https://yocchan-no-blog3.blog.jp/archives/11034154.html
<転載開始>
ここに、シカゴ大学のジョン・ミア―シャイマー教授が一カ月程前の11月11日、ヨーロッパ議会で第3党の位置を占める「欧州愛国者党」という会派の会合で行った講演の記録がある。「ジョン・ミアーシャイマー教授がヨーロッパの暗い将来に関してEU議会にて講演」と題されている(注1)。
本日はその第2部をお届けします。
***
(第2部)
ヨーロッパとロシアの関係:
今後のヨーロッパとロシアの関係はどうなるでしょうか?見える限りでは、有害なものになる可能性が高い。ヨーロッパ人、そして、もちろん、ウクライナ人はロシアが併合したウクライナ領土を統合しようとするモスクワの努力を妨げ、ロシアに経済的・政治的な困難をもたらす機会を探ることであろう。
ロシアは、ヨーロッパ内部やヨーロッパと米国の間で経済的・政治的な混乱を引き起こす機会をあれこれと探すだろう。ロシアの指導者たちは、西側がロシアに対して照準を合わせている中、西側をできるだけ分裂させる強い動機を持つことになります。そして、ロシアはウクライナを機能不全の状態に保つように努める一方で、ヨーロッパはウクライナを機能する国家にしようと努力するであろうことを忘れてはなりません。
ヨーロッパとロシアの関係は有害であるだけではなく、危険なものとなる。戦争の可能性は常に存在するであろう。
六つの火種:
ウクライナとロシアとの間で戦争が再開されるリスクに加えて、ロシアがひとつまたは複数のヨーロッパ諸国と戦争する可能性もあるだけではなく、他にも6つの火種があります。
第一に、氷が溶けたことで航路や資源を巡る競争が生まれている北極海を考えてみよう。北極海に物理的に位置する8か国のうち7か国がNATO加盟国であることを忘れてはいけません。残る1か国がロシアであり、この戦略的に重要な地域ではロシアはNATO諸国に7対1と数の上で劣っていることになります。
第二の火種はバルト海で、周囲のほとんどがNATO加盟国であることから「NATOの湖」と呼ばれることもあります。しかし、この水域はロシアにとって戦略的に重要であり、東ヨーロッパ内にあるロシアの飛び地であるカリーニングラードも同様にNATO加盟国に囲まれています。
第四(?)の火種はベラルーシで、その大きさと地理的位置からロシアにとってはウクライナと同様に戦略的に重要であります。しかし、ヨーロッパ諸国や米国はルカシェンコ大統領が退任した後、ミンスクに親米または親西側の政権を設置し、最終的にベラルーシをロシア国境に対する親西側の防壁に変えようとするであろう。
西側諸国はすでにモルドバの政治に深く関与しており、モルドバはウクライナと国境を接しているだけではなく、トランスニストリアとして知られるロシア軍が占拠している分離地域も含んでいます。
最終的な火点は黒海であり、ロシアとウクライナの双方にとって、また、ブルガリアやギリシャ、ルーマニア、トルコなどの一部のヨーロッパ諸国にとっても非常に重要な戦略的意義を持っています。バルト海の場合と同様に、黒海にも多くのトラブルの可能性があります。
これらすべての事柄が意味するのは、たとえウクライナが凍結された紛争の状態になったとしても、ヨーロッパとロシアは問題の多い地政学的状況の中で敵対的な関係を続けるであろうということです。言い換えれば、ウクライナでの戦闘が終わったとしても、ヨーロッパでの大規模戦争の脅威は消えないということです。
ヨーロッパへの影響:
さて、次にヨーロッパ内部における戦争の影響に目を向け、続いて大西洋を挟む関係性への影響について考えたいと思います。
まず第一に強調しておかなければならないのは、たとえ醜い勝利で終わったとしても、私が予想するウクライナ戦争でのロシアの勝利はヨーロッパにとっては衝撃的な敗北となるという点です。言い換えれば、それはウクライナ紛争の開始以来深く関与してきたNATOにとってはまったく予想外の敗北となります。実際、本同盟は2022年2月以降、ロシアを打ち負かすことに全力を尽くしてきたのです。
NATOの敗北は加盟国の間だけではなく、多くの国々の内部でも非難の応酬を引き起こすでしょう。この惨事の責任が誰にあるのかはヨーロッパの支配者層にとっても非常に重要な問題となります。そして、確かに、人々は他者を非難し、自分の責任を受け入れない傾向が強まるでしょう。
ウクライナを失ったのは誰かという議論は、国家間だけではなく、それぞれの国内においても、そして、対立に揺れるヨーロッパ中で行われることになります。これらの政治的争いに加えて、多くのヨーロッパの指導者たちは致命的な脅威と見なすロシアを抑えられなかったことを受け入れ、NATOの将来を疑問視する声も出すことでしょう。
ウクライナ戦争が終結した後には、NATOは戦争が始まる前よりもはるかに弱体化する可能性がほぼ確実にあるように思われます。NATOの弱体化はEUにとって負の影響を及ぼすでしょう。前にも言ったように、EUが繁栄するためにはヨーロッパの安定した安全保障環境が不可欠であり、NATOこそがヨーロッパの安定の鍵だからです。
経済への影響:
EUに対する脅威は別として、戦争が始まって以来、ヨーロッパへのガスや石油の供給が大幅に減少したことはヨーロッパの主要経済に深刻な打撃を与え、ユーロ圏全体の成長の鈍化を招いています。ウクライナでの戦争が膠着状態に陥った後も、ヨーロッパ全体の経済成長が回復するには長い道程を必要とすると考えるのが妥当でしょう。
大西洋間の責任追及ゲーム:
ウクライナでの敗北は大西洋間の責任追及ゲームを引き起こす可能性が高い。特に、トランプ政権がバイデン政権ほど熱心にキーウを支援せず、それに代わってウクライナを戦い続けさせるための負担をヨーロッパ諸国に押し付けたからです。
したがって、この戦争が最終的にロシアの勝利で終わった場合、トランプはヨーロッパ諸国が責任を果たさなかったと非難し、その一方で、ヨーロッパの指導者たちはウクライナが最も困難な時期にトランプは救援を放棄したと非難することができます。もちろん、トランプとヨーロッパとの関係性は長い間緊張していたため、これらの責任追及は状況をさらに悪化させるだけでしょう。
ヨーロッパにおける米国の軍事的プレゼンスの将来:
次に重要な問題は、米国がヨーロッパでの軍事駐留を大幅に縮小するのか、あるいは、すべての戦闘部隊をヨーロッパから撤退させるのかという点です。私が講演の冒頭で強調したように、ウクライナ戦争とは関係なく、一極支配から多極化への歴史的な変化は米国が東アジアに軸足を転換する強い動機を生み出しており、これは実質的にヨーロッパからの軸足の転換を意味します。
この動きだけでも、NATOの終焉、つまり、ヨーロッパにおける平和維持者の役割に終焉をもたらす可能性があります。2022年以降のウクライナでの出来事はそのような結果が起こる可能性を高めています。トランプは、特に、ヨーロッパの指導者たちに対して深い敵意を持っており、ウクライナを失った責任を彼らに押し付けるでしょう。
彼はNATOに対して大きな愛着はなく、EUを「米国を騙すために作られた敵」と表現したことさえあります。これは米国についてトランプが語っている言葉だ。米国を騙すために設計された敵であると。そして、彼にはあと3年半の任期が残っています。
さらには、NATOからの莫大な支援にもかかわらずウクライナが戦争に敗れたという事実はトランプ大統領がこの同盟を無能で役に立たないものだと非難する方向に導く可能性が高い。その論法を用いることで、トランプはヨーロッパに自国の安全保障を自分たちで確保させ、米国にただ乗りさせないよう促すことができるでしょう。
要するに、ウクライナ戦争の結末と中国の劇的な台頭とが相俟って、今後数年間、大西洋横断関係の基盤を蝕む可能性は高く、これはヨーロッパにとっては大きな損失となるでしょう。
絶えず災いをもたらす災害:
最後に、いくつかの一般的な観察を述べておきたいと思います。まず第一に、ウクライナ戦争は災害であった。実際、この災害は今後も続くことがほぼ確実です。ウクライナには壊滅的な影響をもたらしました。ヨーロッパとロシアの関係を当面の間悪化させ続け、ヨーロッパをより危険な場所にしたのです。
これは、また、ヨーロッパ内部に深刻な経済的および政治的損害をもたらし、大西洋を隔てた関係にも大きな打撃を与えます。この惨事は避けられない疑問を投げかけます。つまり、この戦争の責任はいったい誰にあるのか?この疑問はすぐに消えることはなく、むしろ、時間が経つにつれて、被害の範囲がより多くの人たちに鮮明になるにつれて、より一層顕著になる可能性があります。
もちろん、その答えは米国とヨーロッパの同盟国が主に責任を負うということです。2008年4月に決定されたウクライナのNATO加盟決定は、それ以降西側が執拗に追求し、あらゆる機会にこの動きを強化しようとしてきたものであり、ウクライナ戦争の基本的な原動力となっています。
ほとんどのヨーロッパの指導者たち、そして、多くの人たちやヨーロッパのさまざまな一般市民さえもが戦争を引き起こしたのはプーチンであり、その結果としての惨状もプーチンの責任だと考えるでしょう。しかし、それは間違いです。もし西側諸国がウクライナをNATOに加盟させる決定をしなかったならば、あるいは、ロシアが明確に反対の意志を示した時点でその約束を撤回していたならば、この戦争は避けられたかも知れません。
もしそうなっていたならば、ウクライナはほぼ確実に2014年前の国境内にそのまま存在し、ヨーロッパはより安定し、より繁栄していたことでしょう。皆さんは、ここで私が言っていることについて少し考えてみていただきたい。もしもわれわれが2008年4月にウクライナをNATOに加盟させる決定をしなかったり、たとえ決定をしたとしても、ロシアの明確な反対を見て撤回していたならば、ウクライナは今も2014年前の国境内で存続していたことでしょう。クリミアもウクライナの一部であり続けていた筈です。
さらには、ヨーロッパは今よりも繁栄し、より安定した地域になっていたことでしょう。しかし、その機会はすでに過去のものとなってしまいました。ヨーロッパは、今や、一連の回避可能な失策がもたらした悲惨な結果に対処しなければならないのです。
ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:
名前が不明の司会:非常に興味深い講演と分析をしていただき、ミアーシャイマー教授、ありがとうございました。
これから数ラウンドの質問を受け付けますので、手を挙げてください。発言する際には、氏名や所属、職位とかをお聞かせください。少し違う形式になるかも知れません。
それでは、ミアーシャイマー教授、非常に興味深い洞察をありがとうございました。現状が続くといったい何が起こるかを興味深く説明していただきました。しかし、今日、もしもあなたがヨーロッパを今すぐにでも導く能力をお持ちだとしたらどうでしょうか?ウクライナでの戦争はヨーロッパの地政学的な影響力が著しく低下したことを示しました。その影響力を回復する可能性はあると思われますか?現状においてお勧めの行動方針は何でしょうか?質問は非常に短いですが、お答えは幅広くなっても構いません。
ジョン・ミア―シャイマー:さて、ウクライナの立場から考えると、そして、私は何年にもわたって主張してきたことですが、ウクライナの立場から見て最善の策は飛行機に乗って、モスクワに行き、プーチンと取引を纏めることだと思います。その中で、あなたは4つの州とクリミアを失ったという事実を受け入れ、NATOには加入せず、西側からの安全保障の保証も受けず、ロシアを脅かす軍隊を築かないことを認めるのです。
そして、ウクライナとしてできる限りのことを行い、ロシアにそれ以上の領土を取られないようにすることです。もし私がウクライナ人であるならば、一番の恐怖はオデッサやハルキウ、そしていくつかのその他の州も奪われてしまうことです。もし私がウクライナ人ならば、それを防ぎたいと思うでしょう。
さらには、もし私がウクライナ人であれば、この戦争が続くことは望みません。その理由は最終的により多くのウクライナ人が死ぬことになるからです。私は長い間、これこそが賢明な戦略だと主張してきました。今、人々はこう言うでしょう。でも、これは良い結果ですかと。私が説明している結末は良い結果でしょうかと。 いいえ、これはひどい結末です。
私がウクライナに提案している行動、そして、ヨーロッパがウクライナを支援してこの方向に進むことを提案している結末は実に酷いものです。しかし、それは最悪の事態を避けるためのもっともましな結末なのです。なぜならば、代替案の場合は戦争が継続され、ロシアはさらに領土を奪い、より多くのウクライナ人を殺し、さらにはウクライナを機能不全の残存国家に変える動機がさらに高まるであろうからです。
だから私が考えるに、最良の選択肢はこれらの現実を受け入れ、ヨーロッパが彼らを支援することです。しかし、この意見を納得させるのはほとんど不可能です。ほとんど誰もこの議論を聞きたがりません。私にはこれが非常に理解しにくいです。なぜならば、これはただの常識だと思うからです。戦争で実際に何が起きているのか、そして、物事がどこに向かっているのかを見ると、私が言ったことをするのが理にかなっていると思うのです。
ちなみに、この議論を受け入れるウクライナ人もいますが、世界中のゼレンスキーもどきたちの人数は遥かに大きく、彼らを圧倒してしまいます。そして、確かに、ここヨーロッパではこのような議論は通用しません。だから、私は、戦争は続き、最終的には凍結された紛争として終わるだろうと考えています。
ある時点で、前線にいるウクライナ軍は戦いを続けられなくなるであろう。そして、その時、残された唯一の関心事はウクライナがどれだけの領土を失うかということになります。そして、ヨーロッパがウクライナに深く関与し続け、ウクライナを同盟に取り込むか、あるいは、ウクライナに安全保障を保証するという点から考えると、見渡す限り、ウクライナやヨーロッパとロシアの関係において大きな問題が生じであろうと思う。
さて、次に移ろう。
キューバ危機との類似点:
聴衆の質問:後ろの方から次の質問です。教授、2008年のこの瞬間をロシアへの固定支払いと呼んでもいいでしょうか?つまり、カナダ危機やキューバ危機と比較できるのでしょうか、それとも、違うのでしょうか?
ジョン・ミアーシャイマー: キューバ危機はウクライナで起こったことと非常に重要な点で顕著な類似性があります。皆さんもご存知の通り、われわれ米国にはモンロー主義があります。モンロー主義では遠くの大国は西半球に入り、自国の軍事力を西半球に配置することは許されないとしています。
そして、1962年に何が起こったかを考えてみると、ソ連はキューバにミサイルを配備しました。米国のまさに隣ですよね。ちなみに、フルシチョフとケネディの間で合意がなされたとき、ケネディは当然のことながら、キューバからミサイルを撤去することを主張しました。そして実際にそれが行われました。その見返りとして、フルシチョフは米国側がトルコからジュピターミサイルを撤去することを主張しました。なぜなら、トルコのジュピターミサイルはソ連の国境のすぐそばにあったからです。
事実として、大国は他の大国が遠くから自国の玄関先までやって来るのを好みません。そして、ウクライナに関して起こったことはキューバ危機で起こったことと類似しています。
さらに一歩踏み込んでお話しすると、ヨーロッパにおけるミサイルに関して冷戦中に何が起こったのかを理解することが非常に重要です。1980年代、レーガン政権が先制攻撃能力を追求していたことは非常に明らかです。皆さんもご存じの通り、レーガン大統領は1980年に選出され、1981年に就任しました。彼の政権はタカ派で固められていました。
おそらく皆さんはあまりご存じないかもしれませんが、当時、ソ連と米国は大量の核兵器を保有していました。そして、それらの核兵器を使って核戦争を行うことは、核の冬やその他さまざまな現象によって地球上のすべての生命を基本的に終わらせてしまうことなしには不可能だったのです。
米国が非常に関心を持っていたのは、頭部を打ち抜くような攻撃、つまり、指導部を一掃するような攻撃を行うことでした。われわれはソ連の核兵器を一掃できるようにしたかったのです。つまり、それは頭部打撃型の見事な先制攻撃でした。そして、多くの人たちはヨーロッパに配備したパーシング及び地上発射巡航ミサイルを優れた一掃兵器と見なしていました。これらのミサイルはソ連の玄関口のすぐ近くにまで配備されていたのです。ソ連は崩壊し、ロシアにとって代られました。ロシアが本当に恐れていたのは、われわれがウクライナにミサイルを配備することでした。そしてウクライナのミサイルは頭部一掃型の攻撃に使われる可能性があったのです。このことが冷戦終結後にわれわれがポーランドやルーマニアに配備した弾道ミサイル防衛システムに対してロシア側が非常に反発した理由なのです。
ご理解のとおり、冷戦が終わった後、米国はウクライナ(訳注:ルーマニア?)やポーランドに弾道ミサイル防衛システムを配備しました。しかし問題はそれらの防衛システムが攻撃目的にも使用できることです。言い換えれば、防衛システムにロシアを攻撃できる弾道ミサイルを配備することが可能で、それは、事実上、指導部排除作戦に使えるということです。ですから、同盟をウクライナにまで持ち込んで、そこにソ連にとって死を意味する敵国を据えて、指導部排除作戦に使えるかも知れないミサイルを配備するという話になると、その状況はキューバ危機と非常に似通って来ます。そして、われわれがキューバ危機でどのように反応したのかは皆さんはよくご存知でしょう。当然のことながら、ソ連、いや失礼、ロシアも同じように反応しました。
NATO拡大の起源:
聴衆からの質問:次の質問に移ります。質問の前にお名前を述べてください。
私はハンス・ロイホフ、ドイツからです。ある程度の傲慢さはありましたが、それだけでは十分に深くはありません。
ジョン・ミアーシャイマー:NATOの拡大はビル・クリントンがホワイトハウスに入ったときに深刻な問題となりました。ビル・クリントンは1992年の選挙に勝ち、1993年1月にホワイトハウス入りしました。そして、NATO拡大の決定は最終的に1994年末に成されたと思います。最初の拡大の段階は1999年で、ポーランドやチェコ共和国、ハンガリーが加盟しました。そして、次の大きな拡大は2004年です。
ここで、非常に重要な点はふたつのことを理解することです。そのひとつは、ロシアは1990年代、さらには2000年代初頭でさえも著しく弱体だったということです。ウラジーミル・プーチンはロシアを死から蘇らせました。つまり、われわれが1990年代にNATOの拡大を始めたとき、それはロシアを抑え込むために設計されたわけではないことを理解する必要があります。
今日の世界を考えると、多くの人たちは、1994年に始まったNATO拡大はロシアを抑え込むためのものだった、ロシアが脅威と見なされていたと思うことでしょう。しかし、それは事実ではありません。NATO拡大を推進していたもの、これが私の第二のポイントにつながりますが、それはわれわれが一極支配の唯一の大国だったということです。当時、われわれは地球上で唯一の大国でした。
皆さんも理解している通り、われわれだけが唯一の大国である世界においては大国間の政治は存在しません。なぜなら、たったひとつの大国しかないからです。ですから、われわれの歴史上で初めて自由主義的な外交政策を追求する立場にあったのです。そして、われわれの側では多くの人たちが自由主義的覇権と呼ぶ政策を追求しました。
われわれは米国のイメージに沿って世界を作り変えることを目的とした外交政策を追求し、ヨーロッパ諸国はそれに同調しました。彼らはこの事業におけるわれわれの相棒だったのです。本日、中国の脅威について話しましたが、われわれはその脅威を作り出す手助けをした。なぜならば、われわれは中国が経済的により強大になるのを助けたからです。
そして、当時の現実主義者である私の見方では、中国はその経済力を軍事力に転換し、東アジアで米国に不利益をもたらす形で支配しようとするだろうというものでした。私が話をした相手のほとんど全員はこう言いました。「ジョン、あなたは恐竜のような存在だ。あなたの国際政治に関する現実主義者の見解は時代遅れだ。われわれは新しい世界に生きている。中国は経済的に成長するだろう。資本主義に依存し、WTOのような国際機関に統合されるだろう。」
「最終的には『アジアのタイガー』の諸国のようにリベラルな民主主義に変わっていき、中国もわれわれのようになり、われわれは善人だから幸せに暮らすことができる。そして、もし彼らがわれわれのようになれば、世界は善人だらけとなり、われわれはいつまでも幸せに暮らす。」そう信じられていた。これがリベラルな覇権主義が中国に適用された形だった。
リベラルな覇権主義とNATOの拡大:
では、それがNATOの拡大にいったいどのように適用されるのか?NATOの拡大でわれわれがやろうとしていたことはリベラルな政策なのだ。それはロシアを封じ込めるために設計されたものではない。NATOやEUのような制度を採用し、それらの制度を拡大し東に移動させ、新しい加盟国を迎え入れ、彼らも責任のある当事者になるようにしているのだ。
さらに、われわれは彼ら全員が資本主義に夢中になるようにしていたんですよね? 経済的に相互依存させるのです。そして、みんなが経済的に相互依存していれば、誰も戦おうとは思わない。だって、金の卵を産むガチョウを殺したい人なんていないのだから。これが全体の論点です。
だから、これらの制度は東へ広がり、経済的相互依存も東へ広がって行きます。そして非常に重要なのが、ビロード革命、いわゆるカラー革命、つまり、オレンジ革命やローズ革命です。東ヨーロッパで西側寄りの自由主義民主主義国に変えるための革命を促進する積りです。そして、自由主義民主主義の国々で満ちた世界を作り出せば、皆幸せに暮らせるという理屈です。
歴史の終わりとリベラル民主主義:
名前が不明の司会:多くの若い観客にとって、これは信じがたいと思うかも知れません。なぜならば、2025年の時点では全く意味が通じないからです。しかし、皆さんにフランク・フクヤマの非常に有名な論文「歴史の終わり」について一言だけ触れておきたいと思います。もしもまだ読んではいないならば、ぜひ読んでいただきたい。これは非常に重要な議論で、ヨーロッパのエリートや米国のエリートたちの頭の中にあるソフトウェアであり、今でさえもヨーロッパや米国の多くのエリートの頭の中にあります。
フランク・フクヤマの議論は自由民主主義が未来であるというものでした。われわれの自由民主主義国家は追い風を受けており、世界中で自由民主主義がますます広がるであろうと。そして、最終的な結果は平和です。実際、彼は論文の最後で、今後われわれが直面する最大の問題は「退屈」だと言っています。退屈。よく考えてみてください。戦争はもはや議題にはありません。
そして、それは民主主義を創り、制度を広め、資本主義を広め、経済的独立を促進するための議論です。それがわれわれを動かしていた理由だったのです。われわれはロシア人をいじめることには関心がありませんでした。1990年代のクリントンやその仲間たちはロシア人が抗議するだろうと理解していました。それは間違いありません。
多くの計画文書が今では入手可能です。クリントン側はロシア人が断固として反対していることを理解していましたが、われわれはおおらかな覇権国だと思われていることから、ロシア人を懐柔できるだろうと考えていたのです。それがここで彼らが考えていたことです。
カラー革命とロシア:
ところで、カラー革命について話すついでに言うと、われわれはロシアにおいてもカラー革命を広めようとしていました。2014年にウクライナ危機が勃発したとき、マイク・マクファウルが米国のロシア駐在大使だったことについてはすでにお話ししましたが、「ニューヨーカー」に記事があります。
しかし、それを読むといいです。グーグルで「マイク・マクファウル 、ニューヨーカー」と検索すると、入手が可能です。基本的に、彼は米国のロシア駐在大使として在任中にロシア内部でカラー革命を促進しようとしていました。当然ながら、これによってロシア人は非常に怒り、彼を大使の職から引き上げるよう要求しました。しかし、これはここでいったい何が起きているのかを理解するための一端にしか過ぎません。
ですから、この列車を走らせたのはわれわれがこの深く根付いたリベラルな外交政策を持っていたという事実だったのです。そして、それは最初の段階である1999年、次の段階である2004年をもカバーしていた。そして、一度NATOの拡張が始まったら、止めることは不可能だった。それを止めるのは本当に不可能だったのです。
そして、西側では、時折トランプを除けば、誰も「もうNATOの拡張はやめよう」とは言わないというのはかなり驚くべきことでした。ヨーロッパ人はこの時点で「NATO拡張はもう十分だ。これ以上の問題はもうごめんだ。自国の秩序を整えなければならない。われわれがもっとも嫌うのはロシアを挑発し続けることだ。なぜならば、それはヨーロッパにとって利益にはならないからだ」と言うべきだったであろう。しかし、誰もそうは言わなかった。誰もと言うべきではないかも。ほとんど誰もそうは言わなかった。それは間違いなく主流の見解ではなかったのです。
リベラル覇権とその失敗:
私が思うに、これは実際にはリベラルな外交政策の追求に過ぎません。そして、ちなみにもうひとつだけ言いたいのですが。私は中国との関与について話しましたが、それがどれほど愚かだったかということです。それがリベラル覇権です。第二の例は、NATOの拡大、EUの拡大、カラー革命、東欧です。これが二つ目の例です。
第三の例は中東、つまり、ブッシュ・ドクトリンです。ブッシュ・ドクトリンは中東の民主化についてのものでした。これも、ほとんどの人たちは忘れています。われわれはイラクに侵攻し、イラク政権を打倒し、その次にシリア。次には、イランかも知れません。そこへ行って、その政権を倒し、それをリベラルな民主主義に変えるつもりだと思っていたのです。その通りでしょう?
だが、それはうまく行かなかった。すべてがうまく行かなかった。ブッシュ・ドクトリンは失敗に終わった。イラクで崩壊した。中国に関しては、われわれは競争相手を作り出してしまった。それが本当に対等な競争相手かどうかは私には分からない。それは近い将来、ある時点でわれわれを上回るかも知れない。そして、NATO拡大という問題全体がある。
これは徹底したリベラルな外交政策であり、一極支配体制から生まれたものです。再度言うが、ひとつの大国が支配する世界に行くと、大国政治は文字通り除外される。つまり、私のような現実主義者、つまり、バランス・オブ・パワーの観点で世界を捉える者は押し入れに閉じ込められるということです。ドアを閉められ、そこに縛りつけられる。そして、リベラル派が支配することになる。そう、これはまさに起こった通りだ。
多極化への移行:
そして、今、世界は変わりました。これは変革であり、トムのコメントやジョンの講演にも反映されていたと思います。一極支配から多極化への移行は本当に重要です。そして、それがわれわれがいる今の世界であり、消えるものではありません。
では、次の質問。
聴衆からの質問:ありがとうございます、教授。お話を伺えて本当に光栄です。あなたの本を読んだ後、他の本や論文、ミアーシャイマーやその他の人たちのものもいろいろと読みましたので、本当に光栄です。しかし、攻撃的リアリズムの概念を使って言わせてください。それは冷戦終結後のNATOの行動だったと思います。つまり、NATOは冷戦での勝利やロシアの弱体化を利して、東ヨーロッパへ拡大したのです。攻撃的リアリズムの観点からすると、これは合理的です。
そして、彼らは持っている力を使うか、あるいは、持っている力を使う必要があるのでそれを拡大するために使います。つまり、ロシアの弱さを利して東ヨーロッパへ拡大するわけです。その過程で、彼らは自分たちの視野を広げるために力を使ったわけですが、同時に、あなたも言ったように、封じ込めという概念では起こったことをうまく説明することができないと思います。抑止の方が適しており、実際、あなたはウクライナの核兵器に関する記事の中で、ロシアを抑止する重要な手段としてこれを書いていました。
より簡単に言おうとすると、ウクライナがNATOに近いからそうなったのかどうかは分かりません。しかし、ウクライナはNATOに加盟していないからです。もしバルト三国などのようにNATOに加盟していたら、バルト三国では同じことは見られなかったでしょう。ですので、私が言いたいことはよく分からないのですが、ただこの問題について考えたいのです。
しかし、われわれが問題に直面しているのは、彼らがNATOに加盟していた場合、状況がどうなっていたかは分からないということだと思います。そのため、あなたにお聞きしたいのは、ウクライナ戦争の始まりがNATOの拡大によるものではなく、むしろ、NATOが拡大しなかったことによるのではないか、ということですか?
NATO加盟と核兵器:
ジョン・ミアーシャイマー: さて、三つのポイントがあります。まず第一に、ウクライナがNATOに加盟していたならば、ロシアが侵攻することはなかっただろうという点です。しかし、ウクライナはNATOに加盟していませんでした。
第二のポイントですが、皆さんがどれほどご存知かは分かりませんが、1993年に私は「フォーリン・アフェアーズ・リポート」にウクライナは核兵器を保持すべきだという記事を書きました。ご存知の方がどれくらいいらっしゃるか分かりませんが、ソ連邦が崩壊した際、新たに誕生した国のうち四か国が核兵器を保有していました:ロシア、カザフスタン、ベラルーシ、そして、ウクライナです。
ベラルーシとカザフスタンは核兵器を放棄しましたが、ウクライナは核兵器の保持について十分に考えました。そして、私はロシアが攻めてくるような緊急時に備えて、ウクライナは核兵器を保持すべきだとの記事を書きました。そして、もちろん、ここでの私の反応に関しては誰もが私が狂っていると思っていましたよね?
特にビル・クリントンは最近それを言っているのですが、もちろん、ビル・クリントンはウクライナに核兵器を放棄させる責任がありました。彼は自分がウクライナに核兵器を放棄させたことは間違いだったと述べています。
攻撃的リアリズムとNATOの拡大:
しかし、私はあなたの質問の核心、つまり、あなたが述べた議論とは正反対の部分、少なくともあなたに対する私の返答に取り組みたいと思います。あなたが言っているのは、NATOの拡大が戦争を引き起こした可能性があるが、それは私の理論の支持に則って行われたということですね。NATOの拡大は私の理論と整合しています。それは、私があなたに言ったように、あなたが言うような自由主義的な外交政策ではありません。
ちなみに、多くの人たちがこの議論をしています、そして、私の理論をより強力に見せるには、私もその議論を採用すべきだったと言います。私はあなたに対して、私の理論は本当に重要ではなかったと認めます。彼らは私を押し入れに閉じ込めました。彼らは言っています。「いや、いや、いや、皆はあなたの理論に従って行動したのです」と。
ちょっといくつかの点を挙げさせてください。ひとつは、私の理論では、あなたは地域的覇権国になれるだけですよね。世界的覇権国にはなれません。しかし、世界の他の地域においては、あなたが望むのは他に地域的覇権国が現れないようにすることだけです。これが私の言うところの帝国ドイツ、帝国日本、ナチス・ドイツ、ソ連邦といった議論なのです。分かりますか?
そして、1990年代のロシアは潜在的な地域的覇権国ではありませんでした。ご存知の通り、本日も述べましたが、潜在的な地域的覇権国ではありません。ただ弱過ぎるのです。ですから、私の理論を厳密に解釈すれば、われわれは実際にヨーロッパから撤退すべきだったということになります。潜在的な地域的覇権国は存在しなかったのですから。われわれはゴジラのような存在で、家に帰れるわけです。これが最初の点です。
しかし、ふたつ目の点は、私の理論では国家は相対的な力を最大化すべきだということです。そして、この理論は他の国家をあらゆる場面で利用すべきだと言っています。上位の権威は存在せず、自分自身で身を守らなければならないシステムでは、できるだけ強力であることがゲームでの最大の目標です。したがって、他国の側面を利用しようとします。これはあなたが言っていることと一致します。
しかし、愚かなことをすることを勧めているわけではありません。そして、私の理論が適用されるとしても、例えば、われわれはチャンスを探していると主張することもできるでしょう。「ロシアは弱い。さあ、押し始めよう」と。直面する問題は必ず反作用があるだろうということです。
それに対する反論としては、最初の段階である1999年はうまくやり過ごせたということです。うまくやり過ごせたんです。次の段階、2004年も同様にうまくやり過ごせた。しかし、2008年にはブカレストでの決定がやって来ます。賢い人であれば、そこでやめるべきだという議論です。それまでにすでにかなりのところまで来ていますよね?二つの大きな拡張をやり遂げたのですから。
ウクライナとジョージアは、手に負えない橋を渡るようなもの、あるいは、ふたつの橋を渡り過ぎたようなものです。そして、皆さんも理解している通り、2008年4月の決定ではウクライナとジョージアをNATOに加盟させることが決定されました。そして、2008年8月にはジョージアで戦争が起きたのです。これはウクライナに問題が起こる最初の前兆であると理解すべきでした。
そして、私のような攻撃的現実主義者はNATO拡大を推し進めるべきだと言えるかも知れませんよね?しかし、自分は暗闇の中で手探りしているということを十分理解するべきです。抵抗に遭遇したら、そこで止めるべきです。しかし、再度言いますが、私の議論では潜在的な覇権国は存在しないので、ロシアを本格的に抑制する必要はないということです。
名前が不明の司会: 私は、ここに数多くの同僚がBASFグループからも来ていることを考えると、「どうもありがとう、トム。どうもありがとう、アンダース」と私が言えば、皆さんを代表して感謝の意を表していると思います。あなたが組織したこの素晴らしいイベントに対して、欧州愛国者財団からも心から感謝します。
聴衆の質問:ミアーシャイマー教授、質問です。あなたはこの戦争のすべての悪影響を挙げました。また、米国は戦争がいつ終わるかを非常によく理解しているとも言いました。しかし、この戦争で誰が本当に利益を得るのかは言いませんでした。われわれは、人々がこの戦争は米国が引き起こしたと言っている状況にありますが、私はそれが米国の利益になるとは思いません。では、その「部屋の中にいる象」を名指ししてください。
戦争への道:2008年~2022年:
ジョン・ミアーシャイマー:はい。では、私にこの紛争がどのように展開するかについてもう少し言葉を添えさせてください。2008年はウクライナをNATOに加盟させる決定をした年です。よろしいですか?そして数か月後にジョージア戦争が起こります。われわれは後退せず、押し続けます。そして、2014年2月に危機が勃発します、よろしいですか?それがウクライナ危機が勃発した時です。
危機は2014年に始まります。戦争はその8年後の2022年2月です。はい。ここでずっと起こっているのは、われわれはNATOの拡張を彼らの喉元に押し付けられると思っていたことです。われわれはロシア人が1999年の段階で激しく抗議したと考えています。2004年の段階でも激しく抗議しましたが、われわれはそれを彼らの喉元に押し付けただけです。われわれは2008年にも同じことをするだろうと考えたのです。分かりますか?
そして、2014年に危機が勃発したとき、われわれは撤退しませんでした。そうでしょう?2008年から2014年、残念ですが、2014年に危機が勃発するまで、さらには戦争が勃発するまでの8年間、われわれは撤退しません。そして、私が正式なコメントで言ったように、本当に驚くべきことは米国人は戦争が起こる前、2022年2月24日以前に、戦争が起こる可能性が高いと言っていたという事実です。
米国人たちは大声で、そして、はっきりと言っていました。戦争が起きるだろうと。プーチンがウクライナに侵攻するだろうと。そして米国人たちはウクライナ人がその議論を真剣に受け止めないことに不満を述べていました。それでも、われわれは何もしなかった。戦争を防ぐために何もしません。外交もしなかった。そして、戦争が始まると、ウクライナ人たちに撤退するように促すのはわれわれ自身です。
だから、自分に言い聞かせるのです。「ここではいったい何が起きているのだろうか」と。本当に、何が起こっていたのでしょうか。われわれは、先ほど言ったように、ロシア人を打ち負かせると思っていたのです。それが理由でわれわれは後退しなかったのです。
増大するプーチンの抵抗:
だから、ここで起きていることは、プーチンが2000年に権力を握ったとき、2014年までに、もっと確かに言えば、2022年までにロシア人はその間に西側諸国に対して本格的に挑戦し始めていたということだと思います。
プーチンがわれわれにどれほど怒っているかの最初の大きな証拠は2007年のミュンヘン年次安全保障会議です。2007年のプーチンの演説を振り返って読んでみてください。 その後、2008年にはジョージアとウクライナに対するNATOの決定があります。そして2008年のジョージア戦争、さらに2014年の危機へと続きます。
誰も戦争になるとは思っていませんでした。誰もです。いや、そう言うのは言い過ぎかも知れません。この計画を推し進めていた人たちは戦争になるとは思っていなかったのです。そして、戦争になると思ったときも、われわれがすぐに勝つだろうと考えていました。
米軍事力に関する信念:
そして、それは軍産複合体がそれを推進していたとか、ある種の経済的・政治的インセンティブがあったというわけではなかったと思います。米国には武力で物事を解決することを信じる人たちが大勢います。そして、彼らは米国は自分たちの意図を通すためにその武力を使うことができる非常に強力な国であると信じています。
これは特にネオコンに当てはまります。彼らは米国の意思決定過程において非常に強い影響力を持つ存在です。これこそがわれわれが引き下がらなかった理由です。われわれはただ勝てると考え、比較的コストはかからないだろうとさえ思っていたのです。
米国の立場から見れば、2022年までには、覚えておいてください、われわれはすでに多極化した世界にいます。ちょっと考えてみてください。われわれは2017年あたりから多極化した世界にいます。さて、ウクライナ危機は2014年に勃発します。これは一極支配の世界の中でのことです。戦争は2022年です。
戦争が始まる時までに、ロシアはすでに大国になっていました。プーチンはロシアを死から蘇らせました。だが、われわれが考えていたのはロシア人を打ち負かして、大国の地位から引きずり下ろせるということです。それが当時のわれわれの基本的な考え方です。
米国の政策に対するヨーロッパの容認:
そして、ヨーロッパ人はこれに従っているのです。かつてヨーロッパ人は米国に抵抗を示していました。私が若い頃、母が言うには本当に手ごわい人物にヘルムート・シュミットのような人物がいました。彼は米国に対して立ち向かいました。皆さんもシャルル・ド・ゴールを覚えているでしょう。そして、コンラート・アデナウアーなど、その他さまざまな指導者たちがいました。
ヨーロッパ人は米国に対して議論し、抵抗を示すことを厭いませんでした。そして、これは皆さんも覚えていると思いますが、2003年のイラク戦争のときでも同じでした。フランスやドイツはイラク戦争に反対していました。しかし、その後、何かが起こりました。そして、ヨーロッパ人は米国に対してまったく抵抗できない状況に至ったのです。そして、実際、彼らは応援団になってしまいました。
ですから、2008年の決定とその後の展開についてはヨーロッパ人はただ米国人に従っただけです。そして、米国人は戦争に中毒してしまいます。皆さんも理解している通り、米国は戦争に中毒しているのです。われわれは武力でほとんどすべての問題を解決できると信じています。
これはイスラエル人のようなものです。イスラエル人も米国人も、軍事力で解決できないような政治的問題などは存在しないと信じています。私の考えでは、ほとんどの政治的問題は軍事的計算だけではなく、むしろ、政治的合意や政治的判断の大きな調整によってのみ解決できるのです。
でも、基本的にはそれがこの列車をここまで走らせ続けた原動力だと思います。自分たちはうまくやれるだろうという信念、コストはかからず、利益だけがあるだろうという考えです。しかし、実際にはそうはなりませんでした。
冒頭でも言ったように、最初の段階、つまり、1990年代には多くのヨーロッパ人が今日のような状況になるとは全く予想してはいなかったと思います。しかも、ウクライナ戦争の直前でさえもですよね。まったく誰も。いや、誰もとは言うべきではないかも。ほとんどの人たちは「この決定は大失敗だ。われわれは本当に大変なことになる」とは言ってませんでした。
欧州愛国者財団からの閉会の挨拶:
名前が不明の司会:残念ながら、どうもありがとうございます。欧州愛国者財団は欧州連合でタブーとされている多くのテーマについて議論する用意があるヨーロッパのシンクタンクです。本日の会議も本日のスピーチも例外ではありません。ミアーシャイマー教授、本日はありがとうございました。
ウクライナでの戦争は欧州大陸が最近の数十年に経験したもっとも深刻な戦争です。この戦争に関するEUおよび加盟国の政策はわれわれの安全保障や経済に大きな影響を与えており、その結果は欧州の未来を大きく左右することとなるでしょう。
この状況の重大さやわれわれの生活に対する影響は今日のような深い議論を行うに値します。EUはロシアに対しておよそ20件近くの制裁パッケージを採用し、戦争を止めることを期待してきました。しかし、制裁は指導者たちが約束した成果をもたらすことには失敗しました。過去のパッケージについての正直な評価をすると、それらの新しいパッケージが採用される前に、実際には、実行されてはこなかったということです。
EU戦略の失敗:
また、EUの指導者たちは非西側諸国を制裁に参加させることにも失敗しました。教授が先ほど言及された通り、EUのエリートたちはバイデン政権によって推進された米国のウクライナ政策を盲目的に追随しました。われわれの経済、軍事力、強みや弱みは米国とは根本的に異なるにもかかわらず、そうしました。そのため、経済的負担はヨーロッパにとってはさらに大きなものとなっています。
欧州愛国者財団は戦争のコストやウクライナのEU加盟の可能性について話し合うために、9月にイベントを開催しました。われわれのエネルギー安全保障への影響については、現時点で正確に見積もることは不可能ですが、農業従事者、農業、予算への影響については議論してきました。そして、先ほども述べたように、一般的にウクライナのEU加盟のコストについても触れています。
ヨーロッパは輸入エネルギーへの依存度が高いため、ヨーロッパのエネルギー価格は、米国や中国との競合国と比べても、ヨーロッパの産業競争力を低下させています。ヨーロッパ人はヨーロッパで平和を回復することにもっとも大きな関心を持っています。
私はハンガリー出身ですが、ハンガリー人はウクライナでの和平協定や停戦に向けたオルバン首相の努力がここブリュッセルや他の多くのヨーロッパの首都で大きな敵意に直面していることに驚いています。つい最近の欧州議会の景気後退の計画について考えるだけでも、ブダペストでのサミットの可能性が議題に上がり、多くの人たちから強く批判されたことが分かります。
実際、殆どの指導者たちは外交に関わることを完全に拒否し、他の誰かがヨーロッパに利益をもたらす形でウクライナでの戦争を終結させることを期待していますが、これは狂気の沙汰です。愚かで、まったく現実的ではありません。単純に言って、ヨーロッパは自分たちの安全保障や将来に向けて一貫した、現実的な戦略を欠いているのです。もしもわれわれ自身が守らなければ、誰もヨーロッパの利益を守ってはくれません。
現実主義的な分析への感謝:
本日は、ミアーシャイマー教授、われわれと共に時間をお過ごしいただき、大変光栄です。多くの場合、教授はご自身を現実主義者と表現されます。これは、政治家や主流メディアからよく聞かれるイデオロギー的なアプローチとは異なり、力関係に基づいて国際政治を分析する人という意味です。教授、本日はわれわれの期待を裏切ることもなく、誠にありがとうございました。
教授、ご招待をお受けいただき、ありがとうございます。そして、今日ここでの率直な分析や議論の刺激となる考えを示してくださったことに感謝いたします。また、多くの聴衆の皆さんがわれわれの招待を受け入れてくださったことも嬉しく思います。これは、ヨーロッパの人たちが、今、EUの指導者の感情的なひと言だけではなく、さらに多くのことを学び、聞きたいと望んでいることを示しています。
友人のトム・ポンド・アンドレイカにも、ミアーシャイマー教授を招待するイニシアチブを取ってくれたことに感謝したいと思います。本当に、とても実り多いイベントだったと思います。非常に考えさせられるイベントとなりました。
歴史から学ぶ:
Q&Aセッション中にも多くの方が尋ねていますように、なぜこれが起こったのか?もちろん、それぞれに説明はあるでしょうし、この戦争がなぜ起こり、なぜ続いているのかを理解することは非常に重要です。私の頭に浮かんだのは、「サウスパーク」のエピソードで多くの方がご存じかもしれませんが、「キャプテン・ハインドサイト」というキャラクターの話です。彼は災害が発生した地域に決まったように現れ、人々がそれを避けるためには何をすべきだったかを教えるのです。
残念ながら、これはわれわれが享受することができるような贅沢ではありません。われわれが書く歴史は取り返しのつかないものです。幸いなことに、われわれは自分自身の歴史を書くことができると信じています。私は、教授、あなたが言及した「醜いロシアの勝利」や「凍結されたヨーロッパの紛争」を避けられることを強く願っています。
そのような将来を避けることはヨーロッパの利益であり、先ほどのQ&Aセッションでも聞いたように、他者の意図を誤解することでわれわれはそのような状況に至るのです。そこに至るのは無知からです。
ですから、われわれの将来のイベントにもぜひご参加いただき、ヨーロッパの未来に関する課題についてより多く議論し、自分たちの未来を自ら形作り、他者に形作らせることには頼らないようにしたいと思います。これこそがわれわれの使命だと思います。これは欧州愛国者財団の使命であり、われわれはこの方法で前進し続けます。
ご参加いただき誠にありがとうございました。次回の会議でもお会いできることを楽しみにしています。そして、ミアーシャイマー教授に大きな拍手をお願いします。
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これで第2部全文の仮訳が終了した。
このミア―シャイマー教授の記事を読むと、3年半も続いているウクライナ戦争の悲劇はどのようにして始まったのかがよく分かりる。
印象的なミア―シャイマー教授の言葉がいくつかある。たとえば、
(1)「ほとんどのヨーロッパの指導者たち、そして、多くの人たちやヨーロッパのさまざまな一般市民も戦争を引き起こしたのはプーチンであり、その結果としての惨状もプーチンの責任だと考えるでしょう。しかし、それは間違いです。もし西側諸国がウクライナをNATOに加盟させる決定をしなかったならば、あるいは、ロシアが明確に反対の意志を示した時点でその約束を撤回していたならば、この戦争は避けられたかも知れません。」
ところで、私は15年前にブカレストへ引っ越して来てからというもの、日本の国内ニュースに接する機会は遠のくばかりとなっている。NHKは今も「ウクライナ戦争はプーチンの責任だ」と言っているのではないだろうか?
(2)「私は何年にもわたって主張してきたことですが、ウクライナの立場から見て最善の策は飛行機に乗って、モスクワに行き、プーチンと取引をまとめることだと思います。その中で、あなたは4つの州とクリミアを失ったという事実を受け入れ、NATOには加入せず、西側からの安全保障の保証も受けず、ロシアを脅かす軍隊を築かないことを認めるのです。」
2022年の4月にはイスタンブールでの和平協議が成立する寸前に、英国のボリス・ジョンソン前首相がキーウに飛来し、この合意をぶち壊し、ウクライナを戦争継続に引きずり戻した。あの出来事こそが、結果的にウクライナに100万とも180万人ともいう夥しい数の戦死者をもたらし、領土を失わせた。そして、人口を半減させ、毎日の生活を困窮状態にさせた。ウクライナの人々は、この冬、極端な電力不足に見舞われ、暖房の余裕もない。実に大きな悲劇である!
(3)「NATOの拡大でわれわれがやろうとしていたことはリベラルな政策なのだ。それはロシアを封じ込めるために設計されたものではない。NATOやEUのような制度を採用し、それらの制度を拡大し東に移動させ、新しい加盟国を迎え入れ、彼らも責任のある当事者になるようにしているのだ。さらに、われわれは彼ら全員が資本主義に夢中になるようにしているんですよね? 経済的に相互依存させるんです。そして、みんなが経済的に相互依存していれば、誰も戦おうとは思わない。だって金の卵を産むガチョウを殺したい人なんていないのですから。これが全体の論点です。」
経済同盟であるEUと軍事同盟であるNATOはその目的がお互いに異なるにもかかわらず、その境界を曖昧にして、冷戦後の東欧各国をNATOに加入させたのは自分たちを善人であるとする米国人の傲慢さ以外の何物でもないと言えよう。ロシア側の主張には耳を貸さなかったのである。この思い込みこそが、今われわれが目にしている結果を招いたのだ。プーチンが米国に対してどれほど怒っているかを示した最初の大きな証拠は2007年のミュンヘン年次安全保障会議であった。それ以降、ロシア側は同じことを何回も主張して来た。しかしながら、極めて奇妙なことではあるが、2022年のロシアのウクライナへの軍事侵攻に至るまでの15年間、米国内ではロシアゲートをでっち上げ、国内政治を麻痺させ、主要メディアはさまざまな出来事を通じて対ロ嫌悪感情を醸成させた。それはヨーロッパ諸国にも直接、間接の影響を与え、ヨーロッパを米国の対外政治のチアリーダーに変身させた。西側は「プーチンは大悪党だ」というプロパガンダを執拗に繰り返した。幸か不幸か、ついには自分たち自身をも完璧に洗脳してしまった。
今考えると、リベラル民主主義という言葉がもたらした、笑うに笑えない悲喜劇である。
(4)最期に、ウクライナ戦争をキューバ危機に比較することは現状を客観的に眺め得る格好の視点を与えてくれている。両出来事の間の類似性を見ると、今回のウクライナ戦争でエリートたちが見落としてきた事柄が具体的に見えて来る。
私の個人的な願いは、たとえウクライナが残存国家として小さな内陸国家になったとしても、朝鮮半島のような敵対するふたつの陣営に分かれて、何十年にもわたって凍結された紛争になってはならないという点にある。そのような凍結された紛争を望むのはそこから利益を手にするであろう軍産複合体だけだ。
今から一カ月余り前に示されたミア―シャイマー教授の予測の通り、ロシア語を喋る住民が多く、黒海沿岸に位置し、豊かな歴史と景勝地で知られているオデッサは、12月17日現在、ロシア軍の集中攻撃を受けている。ハルキウ(ハリコフ)もこれに続くのではないか。結局のところ、ウクライナは黒海の沿岸地帯も喪失し、ドニエプル川の西側だけとなって、内陸に閉ざされた小さな残存国家として終わりそうな気がする。
参照:
注1:Transcript: John Mearsheimer Addresses European Parliament on “Europe’s Bleak Future”: By , Nov/21/2025
<転載終了>
フィギュアの★歴史的快挙の翌日に●大地震が起きたデータに基づいて、12月7~8日に起きたM7超級が連発しましたが、てっちゃん大予言も地震予知の歴史上で世界歴代最高得点をさらに伸ばすかどうかを決める運命の12月18日になりそうです。
補足(フィギュアの安藤美紀&漫画家の池田 理代子12月18日が誕生日)(フィギュアのイリア・マリニン&漫画家の竜樹諒12月2日が誕生日)
★2025/12/06 20:46、世界王者マリニン、衝撃のフリー世界歴代最高238.24点 SP3位から暫定1位へ/フィギュア
●2025年12月07日05:42頃 北米西部米国、アラスカ州南東部M7.0
●2025年12月08日23時15分頃青森県東方沖M7.5震度6強
★2007年3月24日、世界フィギュア、安藤美姫優勝、2位浅田真央
●2007年3月25日 能登半島地震 - M6.9震度6強。死者1人
★2010年2月26日、バンクーバ五輪(浅田真央とキムヨナ涙の銀メダル)
●2010年2月27日3時34分、チリ中部地震M8.8(世界史上6番目の地震)
●2010年2月27日5時31分頃沖縄本島近海M6.9震度5弱
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https://news.yahoo.co.jp/articles/1df2463efcda23ab565b2d908153fa868d8de95f
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