In Deepさんのサイトより
https://indeep.jp/lost-golden-age-of-languages/
<転載開始>


indeep.jp




 

人類には「言語の黄金時代」があった

米イェール大学の研究者たちが、1万2000年前の「世界の言語の数」を研究により、

「1万2000年前には世界で 4500〜 6200の言語が話されていた」

とする推定に達したことがイェール大学のニュースリリースで報じられていました。

現在世界で話されている言語の種類は、約 7600とされていますので、それと比較すると実数は少ないのですが、何より当時の人口との比較をすると、ものすごく多彩な言語が話されていたことがわかります。

推定では、1万2000年前は、

「人口が 440万人から 700万人」

だったとされていますので、現在の 81億人とされている地球の人口と比較しますと、1万2000年前は、今の何百倍も多様な言語が話されていて、そして、

「1言語あたりの平均話者数は 700人 〜 1,500人程度だった」

ということになるのです。

現在の 1言語あたりの平均話者数が、約 106万人(もちろん多い国や地域も少ない地域があります)程度だと考えますと、ものすごい差となります。

「しかし、1000人前後の話者数の人口で言語って維持できるのだろうか?」

とも思いましたが、他の論文では、先史時代の人類は、数十〜数百人規模の小さな集団で生活しており、言語集団の規模も小さく、隣の集団とは異なる言語や方言を話すことが多かったと推定されているそうです。(論文

あと、現在でも、パプアニューギニアやアマゾンでは、小さな集団が、「複数の言語」を話すことで周辺の集団との接触をしているのが普通なのだそうで、そのような生活が 1万2000年前も普通だったのかもしれません。

そして、こういう言語状態の生活を人類は 1万年以上続けていたのですから、現世人類はずいぶん長い時代をこのように生きていたようです。

それにしても、

言語という概念と、方言という概念はどこで区別するのだろう」

という疑問はあります。

今は日本でも方言はずいぶんと少なくなったか、あるいは変化しましたが、数十年あるいは 100年前などは

「鹿児島の人と青森の人の間には会話は成立しなかったはず」

だと考えますと(これは例えで、どんな地域の間でもそうだったはずです)、「これって違う言語という捉え方はできないのかな」と思います。

それについて調べていると、結局、

「それが言語か方言かを決めるのは国家」

だということに行き着きます。

19世紀のロシアの言語学者であるマックス・ヴァインライヒという人は、

「言語とは、陸軍と海軍を持つ方言のことである」

と述べていまして、つまり、国家がそれを決めることだと。

植民地時代も南米やアフリカでは多くの言語が消えていきましたが、そういうことも歴史上ではいろいろとあったでしょうし、「国家の政策」と言語の数の変化というのは密接に関係があるようです。

数十年前までは、日本人同士でも、地域が違えばほとんど通じないという方言が各地にあったわけですけれど、政策として「日本は単一言語の国である」とすれば、すべてが日本語であり、通じないものでも、それは方言ということになります。

そして、これは日本だけではないですけれど、

「学校教育とテレビなどのメディアの影響で標準語が拡大していく」

というように時代は進んできたようです。

テレビ(ラジオも含めて)前とテレビ後では、特に若い人たちの方言の多様さはかなり変化しているはずです。

もちろん、国全体に標準語が伝わることによる利便性はあるでしょう。私の実家のある北海道は、もともと方言が比較的少ない地域なのですが、その理由は「明治や大正に日本全国から開拓などのために人々が集まってきた」からだと思われます。

どんな仕事にしても、コミュニケーションがまったくとれないのではどうしようもないわけで、自然と標準語寄りの言語になっていったのではないのかなとは思います。今の北海道は、特に若い人の方言はほぼないですからね。これからもさらに方言は消えていくのだと思われます。

そういえば、ずいぶん以前ですが、「地球の人類はみな同じ言語を話している」という研究をご紹介したことがありました。

「地球の人類はみな同じ言語を話している」 : 国際的研究で判明したこの衝撃の事実から、むしろ浮かび上がる日本語という存在の奇妙さ
In Deep :2016年9月14日

それはともかく、米イェール大学のニュースリリースです。

研究により、失われた「言語の黄金時代」が明らかになった

Study uncovers lost ‘golden age’ of languages
YaleNews 2026/07/23

イェール大学の言語学者クレア・バウアーン氏が共同執筆した新たな研究によると、1000年から3000年前の間には数万もの言語が話されていた可能性があるという。

イェール大学の言語学者クレア・バウアーン氏が共同執筆した、過去 12,000年間の世界の言語多様性の軌跡をたどる新たな研究によると、 1,000年から3,000年前は言語の「黄金時代」であり、世界中で数万もの言語が話されていたという。


クレア・バウアーン氏

研究者らは、黄金時代の後には、ローマ帝国のような大国や多国籍帝国の台頭と時を同じくして、言語多様性が急速に衰退する時期が訪れたことを発見した。

この発見は、ヨーロッパの植民地拡大が始まった約 500年前に、広範囲にわたる言語の消滅が始まったという一般的な見解に異議を唱えるものだ。

研究者らは、拡大する国家や帝国の言語は、吸収されたり、追放されたり、人口が減少したりした人々の言語が消滅する一方で、生き残る可能性が著しく高かったと結論付けている。

これは、今日話されている、または手話で表現されている約 7,600 の言語は、かつて存在した言語のごく一部であり、歴史的に偏ったサンプルに過ぎないことを意味し、言語と文化の世界的なパターンの研究にとって重要な意味を持つと彼らは述べた。

「ある意味で、言語は儚いものです。話された文は音波の中に消えてしまいます。しかし、私たちの研究は、言語のパターンを使用して、数千年にわたる大規模な人口動態イベントを再構築できることを示しています」と、イェール大学文理学部の言語学教授で、この研究の共著者であるボーウェルン氏は述べた。

「私たちは、言語が政治的な流れから孤立しているわけではなく、このダイナミクスはこれまで考えられていたよりもはるかに長い間、人類の歴史の一面であったことを示しています」

この発見は、政治的な流れが一方向に動く必要はないため、今日の多くの危機に瀕した言語にとって重要だ。 これは、7月23日に科学誌『サイエンス』に掲載された

この研究は、言語学、人口統計学、進化生物学の専門家による長年にわたる国際的な共同研究の成果でもある。

 

政治の流れは必ずしも一方向に向かわなければならないわけではない。危機に瀕した言語が消滅することは必然ではない - クレア・バウアーン

約 6,000年前に文字が出現する以前の言語の直接的な証拠は存在しない。そのため、研究者らは、民族誌情報、先史時代の人口規模の推定値、統計モデルと社会計算モデルを組み合わせて、約 12,000年前に始まった現在の地質時代である完新世における言語の多様性を推定した。

農業の出現以前の人口の分布と規模を推定するために、研究者らは、伝統的な生計手段と移動手段が食料生産者との接触によって大きく変化していない171の狩猟採集民と漁民社会の民族誌データを用いた。

彼らはこれらの推定値を、12,000年前の世界の人口が約 440万人から700万人の間であったことを示唆する独立した分析と組み合わせた。

完新世初期の言語の数が、当時の全人類が収容できた異なる集団の数に対応していたと仮定すると、12,000年前には 4,500から 6,200の言語が話されていたと、この研究のモデルは推定している。

約 6,000年前に文字が出現する以前の言語の直接的な証拠は存在しない。そのため、この研究では、研究者らは民族誌情報、先史時代の人口規模の推定値、統計モデルと社会計算モデルを組み合わせて、約 12,000年前に始まった現在の地質時代である完新世の言語的多様性を推定した。

 

世界の言語の「黄金時代」は、国家や多国籍帝国の台頭とともに終焉を迎えた。支配的な集団が、それまで独立していた人々に自らの言語、文化、そして病原体を広めたからである

農業が始まる直前の世界は、おそらく言語が非常に豊富だったわけではないでしょう」と、筆頭著者であるダミアン・ブラージ氏は語る。彼はスペイン、バルセロナのポンペウ・ファブラ大学脳認知センターに所属するICREA(カタルーニャ高等研究所)の研究教授だ。「おそらく、現在よりも言語の数は少なかったでしょう。言語の多様性はその後、何千年にもわたって人類の人口とともに成長しました」

農業と技術革新の開始に伴い人口が劇的に増加し、その後戦争、疫病、その他の生態学的要因によって人口が減少した際の言語の多様性の変動を捉えるため、研究者らは完新世の初めの言語推定値と現在を結びつける何千もの可能性のある軌跡をモデル化した。

モデルは一貫して、言語の多様性が 1,000年から 3,000年前にピークに達し、世界中で数万以上の言語が話されていたことを示すパターンを示した。研究者らはこの時期を世界の言語の「黄金時代」と呼んでいる。

 

今日私たちが目にする言語は、大規模かつ極めて選択的な歴史的ボトルネックを生き延びた言語である - ラッセル・グレイ

この研究によると、その黄金時代は、支配的な集団がそれまで独立していた人々に言語、文化、病原体を広めるにつれて、国家や多国籍帝国の台頭とともに終焉を迎えた。ヨーロッパの植民地主義は言語的多様性の急激な減少を加速させたが、その原因ではなかったと研究は述べている。

2000年の間にこれほど多くの言語的多様性が失われたことが、今日の言語の発達に影響を与えたと研究者らは述べている。

「今日見られる言語は、大規模かつ非常に選択的な歴史的ボトルネックを生き延びたものです」と、研究の共著者であり、ドイツ・ライプツィヒのマックス・プランク進化人類学研究所の言語文化進化部門長であるラッセル・グレイ氏は述べている。




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