https://note.com/hiroshi_arakawa/n/nf9d334955ed7
<転載開始>
自然免疫系のプレーヤー達
前回に引き続き「mRNAワクチンと免疫系」のシリーズとなります。今回はコロナワクチンが免疫に与える影響についてのお話しになりますが、その免疫の中でも特に自然免疫に関してクローズアップしていこうと思います。

https://en.wikipedia.org/wiki/Blood_cell
免疫系は体内を循環する監視と攻撃のシステムであり、自然免疫系と獲得免疫系に大別されます。そしてそのシステムには血球系の様々な細胞が関わっています (図1)。それらの細胞の中の骨髄の造血幹細胞から生じる主要な血球細胞には骨髄系 (ミエロイド系) 細胞とリンパ系細胞があります。赤血球を除くと、骨髄系細胞は主に自然免疫系の細胞です。
病原体を殺すための酵素などを含む顆粒を細胞内に持つ細胞である顆粒球は、ギムザ染色での染まり方の違いによって好中球、好酸球、好塩基球の3つに分類されます。また、血液中を循環する単球は組織内でマクロファージや樹状細胞に分化します。マクロファージは病原体やアポトーシス小胞 (アポトーシスを起こした細胞が断片化されたもの) などを自分の中に飲み込み破壊します。 樹状細胞は抗原を取り込みT細胞に提示する事で適応免疫応答を開始します。 巨核球は血液凝固に不可欠な血小板を生成します。これらの細胞は感染症に対する第一次防衛部隊であり、人体に侵入しようとする広範囲の病原体に対して迅速に立ち向かいます。ナチュラルキラー細胞 (NK細胞) は細胞傷害性リンパ球の一種であり、特に腫瘍細胞やウイルス感染細胞の駆逐に重要な役割を担います。
自然免疫系の細胞はToll様受容体などを介して外敵を認識する能力を持ちますが、抗体との共同作業によってさらにその本領を発揮します。抗体が一旦対象物に「敵である」という目印を付けると、NK細胞、マクロファージ、補体などの自然免疫の構成要員がその対象に一斉に襲いかかるのです。また自然免疫を構成する細胞種は多岐に渡りますが、そうした自然免疫系の特定の細胞の枯渇やバランスの崩れは免疫系の機能不全にもつながります。
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害 (ADCC, antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)

https://ja.wikipedia.org/wiki/抗体依存性細胞傷害
抗体依存性細胞傷害 (antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity; ADCC) とは、標的細胞に結合した抗体がNK細胞、マクロファージ、好中球、好酸球などによる細胞傷害活性を誘導する機序です (図2)。このように抗体が標的に目印を付与すると、その標的は多様な自然免疫系の攻撃対象となります。
抗体依存性細胞貪食 (ADCP, antibody-dependent cellular phagocytosis)

https://en.wikipedia.org/wiki/Antibody_opsonization
オプソニンとは食細胞に結合して食作用を受けやすくする血清因子です。そしてオプソニン化とは、微生物などの抗原に抗体や補体が結合する事により抗原が食細胞に取り込まれやすくなる現象です。オプソニン化を担う主要な分子には補体のC3bやIgG抗体が知られています (図3)。
補体依存性細胞傷害 (CDC, complement- dependent cytotoxicity)

https://ja.wikipedia.org/wiki/補体
補体は抗体および貪食細胞を補助する血中タンパク質です。補体の役割は抗原をオプソニン化し、さらにマクロファージ等に走化性刺激を与えたり、マクロファージの標的への貪食をサポートする事ですが、もう一つの役割として標的細胞の表面に穴を開ける膜侵襲複合体を構成し、標的細胞を破壊する事があげられます (図4)。
コロナワクチン接種後に接種部位などに強い炎症が起きたり、免疫低下や免疫抑制が起こる事がありますが、その原因の一端には、自然免疫系の多彩な細胞種のバランスの崩れが考えられます。
中和抗体
中和抗体は、ウイルスや細菌毒素などの病原体の感染力や毒性を文字通り直接的に「中和」する働きを持つ抗体です。中和抗体はウイルス表面のタンパク質が細胞の受容体へ結合しようとする事を妨いだり、 複数のウイルス粒子に結合して凝集させ感染力を低下させます。このように中和抗体の主な役割は、病原体が細胞に感染する前の段階でその病原体の能力を無力化する事です。
コロナ騒動の中で私が強い違和感を感じてきた件の一つとして、ワクチンの効果に関し、中和抗体価ばかりがことさらに重視され、指標として使われてきたという事があります。中和抗体価とはいわば抗体単独による攻撃力とも言えるものですが、その数値自体は抗体の持つ一つの側面に過ぎません。むしろ抗体の本来の機能とは攻撃すべき対象に目印をつける事であり、その対象に対して自然免疫のシステムが総攻撃を仕掛ける事により免疫系の攻撃力ははるかに増すのです。また一方、IgG4抗体のように自然免疫との連携をブロックして免疫を逆に抑制する働きをする抗体も存在します。つまり、「中和抗体価が上がりさえすれば良い」というような単純な話ではないのです。
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