In Deepさんのサイトより
https://indeep.jp/the-day-after-a-nuke-goes-off-in-space/
<転載開始>


ヒズボラのEMP兵器

イスラエルのエルサレム・ポスト紙の記事を読んでいましたら、「ヒズボラが EMP 兵器を所有している」という報道がありました。

EMP 兵器というのは、大雑把にいえば、電磁パルスで電気系統を破壊する兵器です。

大国が開発しているものに関しては、主に「高高度核爆発」と呼ばれているもので、その威力は非常に激しいものであり、たとえば、以下の図は、アメリカ下院の国家安全委員会の公聴会に提出された資料にあるマップですが、アメリカ大陸の中心あたりの高高度の「適当な位置で」爆発させれば、青などで色分けされている地域の電気インフラが「全部、破壊される」とされています。

1997年に国家安全委員会の公聴会に提出された資料

In Deep

しかし、ヒズボラは核の技術を持っていないということ以上に、この中東の地域戦争(になれば)の場合、戦闘地域が狭すぎるので、「自爆攻撃」にもなってしまいますので、そういうものではないはずで、おそらくは、米ボーイング社が、2012年に開発したようなタイプの、

「ピンポイント攻撃での EMP 兵器」

なのだと思います。

これについては、2012年のこちらの記事にあります。

ボーイング社のテストのイメージ

CBS

これは、マイクロ波を放つミサイルによって相手の電気系統をクラッシュさせるというものです。今なら、ドローンになるのですかね。

ともかく、イスラエルと対峙しているヒズボラは、それを持っているということのようです。

エルサレム・ポストの記事には以下のようにありました。

エルサレム・ポストの記事より

クウェートの新聞アルジャリダは、イランがヒズボラやその他のイラン代理勢力に、通信システムを無力化しレーダーを停止できる電磁兵器を供給していると報じた。防衛産業向けの軍事技術を開発しているアスガルド・システムズ社のCEO、ロテム・メイタル氏がこの問題について論じた。

電磁兵器とは?

「電磁兵器については、誰も(それらよる攻撃を)見たことはないが、現実に存在していると理解することが大事です。私たちの場合、それが中東の地政学的および軍事的なチェス盤上にあります」

「本質的には、あなたが住んでいる建物に雷が落ちたとして、それが、避雷針やアンテナではなく、建物全体に落ち、すべての電気パネル、給湯器、水道および電気システム、家庭用電化製品、コンピューター、テレビシステム、さらには命を救う医療システムまでが機能しなくなることを想像してください。停電のようなものですが、ただし、この場合、システムは電気ショートのように内部から焼損する可能性があります」

この脅威はどこを狙うのか?

「脅威は基地、戦略施設、淡水化システム、イスラエルの電力網に集中しているのではないかと思います。しかし、そのような兵器は歴史上使われたことがなく、参考にできる情報源や参考資料がないため、正確に予測、説明することは不可能です」

jpost.com 2024/07/28

大規模な EMP 兵器については何度か記したことがありましたが、その最先端の研究と開発を行っているのはロシアです。

以下の記事で、アメリカ議会の報告書をご紹介しています。

(記事)ロシアのEMP開発の歴史が60年に及ぶことを知り、そしてディーガルの壊滅的な人口動態予測を米国議会報告「EMPは90%のアメリカ人を殺す」で思い出す
In Deep 2022年3月15日

それで、このロシアなんですけれど、今は、

「核兵器を搭載した対衛星兵器を開発している」

ことが明らかになったようなんです。

 

 

ロシアの対衛星「核」兵器

宇宙空間というか、成層圏の外で核爆発が起きた場合、地上に何か影響があるのかどうかはよくわからないですが、しかし、「大量の衛星を破壊できる兵器」というのも、現代の戦争では効果的というのか、致命的な兵器とはなりそうです。しかも、どうやら「無差別で衛星を破壊していく」タイプのもののようで、軍事用だとか他の用途だとかは関係なく破壊していくもののようです。

まあ、現代はいろいろな兵器が次々と出てきていますけれど、これらのような兵器、つまり EMP や対衛星兵器は、実際には使用されたことはないとはいえ、事態が本当に混沌としてきた場合、いつかは使用されることもあるのかもしれません。

基本的には、兵器は使用するために開発されているのですから。

威嚇だけなら、秘密裏に開発したりはしません。

そのロシアの対衛星兵器についての記事をご紹介します。

宇宙で核爆弾が爆発した翌日には

The Day After a Nuke Goes Off in Space
Real Clear Wire 2024/08/03

今年 2月、ロシアが核兵器を搭載した対衛星兵器を開発していることが明らかになった

バイデン政権の対応は、ロシアがそもそも宇宙配備型核兵器を取得できないようにするための軍備管理に主眼を置いている。こうした取り組みは重要だが、不十分でもある。

外交が失敗する可能性に備えるため、今すぐ対策を講じる必要がある。核対衛星兵器は、既存の核パラダイムを根本的に変え、現在よりもはるかに不安定な環境を生み出す可能性がある。

米国は、宇宙における核兵器の課題に対処する準備を確実にするために、今すぐ行動を起こさなければならない。核兵器が軌道に乗る前に今準備することで、米国はそのような日が決して起こらないようにするための取り組みを強化できる。

米国の抑止戦略は、従来型と核兵器の両方の対応オプションをさまざまな不測の事態に合わせて調整する能力と、核兵器を使用するタイミングを意図的に曖昧にすることに重点を置いてきた。今日、核衛星攻撃兵器が爆発すれば、これらの概念は両方とも無意味になるだろう。ロシアの宇宙兵器の正確な能力は不明だが、米国の衛星と同じくらいロシアの衛星にも脅威を与える可能性が高い。

5月には、当時宇宙政策担当だったジョン・プラム国防次官補は、ロシアの兵器は「無差別」であり、「世界中の国や企業が運用するすべての衛星に脅威を与える」証言した。

したがって、ロシアが兵器を爆発させた場合、米国は宇宙でロシアに報復する能力を失う可能性が高い

唯一の選択肢は、地上の標的を攻撃することだ。現在、米国の通常部隊は、衛星が提供する GPS、情報、通信へのアクセスに大きく依存している。

この環境で通常攻撃を行うことは、不可能ではないにしても、極めて困難だ。核攻撃の方が実現可能だが(困難でもある)。地上の人間を直接殺さない核攻撃に対して、地表核攻撃が適切な対応であるかどうかについて、真剣な議論を行うべきだ。

しかし、大統領がそのような兵器の使用に対応するためのさまざまな選択肢を保持しておくことは依然として重要だ。したがって、核対衛星兵器の世界における抑止力の中心となるのは、衛星にアクセスすることなく活動できる通常軍の能力となる。

核宇宙兵器の爆発後に衛星がクラッシュした場合、敵の標的に対して非核地上攻撃を実行する長距離攻撃戦闘機および爆撃機の能力は、そのような行動に対する通常対応の選択肢を維持するために決定的に重要となるだろう。

宇宙へのアクセスがない環境で戦うための米軍の能力を向上させる取り組みはいくつかあったが、宇宙へのアクセスを維持するための活動と比較すると限られている。後者の取り組みは重要であるが、核衛星攻撃兵器が爆発すれば選択肢にはならない可能性が高い。

海軍と空軍は、宇宙軍の支援を受けて、衛星にアクセスできない環境での作戦方法を学ぶことを目的とした、さまざまな「宇宙の不測事態」を想定した演習を行うべきだ。

これらの演習から得た教訓は、実際の軍事演習に適用され、継続されるべきだ。これらの演習は、パイロット、航空機乗組員、指揮官が宇宙の不測事態で作戦を遂行できるように訓練するだけでなく、ロシアやその他の米国の潜在的敵国に対して、いかなる種類の核攻撃に対しても、米国が常にさまざまな程度の武力で報復する選択肢を持っていることを示すことにもなる。

米国は宇宙での核兵器の拡散防止を目的とした軍備管理の取り組みを継続すべきだ。

しかし、こうした取り組みが失敗する可能性にも備えなければならない。通常兵器の戦闘機を準備して、宇宙環境での作戦を遂行できるようにすることで、米国は核兵器が地球の周りを周回する世界に十分対応できるだろう。


 

ここまでです。

今は、戦争でも航空機の運航でも、それこそ携帯やスマートフォンの使用も、あるいは天気予報でも、人工衛星がなければ何もできない世の中となっています。

このようなシステムの世の中は「進歩」といわれることもありますが、実は非常に不安定な社会でもあることは事実です。あっという間に「先ほどまで使えていた、あらゆるものが使用不可能になる」社会でもあるのです。

そのような中での、「衛星の破壊攻撃」というのは、世界をカオスに叩き込むひとつの概念となるかもしれません。

世界が理性のある社会であり続け、統治者たちが常識を持ち続けている限りは EMP だの衛星破壊核攻撃などはあり得ませんが、世界がマッドネスに包まれてきた場合、そういうこともある世界となっていくのかもしれません。

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