マスコミに載らない海外記事さんのサイトより
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2025/12/post-1eca25.html
<転載開始>
ヴァネッサ・セヴィドヴァ
2025年11月23日
New Eastern Outlook

 サウジアラビア東部では、今後数十年にわたる世界のエネルギー情勢を一変させる可能性のある戦略的転換が進行中だ。世界で最も収益性の高い石油会社であり、長らく原油の代名詞であったサウジアラムコは、その膨大な資源の大部分を、異なる燃料である天然ガスへと転換させている。

 

 これは単なる試行錯誤ではなく、本格的戦略転換だ。同社は2030年のガス生産量増加目標を、2021年比で80%増という驚異的な数字へと引き上げた。これは、従来の60%増という目標から大幅に引き上げられたものだ。原油価格の変動が激しく、エネルギー転換を求める世界的圧力が高まっている時代において、アラムコは後退しているのではなく、むしろ再構築を進めており、ガスが将来の回復力と成長の礎となると確信している。
 変化する石油市場を乗り切る

 アラムコのガス事業への取り組みは、同社が石油部門において継続的に展開している計算高い長期戦略を反映している。サウジアラビア、ひいてはアラムコは、比類のない強固な立場で事業を展開している。アミン・ナセルCEOが明らかにした通り、サウジアラビアの原油1バレルの生産コストはわずか2ドル、随伴ガスも原油換算1バレルあたりわずか1ドルだ。これは世界で最も低い生産コストで、この事実がサウジアラビアに計り知れない戦略的忍耐力を与えている。

 ここ数ヶ月のように原油価格が下落し、1バレル70ドル前後、あるいはそれを下回ると、高コスト生産者、特に米国のシェールオイル掘削業者は圧力を感じる。価格が70ドルを下回ると掘削・仕上げ経費が上昇するため、シェールオイル生産者の多くにとって収益性が悪化すると専門家は指摘している。リヤドにとって、原油価格の低迷期には二つの目的がある。それは、世界的原油需要の継続を確保すると同時に、競合他社に圧力をかけ、投資削減を迫ることだ。これにより、OPEC加盟諸国などのより低コスト生産者の市場シェア拡大につながる可能性がある。

 天然ガスはもはや単なる移行燃料ではなく、世界のエネルギー情勢において不可欠かつ恒久的な一部となっている。

 この戦略は、長期的な石油需要への揺るぎない自信に支えられている。サウジアラビアのエネルギー大臣アブドゥル・アズィーズ・ビン・サルマン王子は国際エネルギー機関(IEA)が主張する「ラ・ラ・ランド」シナリオを声高に批判してきた。IEAは石油需要のピークが差し迫っていると予測していた。王子は長年にわたり炭化水素は「今後も存在し続ける」と主張し、IEAは中立的な専門家から「政治的提唱者」に変貌を遂げたと主張してきた。

 この姿勢を顕著に裏付けるように、IEAは最近劇的な方向転換を見せた。最新の世界エネルギー見通しにおいて、IEAは世界の石油・ガス需要が2050年まで増加し続ける可能性があると認め、従来のピーク需要予測から大きく後退した。OPECはこれを「現実との邂逅」として歓迎した。この転換は、化石燃料の永続的な役割を強調するもので、サウジアラビアによる石油・ガス供給への継続的投資の必要性主張を正当化するものだ。

 ガスはもはや単なる移行燃料ではない

 石油市場の現実を背景に、アラムコのガス事業への積極的進出は、多角化の見事な一手と言える。しかし、これは単にクリーンな代替燃料の発見だけを狙ったものではない。ダーラのアラムコ本社内で、ガスをめぐる議論は根本的に変化した。

 「天然ガスはもはや単なる移行燃料とみなされておらず、世界のエネルギー情勢において不可欠かつ恒久的な一部になっている」と、アラムコの戦略・コーポレート開発担当執行副社長アシュラフ・アル・ガザウィが述べている。この発言は、言説と戦略の両面において重要な転換を示している。ガスは今やそれ自体重要な柱として認識されている。

 その要因は二つある。第一に、国内需要の逼迫だ。サウジアラビアは長年、天然ガスを発電や産業にもっと利用することを政策の目標としてきた。これにより、国内で消費する原油を何百万バレルも削減し、輸出に回せるようになる。これは直接的に国家歳入の増加につながる。

 第二に、そしておそらくより説得力があるのは世界的な需要の強力な新たな源泉たるデジタル経済の出現だ。「これは、人工知能(AI)とデータセンターに関連する需要の伸びを支える重要な要因だ」とアル=ガザウィは付け加えた。エネルギーを大量に消費するAIデータセンターの爆発的増加は、信頼性の高い電力に対する旺盛で継続的な需要を生み出しており、ガスはまさにその供給源として独自の地位を占めている。

 アミン・ナセルCEOは最近のCNBCインタビューで、現在、同社の資本投資の大部分がガス事業に集中していると肯定した。ナセルCEOは、アラムコが2027年までに初のリチウム抽出プラントの建設を計画していることを明らかにした。これは新技術とエネルギー貯蔵のエコシステムと連携する動きだが、ガス事業は依然として同社の中心的焦点だ。

 ジャフラ・ガス田

 このガス転換の原動力となっているのは、サウジアラビア最大で、世界でも最大級の非在来型ガスプロジェクト、ジャフラ・ガス田だ。ジャフラ・ガス田は、サウジアラビアが世界有数のガス生産国となるという野望の礎になっている。生産量目標の80%増産により、アラムコのガスおよび液体ガスの総生産量は、石油換算で日量約600万バレルに達すると予想されている。

 JPモルガンのアナリストは、これは「以前の見積もりと比較して、1日あたり50万バレル相当の実質的増加を意味する」と指摘し、同社の野望が明らかに加速していることを示している。

 財務的根拠も説得力がある。アラムコは、ガス事業拡大により、2020年代末までに年間営業キャッシュフローが120億ドルから150億ドル増加すると見積もっている。現在の市場では、ガスは単位当たりの収益性では石油より低いかもしれないが、安定的で確実な収入源となる。Middle East Economic Survey編集長ジェイミー・イングラムが指摘する通り、ガスは「価格が固定されており、現地市場が継続的に拡大しているため、確実で安定した収入源」となる。

 ガスとAI

 アラムコの戦略は興味深い相乗効果を生み出している。AI革命の推進力としてガスに賭けると同時に、AIを活用して自社のオペレーションを効率化しているのだ。同社は毎日100億以上のデータポイントと90年分の履歴データを活用し、パフォーマンスを分析・最適化している。ナセル氏は、これらデジタル化の取り組みにより、2023年から2024年の間に既に60億ドルの付加価値が生み出されていると述べている。

 つまり世界のエネルギー需要を押し上げている同じAIテクノロジーが、アラムコがそのエネルギーをより安価かつ効率的に抽出し供給するのにも役立ち、低コストの優位性を更に強化していることになる。

 新しいエネルギーの現実

 アラムコのガス転換、IEAの見通し修正、そして伝統的な産業と新技術の両方からの絶え間ない需要といったこれら要因が重なり合うことで、明確な未来像が浮かび上がってくる。世界は、単純な「再生可能エネルギーのみ」という物語が示唆するより、より複雑なエネルギー時代に入りつつあるのだ。

 サウジアラビアは、アラムコを通じて、この複雑な状況における主導権を握ろうとしている。低コストの石油を戦略的手段として活用し、市場支配力を維持すると同時に、巨大ガス企業を育成して財政的将来を確保し、次世代の技術成長の波を牽引しようとしている。ダーランからのメッセージは明確だ。エネルギーの未来は、古いものと新しいもののどちらかを選ぶのではなく、石油とガスと技術が深く絡み合った実用的で多様化されたポートフォリオなのだ。この新たな現実において、アラムコは選ばれるサプライヤーであり続けるつもりだ。

 ヴァネッサ・セヴィドヴァはモスクワ国際関係大学MGIMOの大学院生、中東・アフリカ研究者

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/11/23/aramco-betting-big-on-a-new-energy-future/

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 昔読んだSteve Waltenの小説「Shell Game」を思い出した。下記は2008年2月26日に掲載した書評翻訳。小説が翻訳されていないのが実に残念。

 『シェル・ゲーム』書評 キャロリン・ベーカー

 カリブ海銃撃虐殺事件で、戦争長官本人が戦争犯罪人というお粗末な一席。

 Judge Napolitano - Judging Freedom
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