に想像できる。カジノに暴力団が関与するのでは、という心配がどうしても拭えないなら、カジノ関連企業にはすべて警察OBを配置すべし、なんて意見も出るかもしれない。

 そういう「利権化」は無理だとさっきお前が言っていただろ、というツッコミが聞こえてきそうだが、実はひとつだけ抜け道がある。「カジノ管理委員会」は確かに独立した機関だが、その委員の中に警察関係者の椅子をいくつかねじこめば、かなり話は変わってくるのだ。

 それを踏まえて、冒頭でも引用した「捜査幹部」の言葉を再度かみしめていただきたい。

「時間はまだある。骨抜きにされないような対策を十分練れば、暴力団の介入は防げるはずだ」

 まだ間に合う。我々の「椅子」を用意しておかないと、後できっと後悔するぞ――。私にはそんな風に聞こえてならない。「新たなシノギ」として手ぐすねをひいているのは、実は暴力団よりも厄介な人たちなのではないだろうか。


 <転載終了>