マスコミに載らない海外記事さんのサイトより
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2025/12/post-442223.html
<転載開始>
Brian Berletic
2025年11月28日
New Eastern Outlook

 ウクライナにおけるロシアとの代理戦争が続く中、アメリカは再び「和平計画」と呼ばれるものを提案した。

 

 提案内容は的外れだ。アメリカは一般的な和平を求めているわけではなく、ましてロシアとの具体的な和平を求めているわけではない。むしろ以前の提案と同様に、進行中の紛争を凍結し、ウクライナ軍を再建し、可能であれば西側諸国部隊をウクライナ国内に展開させて緩衝地帯を設け、ロシア軍の進撃を阻止しようとする試みだ。

 これは単なる憶測の域を出ず、今年2月にブリュッセルで欧州に向けて出された公開指令の中で、アメリカ国防長官(現在は「戦争長官」)ピート・ヘグセス自ら明らかにしたことだ。

 ヘグセス長官が「これはミンスク3.0であってはならない」とわざわざ主張したにもかかわらず、この指令は、進行中の紛争を凍結し(終わらせるのではなく)、ウクライナの「安全保障上のニーズ」に「倍増して」「再関与」し 、それによりウクライナ軍を再建することを含む「ミンスク 3.0」の枠組みを明示的に提示しただけでなく、実際は「欧州および非欧州の部隊」により課されるシリア式緩衝地帯を追加することでそれを上回っている。

 ミンスク1と2がウクライナ軍制圧を阻止し、実際の和平が実現されるのを阻止したのと同様、この新たな「ミンスク3.0」 提案は、紛争を再び凍結させ、具体的には真の解決策が生まれるのを阻止することを目指している。
 ウクライナに「欧州および非欧州の部隊」が配備され、アメリカが再びロシアとの合意に違反したことが明らかになった場合、ロシアが特別軍事作戦(SMO)を再開する能力は、ウクライナ国内に深く根付いたNATOの存在により複雑になるだろう。これはちょうど、アメリカとトルコ軍がダマスカスと同盟国のロシア、イランによるシリア完全奪還を困難にし、最終的に2024年後半、ロシアとイランが支援する政府の完全崩壊に至ったのと同じだ。

 ロシア主権を回復し、政策、制度を再構築し、産業を利益よりも目的に近づける優先順位に戻したのは、プーチン大統領とその政治的同盟者を含む、現在ロシアを運営している現在の政治的利益だった。

 たとえアメリカがこれらの可能性を明示的に排除した合意を提案しても、最初のミンスク合意とミンスク合意2も同様で、アメリカとウクライナおよびヨーロッパの代理勢力により単純に、露骨に、そして非常に意図的に違反されたのを忘れてはならない。

 また、ウクライナ紛争にとどまらず、アメリカはロシア、そしてそれ以前のソ連に対しても、これまで提案してきたあらゆる合意、条約、了解事項に違反してきたのを忘れてはならない。ドナルド・トランプ大統領自身を含む歴代アメリカ政権により、現在破棄されている中距離核戦力(INF)全廃条約やオープンスカイ条約など、一方的に破棄されてきた軍事条約、覚書、協定が数多く存在する。

 現在のトランプ政権は、政権発足から僅か一年足らずの間に、イランおよびレバノンに拠点を置くヒズボラとの「和平協定」や「停戦」提案を、アメリカの代理組織(イスラエル)による首切り攻撃の試みと、その成功や、アメリカ自身によるイラン攻撃の隠れ蓑として利用してきた。

 ロシアの対応

 これら提案をクレムリンがどのように解釈しているか確実に知ることは不可能だ。ロシア指導部がアメリカ提案を何でも信じるほど素朴だとは考えにくく、そもそもアメリカが平和を模索する可能性があると信じるなど到底考えられない。

 だが、ミンスク1と2を振り返ると、ロシアの国営メディアTASSによれ、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領自身も後に「全くの欺瞞」だったと認めたにもかかわらず、両方の提案に同意したことから、そもそもなぜこれら合意が受け入れられたのか、そしてロシアが西側諸国の将来提案を受け入れるのかどうかという疑問が生じる。

 2014年から2015年にかけて、ロシアは最終的に2022年のSMOとなるものを開始する準備がまだできておらず、ミンスク1と2で双方に生じた時間をロシアがより有効に活用し、SMO開始時に、ウクライナとそのスポンサー、アメリカより強い立場に立てると感じていたのかもしれない。

 アメリカのこの最新提案は、またしても明らかな欺瞞だとロシアは理解しなければならない。アメリカがロシアと同盟国の中国を包囲し封じ込めることに関し、これまでも、そして今も明らかに取り組んでいる真の狙いをヘグセス長官が認めているのだ。

 これに同意するのは、ロシアが自ら休戦を必要としており、休戦によって得られる時間をアメリカとその代理勢力より有効に活用できると確信した場合のみだろう。また、ロシアは、ウクライナへの「欧州および非欧州軍」派遣に対し、現在崩壊し壊滅状態にあるシリア・アラブ共和国でしたよりも効果的な方法で対処する用意があることを確信しなければならない。

 あるいは、ウクライナの戦闘力が崩壊する中、ウクライナの戦場でロシア軍が飛躍的に前進を続ける一方、次々と出される提案にロシアは単に応じるだけかもしれない。

 今や、現在の大統領政権やアメリカ議会の構成にかかわらず、アメリカには合意する能力がないこと、そして数十年にわたる世界覇権追求に直面している国々は、それに対する防衛戦略と、エスカレーションへの危険なスパイラルを回避する手段とのバランスを取らなければならないことは十分に明らかなはずだ。

 アメリカの外交政策の真の意味を理解する

 次々に提案されるアメリカの政策の意味を理解しようとする観察者にとって、アメリカ政策の様々な層を考慮するのは有益だろう。

 これらの層には、(1) 最も浅薄でほとんど意味のない言説、プロパガンダ、政治劇、(2) 進行中のアメリカの軍事作戦、態勢、準備、(3) 定評あるシンクタンク内部で行われている金融企業の政策決定 (そこで書類が弁護士チームにより法案に変えられ、その後ロビイストによりワシントンに送られ、承認されるだけ)、(4) 世界に対するアメリカの優位性を維持するという主な動機と「集団的国際主義」または「多極主義」に立ち向かい解体したいという切実な願望が他の全ての政策を推進している最も深い層が含まれる。

 言説、プロパガンダ、政治劇という上層部に焦点を当てて分析すると、常に混乱が生じ、予測は悲惨に外れ、アメリカの政策、動機、利益を全体的に理解できなくなる。

 これら以外の、より重要性の高い層を更に深く掘り下げることで、表面に作り出された意図的な混乱を切り抜けられる、アメリカの力、その本当の意図や方法や動機について、より深く根本的な理解ができる。

 またアメリカ政策の標的となった人々には、それに伴う欺瞞や、欺瞞によ目をそらすことを意図した裏切りの危険の両方から自らを守るための現実的戦略を策定する最良の機会が与えられる。

 第一階層:言説、プロパガンダ、政治劇

 そもそもアメリカが 「平和」について語っているのは、ロシアが戦場で客観的に成功しているからにすぎない。それはちょうど、2014年から2015年にかけての状況が、ミンスク合意1と2に先立ち、アメリカとそのヨーロッパ代理勢力に 「平和」について語らせたのと同じだ。

 そうでなければ、2024年にシリア政府を転覆させ、シリア・アラブ共和国を完全に政治的に掌握する機会が訪れたときと同様、アメリカとその代理勢力は、指定された敵対国に最大限の損害を与えることを目指して妥協のない政策を追求するだろう。

 この最初の表面的な層では、アメリカは、ウクライナや他の欧州諸国を含むその代理人とともに、ウクライナに関してロシアと不誠実な合意を形成する手段と、アメリカとその代理人がロシアが受け入れる合意を必然的に破る手段の両方を区分することを意図した一種の政治劇を演じている。

 ワシントンが意図する違反行為の中で、まず第一に挙げられるのは、 ウクライナへの侵攻を企図する「欧州および非欧州」部隊の創設と展開だ。アメリカとウクライナおよび欧州代理勢力との間の「意見の不一致」状況は、アメリカが「和平協定」を提案し、可能であれば実施することを可能にする。一方、ウクライナと欧州は協定違反の責任を負い、アメリカは凍結された紛争と、アメリカが計画する「欧州および非欧州」部隊の恩恵を享受しつつ、 ロシアとSMO再開の可能性との間に立ちはだかることになる。

 アメリカは、自国の政治体制でもこの芝居を演じている。「トランプ政権」が提案した内容は、民主党内のいわゆる反対派から自動的に攻撃され、トランプ支持者も同様に、その内容や、ドナルド・トランプ大統領が2024年の選挙運動で掲げた公約との矛盾に関わらず、自動的にその提案を支持するようになる。

 トランプ政権内でも、この芝居は行われている。トランプ大統領の閣僚の中でも「攻撃的」メンバーは、2024年の選挙公約に反する提案の責任を負い、一方、J・D・ヴァンス副大統領のような「理性的」メンバーは、政権が公約を露骨に破っているにもかかわらず、公約を守ろうとしているふりをし、トランプ政権が明らかに正反対の方向へ進んでいるにもかかわらず、少なくとも国民の支持と希望をある程度保とうとしている。

 第二階層: 運用実態

 運用上の現実にはウクライナで進行中の紛争に関するアメリカの実際の行動が含まれる。

 アメリカは2014年にウクライナを政治的に掌握し、現在では政治的、軍事的、経済的に完全支配している。

 アメリカは、ドイツのヴィースバーデンにある作戦基地を通じて、進行中の戦争のあらゆる側面を支配しており、ウクライナ軍指揮系統の最高位を形成し、高レベル戦略の立案から戦場、更にはロシア領奥深くの個々のロシア標的選択まで全てを監督している。

 2014年以来、アメリカはウクライナ諜報能力のあらゆる側面を掌握し、再建し、現在はその指揮を執っている。これは2024年の記事「スパイ戦争:CIAがいかにしてウクライナのプーチンとの戦いを秘密裏に支援しているか」でニューヨーク・タイムズが明らかにしている。

 アメリカは依然欧州全土に数万人の軍隊を駐留させており、2014年以降ウクライナに対して行ったのと同じやり方で、ロシア国境沿いのNATO加盟諸国や非NATO加盟諸国を軍事化するアメリカ政策を監督しており、そもそもこの紛争を引き起こしているのだ。

 これら全ては、上の層で行われている言説、プロパガンダ、政治的演劇と関係なく客観的に継続しており、いかなる政治的保証、約束、または提案された合意よりもアメリカの意図をはるかに正確に示している。

 第三階層:金融企業による政策立案

 更に深いのは、ワシントンの世界作戦の現実を導く戦略を提示する政策文書で、その言説、プロパガンダ、政治劇、約束に関係なく、ロシアに対する継続的な敵意や攻撃や再包囲が含まれる。

 ロシアに関するアメリカの作戦上の現実は、2019年のランド研究所論文「Extending Russia Competing from Advantageous Ground(ロシアの手を広げさせる:有利な立場からの競争)」の中で明確に示されており、同論文は、現在進行中のウクライナにおけるロシアとの代理戦争として「Measure 1: Provide Lethal Aid to Ukraine (対策1:ウクライナへの致死的援助の提供)」を提案し、その内容について次のように述べている。  
ウクライナへのアメリカの支援拡大(致死的な軍事支援を含む)は、ロシアにとってドンバス地域を掌握するための犠牲(血と財政の両面)を増大させる可能性が高い。分離主義者へのロシアの支援拡大とロシア軍の増派が必要になる可能性が高く、支出増大、装備損失と、ロシア軍死傷者の増加につながる。後者は、ソ連のアフガニスタン侵攻時と同様に、ロシア国内で大きな物議を醸す可能性がある。
 この文書はまた「ベラルーシの政権転覆を促進する」「南コーカサスの緊張を利用する」、「 中央アジアにおけるロシアの影響力を減らす」「シリア反政府勢力への支援を強化する」などの措置により、ロシア周辺地域全体、更には旧ソ連邦諸国でロシアに圧力をかけることを提案している。

 この文書では、更に「石油輸出の妨害」「天然ガス輸出の削減とパイプライン拡張の妨害」「制裁を課す」「 ロシア頭脳流出の促進」といった経済対策も提案されているが、これらは全て、オバマ政権、トランプ政権、バイデン政権、そして現在第二次トランプ政権にかけて、アメリカがこれまでに実施し現在も実施し続けている対策だ。

 繰り返しになるが、様々なアメリカ政権が公式に何を言ったか、あるいはロシアに非公式に何を約束したかにかかわらず、ランド研究所の「Extending Russia Competing from Advantageous Ground ロシアの手を広げさせる」のような政策文書は、ロシアに対するアメリカ政策を推進する実際の青写真となっており、過去と現在の運用上の現実に現れている。

 更に悪いのは、ロシアを標的としたこのような政策が当てはまる全体像だ。

 2018年にアメリカ海軍大学が発表した「A Maritime Blockade Against China 中国に対する海上封鎖」と題する論文では、ロシアは、その大きなエネルギー生産能力、中国と接する長い国境や、中国にエネルギーを供給するパイプライン建設が進行中であることなどから、中国包囲や封鎖の成功上、大きな障害になると指摘されている。

 たとえ中国の海上封鎖と、中国の一帯一路構想における陸上経路の標的化・破壊に成功したとしても、中国へのロシア・エネルギー輸出は、アメリカ封鎖を成功させる上で依然困難をもたらす。従って、これは長年にわたるロシア自身を封じ込める政策を遙かに超え、遙かに緊急かつ切実に望まれている中国封じ込め政策に合致するものだ。

 今年2月に欧州に送った指示の中で、中国封じ込めに向けて、アメリカは緊急に方向転換しなければならないとさえヘグセス長官は言及していた。

 仮にウクライナに関する全ての面で、ロシアがアメリカに全面的に譲歩したとしても、同様に中国との断絶、あるいは敵対的姿勢を取ることで譲歩しない限り、アメリカはウクライナにとどまらずロシア周辺への攻撃を続けるだろう。

 ランド研究所をはじめとする政策シンクタンクは、独立機関とは言い難い存在で、武器メーカー、大手石油企業、製薬業界、巨大IT企業、銀行、投資会社など西側諸国全体の最も強力で影響力ある利害関係者を代表する企業や金融機関から資金提供を受け、運営されている。これが、更に深い層へと繋がる。

 第四階層: 大企業・金融企業の主目的

 これら政策シンクタンクが大手企業や金融企業の利益によって動かされているとすれば、一体何がその利益を動かしているのだろう?

 答えは、権力と利益の永続的追求で、それは「株主至上主義」といった原則により制度化され、株主の富の最大化を要求する。有限、あるいは時に減少する人口と、同様に有限な市場における利益と権力への果てしない欲望は、あらゆる競争の排除を意味する。それは統合と独占の過程を通じて、アメリカ国内のみならず、世界全体での競争で、ロシアを含む世界全ての国の人口と市場への参入と独占を要求する。

 これら原則が究極的に具体化し、ロシアに与えた影響は、ソ連崩壊と新生ロシア連邦に対する欧米諸国による略奪が続く1990年代に顕著となった。目的志向の国営企業を解体し 「民営化」し、その後、利益のために資産を剥奪・売却しようとする動きは、何百万人もの人々を貧困に陥れ、将来の見通しを暗くした。

 「自由市場資本主義」の約束はロシア国民には全く受け入れられなかったが、それは その後何十年も西側資本主義の熱気に「温められてきた」旧ソ連諸国の人々にも受け入れられなかったのと同じだ。

 ロシア主権を回復し、政策、制度、産業を再構築し、利益より目標に優先順位を戻したのは、プーチン大統領と政治的同盟者を含む現在ロシアを運営している現在の政治的利害関係者で、それがロシア連邦の今日の世界大国復活につながったのだ。

 ウォール街とワシントンの観点からすると、これは権力と利益の追求という彼らの主目的に対する障害で、そのためロシア(と多極世界を構成する他の多くの国々、特に中国)は「敵」に指定され、ソ連がかつてそうだったように、そしてシリア、リビア、イラク、そして最近ではネパールなどの国々がずっと最近そうであったように、数十年にわたる政策により、侵略や包囲や最終的には転覆を狙われてきたのだ。

 これら主目的が変わらない限り(そして変わっていないが)、それらが生み出す政策は変化せず、実施されるこれら政策の運用上の現実も変化しない。

 唯一変わるのは、世界中の大衆と意思決定者の両方を、この現実からそらし、武装解除させ、更なる前進のための余地や時間や機会を得るために使われる言説とプロパガンダと政治劇だけだ。

 アメリカ外交政策の完全な分析は、これら全ての層を網羅し、アメリカ外交政策が実際どのように、そして、なぜ策定されるのかという基本原則を一貫して理解していく必要がある。言説、プロパガンダ、政治劇といった最も表面的な層に焦点を当てても、地政学的現実は理解できない。海の波を、いくら研究しても、その遙か下に潜む何百万もの生物や海流や地形が全て明らかにならないのと同じだ。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/11/28/new-us-peace-proposal-is-minsk-3-0-repackaged-yet-again/

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