櫻井ジャーナルさんのサイトより
https://note.com/light_coot554/n/n0ba830802eaf
<転載開始>

 NATOの首脳会合が7月7日から8日にかけてトルコのアンカラで開催される。その直前、ロシア国防省によると、ロシア軍はモスクワやクリミアを含む都市に飛来したウクライナの固定翼ドローンやミサイル519機を撃墜。その一方、7月6日にはキエフ周辺がミサイルとドローンによる複合攻撃を受けた。激しい攻撃の様子はソーシャルメディアで伝えられている。

 狙われたウクライナの施設は、ドローンの製造企業、ギュルザM型砲艇を製造する造船所、装甲車両の製造/供給企業、ミサイル製造工場、対空ミサイル・システムの修理工場、燃料貯蔵施設などだが、ロシア国内では対ロシア戦争を主導しているNATO諸国を攻撃するよう求める声が高まっている。

 現在のE3、つまりイギリス、ドイツ、フランス、あるいはバルト三国はロシアと直接的な戦争を主張、2030年までに準備を整えるとしている。ロシアを挑発してNATO諸国を攻撃させればアメリカが出てくると信じているようだ。E3がこれだけ好戦的になったのは2014年2月のキエフにおけるクーデターでウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ大統領を排除することに成功してからである。

 ロシアのウラジミル・プーチン大統領は以前から、戦争が不可避ならば先に攻撃すると宣言している。1941年6月、ナチス時代のドイツはソ連を奇襲攻撃した。「バルバロッサ作戦」だ。この時、ソ連はドイツ軍に攻め込まれるまで動かず、大きな被害を受けた。同じ間違いを犯さないというわけだが、これまでプーチン大統領はリスクを冒そうとせず、反応は鈍かった。

 ソ連は1991年12月に消滅、その後にアメリカをはじめとするNATO諸国はこの軍事同盟を東へ拡大させていく。ミハイル・ゴルバチョフが1990年に東西ドイツの統一を認めた際、NATOを東へ拡大させないという条件がついていたのだが、その約束を西側諸国は守らない。当時のソ連政府に外交のプロはいなかったと言えるだろう。

 その条件の存在を国務長官だったジェームズ・ベイカーは否定していたが、ドイツのシュピーゲル誌によると、アメリカはロシアに約束したとロシア駐在アメリカ大使だったジャック・マトロックが語っている。(“NATO’s Eastward Expansion,” Spiegel, November 26, 2009)

 また、ドイツの外務大臣だったハンス-ディートリヒ・ゲンシャーは1990年2月にエドゥアルド・シェワルナゼと会った際、「NATOは東へ拡大しない」と確約し、シェワルナゼはゲンシャーの話を全て信じると応じたという。(“NATO’s Eastward Expansion,” Spiegel, November 26, 2009)

 それ以外にも、例えばゴルバチョフ大統領やシェワルナゼ外務大臣に対し、統一後もドイツはNATOにとどまるものの、NATO軍の支配地域は1インチたりとも東へ拡大させないとベイカー米国務長官が1990年2月9日に語ったとする記録をジョージ・ワシントン大学のナショナル・セキュリティー・アーカイブが2017年12月に公開している。

 NATOの東への拡大は新たな「バルバロッサ作戦」にほかならず、ウクライナのNATO加盟はロシアにとって絶対に認められないことのはずだが、プーチンは動かなかった。

 キエフでクーデターを仕掛けたネオコンは1990年から91年にかけての湾岸戦争でソ連軍が出てこなかったこともあり、アメリカが軍事力を行使してもロシア軍は出てこないと信じているのだが、それはソ連が消滅する寸前だったからで、プーチンが立て直した後のロシアには当てはまらない考え。ところがネオコンは今でも「脅せば屈する」と信じている。

 イギリスをはじめとするアングロ・サクソンの支配層は遅くとも19世紀からオスマン帝国を解体し、ロシアや中国を征服する長期戦略を立てていた。その中心にいたのがヘンリー・ジョン・テンプル(別名パーマストン子爵)。イギリスの首相や外相を務めた政治家。1840年にアヘン戦争を始めたのも彼であり、ロシアをイギリスにとって最大のライバルとみなしていた。「ウクライナ人はわれわれが反ロシア蜂起のストーブに投げ込む薪だ」と語り、ポーランドをロシアとドイツの間の障壁として復活させる計画を立てている。

 また、パーマストン子爵は中国におけるイギリスの権益を守るためにチャールズ・エリオットを1836年に広東へ派遣、東インド艦隊の軍事行動の規制を緩めて清(中国)への軍事的な圧力を強化、1840年にはアヘン戦争を始めたが、陸軍が弱体なイギリスは征服できない。そこで明治維新を仕掛けることになった。

 クーデターを成功させた後もオバマ大統領はロシアに対する挑発を続けるが、2016年のアメリカ大統領選挙でオバマと同じ反ロシア派のヒラリー・クリントンがドナルド・トランプに敗れると、オバマ大統領は外交官を始めとするロシア人35名を追放してロシアとの関係を悪化させた。その際、民主党全国委員会(DNC)だけでなくCIAやFBIはロシア政府がアメリカの大統領に介入したとするロシアゲート事件をでっち上げ、ロシアとアメリカの関係が良くならないように活動し続けた。

 本ブログでは繰り返し書いてきたように、ウクライナの東部と南部はロシア文化圏で、クーデターを拒否、ドンバスでは武装抵抗が始まる。クーデター後、ウクライナの軍や治安機関からメンバーの約7割が離脱し、その一部は抵抗軍に合流したと言われている。

 そのため反クーデター軍は強く、キエフのクーデター軍は劣勢になった。そこでNATO諸国はクーデター体制の戦力を強化するための時間が必要になり、ドイツやフランスが仲介する形で停戦合意を成立させた。それが2014年の「ミンスク1」と15年の「ミンスク2」だ。この停戦がクーデター政権の戦力を増強する時間稼ぎにすぎなかったことを、のちにアンゲラ・メルケル元独首相フランソワ・オランド元仏大統領が認めている。

 その間、ロシア軍は合意内容を守ったものの、ウクライナ側は合意を守らない。NATOは兵器を供給、兵士を訓練、地下要塞を含む要塞線を築いて戦争に備えた。そして2022年になるとドンバスの反クーデター派に対する砲撃を激化させ始め、2月24日にロシア軍はドンバス周辺に終結していたウクライナ軍や軍事基地、あるいは生物兵器の研究開発施設を攻撃しはじめた。

 ロシア外務省によると、その時にロシア軍が回収したウクライナ側の機密文書には、ウクライナ国家親衛隊のニコライ・バラン司令官が署名した2022年1月22日付秘密命令が含まれていた。これにはドンバスにおける合同作戦に向けた部隊の準備内容が詳述されていた。

 ロシア国防省のイゴール・コナシェンコフ少将によると、「この文書は、国家親衛隊第4作戦旅団大隊戦術集団の組織と人員構成、包括的支援の組織、そしてウクライナ第80独立空挺旅団への再配置を承認するもの」で、この部隊は2016年からアメリカとイギリスの教官によって訓練を受けていたという。

 NATO側は8年かけ、兵器の供与や兵士を育成するだけでなく、マリウポリ、マリーインカ、アブディフカ、ソレダルの地下要塞を結ぶ要塞線をドンバスに築いていた。ウクライナの軍や親衛隊はドンバスへ軍事侵攻して住民を虐殺、ロシア軍を誘い出して要塞線の内側に封じ込め、その間に別働隊でクリミアを攻撃するという計画だったのではないかと推測されている。

 2022年4月9日にイギリスの首相だったボリス・ジョンソンがキエフへ乗り込み、ロシアとの停戦交渉を止めるように命令(ココココ)する。イギリスを含む西側は簡単にロシアを打ち破れると考えていたようだが、現実は違った。地下要塞が陥落した段階でロシアの勝利は決定的だった。

 マリウポリ、マリーインカ、アブディフカ、ソレダルはすでに陥落、残された要塞線もここにきて制圧されようとしている。つまりウクライナ軍の敗北は決定的な状況だ。西側の大手メディアはこうした事実を隠蔽するため、ロシアは劣勢であり、敗北すると宣伝しているが、事実をチェックすれば、嘘はすぐにバレる。

 ヨーロッパのNATO諸国がロシアを挑発しているのはNATO軍が前面に出てロシアを脅すしかないと考えているのだろうが、ロシアに脅しは通じない。ロシア政府はNATO軍との直接的な戦争に備え、軍備を増強している。
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