マスコミに載らない海外記事さんのサイトより
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2024/11/post-ef421e.html
<転載開始>



ロレンツォ・マリア・パチーニ
2024年10月28日
Strategic Culture Foundation

 希土類元素や貴金属の地政学は、世界的な出来事をより詳細に理解するため継続的観察が必要だ。

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リチウムがこれほど注目を集める理由

 歴史には、常に、戦争という劇的瞬間を経て、革命に直面していると言われるほど経済的要素が強い瞬間がある。19世紀末以来、世界は石油を巡る戦争を目撃してきたが、現在は希土類元素を巡る戦争が数年続いている。その中でも、スマートフォンや特に電気自動車に欠かせない鉱物であるリチウムは特別な役割を果たしている。

 イギリス人歴史家とジャーナリストが調査した外務省文書によると、ボリビアのリチウム資源を奪取するため、エボ・モラレス大統領打倒をイギリスは徹底的に組織していた。目新しいことは何もない。米英枢軸は既に何世紀にもわたり汚い作業を行っており、爆弾やクーデターによる民主主義の計画的転覆や輸出はこれが初めてではない。
 2019年に起きたエボ・モラレス大統領の失脚を少し振り返ってみよう。当時、モラレスがボリビアを独裁国家に変えたため国民が彼を追放したと欧米メディアは主張した。選挙が不正に操作されたが、民主主義が回復しつつあると認める報告書を米州機構(OAS)が発表した。チリ大統領サルバドール・アジェンデのようになるのを恐れ、モラレス大統領はメキシコに逃亡し、ボリビアのリチウム埋蔵を奪うために組織されたクーデターを非難した。クーデター首謀者を特定できなかったため、欧米では皮肉以外の何物でもなかった。

 この作戦が、第二次世界大戦後ボリビアのサンタクルスに定住したクロアチア系カトリック教徒のウスタシア共同体に実行されたことを明らかにしたのは、レゾー・ヴォルテールだけだった。この共同体は、俗に言うNATOの残置ネットワーク一種だ。一年後、モラレス大統領の政党は大差で選挙に勝利した。対立候補はおらず、モラレスは意気揚々と祖国に帰還できた。モラレス独裁政権とされものは存在しなかったが、ジャニーヌ・アニェスの独裁政権は選挙で打倒された。

 外務省機密文書を歴史家のマーク・カーティスとジャーナリストのマット・ケナードが入手して研究し、調査結果をウェブサイト「Declassified UK」で発表した。このウェブサイトは、イギリスで軍に検閲された後、南アフリカに移転したが、これも目新しいことではなく、今やこれは民主的「表現の自由」の実践だ。イギリスの政策が植民地解放以来全く変わっていないことを明らかにしたのはカーティスの功績だ。モラレス大統領打倒は、外務省自体とトランプ政権の支配を免れたCIAの一部に命じられたことが明らかになった。狙いは、上記の通り、エネルギー転換の一環としてイギリスが切望していたボリビアのリチウムを奪うことだった。早くも2009年、オバマ政権はクーデターを企てたが、モラレスはそれを阻止するのに成功し、多くのアメリカ外交官や職員がボリビアから追放された。一方、トランプ政権は、彼らの計画実行を組織的に阻止しており、見たところ中南米の政治指導者に機会を与えているようだ。

 だが、リチウムの一体何がそんなに興味深いのだろう。答えは簡単だ。リチウムは電池に不可欠な要素で、日常生活のハイパーデジタル化やテクノロジーのハイブリッド化を更に推進する世界では、リチウムは金と権力を意味する。この金属は主に、チリ、アルゼンチン、特にボリビアのアンデス砂漠高地(「リチウム・トライアングル」)の湖の天然塩溶液に含まれているが、チベットのサラール族自治県にもある。またオーストラリアの鉱山から抽出される特定鉱物にも固体で含まれている。技術的に、ガソリン車から電気自動車への移行に不可欠で、大気温暖化と闘うためのパリ協定により将来的に石油より重要になっている。

 2019年2月、モラレス大統領は中国企業TBEA特変電工に主要リチウム埋蔵開発を許可したが、当時イギリスは、それを独占する計画を練っていた。2006年にモラレスはボリビア大統領に就任したが、政治的に高地の生活に欠かせない地元の植物コカの生産者を部分的に代表していた。モラレス選出は、スペイン植民地時代以来排除されてきた先住民が、国際的に非常に価値の高い貿易を巡り権力を握ったことを意味した。

 この点に関し、リチウム競争上のいくつかの里程標をティエリー・メイサンが要約した。

  •  2017年から2018年にかけて、ボリビアのリチウム採掘条件を評価するため、国営企業ヤシミエントス・デ・リチウム・ボリビアノス(YLB)にイギリスが専門家を派遣した。
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  • 2019年から2020年にかけて、イギリスの技術を活用してボリビアでのリチウムの研究と生産を最適化する研究にロンドンが資金提供した。
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  • 2019年4月、在ブエノスアイレス・イギリス大使館は、アルゼンチン、チリ、ボリビアの代表者、鉱業業界および政府指導者らを集めたセミナーを開催し、ロンドン金属取引所の利用によって得られる利点を紹介した。モラレス政権の大臣も出席した。
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  • クーデター直後、イギリス・プロジェクトに米州開発銀行(IADB)が資金提供していたことが明らかになった。
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  • クーデターのかなり前から、イギリス外務省はオックスフォードの企業、サテライト・アプリケーションズ・カタパルトにリチウム埋蔵量地図作製を委託していたが、モラレス大統領が倒されるまで、同社はIADBから報酬を受け取っていなかった。
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  • 数か月後、反乱を阻止するため住民を彼らに有害なプロジェクトに参加させることを専門とする企業、ウォッチマンUKの協力を得て、リチウム供給チェーンの関係者300人が参加するセミナーを在ラパス・イギリス大使館が開催した。このセミナーは、住民反乱を防ぐためのプロジェクトを専門とするウォッチマンUK社の協力を得ていた。
 クーデター前後、ボリビアのイギリス大使館は首都ラパスは無視して、クロアチアのウスタシャが合法的に権力を掌握しており、文化や商業が盛んだったサンタクルス地方に特別な関心を寄せていた。クーデターの8か月前、ボリビアの銀行を無力化するために、イギリス大使館はサイバー・セキュリティに関するセミナーを開催し、イギリス内務保安局が設立したダークトレース社を紹介し、セキュリティのために同社サービスを利用する金融機関のみ、サンタクルスで業務を行うことが許されると説明した。

 カーティスとケナードによると、アメリカはモラレスに対する陰謀に直接関与してはいなかったが、計画をまとめるためにCIA職員がCIAを退職した。計画的な「裏切り」かどうかは定かではないが、CIAのサイバー作戦専門家マーカス・ファウラー、特に元情報局長アラン・ウェイドをDarkTraceが採用し「銀行業務」とほとんど関係ないチームを結成したのは周知の事実だ。また、この作戦に参加した人員のほとんどはイギリス人で、その中にはウォッチマンUKのマネージャー、クリストファー・グッドウィン・ハドソン(元軍人で、後ゴールドマン・サックス警備局長)とガブリエル・カーター(ナイツブリッジの非常に私的特殊部隊クラブのメンバーで、アフガニスタンで活躍した)が含まれていた。

 歴史家でジャーナリストの彼は、選挙不正を「証明」するために米州機構に必要なデータをイギリス大使館が提供したことを認めている。この報告書は、まずマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者により、その後の選挙でボリビア人自身により虚偽と暴露された。イギリスは短期戦争と秘密作戦を好み、メディアに察知されないよう最善を尽くしている。秘密裏に資金提供している多数の通信社やメディアを通じて、イギリスは自国の存在に対する国民の認識を直接支配し、搾取したい国の国民には酷い生活条件を押し付け、一種の悪循環を作り出している。イギリスの破壊活動に生み出された社会政治問題を断ち切るにはイギリス自身に頼るしかない。  
利益の貯蔵庫としてのウクライナ

 予備的推定によると、研究者らはウクライナがリチウムの宝庫で「再生可能エネルギーを可能にする非再生可能鉱物」が約50万トン埋蔵されていると考えている。リチウムは、単位重量あたりの効率的エネルギー貯蔵容量のため、電気自動車(EV)電池で事実上かけがえのない存在になっている。今後数年間、リチウムの世界需要急増は400%から4,000%の間と推定されている。需要が供給を上回り、採掘能力への更なる投資がなければ、コストが電気自動車導入を阻むことになるかもしれない。価格を下げて新規顧客を引き付けるというイーロン・マスクの夢は、危機が始まって間もなくテスラがモデルYの価格を2,370ドル以上値上げすると発表したことで既に打ち砕かれた。

 リチウムはクリーンエネルギーの未来の成功に不可欠だ。リチウム酸化物の世界最大潜在的供給源の一つが利用できなくなったことで、供給ギャップを埋める世界の能力に対する懸念が高まっている。特に世界のエネルギー供給の国際化に伴う大きなリスクを各国が認識しているため、国内リチウム採掘に更に重点を置く必要がある。だが、たとえばアメリカではリチウム採掘は極めて物議を醸す話題だ。皮肉にも、従来のリチウム採掘は環境に多大な損害を与え、現地の帯水層を汚染し、絶滅危惧種を死滅させる可能性がある。

 過去8年間で、リチウム生産量は2万トンから18万トンへと9倍に増加したが、コストは部分的にしか安定しておらず、2020~2022年には9倍の7万5000ドル/トンに上昇し、その後2023年には4万7000ドル/トンに減少した。世界的格付け機関の予測によると、今後10年間のリチウム消費量の伸びは激しく、現在の需要では、この材料に対する世界の産業界の需要は2035年までに800万トンから380万トンへと4.5倍に増加する。実施した調査により、ウクライナ鉱業と原材料基盤が、リチウム原材料を世界の技術チェーンに供給する上で高い可能性を持っていることが示された。実際、ウクライナには、花崗岩に希少金属が集中した、推定50万トン(世界の埋蔵量の最大10%)の大規模リチウム鉱床がある。鉱床はクリヴォロシュカ・クレメンチュツキー縫合帯と、ウクライナ楯状地中央部で記録されている。開発の見込みが最も高いのは、キロヴォグラード州のポロフスコエ鉱床とドブラ地域、ドネツィク州のシェフチェンコフスキー、ザポリージャ州のクルタヤ・バルカだ。これら鉱床には、リチウム含有量が3~4.5%のペタライト鉱石が含まれている。ウクライナ国家埋蔵量委員会の推計によると、2018年のポロフスコエ鉱床には貴金属含有量が1%を超える鉱石が2,700万トンあり、シェフチェンコフ鉱床には酸化リチウム含有量が1.5%のリチウム鉱石が1,380万トン含まれている。ウクライナのリチウム鉱床の一般的評価により、それらはペタライトまたはスポジュメン・ペタライトの変種であることが判明しているが、塩湖の水鉱物鉱石の状態と比較すると濃縮が困難だ。

 それで、ウクライナが大きな関心の的になっているのだ。戦略的分野における利用を過小評価すべきでない重要な経済的潜在力を欧米諸国から奪うために、ロシア連邦に加えられた新領土の防衛はロシアにとって絶対不可欠だ。戦線の反対側では、この領土があまりにも魅力的過ぎるという理由で、不要な戦争でヨーロッパ人全員を犠牲にする代償を払ってでも領土を失わないよう欧米諸国があらゆる手を尽くしているのは明らかだ。

 希土類元素や貴金属の地政学的動向は絶えず変化しており、世界的な出来事をより詳細に理解するためには、継続的観察が必要だ。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2024/10/28/the-ukrainian-war-for-lithium/

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 The Chris Hedges Report
Do Not Vote for those Who Support Genocide (w/ Kshama Sawant) | The Chris Hedges Report  1:03:56
Chris Hedges
Nov 01, 2024

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