YocchannoBlog2's Blogさんのサイトより
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<転載開始>

極めて深刻な日米関係が現れようとしている。

ここに「米国は核の傘によって日本を防護するのか、それとも日本を火の海にするのか?」と題された最近の記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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米国は核の傘によって日本を防護するのか、それとも日本を火の海にするのか?_f0435460_18363345.jpg

Photo-1© AP Photo /Charlie Riedel

日本を核兵器で爆撃した米国は核の傘で日本を守ろうとしていると報じられている。

報道によると、日米両国は拡大抑止政策に関する初の共同文書を起草する予定で、その中には米国の防衛方法に核兵器が含まれると認める条項が含まれるという。しかしながら、日本がこの動きに感動すると考えたら、それは時期尚早かも知れない。
日本の読売新聞は、ある情報源を引用して、この文書は米国が平時ならびに緊急時に講じることができる措置を特定すると報じている。また、米国が第三国に対して報復措置を取ることができる条件や、中国とロシアからのいわゆる脅威を背景に、その措置がどのようなものになる可能性があるかについても述べる。この報道によると、日米の外務大臣と防衛大臣は、今月末、東京で開催される会議で詳細を議論する予定だ。

この問題に関する議論は2010年にワシントンと東京が拡大抑止を維持・強化する方法を模索するために「拡大抑止対話」を設立したことから始まったが、今回のニュースのタイミングは非常に興味深い。

大統領執務室がその居住者が入れ替わったのを見た後でワシントン政府が約束を反故にするのを防ぐために、日本は米国の大統領選前に核の傘に関して書面による約束を確保したいと思っているかのようだと、黒竜江省社会科学院の北東アジア研究所の大志剛所長が環球時報に語った。

関連記事:Over63% of Japanese Feel Financially Insecure, Pessimistic About Future - Reports: By Sputnik, Mar/31/2024

米国と日本はこの共同文書の推進の背後にそれぞれ独自の計算を持っている。日本は米国との軍事同盟を通じて抑止力を強化したいと考えている。ワシントンは日本を「インド太平洋戦略」の厄介な駒に仕上げることを望んでいる。中国とロシアからの「脅威」という主張は単なるこじつけの言い訳に過ぎず、米国は日本が核の傘の下で中国とロシアに対してもっと積極的になることを望んでいるだけである。

今日の米国のアジア太平洋地域における核の傘の本質は防衛に関するものではない。むしろ、米国がその同盟国の戦略的攻撃能力を強化する口実を提供することによって大国間の地域の安定を混乱させるためのプラットフォームとして機能しているのである。

核兵器非保有国である日本は核攻撃の主たる標的になる可能性は低いであろう。それにもかかわらず、米国は、今、日本を「核防護サークル」に引き込み、日本への核兵器配備を検討している。そうなれば、日本は核兵器保有国と捉えられるかも知れない。米国は日本を次の戦場に押し上げようとしている。そして、この共同文書を推進することによって、日本は米国との同盟関係から潜在的な核の標的と見なされる用意があることを示している。

とてもじゃないが、これは防衛ではない。日本政府は日本を本当に脅かしている者、つまり、同盟国であり保護者であると主張する人物について根本的な誤解をしているようだ。

関連記事:Northrop Grumman to Build Nine Hawkeye Alert Aircraft For US Navy, Japan - Pentagon: By Sputnik, Jul/20/2024

米国は地域の安全保障の力学を巧みに混乱させ、地域の安全保障上の脅威を増幅し、同盟国間の懸念を高めてきた。そして、核の傘のような軍事的手段を通じて、これらの同盟国にいわゆる安全保障の保護を提供し、米国の安全保障への依存度を高めるのである。この依存性を利用して、米国はこれらの国々に対する支配権を強化し、米国の世界的、地域的な覇権の野望をさらに押し進めるために活用することができるのだと大志剛所長は環球時報に語った。

米国は日本を守るためにどのように核兵器を投入するのだろうか?報告によると、詳細は一般に公開されない可能性がある。しかしながら、日本が本当に米国に核の傘を求めるということは、日本が重大な核の脅威に直面していることを示唆している。そのような重大な局面において、米国は躊躇なく核兵器を配備するのだろうか?

米国の論理においては米国の国土安全保障が常に優先される。米国の覇権的権益が続くことであり、その次には海外の米国民の権益を保護することが優先される。米国の同盟国の利益は四位にランクされている。つまり、核兵器で日本を守ることが米国本土安全保障に何らかのリスクをもたらすのであれば、米国政府は考え直すだろうと匿名の軍事専門家が環球時報に語った。米国の核の傘は自国を守ることだけにある。

さて、日本は何を望むのか?平和的な発展を望むのか?それとも、紛争の最前線に追いやられるのか?日本は決断しなければならない。

本稿の初出は環球時報。

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これで全文の仮訳が終了した。

この引用記事の主張は中国の専門家のものである。だからと言って、色眼鏡で見ようと言いたいのではない。むしろ、これは中国の専門家がどう考えているのかを冷静に拝聴するいい機会であると思う次第だ。

この記事は興味深い見解を示した。つまり、「今日の米国のアジア太平洋地域における核の傘の本質は防衛に関するものではない。むしろ、米国がその同盟国の戦略的攻撃能力を強化する口実を提供することによって大国間の地域の安定を混乱させるためのプラットフォームとして機能しているのである」と言う。そして、明らかに、大国間の安定を混乱させることによって、米国は日本に高価な武器を新たに購入させることができるのである。

もう一つの見解も興味深い。「とてもじゃないが、これは防衛ではない。日本政府は日本を本当に脅かしている者、つまり、同盟国であり保護者であると主張する人物について根本的な誤解をしているようだ」と述べている。これは放火犯を消防署と見間違えているのではないかとの指摘である。

米国の核の傘の拡大は両刃の剣である。数多くの議論があるように、日本の核抑止力は増強されるかも知れない。だが、日本は核戦争の戦場になる可能性が増すかも知れない。核抑止力の増強だけが現実の姿だという保証は何もない。それは米国の対外政策の歴史を見れば簡単に理解することが可能である。核兵器保有国になって、広島や長崎に続いて日本への三回目の原爆投下を許すのか?

同じような事例が最近ドイツで起こった。日本に対する核の傘の拡大はこのドイツに対する長距離ミサイルの配備に極めてよく似た動きである。米国は本土の防衛のためには同盟国が核戦争に巻き込まれてもよしとする。それが米国の考え方の根底にある。交渉をする相手側の官僚や軍人に対して米国は甘い飴をしゃぶらせるのであろう。そして、共同声明は「価値観を共有する」とか、「民主主義を守る」といった美辞麗句で飾られる。日本のメディアはそういった美辞麗句を繰り返して報道する。

ホワイトハウスは、先週、ドイツに、新型ミサイルを含めて3種類の戦略ミサイルを配備するという計画を発表した。このようなシステムがあれば、ペンタゴンの戦争計画立案者やワシントンのタカ派はロシアの軍事目標や指導部に対する攻撃を開始する誘惑に駆られる可能性があると、専門家は指摘している。(注:さらに詳しい内容については、722日に掲載した投稿「欧州へダーク・イーグル極超音速ミサイルを配備すると、たったひとつの間違いで全面戦争を誘発するかも ― スコット・リッター」を参照いただきたい。)

ドイツと日本の相似性を挙げたが、大きな違いが存在する。ドイツでは米国・ドイツの両政府の計画については、直近の報道によると、大部分のドイツ国民はミサイルの配備には反対だそうだ。それはそうだろう。対ロ長距離ミサイルの配備は母国が核戦争の戦場になることを約束するも同然であるからだ。(原典:Most Germans Oppose U.S. Missile Deployment, Move May Spark Protests – Politician: By Sputnik, Jul/26/2024)ドイツでは今後どのような展開が待っているのかが非常に気になる。

その一方で、日本人の多くはは核の傘の拡大という新たな動きについて反対意見を表明してはいない。ドイツの世論とは違う。この違いは何処から来るのだろうか?日本の一般大衆は日米両国の政府による新たな動きをまったく知らないのではないか?知ろうともしないのではないか?それとも、この動きは日本のためになると心底思っているのだろうか?あるいは、この時点で思い悩むのは単に時期尚早ということなのであろうか? 

「米国の真意は核の傘で日本を守ることではない。日本を核の傘で守ろうとすれば、米本土が核の報復を受けることを誘発してしまうからだ」という分析は日本でも、米国内でもかねてから存在する。そして、これは建前論とは異なって、彼らの本音であると米国の事情に詳しい日本人の専門家が述べている。米国にとっては米国が核の報復を受けるというリスクは余りにも危険である。そもそも抑止の観点からは一方の核の配備の強化は相手側にさらなる核の強化を促すのが常だ。

全面的な核戦争は如何なる理由があっても避けなければならない。これはエリート集団の面子の話などではない。明らかに、最優先事項である。この方程式は誰でもが理解している。

歴史的な背景として、「この拡大抑止の文書化は、すでに2010年頃から日米両政府の外務・防衛実務者たちの間で協議が重ねられてきた。これからも公表されるのはあくまでも概要だけだと見られる」とある専門家は述べている。

詳細は公表されないという。こうして、国内に批判や反論が提起されても、両国政府は美辞麗句を並べて都合のいい言い訳をすることになるのだろう。

 

参照:

注1:Will U.S. Defend Japan With Nukes or Turn It Into the Line of Fire?: By Sputnik, Jul/23/2024


<転載終了>