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<転載開始>

町山智浩 ·アルメニアとアゼルバイジャンが戦闘、多数死傷 係争地めぐり
画像提供,EPA 画像説明, アゼルバイジャンが公開した画像。アルメニアの武装車両が攻撃されたとした
長年にわたり領土争いを続けているアルメニアとアゼルバイジャンが27日、近年で最大規模の武力衝突を起こし、少なくとも23人の死者が出たと伝えられている。
ともに旧ソ連を構成していた両国は、ナゴルノカラバフ地域の帰属をめぐって30年以上対立している。
同地域はアゼルバイジャンの一部として国際的に認められているが、アルメニア系の住民が実効支配している。
1990年代に独立を宣言した際には、戦闘で数万人の死者が出た。その後も散発的に戦闘を繰り返しており、今年7月の国境地帯での衝突では16人が死亡。アゼルバイジャンの首都バクーでは近年最大規模のデモが起こり、ナゴルノカラバフの奪回を訴えた。
ヘリコプターを撃墜
アルメニア防衛省によると、ナゴルノカラバフの主要都市ステパナケルトを含む、民間人居住地域で27日朝、攻撃が始まった。
アルメニアはヘリコプター2機とドローン3機を撃ち落とし、戦車3機を破壊したと述べた。

画像提供,REUTERS 画像説明, アルメニアは国家総動員を宣言した
アルメニアの爆撃により、アゼルバイジャンの1家族の5人が死亡したとされる。
ナゴルノカラバフの独立派は、同派の部隊の16人と女性と子ども1人ずつの計18人が死亡し、約100人が負傷したと述べた。
戒厳令が敷かれる
アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領は27日、「私たちの反撃により、不正な30年にわたる占拠は終わる」と述べ、再びナゴルノカラバフを掌握することへの自信を示した。(★注、案外アリエフ大統領は正直で、事実上自国軍による奇襲攻撃を認めている)
アゼルバイジャンとアルメニアの一部とナゴルノカラバフには、軍が非常事態として統治権を握る戒厳令が出されている。
同国のニコル・パシニャン首相は、アゼルバイジャンによる「計画的な侵攻」があったとし、「神聖な祖国を守る用意をせよ」と呼びかけた。
また、「大規模戦争」が目前に迫っているとし、国際社会に地域の安定への協力を求めた。
エネルギー市場に影響か
両国がある南コーカサスは、カスピ海の原油や天然ガスを国際市場に運ぶパイプラインが延びている。そのため、この地域での戦闘行為は、エネルギー市場に影響を及ぼす。
トルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領はアゼルバイジャンを支持すると表明。国際社会に対し、アゼルバイジャンによる「侵略と残虐行為との戦い」を支援するよう訴えた。アゼルバイジャンはトルコ系住民が大多数を占め、トルコとの関係が深い。
BBCのレイハン・ディミトリ・コーカサス特派員は、トルコの強力な支援が、アゼルバイジャンに大胆な行動を取らせた可能性があると解説した。
一方、アルメニアを支持するとされるロシアは、即時停戦と状況を沈静化させるための協議を求めた。
9月28日 BBC
100年前の第一次世界大戦からのトルコ(イスラム教)とアルメニア(キリスト教)の遺恨
旧約聖書のノアの箱舟が流れ着いたのがトルコ北東部のアララト山で、キリスト教徒のアルメニア人が住んでいたが第一次世界大戦では独立を求めて蜂起、トルコ軍の大弾圧で沢山の死亡者を出した、いわゆるアルメニア人大虐殺が起きている。(★注、強制移住や虐殺で150万人が死んだと言われている)
アゼルバイジャンはその国旗を見れば明らかだがトルコ系のイスラム教徒なので1991年のソ連崩壊後のアルメニア人自治区ナゴルノカラバフの(アルメニア本国への帰属を求める)独立戦争が発生。2~3万人もの戦死者を出す激しい戦いになるがの1994年にロシアの仲介で一応停戦が成立していた。
1991年ソ連解体後にナゴルノ・カラバフ共和国の独立を宣言し、2017年2月にはアルツァフ共和国となるが、停戦違反は一定の間隔で発生して2016年と2020年7月に発生した最も重大な武力衝突では数百人の兵士と民間人が死亡した。
(イスラエルや)トルコはアゼルバイジャン軍への軍事訓練や装備品への供給に加え、アゼルバイジャンへ最新無人機(ドローン)の輸出も開始。2020年7月から9月にかけてアゼルバイジャンはトルコ陸軍と空軍が参加した一連の軍事演習を実施、アゼルバイジャン軍の戦力を高めて領土紛争に決着をつける決意を高めたと考えられる。
初戦の電撃戦でナゴルノ・カラバフの要衝を奪取したアゼルバイジャン軍
2008年の北京オリンピック開会式の式典に合わせて(プーチン大統領の不在を突いて)アメリカやイスラエル軍支援で強化されたグルジア(紛争後に英語読みのジョージアに変更)軍が(分離独立をめざす)南オセチアに電撃攻撃を仕掛けた12年前の二番煎じ。12年前にはグルジア側が期待したアメリカ海軍の軍事支援は(黒海には入ったが)さすがに躊躇したので、体制を立て直して南オセチア駐留のロシア軍(平和維持軍)の反撃にあいグルジア軍は敗走する。(★注、この時ロシア軍は重砲の射程距離の20キロ圏を確保するが、それ以上は進軍しなかった)
ただし、名産がワイン程度のグルジアとは大違いで産油国のアゼルバイジャンでは人口はともかく資金に大きな差がある。(★注、アゼルバイジャンの最新ドローンVs,アルメニアの戦車だけの短期の空中戦なら間違いなくアゼルバイジャン側が大勝するが、長期の地上戦なら泥沼になる)
第二次世界大戦では陸上ではナチスドイツの機械化部隊(戦車隊の電撃戦)が、海上では大日本帝国の山本五十六提督の航空機による魚雷攻撃で戦場の主役が大きく変化した
WWⅡの1941年のバルバロッサ作戦(ソ連奇襲攻撃)ではドイツ機械化部隊に対して「守り」に徹する縦深陣地が主作戦のソ連軍が敗走し、真珠湾奇襲攻撃やマレー沖海戦で巨大な戦艦や空母が安上がりな航空機からの魚雷で簡単に沈没。米英軍は大損害を出すが、ドイツや日本軍が一方的に勝てたのは半年だけ。
その後はドイツや日本軍など枢軸国の最新作戦は連合国軍のソ連やアメリカ軍が採用して形勢は逆転。その後はドイツや日本軍が敗走を重ねて最後は無条件降伏する。(もしも、今回のアゼルバイジャン軍のドローンによる電撃戦でアルメニアに勝利すると、今までの「戦争」の形態や常識を大きく変える可能性があるのですから何とも不気味。今後の推移が注目される)
黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス(カフカス)は文明の十字路でもあるがエルブルス山標高5,642mはヨーロッパの最高峰でもある。民族と宗教が別々の小集団が急峻な地形で分けられているが、案外と隣同士は仲が悪いのが相場で、ソ連崩壊でパンドラの箱を開けてしまったのである。
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