eternalturquoiseblue(旧kamakuraboy)さんのサイトより
https://ameblo.jp/ymhkobayasis/entry-12770434881.html
<転載開始>

2年くらい前に書いた記事で、投稿しなかった内容なのですが、今後投稿予定の別の記事との関連で投稿しておくことに致します。

 

 

M3.comに面白い記事があったのでそのままご紹介します。

 

今注目を集めている”ブレインテック”は日々新しい研究成果が報告されており、特に医療分野での応用が期待されているのが「人工視覚」の分野。

 

記事は、人気脳研究者・池谷裕二氏と紺野大地氏による話題の新刊から。

 

『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか』(講談社刊)

 

「見る」とはどういうことか

「見る」という言葉を使うとき、私たちは当然のように「目で」見るということを前提にしていますが、実は脳研究ではすでに、視覚を司る視覚野という脳領域を電気で刺激することで、目を介さずとも光が「見える」ことが知られています。

 

この現象は眼閃(がんせん)と呼ばれ、「目を閉じた状態で光が見える現象」を表します。

 

目に入る光は、まず網膜で電気信号へと変換され、次にその情報が視覚野へと伝達されることで「見えた」という感覚が生じる。

 

目から脳へ情報が伝わるときとまったく同じパターンで視覚野を刺激することができれば、原理的には目を介さずとも外界を「見る」ことが可能となるはずです。


目を介さずにものを「見る」ということ

脳を直接的に刺激することで、目を介さずに外界を「見る」ことができるようになれば、失明した人の視力を再び取り戻すことが可能となります。

 

日本には現在20万人もの失明患者がいると言われており、世界では4000万人もの人々が失明で苦しんでおり、彼らが再び世界を見ることができるようになるとしたら、その意義は非常に大きいと言えましょう。

 

人工視覚で失明した人が視力を取り戻す

このようなモチベーションで、これまで様々な研究が行われており、その研究領域は「人工視覚」と呼ばれます。

 

人工視覚研究の歴史は古く、1950年代から行われ、なかでも2000年にアメリカ人研究者のウィリアム・ドーベルらによって行われた研究が有名。

 

彼らは「失明した人の脳に電極を埋め込み、外界の情報を直接脳に送る」という試みを行い、例えば失明して25年以上経過した男性の頭蓋骨に穴を開け、視覚野に68本の電極を埋め込み、ビデオカメラで撮影した外界の映像をドット情報に変換し、そのドットパターンで脳の視覚野を電気的に刺激することで外界を「見る」ことに挑戦した。

 

 

この研究では1本の電極につき1個の眼閃が生じ、68本の電極により68個の眼閃が光の点として「見える」ようになるので、これらをドットのように利用すれば外界を「見る」ことができるようになるというわけです。

 

乗り越えられなかった壁

この装置で見える世界は68ドットの解像度しかないため、視力が正常な人が見る色彩豊かな世界とは似ても似つかないが、それでも、この装置をつけた人は1.5メートル離れた距離で5センチメートルの大きさの文字を読むことができたと報告されており、素晴らしい研究成果であることは間違いありません。

 

ドーベルはこの技術を普及させるためポルトガルに研究所を設立し、8人の被検者がこのデバイスを埋め込む手術を受け、内一人は最終的に車の運転ができるまでに視力を取り戻した。

 

一方で、このデバイスの副作用として、けいれん症状、感染症などの問題も明らかとなり、2004年にドーベルが亡くなると、その後研究や手術のノウハウは受け継がれることなく、ドーベル研究所もほどなくして閉鎖されてしまいました。

 

ドーベルらの研究には改善点や副作用の問題があったものの、一連の研究は人工視覚分野の発展に大きく貢献したといえます。

 

引用元:

人工視覚の種類 | 人工視覚って何? | 株式会社ニデック (nidek.co.jp)

 

 

参考:

「網膜を介さない視覚」イルカの例

イルカは「脳化指数」において、ヒトに次いで2番目に知能が高いそうですが、彼らにはヒトにはない、エコロケーション( echolocation 反響定位)という「脳で物体をみる」力が備わっていることで知られています。

 

遠くのものでも、彼らは超音波を出しその反響を聴くことで、対象物の位置や形、大きさなどを知り、それを脳で空間情報として組み立て、かなり広い範囲の外界を瞬時に把握出来るらしいのです。

 

これは、聴覚以外でも、空間情報の電気的刺激を脳に送ることで、脳が空間情報を構築して、「人工視覚」が作られることを示唆していました。


<転載終了>