みのり先生の診察室さんのサイトより
https://ameblo.jp/drminori/entry-12889923839.html
<転載開始>

昨日、乳腺外科医事件について書きました。

 

今日はその続報です。

 

メディカルトリビューンに浜松医科大学教授 大磯義一郎先生が緊急寄稿をされていたのでシェアします↓

 

 

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【緊急寄稿】乳腺外科医事件、差し戻し控訴審の無罪判決を受けて
 

浜松医科大学教授 大磯義一郎

2025年3月13日

〔編集部から〕 術後の女性患者にわいせつな行為をしたとして乳腺外科医が準強制わいせつ罪に問われていた事件の差し戻し控訴審で、東京高裁は昨日(3月12日)、一審の無罪判決を支持し、検察側の控訴を棄却した。

 

医療界、特に外科医療に大きな波紋を広げた本件について、医師兼弁護士で浜松医科大学教授の大磯義一郎氏に緊急寄稿してもらった。


医の倫理に反した二審の検察側証人


 検察の当初の起訴事実は物理的にも状況的にも実行困難で、通常ならありえない内容だった。にもかかわらず、当たり前の結論が出るまで105日の勾留と9年の年月がかかったことは大変遺憾である。

 本件では主に①被害者証言の信用性、②DNA検査の証明力が争点となった。

 

今回の差し戻し控訴審の判決は、①について「せん妄の可能性を否定できず、証言を補強する独立した証明力の強い証拠が必要」、②について「口腔内細胞が付着した可能性が否定できず、被告人がなめたと断定できないことから、被害者証言を支えるだけの十分な証明力があるとはいえない」と、基本的に最高裁判決の骨子を受けたものとなっている。

 特に①について、二審での検察側証人の医師が「医学的に一般的でないことが相当程度うかがわれる」(最高裁判決より引用)内容の証言をしたこと、それによって本件一連の訴訟で唯一の有罪判決が出たことは大きな問題である。

 訴訟である以上、勝ちたいという姿勢は理解できなくもないが、検察は公益の代表者である点を忘れてはならない。

 

また、専門家の立場で「医学的に一般的でないことが相当程度うかがわれる」証言をすることは医の倫理に反する。

 

本件では不明ではあるが、「御用鑑定人」や「鑑定屋」が訴訟をゆがめるのは民事ではよく見受けられるが、刑事裁判ではあってはならない。

科捜研の古い検査体制が露呈


 ②について、科学捜査研究班(科捜研)職員の証人尋問を聞いた私見としては、今回の高裁判決同様、科捜研職員がデータを捏造したとは感じなかった。

 

単純に科捜研スタッフの技術、知識水準が古く、現在の水準に満たないとの印象を受けた。

 

科捜研という閉じた環境で旧来の慣習が令和の時代まで続いていたのかもしれない。

 

ただ、大学なども小保方事件が起きるまで同程度の水準であったのであり、科捜研にはその影響が及ばなかっただけともいえる。

 科捜研は人の有罪無罪を決める重大な検査を行う機関であるが、本件でその水準が驚くべき状況であることが明らかとなった。

 

これを機に科捜研の検査水準を上げるべく、予算、教育など適切なサポートをしてほしい。



外科医が診察を躊躇する事態も


 現在、ほとんどの医療機関では、医師が異性を診察する際(特に男性医師が女性患者を診察する際)、患者と同性のスタッフを同席させるようにしている。

 

しかし、2023年の時点で医師の男女比は76.4% vs. 23.6%と男性が多くなっており、このような診療対応は医療機関にとってかなりの負担となる。

 加えて、本件のように術直後に創部を確認する数十秒の診察(しかも大部屋でカーテン越しに実母がいる状況)にまで別スタッフを同席させることはより困難である。

 

医師が診察を躊躇するといった萎縮が生じる可能性もあり、医療安全の観点からも懸念される。



司法は「近代化」を急げ


 今後、本件のように不条理な事態から医療者を守るためには何が必要なのだろうか。

 

カメラの設置は録画した動画の漏洩リスクなど新たな問題を抱えることとなり、現実的ではない。

 対策としては別スタッフの同席に落ち着くと思われるが、そのコストはどう負担するのか、ヒト・モノ・カネが枯渇している医療現場の現状を踏まえた議論が求められる。

 一方、本件における長期の勾留、起訴や無罪判決に対する上訴、証人に「医学的に一般的でないことが相当程度うかがわれる」証言をさせた点について、検察はどう反省し、再発防止を図るのか。

 

また、科捜研の検査水準の向上、あまりに非常識な裁判官の取り扱いなど、刑事司法の近代化は重要な課題である。

 医療界は2000年代に司法とマスコミから強烈なバッシングを受けて改善を進めている。

 

しかし、検察、裁判所は批判の対象となることが少なく、結果として改善が行われていない。

 また、一部マスコミの報道も問題だった。

 

有罪確定前の被疑者、被告人であるにもかかわらず、面白おかしく報道する姿勢は反省すべきである。

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大磯先生は弁護士免許を持った医師。

 

弁護士ならではの視点と医師の視点、両方持ち合わせた先生です。

 

どう見てもおかしいだろう・・・という事件でした。

 

正直、こんなことありえない・・・と私も思いました。

 

術後、麻酔から完全に覚めていない患者さんの確認に行く際に、必ず女性看護師を同行させることも普通はなく、おそらく、外科医は止血されているかどうかを確認するために創部を見たのだと思われます。

 

大部屋で付き添いの母親が居る状況でわいせつ行為??

 

と外科系の医師なら誰もが思ったことでしょう。

 

また麻酔後のせん妄についても外科病棟で働いたことのある医療従事者なら誰でも知っているはず。

 

常識的に考えたらありえないことが「その場」に居ない医師によって証言され有罪となった。

 

そのせいで当事者である医師だけでなく、医師の家族が受けた仕打ちは想像を絶する。

 

中学生だった息子さんが電車に飛び込み自殺されたことはあまり報道されていませんが、マスコミが殺したと言ってもいいでしょう。

 

毎日家の周りにはりついてゴミまであさる、待ち伏せする、尾行する、家族にも容赦ない言葉が浴びせられる。

 

まるで犯罪者のように報道され、それを見た人々から罵倒される。

 

学校でも辛かったでしょう。

 

もしも自分の身に起こったら・・・と想像してみて下さい。

 

人生変えられた・・・ではすまされません。

 

裁判で勝っても亡くなったお子さんは戻ってこないのです。

 

 

マスコミは罪に問われませんが加害者だと思います。

 

もう二度とこういう事件が繰り返されないためにどうすればいいのか?

 

女性患者と二人きりになるな

 

と男性医師は教えられることも多いと思いますが、現実問題として男性医師一人に女性看護師一人をつけられるほど人員は充足していません。

 

もしもこういう事件が多発して医師が有罪判決を受けることが増えてきたら、もう男性医師は女性患者を診られなくなります。

 

萎縮医療が横行し歪んだ医療が行われるでしょう。

 

そんな世の中にしないために司法は倫理観を持った判決をお願いしたい。


<転載終了>