逝きし世の面影さんのサイトより
https://blog.goo.ne.jp/syokunin-2008/e/50eebc88b434f1f0143490e102143263
<転載開始>


80年以上前の第2次世界大戦中、チュ-リングは解読不可能と言われたナチス・ドイツの暗号機エニグマ(画像はレプリカ)を破り、連合国を勝利に導いた。

学術会議問題でデマを流す国会議員が知らないこと 軍事研究とチューリングの悲劇

週刊朝日

日本学術会議推薦の会員候補6人を菅義偉首相が任命拒否し、河野太郎行政改革相が学術会議の運営見直し言い出した。甘利明元経済財政相が学術会議は「中国の軍事研究に積極的に協力している」との根拠がないデマを流すが「間接的に協力しているように映ります」と小幅修正。フジテレビは、学術会議の会員になれば自動的に日本学士院の会員になれ、年間250万円の年金がもらえると報じ、細野豪志、長島昭久両衆院議員も同じデマをツイッターで拡散したが、フジテレビは翌日間違いを訂正。細野と長島も謝罪した。

与党がデマ“口撃”を続ける原因とはなにか。

学術会議が2017年3月に軍事研究に反対する声明を出したが、この声明は、防衛省が2015年に「安全保障技術研究推進制度」に伴って検討され1950年と1967年に学術会議が発表した軍事研究に反対する声明を継承しているが、単純に軍事研究に反対しているわけではない。(★注、2016年6月24日学術会議会長大西隆は防衛省の「安全保障技術研究推進制度」に合わせて軍事研究の解禁に動いている)

任命拒否された1人、立命館大学の松宮孝明教授は、
「学術会議には、組織として軍事研究を禁止する権限はありません。一方で、この声明はおもに大学関係者に向けて発表されたもので、政府機関や民間企業は対象ではありません。ウラ読みをすれば、軍事研究をするなら、防衛省などが研究者を終身雇用して身分保障してやれば、ということかもしれません」

たしかに声明では、大学での軍事研究について<技術的・倫理的に審査する制度を設けるべき><研究の自主性・自律性、そして特に研究成果の公開性が担保されなければならない>と書かれているが、軍事研究を禁止する文言はない。それでも、科学者たちが軍事研究に慎重になるのはなぜか。

軍事研究は研究者のキャリアにならない危険性がある

軍事研究は、研究成果が先進的であるほど秘密性が求められ、特定秘密保護法では軍事技術に関連する研究成果や技術を『特定秘密』に指定でき、特定秘密になると研究者は成果を論文として公表出来ない。若い人は研究者としてのキャリア形成ができない。

軍事研究の歴史的な例では、英国の天才数学者であるアラン・チューリングの悲劇がある。
チューリングはコンピューター科学の基礎を築き、「人工知能の父」と呼ばれている。ベネディクト・カンバーバッチが主演した映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』のモデルにもなった。
チューリングは第二次世界大戦中に英国の暗号機関に雇われ、ドイツの暗号機「エニグマ」の解読に成功した。

しかし、英国はエニグマの解読に成功していたことを終戦後も国家秘密にし、その業績は親しい知人すら知らなかった。その後、チューリングは1952年に同性愛者であることで逮捕され、1954年に死去。死因は青酸カリが含まれたリンゴを食べたことによる自殺とされているが、他殺説も根強い。
第二次世界大戦で英国を勝利に導いた英雄であるチューリングだが、戦後に不遇な立場に置かれたことで英国政府は次第に彼を警戒し、監視対象にした。エニグマの秘密が旧ソ連などに流出することを恐れたためだ。その結果、チューリングの功績が広く世に知られるまでには、死後約20年の歳月がかかった。英国政府がチューリングに対する不当な扱いを公式に謝罪したのは2009年だった。
(抜粋)
10月14日 週刊朝日オンライン

フランケンシュタインの誘惑E+アラン・チューリング 2019年06月13日 | 社会・歴史

#11「強制終了 人工知能を予言した男」6月13日木曜 NHKEテレ1

今や我々の日常の中で活躍を始めている人工知能(AI)。今回は70年も前にこの人工知能を予言したイギリスの天才数学者アラン・チューリング! 第2次世界大戦中、解読不可能と言われたナチス・ドイツの暗号機エニグマを破り連合国を勝利に導いた。しかしその業績は軍事機密ゆえに戦後も封印され、チューリングが同性愛者として逮捕されたこともあって長く評価されなかった。彼の構想した人工知能、その先に何があるのか?



『連合国を勝利に導いた天才数学者アラン・チューリングの功績を、すべて闇に葬ったチャーチル』

世間からは世界一の先進国で民主主義の手本と見られているイギリスですが、実は1960年代でも聖書で禁止されているホモは犯罪で、世俗の刑事警察が同性愛を取り締まっていた。このため、第二次世界大戦で連合国を勝利に導いた国家英雄である天才数学者アラン・チューリングも逮捕、有罪となり薬物による去勢が行われ自殺に追い込まれる。享年41歳。
★注、
今までは偉大な科学者が暴走する科学史の話だった。ところが、今回は権力者が暴走して科学者を弾圧するという政治的話なので極めて歯切れが悪い。
NHKEテレではアラン・チューリングの功績を国家機密としてすべて抹殺した冷戦の生みの親であるイギリスのチャーチルの犯罪を闇に葬って仕舞うのですから怖ろしい。(怪物フランケンとはチャーチルのことだったとのオチ)

宗教(キリスト教)を理解することが日本人は一番苦手。一神教精神を無視しては根本を間違える。
宗教的戒律(同性愛)に寛容な日本と違い、欧米のホモは神に背く行為で色々な厳しい迫害がある。
2010年7月にプライベートジェットで極秘来日したが、関西空港ではビップ扱いでは無いため手荷物検査を受けて『二度と日本に来るか!』と怒鳴ったらしい。
ホモはカウンターカルチャーや既存の宗教的価値観に対するオルタナティブ的な抗議(反逆)の意味もあるが、自分自身に恋をしたギリシャ神話の美少年ナルシスの伝説のように究極の自己愛(ナルシズム)なのですね。
死の直前の劇痩せ写真ではワンピース様のものを着ているので多分彼もホモ。(妻と子供も居るので正確にはバイセクシャル)
それならオルタナティブ的で見かけが他と全く違うアップルのパソコンも、『愚かであれ』との彼の言葉も『毎日の死の予測』も、まったく別の宗教的に深刻な意味が含まれていることを暗示しているのでしょう。

『アメリカンドリームの影の部分(ヘイトクライム)』
日本では三輪明宏やマツコデラックス、お杉とピーコとかレーザーラモンHDなど、ホモは深刻な人権や『差別』ではなくて、『お笑い』以上の問題は何も無い。基本的に楽しい愉快な存在と看做されている
ところが欧米一神教社会では大違い、文字どおり命がけの危険な異端だった。
全米一有名な男性誌ハスラーを出版する実業家ラリー・フリントは極右原理主義者からの銃撃で命は取りとめたが下半身不随となっている。(ポルノ解禁のアメリカでもバイブルベルトの南部諸州では今でもハスラーなど男性誌は販売や流通が禁止)
衝撃的だったが映画イージーライダーで主人公のヒッピー達がまったく無関係な農民に突然銃撃されて殺される驚愕的なラストシーンの意味(アメリカで頻発するヘイトクライム)が、悲しいかなキリスト教の本質を知らない当時の日本人達は、誰一人も理解出来る者はいなかった。
ヒッピーは日本では単なる風俗程度だが、アメリカではオーソドックスな宗教的価値観に対するオルタナティブ的な異端な存在で、このハリウッド映画の描く様に『命がけ』の危険すぎる自己主張だった。
ヘイトクライム(憎悪犯罪)の危険性は、現在でも事情はそれ程変化はなくて『堕胎は殺人で神に背く行為である』と主張する宗教右派によって公立病院の爆破事件や産婦人科医師への銃撃事件が頻発している。ポルノやヒッピーなどオーソドックスで無いと看做されたもの、産婦人科医師であるとか黒人であるとかホモであるとかの理由で常に殺される危険性があるので、スティーブ・ジョブズもスタンフォード大の卒業式で語ったように『自分の死』を何時も意識していたのでしょう。
(抜粋)

中国「千人計画」で日本の技術が盗まれる 参加の東大名誉教授が告白「中国は楽園」

配信 デイリー新潮

菅義偉総理が、新会員候補の任命を拒否したことで大きな注目をあつめている日本学術会議。中国政府が推進する「千人計画」は、そのメンバーを含め日本人研究者も多数参加するプロジェクトだ。日本の科学技術が盗まれる可能性も囁かれる、その実態とは。

中国政府が2008年に開始した「千人計画」は、海外の優秀な研究者、技術者を誘致することを目的にしている。米国では「千人計画」に関連する中国へのスパイ容疑での摘発が相次いでおり、知的財産窃取のための計画として世界的に問題視されているのだ。  

今回、週刊新潮は中国の教育機関や論文などの情報を基に、「千人計画」に携わる日本の研究者を独自に特定。7月頃から接触を試みてきた。が、例えば、マイクロナノロボットや生物模倣ロボットシステムの権威で、日本学術会議の会員だった名城大学の福田敏男教授は再三の依頼に無回答だった。  

口を噤む研究者も少なくないなか、“隣国という気安さから新天地を選んだ”と取材に応じてくれたのは、東京大学名誉教授で物理学が専門の土井正男氏(72)だ。 「現在は北京航空航天大学の教授として、専門のソフトマター物理学を教えています。9年前に北京の理論物理学の研究所に呼ばれて連続講義をした際、知り合った中国の先生から『千人計画』に誘われまして」  

土井氏が論文リストを送ったところ、中国政府から招聘を受けることになった。

「東大は辞めても名誉教授という肩書しかくれませんでしたが、北京の大学は東大時代と同じポストで、待遇も少し多いくらい用意してくれました。普段は学生相手に講義をしなくてもよいし、日本の公的な科学研究費(科研費)にあたる『競争的資金』にもあたりました。私は中国語を書くことができないので、申請書類は准教授が代わりに出してくれました。日本では科研費をどうやって取るのかで皆が汲々としている。そういう意味ではまるで楽園ですね。面倒なことをやらずに学問に没頭できて本当に幸せです」

と喜びを隠さないのだ。とはいえ、土井氏が籍を置く大学は、日本でいうところの防衛大学。軍事研究も盛んと聞けば、自らの研究が悪用される懸念はなかったのか。

「よもや日本にそんな技術がありますかね? アメリカや日本が技術的に進んでいて、中国がスパイで盗んでいるという考えは間違いだと思います」  

土井氏は自身の研究が中国に盗用されるとはつゆほども考えていない。が、自由に研究させて、利用できるところを吸い上げることこそ、中国当局の狙いではないのか。  10月15日発売の週刊新潮では、土井氏と同じく「千人計画」に参加する他の研究者の証言も紹介。なぜ彼らは中国に渡り、怪しげなプロジェクトに参加することになったのか。その実態に迫る。
「週刊新潮」2020年10月22日号 

2002年小泉純一郎首相の日朝首脳会談(ピョンヤン宣言)から吹き荒れる北朝鮮バッシングで極限まで病的に右傾化した日本

ブログ管理者として記事の掲載では普通の大人の常識に反しあまりにも恥ずかしいので、ヘイトコメントの部分を抜くことも考えた。ところがヘイトを全部抜くと今回の週刊新潮の汚い記事の本質が丸々分からなくなる。(★注、仕方なく今回だけは例外的にヘイトコメントを含め全文掲載します。それにしても「病気である」「もう日本は終わっている」としか言葉もない)

軍事研究が問題なのは機密だから。科学の研究成果は広く公開されるのが大原則

右翼的な論調の新潮社が中国バッシングに走るのは分かるが、政府自民党までがネトウヨの真似では笑えない。日本が日没する国になっていたとの悲劇。年間たった10億円で程度の金(日本学術会議の年間予算)で科学者の頭を抑えるとの考えがいじましい。カネも出さない。ポストも用意しないでは国内が空洞化するのは止められないでしょう。

そもそも軍事研究が問題なのは、素晴らしい研究成果が全部軍事機密だから公開されないことに尽きるのである。この部分が無条件に研究成果を公開する科学の大原則とは正面からぶつかり科学進歩を妨害する。(★注、だから日本学術会議は軍事研究を戒めている)

それにしてもアメリカでイスラエル(ユダヤ)人脈が正常な米外交を、病的に大きく歪めるように、我が日本国では台湾人脈が日本外交を歪めていて正しくものが見えないのである。(★注、中国の「仙人計画」云々より、ノーベル賞学者が日本の待遇の悪さに呆れて、怒りか待遇面から不明だが日本国籍を捨ててアメリカ国籍になった青色ダイオード開発者の話は有名なのになぜ問題としないのか)

中国が警戒する男、大使になる 2020年10月14日NHK

「中国当局が警戒する人物」と評される外交官垂秀夫が、新内閣の発足と時を同じくして、新しい中国大使に任命された。巨大国家が警戒するほどの能力とはどのようなものなのか

中国大使に起用へ

7月15日、NHKは新しい中国大使に外務省の垂秀夫(59)が起用と報じた。

「中国関係を長くやってきた人間として、大使になるのは非常に光栄だ。積み重ねてきた知見、経験、人脈。いま発揮しないと、これまで何のためにやってきたのかとなる。私を養ってくれたのは日本国民の税金。国民にお返しするためにも、中国との関係でしっかり仕事をしていく」

垂の経歴は異彩を放っている。
大学時代、ラグビーに打ち込んだ垂は、外務省入省後、それまでまったく学習経験のなかった中国語を専門の語学に選んだ。以来、南京大学への留学を経て、赴任地は北京、香港、台湾という中国語圏のみ。台湾は2回、北京での勤務は今回で実に4回目となる。
外務省の中国語研修組、いわゆる「チャイナスクール」の中でも、中国語圏以外に一度も赴任しなかったのは極めて異例だという。

中国を究めたい

なんとなく選んだ中国語だったこともあってか、チャイナスクールの中で垂は当初、必ずしも目立つ存在ではなかったが外交官としての精力的な活動が周囲の見る目を変え、エースに駆け上がっていく。

北京赴任時代「能動的に人に会った。ある1年を数えてみたら、年間で300回以上中国人と食事をしていた。昼、夜、必ず誰かと食事し、自宅で食事したのは月に1回くらいだった。飲みにも行ったし、中南海(=中国政府や中国共産党の中枢)の人とゴルフを一緒にやったりもした。とにかくいろいろなことをやってきたのは事実だ。いまの若い人たちには勧められないけどね」

人脈をつくって、誰よりも早く情報をとる。そのために垂は、寝る間を惜しんで中国人と付き合ったという。要人とカラオケに行き、飲んだあとはサウナにも一緒に入った。人間どうしの付き合いをとことんまで突き詰めた。中国勤務から離れていた期間にも、年に3回は北京や上海に飛び、人脈の「メンテナンス」に努めた。こうした人脈づくりを地道に続けた結果、時として、外国人では知り得ないはずの人事や機密情報を耳にすることもあった。

幅広い人脈を構築した垂は「中国共産党の内部情報にどれだけ食い込めるかということをずっとやっていた。いわゆる民主活動家や、反共産党のような人たちとも『付き合わなきゃいけない』と言って、幅広く接触していた。後にも先にも、こういう人は出ないだろう」

「インターネットもSNSもない時代に、手紙を書いたり贈り物をしたり、そういうことを本当にまめにやっていた。私費も相当つぎこんでいた」

「ここ10年、チャイナスクールの外交官は、垂さんの築いた人脈をたどって仕事をしている。新規開拓しなければならないが、垂さんの壁はなかなか越えられない」

「お国のためという気持ちがいまほどあったかというと、30代くらいのときはそうではなかった。むしろ、中国について誰よりも知りたいという個人的な気持ちの方が強かった。中国通になりたい、中国を究めたいという気持ち。それに尽きると思う。叱られるかもしれないが、芸術家や職人がその道を究めたいと思うのと、もしかしたら同じじゃないかな」

戦略的互恵関係

誰よりも人に会い、中国に精通した垂。日中関係が冷え込んでいた、小泉政権下の2006年夏。垂が東京で対中政策とは直接かかわりのない部署にいたとき当時の外務事務次官、谷内正太郎に呼ばれ「もうじき、安倍晋三総理が誕生する。日中間の新しいコンセプトを考えてほしい」と言われる。

垂が考えついたのが、「戦略的互恵関係」だった。お互いの戦略的な利益のために意思疎通を続け、日中関係の発展を目指すべきだという思いが込められていた。

当時の中国課長、秋葉剛男(現・外務事務次官)の了承を得て、谷内にこの案を見せると、谷内は「これだ、これでいこう」

この年の9月に総理大臣に就任した安倍は、翌月、初めての外国訪問として中国を訪問。国家主席の胡錦涛に「戦略的互恵関係」を提起した。いまでも日中関係を示す上で欠かせないキーワードになっている。

「安倍総理大臣の訪中は日本で見ていて、NHKや各社の報道で、『戦略的互恵関係』ということばが踊ったときは、胸が熱くなった。外部環境に影響されずに付き合っていくことがお互いの戦略的利益だと確認し、安定的な関係を構築していくこと。これがやはり大事だと思う」

台湾政界の厚遇

垂のキャリアで外せないのが台湾での勤務経験だ。1972年に日本と台湾が正式な外交関係を絶って以降、外務省のいわゆるキャリア官僚で、台湾に2度勤務したことがあるのは垂だけ。仕事のやり方は台湾でも政権幹部に緻密に人脈を張り巡らせ多くの要人から親しまれた。

垂が2度目の台湾勤務時に台湾の当時の副総統、陳建仁(ちん・けんじん)が、みずからのFacebookに公開した写真。 垂が陳に対し、展示されている写真を説明している。

垂は外交官人生で最も忙しかったと振り返る中国・モンゴル課長時代に趣味で写真を始め、その腕はプロ級として知られ、受賞作品は400点以上に上る。

台湾でもシャッターを切り続けた垂の写真家としての腕は、垂が懇意としていた台湾の要人の目にとまって、垂の個展が台湾側の主催で開かれる。日本の総理大臣官邸にあたる総統府で開かれ、開幕式には陳も訪れたが垂が撮影した作品70点をまとめた写真集を台湾側が費用を出して作成したが写真集を配る。

写真集の冒頭では、台湾政界の重鎮が推薦のことばを寄せ日本の官房長官に相当する総統府秘書長などを歴任し、台湾側の対日窓口機関である台湾日本関係協会の会長を務める邱義仁(きゅう・ぎじん)垂は「親友」と呼ぶ。

中国に睨まれる

フットワーク軽く中国共産党の中枢に飛び込み、台湾での人脈も太くした垂は、中国からするとかなり目立つ存在だったのは間違いない。2013年、北京の大使館で政治担当の公使を務めていた垂は、外務省本省からの指示で、任期途中で緊急帰国した。

「中国はああいう国なので、一般論としては外交官もメディアもみんな警戒されている。一方で中国は奥深い国で、警戒している人からも意見を聞こうとする。台湾関係を担当した人は中国に嫌われるという話も一般論としてはあるが、台湾をよく知っていて、なおかつ日本人ということで、『直接話が聞きたい』と言ってくる中国の要人もいた。中国人に聞く耳はあるんです」

政府内には、垂がチャイナスクールの中国通でありながら、中国に厳しい姿勢をとる数少ない対中強硬派だとみる人もいる。
垂は「たしかに厳しいことはよく言う」と笑ったうえで、こう強調した。「中国についておかしいと思うことは、みんなが感じていることだ。そのことをどうやって中国に伝えるかというのが大事で、人脈を作ってちゃんと伝えてあげればいい。お互いに国益がぶつかることもあるが、妥協の余地があるのか、ないのか。協力すべき空間があるのか、ないのか。それを探すのが外交だ」

視界不良のなかで

菅総理大臣は、日米同盟を日本外交の基軸に据える一方、中国との安定的な関係の構築も目指すとしている。しかし、その道のりは不透明になりつつある。

「正常な軌道」に戻ったとされる両国関係は、新型コロナウイルスの感染拡大を機に、足踏み状態にあり、関係改善の象徴になると期待された習近平国家主席の日本訪問も延期されたまま、日程調整すらできない状況が続く。

外務大臣の茂木敏充は、日中関係が不透明感を増すいまだからこそ、中国に精通した人間が中国大使を務めるべきだと判断し、垂を選んだ。しかし、垂の置かれる環境はかつてなく厳しい。対中外交で具体的な成果を上げられるのか、視界が開けているとはいいがたい。

日中関係は「人間ドラマ」

垂は、これまでの日中関係を、急激な改善と悪化を繰り返す「ジェットコースターのようなもの」と表現し、それゆえ「一喜一憂すべきではない」と指摘した。そして「戦略的互恵関係」に基づき、外部環境に影響されず、50年、100年と、長期的に安定した関係が築けるよう努力していく必要性を強調。日中間の深い人づきあいに再び関われる喜びを隠せないでいる

「ぜひやりたいのは、日本をプロモート(宣伝)することだ。民主主義がしっかりと根付いて、自由が享受できる日本の魅力を中国の1人でも多くの人にプロモートしたい。実は日中の間には、魂と魂がふれあうような人間ドラマがたくさんある。その人間ドラマが織りなすのが日中関係であり、魂と魂がぶつかり合う物語は今後も続く。私も物語の参加者の1人として、中国の社会が、きのうよりきょう、きょうよりあす、良くなっていくことを強く希望している」垂は11月に北京に赴任。
(抜粋)
10月14日NHK

日本の中国外交にとって画期的!歴史的出来事になるかも?

我が日本国では事務方トップの外務省事務次官よりも駐米日本大使の方が格上なので、上から目線で誰よりも偉そうにしているが、当たり前ですがアメリカ政府要人と直接通訳を介せず差しで会話できるように英語が喋れるのが絶対条件である。

ところが米英などと大きく違い、駐中国や駐韓国の日本大使の多くは中国語や朝鮮語が喋れない人材が登用されていたのである。(★注、日本語の情報しか分からないなら、わざわざ北京やソウルに行く必要性は低い。東京の霞が関ビル内で十分なのである)

その意味では中国語で中国要人と差しで直接会話出来る垂秀夫(59)起用は画期的な出来事だった。ひょっとしたら歴史が大きく動く兆しかも知れない。(★注、それにしても10月14日NHK「中国が警戒する男、大使になる」が内容的にも詳し過ぎて驚くが、それ以上に映像として長すぎる。テレビで放送したとは到底思えない不思議な長さと内容なのですから不可解さに驚くばかり)


<転載終了>