地球の記録 - アース・カタストロフ・レビューさんのサイトより
https://earthreview.net/experiments-to-dim-the-sun/
<転載開始>


Telegraph

人工的に太陽を暗くする試み

太陽を暗くすることによって地球の気温を下げる、という発想は、もともとアメリカで生まれたもので、米ハーバード大学の科学者たちが、ビル・ゲイツ財団からの莫大な資金提供の中で始まったことを、2019年8月のこちらの記事で取りあげたことがあります。

基本的には、

「成層圏に粒子を噴霧して、太陽光を地表に届きにくくさせる」

という…まあ、一種の狂気の発想です。仮に成功するとした場合、気候や食糧生産にどんな影響が出るかわからないわけですので。

本当に太陽光が薄くなってしまった場合、世界中の農業が打撃を受けるはずです

このアメリカで始まった「太陽を暗くする」というプロジェクトが、英国でも始まることが英テレグラフ紙により報じられていました。政府による承認が確定的になったようです。

この実験を行う中心は、英国の高等研究発明局という組織だそうで、英語の通称名は ARIA (アリア)だそう。こんな組織があることを初めて知りました。

いずれにしましても、どんな副次的な影響があるのかわからない、この手の実験が拡大するのは厄介なことではありますね。


なお、現在、地球の気温が高い最も大きな理由は、2022年のトンガ沖の海底火山(フンガ・トンガ=フンガ・ハーパイ)の大噴火によるものであることを、以下の記事で書いたことがあります。

2022年のトンガの海底火山の影響は「寒冷傾向ではなく強力な気温上昇作用」であることを知る。結局これからの地球の気温はどっちへ?
BDW 2024年7月15日

この記事に、海底火山の大噴火が気温が上昇と関係するする原理(通常の火山噴火ではなく、海底の火山のみが当てはまります)、特に大気中の水蒸気が増加するとどうなるのか、ということなどを書いていますが、少なくとも 2022年以来の気温の上昇は、太陽はあまり関与していないのです

つまり、太陽光のほうに何か細工をしたところで、地球上で巨大な海底火山の噴火が続発すれば、気温の上昇は誰にも止められないのですよ。

フンガ・トンガ=フンガ・ハーパイの 2022年の海底噴火による影響は、

「少なくとも 5年〜 10年ほど続く可能性がある」

と専門家は述べています。

ともかく、筋違いの「太陽を暗くする」実験が英国で始まるということについての英テレグラフ紙の記事です。

なお、文中に「雲を明るくする」という表現が何度か出てきまして、どうも意味がわかりにくいのですが、英語で「 brightening clouds 」とありますので、そうとしか訳しようがありませんでした。

太陽を暗くする実験が承認される

Experiments to dim the Sun get green light
Telegraph 2025/04/22


屋外実験には、大気中にエアロゾルを注入することも含まれる可能性がある。

地球温暖化と戦うために日光を弱める実験が、数週間以内に英国政府によって承認される見込みだ。

科学者たちは、暴走する気候変動を防ぐ方法として、大気中にエアロゾルを注入したり、太陽光を反射するために雲を明るくしたりする屋外でのフィールド実験を検討している。

政府の先端研究・発明資金提供機関である英国高等研究発明局 (ARIA)は、今後数週間のうちに発表されるプロジェクトのために 5,000万ポンド (約 90億円)を確保している。

高等研究発明局のプログラムディレクター、マーク・サイムズ教授は、「特定のアプローチに関する小規模で管理された屋外実験」が行われると述べた。

「数週間以内に誰に資金提供したかを発表する予定であり、その際には屋外での実験がいつ行われるかも明らかにするつもりだ」として、サイムズ教授は以下のように述べた。

「この議論で欠けているものの一つは、現実世界の物理データです。モデルから得られる情報は限られています。

「私たちが行うすべてのことは、設計段階から安全です。責任ある屋外研究を含め、責任ある研究に全力で取り組んでいます」

「私たちは実験の継続期間とその可逆性について厳しい要件を設けており、環境に有毒物質を放出する資金は提供しません」

人工的に気候を変えようとする、この地球工学プロジェクトは物議を醸しており、批評家たちは有害な連鎖反応を引き起こす可能性があるだけでなく、排出量削減の妨げになると主張している。

しかし、科学者たちは二酸化炭素濃度が十分な速さで下がっておらず、壊滅的な温暖化を防ぐためにはさらなる対策が必要になるかもしれないとますます懸念している。

主要な研究分野の 1 つは太陽光反射法 (SRM)であり、これには成層圏に微粒子を放出して太陽光を反射する成層圏エアロゾル注入 (SAI)が含まれる。

もう一つの解決策として考えられるのは、船舶が海塩粒子を空に散布して低層雲の反射率を高める海洋雲増光(MCB)だ。

 

船舶の排気ガス

専門家たちはここ数十年、汚染により雲の反射率が高まり、航路上空の雲が通常よりもはるかに明るくなり、全体的に太陽光が暗くなっていることに気づいた。

船舶の排気ガスによるこの冷却効果は非常に顕著で、2020年に二酸化硫黄の排出を抑制する国際規制が制定された際に地球温暖化の急上昇を引き起こしたと科学者たちは考えている。

英エクセター大学大気科学科のジム・ヘイウッド教授は次のように語った。

「雲に微粒子を注入すれば雲が明るくなり、より多くの太陽光が宇宙に反射されるようになります」

「これがうまくいくとどうしてわかるのかというと、実は、非常に強力な証拠がいくつかあります」

「船舶の煙突から海洋環境に排出される排気ガスにより、海上の雲に明るい線が現れるのです」

「 2014年にはアイスランドで火山噴火があり、大量の二酸化硫黄が放出されました。その結果、雲が明るくなり、地球の温度が下がりました。私たちが行うべきは、何らかの形でのフィールド実験です」

 

巻雲の播種

地球工学の他のアイデアとしては、巻雲を撒いてより多くの熱を宇宙に逃がすというものがある。現在、高高度の薄い雲が毛布のように機能し、熱を閉じ込めている。

英インペリアル・カレッジ・ロンドンの持続可能な航空学の上級講師、セバスチャン・イーストハム博士は次のように語った。

「飛行するたびに、ジェット燃料に自然に含まれる硫黄が成層圏最下層に放出され、わずかな冷却効果をもたらします」

「同様に、飛行機雲は巻雲の偶発的な変化を引き起こしますが、この場合は巻雲を防いだり薄くしたりするのではなく、偶発的に巻雲を引き起こします。

「これは、現在の技術で(地球を冷やすことは)理論的には可能ですが、大規模に実施する前に答えなければならない実際的な問題がたくさんあることを示しています」

専門家たちは、実験が成功すれば、規模を拡大して 10年以内に実施できると期待している。



<転載終了>