https://earthreview.net/uturuncu-zombie-volcano/
<転載開始>
ウトゥルンク山
ox.ac.uk
25万年の時を経て
南米のボリビアにウトゥルンク山という火山があり、この火山が最後に噴火したのは「 25万年前」とされている、いわゆる死火山と定義できるような火山なのですが、この火山が「活動の兆候を示している」ことが報じられています。
地震が 1700回以上続いているのだそう。
ウトゥルンク山の場所
Google Map
この活動について、英オックスフォード大学、中国科学技術大学、米コーネル大学による共同研究が行われ、「死火山」が数十万年の時を経て再び活動し始めたメカニズムの解明がなされました。
もちろん、完全にはメカニズムはわかっていないものの、論文が PNAS (米国科学アカデミー紀要)に掲載されています。
仮に大噴火が起きた場合、相当大きな被害が出るタイプの火山だそうですが、研究者たちは、
「この不穏な状態は、火口下の液体とガスの動きによるもので、差し迫った噴火の可能性は低い」
と述べています。
それにしても、噴火とは関連がないにしても、25万年も完全に一切の活動がなかった火山で、再び火山活動の兆候が出ているというのは、やはり死火山という定義は存在しないのだなあと思います。数十万年などの間隔を経ても、活動するときにはして、そして、噴火するときには噴火すると。
この研究を取り上げていた報道をご紹介します。
ボリビアのゾンビ火山が25万年の休眠期間を経て活動の兆候を見せる
Zombie volcano in Bolivia shows signs of activity after 250,000 years of dormancy
TRIBUNE 2025/05/06
ボリビアのアンデス山脈にあるウトゥルンク火山は25万年間休火山だったが、人命を脅かし破壊をもたらす可能性のある噴火の兆候を示している。
ボリビア南西部の最高峰ウトゥルンク山の噴火により、山頂付近の幅約 150キロの地域が隆起・陥没し、ソンブレロ(メキシコの伝統的な男性用帽子)のような形状が形成された。
最近の 1,700回を超える地震により、科学者たちはウトゥルンチュを研究するようになった。
研究者たちは、衛星データ、地震分析、圧力下での岩石の挙動に関するコンピューターモデルを統合することで、ウトゥルンチュの内部の仕組みをより明確に理解し、その異常な活動の原因を解明した。
彼らの研究結果は 4月28日に米国科学アカデミー紀要に掲載された。
火山の噴火は一般的に、マグマがマグマだまりと呼ばれる地下の窪みに上昇し、噴気孔や亀裂を通って地表に噴出するときに起こる。
マグマが厚いほど、閉じ込められたガスが圧力を高め、爆発的に解放されてマグマが溶岩となって噴出するため、噴火はより激しくなる傾向がある。
しかし、研究が明らかにしたように、ウトゥルンチュ火山の地下ではそうではない。
マグマ、ガス、そして塩水が熱水系内で相互作用し、火山の「ゾンビ」のような轟音を引き起こしていることがわかったのだ。この活動のメカニズムは完全には解明されていない。
ウトゥルンチュの地下 10~ 20キロメートルの深さには、約 200キロメートルにわたる広大なマグマ溜まり、アルティプラノ・プナ・マグマ体が横たわっている。
ウトゥルンチュ山のこのマグマ体は地球の地殻で知られている中で最大の活マグマ体だ。
これまでの研究では、このマグマ溜まりと上部の山を結ぶ活発な熱水系の存在が示唆されていたが、マグマと流体の正確な相互作用は未だ解明されていなかった。
研究により、マグマ体が地下の液体を加熱してガスを放出すると、これらの液体とガスが上昇し、火口の下の空洞に集まることが明らかになった。
この動きは地震活動を引き起こし、蒸気を放出し、火山の岩石を変形させ、その結果、地表が毎年約 1センチメートル上昇した。
これらの内部プロセスはウトゥルンツ火山の活動を説明するが、研究は「ゾンビ」火山が近いうちに噴火する可能性は低いことを示唆している。
研究の共著者であり、オックスフォード大学教授のマイク・ケンドール博士は、警戒すべき兆候はないと述べ、安心感を与えた。
「マグマの動きを示唆するような地震活動の増加や深部からの移動は見られません」とケンドール博士は説明した。「火山は単にガスを放出して沈静化しているだけのようです」
世界火山活動プログラムは、1万2000年から 260万年前に形成され、主に温泉や噴気孔などの地熱特性を示す約 50の「ゾンビ」火山を追跡調査してきた。
ウトゥルンチュ火山は、他の火山とともに、噴火の危険性がある火山を特定するのに役立つ可能性がある。一部の火山は表面温度が高く、地熱エネルギーや鉱床の探査が行われている。
「多くの現象にはまださらなる調査が必要です」とコーネル大学のマシュー・プリチャード博士は述べている。「一部は冷却傾向にあるかもしれませんが、他の一部は活動が活発化している可能性があります」と彼は付け加えた。
<転載終了>