donのブログさんのサイトより
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<転載開始>
AMED: 国立研究開発法人日本医療研究開発機構MENU
成果情報
パーキンソン病患者において世界中で共通して認められる腸内細菌叢の変化を明らかにした
 
名古屋大学
日本医療研究開発機構
 
名古屋大学大学院医学系研究科神経遺伝情報学の大野欽司教授、医学系研究科医療技術学専攻病態解析学の平山正昭准教授、神経内科学の勝野雅央教授、博士課程大学院生の西脇寛、岩手医科大学脳神経内科・老年科の前田哲也教授、岡山脳神経内科クリニックの柏原健一院長、福岡大学医学部脳神経内科の坪井義夫教授らの研究グループは、日本・アメリカ・フィンランド・ロシア・ドイツのパーキンソン病患者の腸内細菌叢*1のメタ解析を行い、ムチン*2分解菌であるAkkermansiaが共通して増加し、短鎖脂肪酸*3産生菌であるFaecalibacteriumとRoseburiaが減少していることを明らかにしました。
これまでにパーキンソン病患者の腸内細菌叢解析が17報の論文に報告されてきました。しかし、健常人においても腸内細菌叢は国ごとに大きく異なることから国を超えてパーキンソン病と関連のある腸内細菌を同定することは困難でした。本研究チームは、過去最多のパーキンソン病患者の協力を得て腸内細菌叢解析を行いました。
 
次に、国を超えて腸内細菌叢を統合解析するメタ解析手法を開発し、過去に報告されたアメリカ・フィンランド・ロシア・ドイツの4か国のパーキンソン病患者の腸内細菌叢と合わせてメタ解析を行いました。また、腸内細菌叢の代謝パスウェイ(代謝経路)を解析する手法として、KOSEA(KEGG orthology set enrichment analysis)手法*4を開発しました。メタ解析の結果、パーキンソン病患者の腸内細菌叢では、Akkermansiaの増加とFaecalibacteriumとRoseburiaの減少を認めました。
 
Akkermansiaの増加によってムチン層が分解され腸管壁の透過性が上昇し、腸管神経叢が酸化ストレスに晒されることが予想されます。
 
腸管壁透過性の上昇が、パーキンソンの原因物質であるα-シヌクレイン*5の腸管神経叢*6への蓄積を促進し、パーキンソン病の発症や進行につながる可能性が示唆されました。また、短鎖脂肪酸産生菌(FaecalibacteriumとRoseburia)の減少により中枢神経の炎症を抑制できなくなることが予想されます。
 
本研究の成果は、パーキンソン病の病態の解明と新規治療法開発につながることが期待されます。
 
ポイント
 
国ごとに大きく異なる腸内細菌叢を、国を超えて統合解析するメタ解析の手法を構築した。
 
日本・アメリカ・フィンランド・ロシア・ドイツの5か国のパーキンソン病患者の腸内細菌叢のメタ解析を行った。
 
5か国のパーキンソン病患者においてムチン分解菌であるAkkermansiaの増加と短鎖脂肪酸産生菌であるFaecalibacteriumとRoseburiaの減少を認めた。
 
腸管壁ムチン分解による腸管壁透過性の上昇が、α-シヌクレイン凝集体の腸管神経叢への蓄積を促進し、パーキンソン病の発症や進行につながる可能性が示唆された。
 
短鎖脂肪酸の低下により中枢神経の炎症を抑制できなくなりパーキンソン病を進行させる可能性が示唆された。
 
背景
 
パーキンソン病は、中脳の黒質にあるドパミン産生細胞にレビー小体と呼ばれるα-シヌクレイン凝集体が異常凝集することによって引き起こされます。
 
α-シヌクレイン凝集体は、腸管神経叢から始まり中脳黒質まで上行する可能性が示されてきました。
 
α-シヌクレイン凝集体はプリオン*7のように正常のα-シヌクレインを異常凝集させて異常を伝播させることが明らかにされています。
 
パーキンソン病患者ではα-シヌクレイン凝集体が迷走神経背側核*8から中脳黒質に向かって上行することが示されてきました。
 
また、便秘、レム睡眠行動障害、鬱がパーキンソン病の運動症状が始まるそれぞれ20年、10年、5年前から起こることが知られており、これはα-シヌクレイン凝集体が迷走神経背側核から青斑核*9に向かって上行する現象と一致しています。
 
加えて、パーキンソン病患者の腸管神経叢には高い頻度でα-シヌクレイン凝集体が蓄積していることが知られています。
 
また、パーキンソン病患者では腸管透過性が上昇することを本研究チームとドイツのグループが以前に報告をしました。
 
いままでに17報のパーキンソン病患者の腸内細菌叢研究が報告されてきました。
 
しかし、健常者においても国による腸内細菌叢の違いが大きく国を超えてパーキンソン病患者で共通で変わる菌を特定することは困難でした。

そこで、本研究チームは、過去最多のパーキンソン病患者の協力を得て腸内細菌叢解析を行いました。
 
次に、国を超えて腸内細菌叢を統合解析するメタ解析手法を構築し、過去に報告されたアメリカ・フィンランド・ロシア・ドイツの4か国のパーキンソン病患者の腸内細菌叢と合わせてメタ解析を行いました。
 
研究成果
 
腸内細菌叢に影響を与える因子(ボディマス指数(BMI)、便秘、性別、年齢、薬剤)の影響を排除したところ、
5か国のパーキンソン病患者の腸内細菌叢で共通してAkkermansia、Catabacterが増加し、
Roseburia、Faecalibacterium、Lachnospiraceae ND3007 group が減少していることを明らかにしました(図1)。
 
メタ解析に含めることができなかった12報の研究結果を調べたところ、
Akkermansiaの増加、Roseburia、Faecalibacteriumの減少が多くの研究で認められました。
 
また、腸内細菌叢の代謝パスウェイを解析するKOSEA(KEGG orthology set enrichment analysis)法を開発し、
パスウェイ解析を行ったところ、腸内細菌叢による短鎖脂肪酸代謝がパーキンソン病で変化していることがわかりました。
 
これらの解析により、ムチン分解菌であるAkkermansiaの増加と短鎖脂肪酸産生菌であるRoseburiaとFaecalibacteriumの
減少がパーキンソン病患者において国を超えて認められることを明らかにしました。
 
今後の展開
 
Akkermansiaの増加によってムチン層が分解され腸管の透過性が上昇することによって腸管神経叢にα-シヌクレインが異常凝集し、中脳黒質まで異常凝集したα-シヌクレインが上行する可能性が示されました。
 
加えて、短鎖脂肪酸産生菌の減少によって中枢神経の炎症を制御しにくくなる可能性も示されました。
 
また、今回開発した腸内細菌叢の代謝パスウェイを解析するKOSEA 法は今後広く腸内細菌叢の代謝パスウェイを解析に役立つことが期待されます。今回明らかにした腸内細菌叢の変化のパーキンソン病への関与を今後さらにモデル動物などを用いてパーキンソン病の病態分子機構の解明につなげます。
 
用語説明
*1腸内細菌叢:
以前は腸内フローラとも呼ばれた。主に大腸に生息する細菌の集合体。
 
*2ムチン(mucin):
動物の上皮細胞から分泌される粘液の主成分。糖タンパクの混合物である。腸管において杯細胞から分泌され粘膜表面を物理的に外的刺激から保護している。
 
*3短鎖脂肪酸(short chain fatty acids):
腸内細菌が食物繊維を消化する際に、ヒトの場合、酢酸、プロピオン酸、酪酸が産生され、これらを短鎖脂肪酸と呼ぶ。短鎖脂肪酸はエネルギー源として利用されるとともに、異常な免疫応答を抑制するなどの生体調節機能を有している。
 
*4KOSEA(KEGG orthology set enrichment analysis)法:
遺伝子発現のパスウェイ解析で定評があるGSEA(gene set enrichment analysis)を腸内細菌叢の解析に応用した手法。KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)は京都大学で開発維持しされているパスウェイデータベースである。
 
*5α-シヌクレイン(α-synuclein):
神経組織中にみられる機能不明のタンパク質である。このタンパク質の細胞内異常蓄積がパーキンソン病をはじめとする神経変性疾患の原因とされている。
 
*6腸管神経叢:
腸管壁の外側にある細い神経のネットワーク。
 
*7プリオン:
感染するタンパク質とも呼ばれる。凝集体のように異常に形成されたタンパク質が正常なタンパク質を異常な形に変えることができる。
 
*8迷走神経背側核:
内臓を支配する副交感神経である迷走神経の脳幹部にある神経核。
 
*9青斑核:
脳幹にあるノルアドレナリン作動性ニューロンを含む神経核であり、鬱との関連が示されている。
 

 

 

ムチンの役割は物理的損傷や細菌感染などから消化管を保護することであり、その質や量 の低下は潰瘍性大腸炎や癌を誘発することが知られている。



その2

カシスエキスの腸内環境を改善する新たな作用 腸管を保護する「ムチン」産生の増加を確認
「第20回日本機能性食品医用学会総会」において発表
 
森下仁丹株式会社
2022年12月20日 15時00分
 
 
 森下仁丹株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長 森下雄司、以下「当社」)は、2022年12月3日(土)~4日(日)に開催された「第20回日本機能性食品医用学会総会」の一般演題≪機能性食品成分の腸内環境,生体機能改善効果 O-31≫において、カシスエキスにより、腸管からの細菌の侵入を防ぐバリアとなる「ムチン」産生が増加し、腸内環境改善作用が認められたことを発表いたしました。
 当社では引き続き、カシスエキスの有用性について研究を進めてまいります。

【背景と目的】
 カシス(black currant)は、ヨーロッパを中心に民間薬としても親しまれてきた果実の一種です。カシスに含まれるカシスアントシアニンは、目のピント調節機能や血流改善のほか、腸内環境改善に効果があることも報告されており(引用文献:1, 2)、当社においてもこれまでに、カシスエキス摂取による腸内細菌叢(腸内フローラ)の改善と腸内腐敗産物の産生抑制作用を確認しています(日本農芸化学会 2022年度京都大会 (2022年3月)にて発表)。本研究では、カシスエキスによる腸内環境改善作用のひとつとして、カシスエキスが腸管を保護する機能を持つ糖タンパク質「ムチン」の産生に与える影響について評価しました。
 
ムチンとは?
 
 
 
ムチンは、粘膜、唾液、涙などに含まれる糖タンパク質の一種です。腸管内部では、上皮細胞(杯細胞)からねばねばとした粘液として分泌され、身体にとって有害な細菌や毒素の侵入を防ぐ「バリア」として働きます。また、ビフィズス菌等の善玉菌はムチンを「エサ」として増殖するため、腸内環境を整える一助にもなります。
 
【研究成果】
腸管ムチン産生について
ヒト大腸由来の杯細胞モデル(LS174T細胞)にカシスエキスを添加し72時間培養したところ、非添加時に比べてムチンの産生量が有意に増加しました(図)。
 
試験の結果
カシスエキスによる腸管ムチン産生の変化
 
 
以上の結果より、カシスエキスにより腸管ムチン産生が亢進することが示唆されました。また、生菌を含むプロバイオティクスと、そのエサとなるムチンを増やすカシスエキスを組み合わせることで、さらなる腸内環境改善作用が得られる可能性も期待されます。
 

 

 

甘酒の主要成分である酒粕と米麹を摂取することで、腸管を守る役割を果たすムチン量の増加と、ムチン関連遺伝子の発現上昇が見られました。
このことから、酒粕と米麹を使った甘酒の摂取により、胃腸の粘膜を保護し病原菌や毒素から守る腸管バリア機能向上の可能性が示されました。

小腸などの腸管は、身体にとって必要な栄養素を吸収する一方で、身体にとって有害な細菌や毒素などは排除しなければいけません。
腸管は粘膜に覆われており、粘膜を構成する粘液の主成分であるムチンは、腸では主に杯細胞で産生され、病原菌や毒素から物理的に腸管を守る役割を担っています。
ムチンが減ると腸管がむき出しになり、体に悪さをする病原菌などの侵入を防ぎきれず、その影響を受けやすくなってしまいます。

また、物理的に腸管を守るムチンの他にも、病原体の排除やその毒素の中和に関わる重要な抗体であるlgAという因子も存在します。
このように、大切な腸管を細菌などの侵入から守る機能をまとめて「腸管バリア」機能と呼んでいます。 
 
 
 

 


その3

世界初 糖鎖の変化から潰瘍性大腸炎の発症予測が可能に!~腸管粘液の変化によって判明

2022年10月31日

 

世界初 糖鎖の変化から潰瘍性大腸炎の発症予測が可能に!

~腸管粘液の変化によって判明~

大阪国際がんセンター研究所の谷口直之所長は、スペインバルセロナ市のゲノム規制センター(CRG)、スペイン国立遺伝学研究所(ICREA)、東北医科薬科大学の顧建国教授らとともに、炎症性腸疾患の中で最も患者数の多い潰瘍性大腸炎※1が、大腸の粘液層の糖鎖の変化によって引き起こされるという新しい概念※2を世界で初めて提唱しました。この研究結果は、潰瘍性大腸炎の発症を事前に予測したり、予後を判定したりするために、便のサンプルを分析するルーチンの医療検査の開発に道を開くもので、米国科学アカデミー紀要※3に掲載されました。

 健康な大腸から分泌される粘液はいわば潤滑油の役割をもち腸管で有害な細菌が洗い流されます。ところが、潰瘍性大腸炎患者では、粘着性の強い粘液を分泌して腸管の粘膜を厚くして覆うため、有害な細菌がそこに粘着し長期間留まり、結果として上皮細胞に容易に細菌などが到達し、感染を引き起こし、初期の炎症発作を誘発する可能性があります。

 潰瘍性大腸炎は大腸に慢性の潰瘍や炎症が生じることが特徴です。症状は一生続き、軽度なものから生命を脅かすものまで様々で、治療法は確立されていません。また、がん発症のリスクも高く、我が国では現在指定難病となっています。この病気の特徴である繰り返して起こる炎症は、免疫細胞が大腸の上皮細胞を攻撃してしまう免疫システムの誤作動によるものではないかと考えられてきましたが、そもそもどの免疫系の誤作動が健康な細胞を攻撃するのかについては、依然として謎のままでした。

 米国科学アカデミー紀要に発表された新しい研究は、潰瘍性大腸炎の発症の起点となりうる大腸粘膜の変化とその変化を引き起こすメカニズムを発見しました。特に、患者検体の解析、マウスモデルおよび細胞株から得られた実験データを組み合わせることで、糖鎖を合成する酵素であるα1,6フコース転移酵素(別名FUT8)が病状と関連することがわかりました。FUT8は通常の健康な人ではごく低い値ですが、このFUT8が増加することによって、病状が引き起こされる可能性があることを明らかにしました。

 FUT8はコアフコースという糖鎖をつくり、多くの異なる種類のタンパク質の性質を物理的・生物学的に変化させ調節します。本酵素については1998年に本研究の共同研究者である谷口、顧らのグループが大阪大学医学部生化学講座時代に発見、遺伝子構造を解明し、その後いろいろな病気の状態との関係を明らかにしてきました。2016年には、FUT8を欠損したマウスが潰瘍性大腸炎にかかりにくくなる(orかからなくなる)ことを発表しましたが、その理由は不明でした。一方、バルセロナのグループは2013年にFUT8がムチン※4の分泌に関与していることを発見したことから、潰瘍性大腸炎におけるFUT8の役割をさらに解明するため、若手研究者の大阪国際がんセンターの大川祐樹研究員、東北医科薬科大学福田友彦研究員らを加えて2019年7月に共同研究を開始しました。

 研究チームが注目したムチンは、細胞外に放出されると体積が数百倍に膨れ上がる大型タンパク質で、他の分子と結合して消化管全体を覆い、潤滑油として保護する粘性のある液体である粘液を産生します。ICREAの研究チームのイヴォガット博士から、潰瘍性大腸炎患者24人と健常者16人の大腸組織の生検※5から集めた遺伝子データの提供を受け、研究チームが解析したところ、潰瘍性大腸炎患者では、健常者と比べてFUT8の発現が3.5倍高いことが明らかになりました。また、潰瘍性大腸炎患者の大腸の炎症部位では、数多くのムチンのなかで数種類のムチンの発生量が上昇していることもわかりました。(図1)

 さらに研究チームは、ムチンの分泌に関与しているFUT8を欠損させたマウスでは、FUT8が正常のマウスに比べ、大腸の粘膜層が薄くなっていること、すなわちFUT8は粘膜層を厚くする働きがあることを見出しました。

した。

 研究チームは次に、このような粘膜層の変化がなぜ起こるのかを、大腸の細胞株を用いて分子レベルで調べました。FUT8の発現量の違いによって、細胞から分泌される2種類のムチン(MUC2とMUC5AC※6と呼ばれる)の比率が変化し、粘膜の防御の働きを制御することがわかりました。また、細胞表面に存在し、細菌を捕捉する役割も果たすMUC1の発現も増えることを明らかにしました。

 潰瘍性大腸炎に特徴的な最初の炎症の後に何が起こるのかも不明ですが、バルセロナのグループは、その変化に腸内細菌フローラが役割を担っている可能性があると考えています。粘膜層は、危険な微生物、毒素、消化によって生じる有害な副産物に対する防御の第一線の役割をもっている一方、人間の健康にとって有益で、かつ重要な微生物の豊富な個体群を受け入れています。私たちが観察しているムチンの変化は、腸内細菌フローラに影響を与え、それが免疫反応を引き起こしている可能性が高いのです。この研究の責任著者であり、CRGの細胞・発生生物学プログラムのコーディネーターであるICREAのビベック・マルホトラ教授は、「正常な腸と患者の腸の腸内細菌を評価すれば、この疑問を解決できるはずです」と述べています。

 今回の研究成果は、潰瘍性大腸炎を症状が現れる前に発見したり、予後を判定したりする新しい検査の開発に道を開くものです。「患者さんの便を採取して、大腸の粘液中のコアフコースやムチンのひとつMUC1の量を測定することができます。実現に向けてさらなる研究が必要ですが、比較的簡単な検査で、血液検査と同じように日常的に行えるようになるでしょう」と筆頭著者のカンテロ レカセンス博士は説明しています。彼は11月末から当センター研究所にEMBO(欧州生化学分子生物学機構)のフェローとして滞在し共同研究を継続する予定です。今後FUT8の発生や活性を阻害する薬剤や抗体などの開発を目指して取り組んでまいります。


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