yocchan_no_blog3さんのサイトより
https://yocchan-no-blog3.blog.jp/archives/7510838.html
<転載開始>
3月14日の報道は衝撃的であった。NATO事務総長のマーク・ルッテがウクライナのNATOへの加盟はないと述べたからだ。
この声明はルッテ事務総長がトランプ大統領と会談を行った後に公表されたもの。これによって、ウクライナとの和平交渉を巡るロシア側のもっとも基本的な条件のひとつがNATO事務総長によって公に確認されたのである。英独仏やウクライナの好戦的な政治家や新興財閥によって盤石であると思われていたNATOはウクライナで軍事的にも政治的にもほぼ敗退した。少なくとも、ロシアに勝つことはできなかったのである。まだ戦争が完全に終わったわけではないが、ナポレオン、ナチスドイツに続いて、NATOもまた対ロ戦争の歴史にその名を刻むことになるのではないか。
ウクライナ側にとっては、NATO加盟という鼻先へぶら下げられていたニンジンは突如消えてしまった。2014年のマイダン革命以降何年にもわたって醸成されてきたロシアに対する敵意や嫌悪感、それが故に何十万人もの若者たちに戦死をもたらし、その何倍にも達する多数の負傷者を出した対ロ戦争はここで中断せざるを得ない。ウクライナにとってはこの現実を呑み込むことは極めて苦々しいことであろうが、長期的な、あるいは、歴史的な観点からすれば、遅かれ早かれやって来ることが当初から予測されていたことだ。奇しくも、代理戦争の本質が全世界の人々の目の前に曝されることになった。これを契機に、ウクライナに対するNATO諸国からの武器の支援には終止符が打たれ、外交努力によるロシア・ウクライナ間の和平へと大きな転換が成されるであろう。(出典:Mark Rutte Confirms NATO Membership for Ukraine is Off the Table — Plans to Restore Ties with Russia After War: By Jim Hᴏft, GATEWAY PUNDIT, Mar/14/2025)
EUや英独仏といった好戦的な欧州の現政権にとっては、ウクライナにおける地上の現実は、民主主義を守るといった美辞麗句で覆い隠した、陳腐化したイデオロギーの推進が、もはや、不可能となることを意味する。今までの「ロシアは悪党だ」、「プーチンはヨーロッパを侵略する」といった政権維持に都合のいいプロパガンダや自己欺瞞とは決別するしかないのではないか。遅れ馳せながらも、目を覚まさざるを得ない。
・・・と、私の空想は果てしもなく広がって行く。
ところで、ここに「NATOの合理性を問う」と題された記事がある(注1)。
NATOをテーマとした議論は今までにも何度なく、数多くの論客によってさまざまな観点から取り上げられてきたが、この議論をあらためておさらいしておこう。
本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。
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副題:「ロシア人を排除し、ドイツ人を抑え込み、米国人を招き入れる。」
歴史を学んだ米国の観察者である私にとっては、欧州の国家元首たちが現在NATOやウクライナ、ロシアに関していったい何を考えているのかを正しく評価することは非常に難しい。彼らの発言から判断すると、ロシアとの致命的な敵対状態を維持する合理的な根拠なんて何もないということに彼らは気付いていないようだ。特に、ドイツ人は鈍感だ。
1990年に東西ドイツが再統一され、ソ連邦が解体された後、ロシアとの敵対関係を維持したいと望んだのは何よりも米国人であった。なぜならば、それは以下の理由が根拠となっていたからだ:
1) ドイツにおける米国の軍事占領を維持すること。
2) 米国の強大な軍事・産業・情報の複合体を維持すること。
3) 米国の金融プレーヤーやロシアにおける彼らの仲間たちがロシア国内の天然資源資産を活用することに同意するボリス・エリツィンのような弱い指導者を持った弱いロシアを維持すること。
この状況についてのもっとも明確な証拠は、ワシントンがドイツのシュレーダー首相とロシアのプーチン大統領との友情に対して、さらには、ノルドストリームパイプライン契約に対して彼らが抱いた憎悪にはっきりと見てとれる。これが(ワシントンにおいては)実り多いドイツ・ロシア関係に対する憎悪の象徴となったのである。
直近の数年は目を見張るような愚行で溢れてはいたが、中でも米国がジョー・バイデンの「ノルドストリームを終わらせる」という宣言をドイツのショルツ首相の目の前で実行したことほど驚くべきことはなかった。
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これはパイプラインの所有者に対する大規模な犯罪であるだけではなく、米国の同盟国と目されるドイツに対する戦争行為でもあった。最後に、パイプラインを爆破することは歴史上最大の人為的な温室効果ガスの排出源を作り出しただけではなく、「グリーン・アジェンダ」を推進する者たちが実は冷酷な偽善者であることを示すもう一つの事例ともなった。
そして、ドイツ政府は自国民と産業に対するこの衝撃的な犯罪と戦争行為にどのように反応したのだろうか?バイデン政権に対する抗議の声は一切なく、これは米独関係の歴史において最も狂気じみた、すこぶる堕落した米国の行動に対する完全な服従でさえもあった。
この出来事はNATOのみっつの主要目的のひとつ、すなわち、「ドイツを抑え込む」という点に私を引き戻す。ビスマルクが1871年にドイツのいくつもの公国を統一国家に纏め上げて以来、この国は定期的に恐ろしい指導者に悩まされてきた。ビスマルク自身は合理的な人物であって、アデナウアーやコール、シュレーダーも同様であった。しかし、2005年にアンゲラ・メルケルが指導者となって以来、ドイツは根っからの無能者に導かれていた。オラフ・ショルツは最悪であることが証明されている。
今、トランプ大統領は、ヨーロッパ人が、特にドイツ人が自分たちの主人になる自由を持っており、ロシアと互恵的な関係を築く自由もあるというシグナルを発信している。どういうわけか、2008年のブカレストでのNATOサミットに出席した欧州の指導者たちのすべてが当時完全に理解していたこと、すなわち、さらに東方のウクライナやグルジアにまでNATOを拡大させる意図を宣言し、ロシアに対する敵意と挑発の目標を積極的に追求していたことを米国は、今や、忘れてしまったのである。
あらためて繰り返しておこう。米国人はドイツのシュレーダー首相とウラジーミル・プーチンとの友情や彼らが交わしたノルドストリーム契約を嫌っていた。また、米国人はシュレーダーが2003年の愚かなイラク侵攻を支持することには消極的であったことからも、彼を嫌っていた。その後、ワシントン政府は疑わしい人物であるアンゲラ・メルケルを従順な従者として見い出した。2008年、メルケルはジョージ・W・ブッシュの欧州における政策がロシア人との不必要なトラブルを引き起こすかも知れないとの意見を述べたが、彼女はそれに対して反発をしなかった。
オバマ政権の頃、バイデン副大統領はウクライナにおける米国の地方総督のような役割を演じ、彼とコカイン中毒の彼の息子は同国の腐敗した新興財閥の連中と利益を生み出す関係を築いた。同様に、ヒラリー・クリントンとウクライナの新興財閥であるビクトル・ピンチュクは親しい友人になった。
この間、ウクライナの新興財閥の誰もが特に強い反ロシア感情を持っていたわけではなかったが、ワシントンの不気味な住人たちと甘い汁を吸う関係を約束することによって、そのような感情を持つように促されて行った。彼らは、ロシアをつつくために米国と手を組むことはリスクの高い仕事であることを理解しておくべきであった。もちろん、彼らにとってはこのリスクが特に高いというわけではない。なぜならば、ウクライナで事態が悪化した際には、ロンドンや南フランス、ウィーン、スイス、あるいはマイアミに所有している無数の家のどれかに避難することができるからだ。言うまでもなく、一世帯の年収の中央値が約1,000ドルの普通のウクライナ人にとってはそのような贅沢はまったくあり得ない。
オバマ政権の時代はワシントン政府がウクライナ民族主義について現在見られるような奇妙な感情を抱くようになっていった時代であった。それほど昔ではない時期(1980年代)、ウクライナ人は戦争中にナチス・ドイツと協力したという深い疑念を持って見られていたことを私は覚えている。1988年、米メディアではこの件について多くの議論が交わされていた。ウクライナ生まれの米国市民であるジョン・デミャンジュクはトレブリンカ絶滅収容所の悪名高い監視員「イワン・ザ・テリブル」として裁判を受けるためにイスラエルに引き渡されたのである。
当時、ウクライナの国家主義はナチズムによってひどく堕落していると見なされていた。ところが、2014年頃、物語は極端に傾いた。米国のマスコミは、突然、ウクライナの神聖な血と土壌、そして、ロシアの侵略者に対するウクライナ国民の勇敢な闘争についての物語を売り込み始めた。米国における「ウクライナ人」に対する新たな親愛の情は、わずか3年前にはマークのない地図でウクライナの位置を特定することなどはとてもできなかった米国においてウクライナ国旗がはためく姿は最高潮に達するまでになった。
フランス政権はバイデン政権やショルツ政権と同じくらいに愚かであった。現政権は戦後の偉大な大統領シャルル・ド・ゴールがNATOを主に米国の支配の道具であると正しく認識していたという事実を忘れてしまったかのようである。1966年にNATOからの脱退を決定したド・ゴールの判断は早過ぎたと主張することも可能ではあるが、2009年にNATOに再加盟することがフランス国民にいったいどのように役立ったのであろうか?
最後に、英国人だ。彼らは、今、英国の歴史の中でもっとも忌まわしい支配階級を抱えており、現支配階級は2020年3月以降に西側で現れたあらゆる形の露骨な専制体制さえをも熱心に受け入れる程である。
歴史的には自由な言論のための揺り籠と目されていた同国は、今や、ソーシャルメディアで政治的に不正確な意見を表明した人々の家に警察が踏み込むような国家となっている。2022年、ウラジーミル・プーチンの厳しい批評家であるコンスタンティン・キシンは、2021年にロシアではオンライン発言違反で400人が逮捕され、その一方で、英国では3,300人が逮捕されたと指摘している。このような記録を前にして、英国政府はいったいどのようにして忌まわしいプーチンから西洋文明を守り、勇敢な守護者の役割を担うと合理的に主張できるのであろうか?
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もしも英独仏の指導者たちが何とか共通の常識を持つことができるとするならば、彼らは幼稚な考え方を捨てて、トランプ大統領と共にロシアとの和解を図り、世界最大の国家と有益な取引を行えるであろう。
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これで全文の仮訳が終了した。
結局のところ、NATOには何の合理性もなかったのだと言えよう。
NATOの同盟関係が東西冷戦が消えてなくなった後でさえも何十年間にもわたって何の合理性も持たずに継続されてきたという現実は大きな驚きである。われわれ一般庶民は完全に洗脳され、妄想を抱かされ、疑問を挟むこともなく過ごしてきた。だが、驚くべき点はもうひとつある。それは英独仏の政治エリートたちが目を覚ますのはいったい何時になるのだろうかという点だ。彼らがもっとも長く妄想や自己暗示という罠に嵌り続けることになりそうだ。
1991年にソ連邦が崩壊し、ワルシャワ条約機構軍が解体された。これによって東西冷戦の構造は完全に消え去った。ベルリンの壁は崩壊し、東西ドイツが統合された。ドイツの再統合に関してゴルバチョフと会談した際に、ブッシュ大統領とベイカー国務長官は「NATOの境界線は1インチたりとも東方へ動くことはない」と約束した。この約束は有名である。皮肉な事には、後に、クリントン米大統領がこの約束を破って、東欧3カ国をNATOに招じ入れ、さらに有名になった。冷戦が終わった時点で、NATOも解体して然るべきであった。それにもかかわらず存続し続けたNATOは自己の存在理由を問われると、それに答えるのに苦労する時期が長く続いた。幸か不幸か、911同時多発テロが起こり(あるいは、都合よく引き起こされて)、対テロ戦争が開始となった。米国を始めとして西側諸国の軍人さんたちは胸を撫で下ろした。米国のある高官は「これで、軍組織はさらに50年は安泰だ」と述べたという。率直に言って、軍人たちにとっては平和は敵なのである。安い給料で定年まで働らいて来た軍の高官たちは退官後に軍需産業のどこかへ天下りし、高給取りになることによって長年の貸しを取り戻すことが出来るのである。軍需産業側にとってもまったく同じだ。彼らは戦争や紛争を起こすことによってのみ自分たちの将来の繁栄を具体的に描けるのである。
この極めて歪んだ実態は税金を納める一般庶民が厳しく監視することによってのみ是正が可能となる。一般庶民が立ち上がらない限り、やる人はいない。具体的な目標を持って透明性のあるシステムを確立しなければならない。
これは米国やNATO諸国だけに限られた問題ではない。言うまでもなく、日本もまたまったく同様の極めて大きな社会的課題を抱えている。昨今の世論を見れば明白である。

参照:
注1:Reviewing NATO’s Rationale: By John Leake, FOCAL POINTS, Mar/02/2025

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