https://news.livedoor.com/article/detail/19009650/
<転載開始>
何と言ってもトランプ大統領は、国際関係をカネ勘定で数える商人だし、中国ビジネスで儲けたいと考えている。それにトランプが大統領でいる限り、ホワイトハウスは混乱し、アメリカは分断され、その結果、凋落していくのは自明の理だ。
逆にバイデン大統領が誕生した場合、第二次世界大戦後にアメリカが展開してきたオーソドックスな理念外交を展開するだろう。EUやアジアの同盟国との協調を強め、世界中を巻き込んで中国を包囲してくるだろう。また、民主党は基本的に人権問題に敏感なので、チベット、ウイグル、香港など、人権問題での中国批判を強めるだろう」
実際、アメリカで興味深い現象が起こっている。黒人やヒスパニック系など、非白人グループは、基本的にバイデン支持である。ところが、300万人の中華系グループだけは、トランプ支持なのだ。
「単純に考えれば、大統領自身がコロナウイルスにかかってしまったというのは、共和党にとってマイナスで、バイデン民主党の方に有利に働くだろう。だが今後、トランプ大統領が復帰を果たして、『オレはコロナから生還した!』と、自らの感染を選挙利用するかもしれない。それによってトランプ支持が増えることも考えられる。
中国としては引き続き推移を見ていくしかないが、少なくとも『6日の謀議』には、トランプ大統領のコロナ感染は逆風となるだろう」(前出の中国人)
「中国包囲網」への警戒感
「6日の謀議」というのは、東京で10月6日に開催される日米豪印外相会合のことである。
日本の茂木敏充外相、アメリカのマイク・ポンペオ国務長官、オーストラリアのマリス・ペイン外相兼女性相、インドのスブラマニヤン・ジャイシャンカル外相が一堂に会し、「自由で開かれたインド太平洋地域」について話し合うのだ。つまりは、「中国包囲網会議」である。
9月29日の中国外交部定例会見で、『ブルームバーグ』の記者から「日本が来週、米日印豪4ヵ国外相会合を計画しているが、どういう見解を持っているか?」と問われ、汪文斌報道官は厳しい口調でこう答えている。

「思うに、提携とダブルウインというのが、いまの時代の潮流であり世界の大勢だ。いかなる多国間や諸国の提携も、開放・包容・透明の精神に合致するものでなければならない。封鎖を画策したり、排他的な『友達の輪』を作ってはならないということだ。すべては地域の国家間の相互理解と信任の増進をサポートするものであるべきで、第三者を対象にしたり、第三者の利益を損なうものであってはならない」
このように、中国としては大いなる警戒感を見せているのである。
一方、主催者の茂木敏充外相は、同日の記者会見でこう説明している。
「今回の外相会合は、新型コロナの発生・拡大後、日本で初めて開催をする閣僚レベルでの国際会議でありまして、注目度も高く、新型コロナの発生・拡大に伴って顕在化した諸課題への対応であったり、地域情勢について志を同じくする4ヵ国の外相が東京に集まり、対面で意見交換を行うことは、まさに時宜を得たものであると考えております。またこの機会に、ポンペオ長官をはじめとする各国外相との二国間の会談も行いたいと思っております。
『自由で開かれたインド太平洋』のビジョンは、ポスト・コロナの世界において、益々重要性を増しておりまして、今回の外相会合では、その実現に向け、より多くの国々と一層連携を深めていくことの重要性、これも確認したいと思っております」
このように、主催者の茂木外相は、「中国包囲網会議」とは、一言も言っていない。コロナ対策と「自由で開かれたインド太平洋」の2点が、主な議題だということだ。
だが、この4ヵ国の「共通の悩み」と言えば、台頭する中国の強硬外交である。アメリカと中国のバトルについては、日本で日々大きなニュースになっているが、オーストラリアとインドについては断片的である。そこで、以下、昨今の「中豪バトル」と「中印バトル」についてまとめてみた。
中国vs.オーストラリア
もともとは、オーストラリアのスコット・モリソン首相が4月23日の会見で述べた一言が、発端だった。
「新型コロナウイルスの感染拡大の原因に関する国際的な調査を行い、WHO(世界保健機関)の全加盟国がこれに協力すべきだ。中国もこの目標に協力することを望む」
モリソン首相は、前日にトランプ大統領と電話会談を行い、フランスやドイツなどとも共有した提案だと述べた。要は感染源である中国の責任を追及し、謝罪と賠償を求めようということだ。
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これに対し、中国外務省の耿爽報道官は同日の会見で反論した。
「オーストラリアが提案した、いわゆる独立した調査というのは、実際には政治的操作だ。オーストラリアは、イデオロギー的な偏見を捨てなさい!」
中国は同日、WHOに3000万ドルの追加寄付を行うとも発表した。それでも怒りの収まらない中国は、駐オーストラリアの成競業中国大使が4月29日、現地の『ファイナンシャル・レビュー』紙のインタビューを受け、こう吠えた。
「オーストラリアの提議は、第一に何の実質的な進展も見ないはずだ。第二に、中国人が強烈な不満を持ち、深い失望を抱くだろう。長期的に見れば、そのような感情が悪化し続ければ、中国人はこう思うだろう。なぜわれわれは、友好的でない国に行かねばならないのか? 敵対的な国に子供を留学に出す必要があるのか? なぜわれわれはオーストラリアのワインを飲み、ビーフを食べているのか? 他に選択肢はないのか?」
5月11日、中国はオーストラリアの大手食肉輸出業者4社の取引を、事実上禁止した。4社で中国に輸出するオーストラリア産ビーフの3分の1を占める。
続いて5月19日から、中国はオーストラリア産の大麦に対して、73.6%の反ダンピング税と6.9%の反補助税金を課した。合わせて80.5%という2倍近い額で、期間は5年である。
さらに8月18日には中国商務部が、オーストラリア産ワインについて、反ダンピングの調査を開始したと発表した。大麦、牛肉、ワイン、鉄鋼というオーストラリアの対中4大輸出品のうち、3つ目の制裁に乗り出したのである。
中国の措置は、モノの制裁ばかりではない。6月5日、中国文化観光部は「オーストラリアへの渡航自粛」を勧告した。
オーストラリアの外務貿易省も7月7日、「恣意的な拘束リスクの可能性がある」として、中国への渡航自粛を勧告した。
8月31日には、オーストラリア外務省が、オーストラリア国籍の中国環球電視網(CGTN)司会者、成蕾氏が8月14日に中国当局によって拘束されたと発表した。9月8日、中国外交部の趙立堅報道官は、「中国の国家安全保障を危険にさらす犯罪行為の疑いにより強制措置を取った」と説明した。
同日、同様に取り調べを受けたオーストラリア・メディアの中国特派員2人が緊急出国し、中国駐在のオーストラリア・メディアの特派員はゼロになった。その一人は帰国後、「ようやく本当の法治国家にたどり着いた」と述べた。
中国vs.インド
6月15日に、標高約4200mのヒマラヤ山脈の中印国境沿いのラダック地方ガルワン渓谷で、中印両軍による45年ぶりの戦闘が発生。インド側からの発表や報道によれば、インド側の死者は20人、中国側は約40人に上った。
中印は、国境地帯で火器兵器の使用を互いに禁じている。中国側は、インド兵による実効支配ラインを越えた「挑発」が戦闘の引き金になったと主張するが、ロイター通信は、死亡したインド人兵士たちの遺族の言葉を伝えた。
「息子は暗闇の中で金属製のくぎで喉を切られた」
「兵士のうち3人は首の動脈が切断されていた」
「2人には頭部に鋭利もしくは先のとがった物体による傷があった」
「丸腰のインド兵は鉄棒や釘の付いた棍棒を持った中国兵に襲われた」
「一部の(インド)兵士は急流のガルワン川に突き落とされた」……
ナレンドラ・モディ首相が7月3日、ラダックを電撃訪問し、「歴史は拡張主義勢力の敗北や後退を目撃しており、全世界が不正行為に反対している」と演説した。
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この戦闘でインド国内の反中感情に火が付き、6月29日にインド政府は、「59種類のモバイルアプリの禁止」を発表。それらはTikTokを始め、すべて中国系のアプリだった。
8月14日、『ブルームバーグ』が、「インド政府が5G(第5世代移動通信システム)の試行からファーウェイとZTEの中国企業を閉め出すことを決めた」と報道した。
8月31日になって再び、中国人民解放軍西部戦区の報道官が、「ヒマラヤ山脈地帯にあるパンゴン湖の湖岸で、インド軍の部隊が実効支配ラインを不法に越えた」と主張した。これに対しインド軍は、「29日夜から30日朝にかけて中国軍部隊が国境地帯で再び挑発的な軍事行動を始めたため、31日に追加部隊を派遣した」と説明した。
さらに9月8日、中国人民解放軍西部戦区報道官が、「バンコン湖の南岸でインド軍が7日、実効支配ラインを越え、交渉のために近づいた中国の国境警備隊に発砲して威嚇した」とする非難声明を発表した。インドは6月15日の戦闘以降、自己防衛のための火器使用を認めている。これに対しインド軍報道官は、「発砲してきたのは中国軍の方で、インド軍ではない」と反論した。
こうした状況下で、インド政府は9月2日、追加で118種類の中国系モバイルアプリを禁止した。これによって、アリババ、テンセント、バイドゥのキャッシュレス決済アプリなどを含む主力アプリがすべて使用禁止となった。
9月10日、モスクワで行われたSCO(上海協力機構)外相会議に合わせて、中国の王毅外相とインドのジャイシャンカル外相が、約2時間にわたって会談した。
9月30日、中国外交部の汪文斌報道官は、次のように述べた。
「現在、中国とインドは、国境事務交渉・協調作業枠組の第19回会議を行っているところだ。会議の重点的な討論内容は、(9月10日に)両国の外相がモスクワで合意した5つの共通認識を実行に移し、現場のその他の問題を研究、解決し、中印国境の情勢緩和と冷却化推進することだ」
インド太平洋版NATO「QUAD+」構想
このように、オーストラリアもインドも、中国とまさに一触即発の状態なのである。アメリカのトランプ政権の中国叩きも、周知のように大統領選が近づくにつれヒートアップしている。辛うじて中国と「正常な関係」を保っているのは、4ヵ国の中で日本だけというありさまだ。
だが日本も、尖閣諸島問題で、中国の脅威に直面している。
海上保安庁の発表によれば、9月には尖閣諸島の接続水域(24カイリ)に、中国の公船が1日、2日、6日を除く27日間、延べ95隻も進入している。10月は1日4隻、2日4隻、3日2隻、4日4隻だ。ただ、これまで頻繁に発生していた領海(12カイリ)への進入は、8月28日に2隻入ってきたのを最後に、自制している。
というわけで、ポンペオ米国務長官は、かねてからの構想である「QUAD+」(クアッド・プラス)を構築しようと、5日に東京にやって来たと言える。
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「QUAD+」は、いわばインド太平洋版NATO(北大西洋条約機構)である。ロシアの脅威に対抗するため、アメリカとEUがNATOという軍事同盟を結んでいるように、中国の脅威に対抗すべく、アメリカとインド太平洋諸国の国々が、集団安保体制を構築しようという狙いだ。
具体的には、アメリカという中心国のもとに、日本、オーストラリア、インドが加わり、4ヵ国安全保障体制を作る。そして、さらにプラスアルファとして、韓国、ベトナム、ニュージーランド……そして場合によっては台湾も入るというものだ。
いまのところ、この構想にあからさまに異を唱えているのは、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権くらいだ。それだけ、各国・地域とも、中国の脅威を実感しているということである。
まずはその第一歩として、この秋にインド洋で、4ヵ国による合同の海上訓練「Malabar」(マラバール)を行うことが見込まれる。1992年にインド海軍がアメリカ海軍と共同で開始し、2015年から日本の海上自衛隊も加わった。6月4日にモリソン首相とモディ首相が豪印電話首脳会談を開いた際、オーストラリアの初参加も内定した模様だ。
日本は2017年9月6日に、オーストラリアと「日・豪物品役務相互提供協定」を発効させている。これはオーストラリア軍と自衛隊が、相互に物品や役務を提供し合うという「準同盟的協定」だ。
9月9日には、日本はインドと、同様の「日・印物品役務相互提供協定」を締結した。両国が批准して1ヵ月後に発効し、期間は10年間だ。インドとオーストラリア間でも、6月4日に同様の協定を結んでいる。いまや日米豪印の安全保障関係は、緊密化の一途を辿っているのだ。
菅新政権にいきなりの試練
だが、この「QUAD+」を実現するには、何よりもアメリカの強力なリーダーシップが必要だ。ポンペオ国務長官は先走っているが、トランプ大統領が新型コロナに感染したことで、11月3日の大統領選で、黄信号が灯っている。
もちろん、バイデン候補が勝利しても同様の流れになる可能性はあるが、旗振り役のポンペオ国務長官以下、ワシントンの幹部スタッフは総入れ替えとなる。そのため、進行は遅れるだろう。中国側からすれば、楔を打ち込む時間的猶予を与えられることになる。
また、中国も10月26日から29日まで、北京で「5中全会」(中国共産党第19期中央委員会第5回全体会議)を開くと発表しており、習近平体制のさらなる「強軍・強国建設路線」が承認されるものと見込まれる。「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」のもと、南シナ海と東シナ海での支配強化に乗り出すだろう。そこには、台湾統一も視野に入れている。
前出の中国人が語る。
「ポンペオ国務長官は当初、日本訪問後に韓国とモンゴルを訪問予定だったが、トランプ大統領のコロナ感染で、韓国とモンゴルの訪問を取りやめた。われわれが密かに恐れていたのは、ポンペオ長官の台湾への『サプライズ訪問』だったが、その可能性もなくなった。大統領の容態が不安定とあっては、ポンペオ国務長官の日本での存在感も半減するというものだ」
いずれにしても、先月発足したばかりの菅義偉政権は、いきなり米中新冷戦の渦中に放り込まれることになる。
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