yocchan_no_blog3さんのサイトより
https://yocchan-no-blog3.blog.jp/archives/14068210.html
<転載開始>

平均的な日本人にとってフィンランドという国は馴染みが薄いと思う。少なくとも、私自身はそんな感じだ。スウェーデンは何回か足を踏み込んだことがあるが、お隣のフィンランドやノルウェー、バルト三国は話で聞かされたり、記事で読んだりするだけだ。今頃の季節は白夜が続いていることであろう、といったありふれた状況を想像している。

ここに「フィンランドとエリート支配がもたらしたもの」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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副題:フィンランドの作家オッリ・タッミレートは、欧州の非合理な選択は数十年にわたる米国の「エリート支配」の産物であると主張する。自国の大統領、アレクサンデル・ストゥブほどの好例はないのではないかとも言う。

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[オッリ・タッミレートによる記事]

フィンランドの非合理な選択:

国家というものは、一般的に言うと、自分たちの安全保障や経済的利益を追求するものだと考えられる。しかしながら、近年、いくつかのヨーロッパ諸国は明らかに自国の利益に反するような決定を下し、米国の利益を促進することがある。たとえば、フィンランドは、最近、米国といわゆる「防衛協力協定」(DCA)を結んだ。この協定によれば、米国は既存のフィンランドの軍事基地15カ所にアクセスすることができ、さらには、それらの基地の中に自分たちの基地を建設することができる。そのうちのひとつの基地はロシアの主要な原子力潜水艦の基地に近いラップランドに位置する。フィンランドをロシアのミサイルの最初の標的にさせ、ふたつの核保有国間の緊張を高めることによって、このDCAはフィンランドの安全保障をリスクに曝す。そして、それに代わって、この協定は大統領の交代には関係なく存在する米国政府やディープステートの長期的な目標を促進する。これには、ライバル国となる大国の台頭を防ぎ、それに関連してロシアの包囲、不安定化、弱体化の試みが含まれる。[1]

ドイツや他の多くの欧州諸国はロシアの天然ガスから遥かに高価な米国の天然ガスへと乗り換えた。その結果、欧州では経済的な困難が生じたが、米国では大きな利益が出ている。最近、欧州のNATO諸国は軍事費をGDP5%に引き上げることを決定した。これらの国々は大規模な兵器製造能力を持ってはいないため、この決定は米国の軍産複合体にとっては金鉱のようなものである。と同時に、米国とロシアの間で軍事衝突が起こる可能性も高まる。戦争が全面的な核戦争に発展しない限り、その戦いは北米ではなく欧州で行われるであろう。

エリート支配:

なぜわれわれの大陸の指導者たちはこんなに奇妙な行動を取るのであろうか?最近の記事「エリート支配と欧州の自己破壊:大西洋横断的な覇権の隠れた仕組み」で、ネル・ボニージャ[2]は、ドイツの政治指導者が自国の利益ではなく、米国の利益を追求するよう仕向けられてきたという事実を指摘している。「アトランティック・ブリュッケ」、「アトランティック・インスティテュート」、「ジャーマン・マーシャル・ファンド」、「フルブライト・プログラム」といった組織がこの取り組みにおいて重要な役割を果たしてきた。これらの組織はドイツの指導者たちを教育し、情報を生み出す特定の方法や指導者を選ぶシステム、エリートネットワークを作り上げてきた。その結果、政治的な想像力に厳しい制約を課す支配的な考え方が生まれたのである。親米的な感情が、いわばエリートの背骨にさえも植え付けられた。エリートに植え付けられた米国的思考が強化され、毎年開催されるミュンヘン安全保障会議やビルダーバーグ会議などの多くの国際会議で共通戦略が示されている。

米国は世界中でこのようなエリート支配を実践してきた。これは米国の権力を促進する社会工学の重要な一部なのである。そして、この手の権力行使は昔から存在する。ウッドロウ・ウィルソン大統領の国務長官を務めたロバート・ランシングは1924年にはすでに彼に帰される手紙でこう述べている。「われわれは大学の扉を、若くて野心的なメキシコ人たちに開き、彼らを米国流の生活や価値観、そして、米国の指導力への尊敬の念を育むような教育をする努力をしなければならない。メキシコには有能な行政官が必要であり、時間がたてば、これらの若者たちは重要な地位に就き、最終的には大統領の座にまで就くことになる。そして、米国が一銭も使わず、一発の弾丸も発することなく、彼らは我々の望むことを行い、それをわれわれ自身よりも上手に、より徹底的にやってくれることだろう。」[3]

大学だけではなく、外国のエリートやその仲間入りを目指す人たちもさまざまなコースや訪問者プログラムを通じて米国の「価値観」に触れてきた。そのうちのひとつは、米国務省の「国際訪問者リーダーシッププログラム」(IVLP)だ。このプログラムを経験した何百人もの人たちが、その後、自国で首相や大統領の地位に就いている。フィンランドにおいては、このグループにはサウリ・ニーニスト大統領やタルヤ・ハロネン大統領が含まれ、さらには、1987年から2014年までの間に就任したすべての首相(1人だけを除いて)が含まれている。[4]

アレクサンデル・ストゥブ:

「米国の価値観」にどっぷり浸かって政治の舞台に登場したフィンランドの指導者の一人にアレクサンデル・ストゥブがいる。彼自身、このプロセスについて自伝的インタビューの本「アレックス」[5]で詳しく語っている。ストゥブは高校時代に米国に留学し、米国の大学で社会科学を学んだ。彼自身、自分の考え方がその頃から米国的になったと認めている。その後、ストゥブはブルージュの「ヨーロッパ大学」(College of Europe)で学び、フランス語が必要だった。そこで彼はヴァレリー・プレイムという米国人と友達になった。プレイムはフランス語があまり得意ではなくても、いつも試験に合格していた。プレイムは卒業後も長い間ストゥブと連絡を取り続けた。2003年、プレイムはCIAのエージェントであることが明らかになった[6]

5年後、ストゥブは非同盟国であるフィンランドの外務大臣になり、ジョージア戦争の休戦と平和の交渉に参加した。どうやら、彼は交渉の中で実際に米国を代表していたようで、米国務長官のコンドリーザ・ライスは、ストゥブがヘルシンキ・シティマラソンに出場している間でさえも、常に、彼と連絡を取り合っていたそうだ。[7]

ソ連も政治指導者の候補に自分たちの「価値観」を吹き込もうとする努力をしていた。しかし、米国の取り組みに比べるとかなり控えめであって、それは主に共産党員に限られていた。それでも、ほとんどすべてのフィンランドの政党の若手指導者らはソ連を訪問するよう招かれたが、その訪問の目的は、おそらく、主に選別にあった。当時の「NATOの典礼」、つまり、ソ連へのお世辞をどれだけ状況に関係なく繰り返す準備があるかということを見極めるものである。

1977年、私は如何なる政治的な青年団体にも所属してはいなかったけれども、そうした訪問に参加することができた。われわれの代表団はトゥーラ地方でシャベル以外の道具を使わずに巨大な牛舎を建てている学生労働キャンプで友情を育んでいた。滞在が突然一週間延長された理由を尋ねる勇気を持った際に、私は2人の社会民主主義者と一緒に例外的に見なされ、まるでもみ殻のように選別された。代表団の指導者である中道党のマルヨ・ヒルシマキやわれわれの小グループの指導者である国民連合党(ストゥブが大統領になる前に所属していた右派政党)のメンバー、そして、キャンプにいた多くのフィンランド人は、われわれの酷い行動に深く腹を立てていた。彼らはソ連のとても良い友人であることを示した。ヒルシマキはこの件で特に際立っていた。なぜならば、彼はわれわれの不適切な質問に関して謝罪するためにヘルシンキのソ連大使館に出かけて行ったからだ。

もしもソ連邦が崩壊してはいなかったならば、フィンランドの政治家を取り込む術はおそらくもっと向上していたことであろう。そうなれば、ストゥブのように指導者としてのキャリアを目指す若者たちはまったく異なる価値観の中で育まれていたはずである。

オッリ・タミレヒトは作家であり、独立した研究者である。

 

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資料:

[1] See, for example, U.S. Department of Defense, 2022 National Defense Strategy (Washington, DC: U.S. Government, 2022), https://media.defense.gov/2022/Oct/27/2003103845/-1/-1/1/2022-NATIONAL-DEFENSE-STRATEGY-NPR-MDR.PDF; James Dobbins et al., Overextending and Unbalancing Russia: Assessing the Impact of Cost-Imposing Options (Santa Monica, CA: RAND Corporation, 2019), https://www.rand.org/pubs/research_briefs/RB10014.html.

[2] Nel Bonilla, “Elite Capture & European Self-Destruction: The Hidden Architecture of Transatlantic Hegemony,” Worldlines, June 29, 2025, https://themindness.substack.com/p/elite-capture-and-european-self-destruction.

[3]“1924 Carta de Robert Lansing,” Memoria Política de México, 2024, https://www.memoriapoliticademexico.org/Textos/6Revolucion/1924CRL.html.

[4] Wikipedia, s.v. “International Visitor Leadership Program,” last modified June 12, 2025, https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=International_Visitor_Leadership_Program&oldid=1295203891.

[5] Alexander Stubb and Karo Hämäläinen, Alex (Helsinki: Otava, 2017).

[6] Stubb and Hämäläinen, Alex, 60.

[7] Stubb and Hämäläinen, Alex, 139.

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これで全文の仮訳が終了した。

国際的な政治指導者としてもっとも知名度が高く、20243月からフィンランド大統領を務めるアレクサンデル・ストゥブの行動が詳細にわたって報告されている。彼はまさに「米国の価値観」を行動規範としているかのようだ。米国側にとっては文字通り大成功を収めた事例のひとつとして数えることができるのだろう。

米国が世界に対する覇権を維持する手法として同盟国において実践しているエリート支配の実態がよく理解することができる。

欧州の指導者が自国の国益を損ねてでも米国の利益を優先した事例としては、冷戦終了後の最近の30数年間ではノルドストリーム・パイプラインの破壊工作がまず思い浮かぶ。ドイツの指導者たちはこの事件を容認し、ロシア産の天然ガスに代わって、割高な米国産LNGを輸入することにした。その結果、EUの経済圏を牽引してきたドイツの産業界は高騰したエネルギーコストによって国際競争力を完全に失った。EUの経済は失速した。

また、かねてからのトランプ大統領からの要請に応えて、欧州のNATO加盟国は国内総生産の5%を国防予算に充当することにも同意した。こうして、米国の軍産複合体はすっかり弱体化した欧州の軍需生産にテコ入れすることを通じて、近い将来、大儲けを確実にするお膳立てをめでたく完了したことになる。

米国にとっては幸いなことに、それと同時に欧州諸国にとっては不幸なことに、これらふたつの大きな枠組みは米国が長年にわたって推進してきた欧州におけるエリート支配という政策やそれを支えるさまざまなプログラムが見事に功を奏したからであると言える。

戦後80年にわたって米国にべったりの政治姿勢を保ってきた日本にも第二、第三のアレクサンデル・ストゥブがゴロゴロしているに違いない。今回の引用記事の内容は、日本人にとっては遠く離れた北欧の一国の話だとして笑っては済まされない重い現実を指し示している。

 

参照:

注1:Finland and the Results of Elite Capture: By Pascal Lottaz, Jul/13/2026


<転載終了>