地球の記録 - アース・カタストロフ・レビューさんのサイトより
https://earthreview.net/giant-radio-telescope-on-the-dark-side-of-the-moon/
<転載開始>


月の裏

NASA が、「月の裏側に巨大に電波望遠鏡を建設する計画」を建てていることをライブサイエンスが報じていました。

月は自転と公転が同期して、常に地球に同じ側を向けているため、地球から見て「表と裏」の区別があります。そのため、月の裏側は地球に住んでいる限り見えることはない場所なのです。

NASA のこの計画は、予想資金 2000億円超えの大プロジェクトですが、なぜ、地球上に多くの電波望遠鏡があるのに、月の裏側に建てようとしているのか、というと、いろいろと理由はあるだろうにしても、大きな理由のひとつとして、

「人口衛星の数が増えすぎて、それが、地球上からの天体の観測を邪魔をしている」

のだそうです。

衛星からは放射線が誤って漏れることがあるのだそうで、これが遠方の天体を研究しようとする電波望遠鏡の妨げになる可能性があるとのことでした。

今後も人工衛星の数は指数関数的に増えていくことが予測されていますが、これ以上衛星が増えて、「ある最大容量」に達した場合、最悪の場合、

「一部の波長での観測が不可能になるかもしれない」

のだそうです。

人工衛星の過度な増加は、それだけではなく、非常に深刻な問題をもたらすことを以下で書いたことがあります。

最近の人工衛星の大量運営により「地球の磁場の消失と電離層の撹乱が現実的な話」に。この影響は人類滅亡レベルになりそう
In Deep 2024年2月3日

それが今後数十年で起きる可能性があると科学者が述べていました。

これは結構深刻な話なのですが、今回の話とは関係ないです。

月の裏に建設が計画されている電波望遠鏡に関しての記事です。予算の障壁が厳しそうです。

NASAは月の「裏側」に巨大な電波望遠鏡を建設する計画を立てている。その理由は次のとおり

NASA plans to build a giant radio telescope on the 'dark side' of the moon. Here's why
livescience.com 2025/05/31

NASA が資金提供している月の裏側に大型電波望遠鏡を建設する計画が最終承認に近づいており、2030年代までに実現する可能性があると研究者は述べている。この野心的なプロジェクトは、人工衛星による「メガコンステレーション」から天文学を守るとともに、科学者が電波スペクトルのさらなる解明を進める上で役立つだろう。

NASA の科学者たちは現在、月の「裏側」にある幅約 1.6キロメートルのクレーターに巨大な電波望遠鏡を建設する計画に取り組んでいる。

プロジェクトの科学者たちはライブサイエンスに対し、承認されれば早ければ 2030年代にも建設が開始され、費用は 20億ドル(約 2800億円)を超える可能性があると語った。

天文学者たちは、宇宙最大の謎を解明するために、月クレーター電波望遠鏡(LCRT)として知られる、初めてのアンテナを建造したいと考えている。

しかし、民間の衛星「メガコンステレーション」から漏れ出る目に見えない放射線の量が増え、地球ベースの電波天文学をすぐに混乱させる可能性があることを懸念しているためでもある。

提案されている望遠鏡は、すべてロボットによって建設され、月の裏側のクレーター内にケーブルで吊り下げられた巨大な金網で構成される。

これは、地球上の自然の窪地内に建設された、プエルトリコの崩壊した宇宙探査アレシボ望遠鏡や、中国の巨大な 500メートル口径球面望遠鏡(FAST)に似ている。これにより、衛星信号からアンテナが保護され、太陽放射や地球の大気からの干渉も防ぐ。

LCRTプロジェクトは現在、カリフォルニア工科大学にある NASA ジェット推進研究所(JPL)のチームによって調査されている。このプロジェクトは 2020年に初めて提案され、NASA 先端概念研究所(NIAC)から「フェーズ I」として 12万5000ドル (約 1800万円)の資金提供を受けた。2021年には「フェーズ II」に進み、NIAC からさらに 50万ドル (約 7200万円)の資金提供を受けた。

研究チームは「フェーズ III」の資金を申請する準備をしており、早ければ来年にも交付される可能性がある。

現在、200分の 1スケールのプロトタイプを作製中で、今年後半にカリフォルニア州のオーエンズバレー電波天文台でテストされる予定だと、 LCRT プロジェクトに参加しているJPLの研究科学者ガウランギ・グプタ氏がライブサイエンスに語った。

資金が承認され、プロジェクトがこの最終段階を通過すれば、本格的なミッションとなり、望遠鏡は 2030年代のある時点で建設される可能性があるとグプタ氏は語った。

最新の計画では、幅 350メートルのメッシュ反射鏡が計画されており、これはアレシボ衛星の崩壊したアンテナよりも大きいものの、中国の FAST よりは小さい。

2020年に当初提案されたのは、直径 1,000メートルの反射鏡だったが、その約 3分の1の大きさとなる。研究者たちはすでに、衛星の北半球にある幅 1.3キロメートルの窪みをクレーターとして選定しているが、正確な位置は公表されていない。

科学者が月面に電波望遠鏡を設置するという提案をしたのは今回が初めてではない。グプタ氏によると、この構想は少なくとも 1984年に遡る。しかし、そのような構造物を建設するには技術的な課題があるため、これまで真剣に検討されたことはなかった。

「しかし、最先端の技術により、LCRT はこれらすべての問題を解決し、このコンセプトを現実のものにできる可能性がある」とグプタ氏は語った。

しかし、グプタ氏によると、最新の「概算」では、LCRT の建設費用は約 26億ドル (約 3700億円)になる可能性があるという。特にトランプ政権によって NASA の予算が大幅に削減されている状況では、予算が最後の障害となる可能性がある。

 

天文学の保護のために

民間衛星、特に SpaceX の急成長中のスターリンク衛星群の出現により、地球を周回する衛星の数は急速に増加している。

これは、宇宙ゴミの増加、夜空の光害の増加、衛星の再突入による上層大気への金属汚染の蓄積など、いくつかの問題を引き起こす可能性がある。

あまり知られていない問題として、民間の衛星は宇宙に放射線を誤って漏らす傾向があり、それが古代の銀河や近くの太陽系外惑星、超大質量ブラックホールなどの遠方の天体を研究しようとする電波望遠鏡の妨げになる可能性があるという点がある。

複数の電波天文学者が最近、ライブサイエンスに対し、地球を周回する衛星の数が最大容量に達した場合、「変曲点」に達し、それを超えると電波天文学は極度に制限され、一部の波長では不可能になる可能性があると語った。

もしこれが起こったとしたら、「それは、我々が宇宙を観測するための『窓』を人工的に閉じているということを意味する」と、スクエア・キロメートル・アレイ天文台の天文学者のフェデリコ・ディ・ヴルノ氏はライブサイエンスに語った。

月面に遮蔽された望遠鏡があれば、最悪のシナリオが現実のものとなった場合でも電波天文学は存続できる可能性がある。しかし、この望遠鏡 1台では、現在世界中の電波観測所で達成されている科学観測のほんの一部しか行えない。つまり、宇宙を研究する能力は依然として大幅に制限されることになる。

グプタ氏によると、他の研究者たちは、LCRT の補助あるいは代替として、月周回衛星群の利用可能性も検討しているという。しかし、これらの衛星群では、大型望遠鏡に比べて観測可能な範囲がはるかに狭くなる可能性が高い。


<転載終了> 
おまけ