免疫系が破綻するとどうなるか?
免疫系が機能しなければ様々な感染症にもかかりやすくなります。また癌を発症しやすくなり、悪性化もしやすくなります。一方、免疫のシステムが誤作動により一度自己タンパクを敵として認識してしまうと、免疫系が自分自身の体を攻撃し始め自己免疫疾患を引き起こします。例えば遺伝的な要因により免疫系の構成要素が欠けているために生まれつき免疫が正常に働かない遺伝病があります (原発性免疫不全症候群)。また特定の感染症へのかかりやすさ、かかりにくさにもMHC (HLA) などといった免疫系の遺伝子の個人差が関与しています。このように免疫系は病気の多くに深く関わっているのです (図1)。
図1繰り返しになりますが、免疫系は人体にとって病気を予防したり治癒したりするシステムである反面、誤作動や機能不全を起こした場合には逆に病気を引き起こす原因ともなります。免疫系が破綻した際に実際どのような病気を発症するかはランダムな要素が大きく、まさに「ロシアンルーレット」です。
獲得免疫の主役B細胞とT細胞
図2T細胞とB細胞は特定の病原体に対する特異的かつ標的を絞った免疫応答を担います。T細胞には獲得免疫の司令塔となるヘルパーT細胞、感染細胞などを殺傷する細胞障害性T細胞 (キラーT細胞)、免疫反応を抑制する制御性T細胞 (Treg)、自然免疫系に近い働きを持つγδ (ガンマデルタ) T細胞があります。ヒトB細胞にはIgM、IgD、IgG、IgA、IgEの五種類のクラスがあり、それらは抗体を分泌するプラズマ細胞、長寿命をもつメモリー細胞に分化します。
T細胞とB細胞の特徴は遺伝子組換えによる多様性であり、T細胞、B細胞は個性を持ち、それぞれ別の標的を認識する別個の細胞です。遺伝子多様化によって、体内には百万種類以上のT細胞、B細胞が存在します (図2)。
自己免疫疾患
表1自己免疫疾患においては、自分自身の体を構成する抗原 (自己抗原) に対する抗体 (自己抗体) が原因となります。自己抗体を作る自己反応性B細胞は通常は静止状態ですが、ヘルパーT細胞の監視機構をすり抜けて活性化すると自己抗体を産生するようになります (表1)。
ギラン・バレー症候群は筋肉を動かす運動神経が障害され、四肢に力が入らなくなる病気であり、重症の場合には呼吸不全を来します。これはガングリオシドに対する自己抗体 (タンパクなどの自己抗原に対する抗体) によって引き起こされる自己免疫疾患です。
重症筋無力症ではアセチルコリンに対する自己抗体により神経筋伝達が阻害され、筋肉の易疲労性や脱力が起こります。
橋本病およびバセドウ病の原因はいずれも甲状腺に発現する分子に対する自己抗体です。橋本病では甲状腺ミクロソームなどに対する自己抗体によって甲状腺機能が低下し、倦怠感、身体のむくみ、便秘、体重増加などといった症状が現れます。逆にバセドウ病では甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体が甲状腺機能亢進症を起こし、その結果甲状腺ホルモンが必要以上に産生され、肉体及び精神に様々な影響を及ぼします。このように自己抗体によっては必ずしも標的を攻撃するとは限らず、標的分子を活性化する場合もあるのです。
自己免疫疾患の病状は多様ですが、原因となる機序自体はシンプルです。自己抗体がどの分子と結合するか、その分子を発現しているのがどの細胞か、どの臓器かによって攻撃対象が確定されます。自己抗体がそれらの細胞、臓器を攻撃する事で、それぞれの自己免疫疾患に特有の病状を呈するのです。
また現在、自己免疫疾患としては約80種類ほどが知られていますが、原理的には人間を構成するどの遺伝子産物に対しても自己抗体は生じ得るため、名前の付けられていない自己免疫疾患や症状も実際には相当数あるであろうと私は考えています。
自己免疫疾患は代表的なB細胞病であり、またB細胞白血病やリンパ腫もB細胞の病気です。しかしそれらの疾患は百万種類以上にも及ぶB細胞のうちのそれぞれわずか1〜数種類だけが原因となっており、他のB細胞は依然として生体防御に重要な役割を担っているのです。しかし、B細胞に対する分子標的治療では基本的にあらゆるB細胞が殺傷の標的になります。これは例えるならば、たった一人の犯人のために無実な全員を無差別に処刑するようなものです。
コロナワクチンが自己免疫疾患を起こす機序
そもそも自己免疫疾患は一般的なワクチンの副作用としても起こり得るものなのですが、mRNAワクチンの場合にはさらにその傾向が強くなります。コロナワクチン接種が自己免疫疾患を引き起こす機序は少なくとも3つあります。
1) 一つ目の機序はスパイクタンパクとの交差反応です。スパイクタンパクに対して作られる抗体の中には自己抗原に反応するもの (自己抗体) も存在しますが、抗体が認識する抗原の部位自体はわずか5〜8アミノ酸程度ですので、ヒトのタンパクと部分的に類似するアミノ酸配列を持つ外来タンパクも多いのです。そのため、スパイクタンパクに対して作られた抗体の一部が自己抗体となれば、それらは自己免疫疾患の原因となります。
2) 二つ目の機序はmRNAワクチンの強力な炎症反応によるものです。反応により細胞が死んでしまった場合、死細胞から自己タンパクが放出されます。これらのタンパクなどに対して免疫反応が起これば、自己抗原に対する抗体が産生されるようになり、自己免疫疾患が引き起こされます。
3) 三つ目の機序はエプスタインバールウイルス (EBV) によるものです。EBVはヘルペスウイルスであり、mRNAワクチンによる免疫抑制によってEBVも再活性化する場合があります。EBVはB細胞に感染して不死化させるため、そのB細胞が作る抗体が自己抗体であった場合に自己免疫疾患を引き起こします。
とりわけ2) と3) の機序によって引き起こされる自己免疫疾患はランダムであり、様々な種類の自己免疫疾患の原因となり得ます。
IgG4は免疫系の監査システムの1つであり、自己免疫疾患を鎮静化させる働きも持ち合わせます。抗原特異的免疫抑制が本来のIgG4の機能なのです。しかし自己免疫疾患が起これば抗体のIgG4化も促進され、癌など他の病気を誘発する原因ともなります。
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*記事は個人の見解であり、所属組織を代表するものではありません。
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