みのり先生の診察室さんのサイトより
https://ameblo.jp/drminori/entry-12974445508.html
<転載開始>

こちらのニュースでふと気になったプリオンのこと。

 

 

コロナワクチン接種歴も気になりました。

 

というのもワクチン接種後のプリオン病については関連が指摘されていました。

 

 

そして気になって調べたら興味深い論文がありました。

 

 

論文のタイトルは、

「神経変性疾患におけるスパイクタンパク質の潜在的役割:ナラティブレビュー」

です。

この論文は、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質が持つとされる「プリオン様」の性質に注目し、プリオン病をはじめとする神経変性疾患に関与する可能性について検討しています。

最初に大切なことをお伝えしておきます。

この論文は、患者さんを長期間追跡した臨床試験でも、接種者と未接種者の発症率を比較した疫学研究でもありません。

これまでに発表された試験管内実験、細胞実験、動物実験、コンピューター解析、症例報告などを集め、著者らが一つの仮説としてまとめたナラティブレビューです。

つまり、

スパイクタンパク質がプリオン病や神経変性疾患を起こすことを証明した論文ではありません。

一方で、長期的な影響として検証すべき問題を提起した論文だといえます。

 

 

ワクチン後遺症の症状が落ち着いていた患者さんが、ここに来て神経変性疾患を発症するケースを数例経験したので、気になって調べていたらこの論文にたどり着きました。

 

私なりに解説してみます。

 

ちょっと長いですがお付き合い下さい。

 

 

そもそも「プリオン」とは?

 

プリオンとは、一般的な細菌やウイルスとは全く異なるものです。

遺伝情報を持つDNAやRNAがなく、異常な形に折り畳まれたタンパク質そのものが病気の原因になります。

人間の体内には、もともと正常なプリオンタンパク質が存在します。

ところが、正常なプリオンタンパク質の立体構造が異常な形に変わると、その異常タンパク質が周囲の正常なタンパク質まで異常な形へ変えてしまうことがあります。

異常タンパク質が次々と増え、脳に蓄積すると、神経細胞が障害されます。

代表的なプリオン病には、

・クロイツフェルト・ヤコブ病
・ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病
・致死性家族性不眠症


などがあります。

プリオン病は非常にまれな病気ですが、いったん発症すると進行が速く、有効な治療法が限られている深刻な疾患です。

 

 

「プリオン病」と「プリオン様疾患」は同じではない

 

ここは、この論文を理解するうえで重要なポイントです。

アルツハイマー病やパーキンソン病、ALSなどは、通常、典型的なプリオン病には分類されません。

しかし、これらの病気でも、特定のタンパク質が異常な形に折り畳まれ、凝集し、周囲の正常なタンパク質に影響しながら広がるような現象がみられます。

たとえば、

アルツハイマー病ではアミロイドβタウ


パーキンソン病レビー小体型認知症ではαシヌクレイン


ALS前頭側頭型認知症ではTDP-43

などが知られています。

このような広がり方がプリオンと似ているため、これらのタンパク質は「プリオン様タンパク質」と呼ばれることがあります。

つまり、この論文が扱っているのはクロイツフェルト・ヤコブ病だけではありません。

異常なタンパク質の折り畳みや凝集を共通の特徴とする、幅広い神経変性疾患が対象です。

アミロイドβ、タウ、αシヌクレインなどがプリオンと共通する性質を持つことは、神経変性疾患の研究分野でも以前から議論されています。

 

 

スパイクタンパク質にも「プリオン様配列」がある?

 


この論文で中心となっているのが、スパイクタンパク質のアミノ酸配列です。

タンパク質は、アミノ酸が長くつながってできています。

アミノ酸の並び方によって、タンパク質がどのような立体構造を作るのか、どのようなタンパク質と結合しやすいのか、凝集しやすいのかが変わります。

著者らが紹介しているコンピューター解析では、コロナウイルスのスパイクタンパク質の中に、プリオン様タンパク質に特徴的なアミノ酸配列が存在する可能性が示されています。

特に、ウイルスが人間の細胞に結合するために使う受容体結合領域に、プリオン様の特徴があると論じられています。

ただし、「プリオン様配列がある」ということと、「実際に人間の体内でプリオン病を起こす」ということは同じではありません。

コンピューター解析は、あくまでタンパク質の性質を予測するものです。

体内で実際に異常凝集が起きるかどうかは、

・タンパク質の量
・存在する期間
・分解される酵素
・周囲の炎症
・細胞の状態
・免疫反応
・年齢や基礎疾患

など、多くの条件によって変わります。

 

 

スパイクタンパク質の断片がアミロイド様線維を作る?

 

論文では、スパイクタンパク質を酵素で分解した実験も紹介されています。

炎症が起きると、好中球という免疫細胞が集まり、「好中球エラスターゼ」などのタンパク質分解酵素を放出します。

試験管内の実験では、スパイクタンパク質をこうした酵素で切断すると、一部の断片がアミロイド様の線維を形成したと報告されています。

アミロイド様線維とは、タンパク質が一定の構造をとって、細長い線維状に凝集したものです。

この結果から著者らは、

炎症が起きる

スパイクタンパク質が酵素で切断される

凝集しやすい断片が生じる

アミロイド様線維が形成される

という可能性を考察しています。

興味深い実験ではありますが、これは試験管の中で行われたものです。

同じ現象が人間の体内、さらに脳内で実際に起きることは、まだ証明されていません。

 

 

 

異常タンパク質の「種」になる可能性

 

プリオンやプリオン様タンパク質の特徴の一つに、「シーディング」と呼ばれる現象があります。

「シード」とは種という意味です。

最初に少量の異常タンパク質ができると、それが種となり、周囲の正常なタンパク質を巻き込んで凝集が大きくなっていく現象です。

著者らは、スパイクタンパク質やその分解断片が、神経系のタンパク質凝集を促す「種」として働く可能性を指摘しています。

関与する可能性が論じられているのは、正常プリオンタンパク質だけではありません。

アミロイドβ、タウ、αシヌクレイン、TDP-43など、さまざまな神経変性疾患に関係するタンパク質との相互作用が検討されています。

つまり論文の仮説は、「スパイクタンパク質そのものが典型的なプリオンになる」という単純な話ではありません。

スパイクタンパク質やその断片が、もともと体内に存在するタンパク質の折り畳み異常や凝集を促し、プリオン病またはプリオン様の神経変性につながる可能性がある、という内容です。

 

 

スパイクタンパク質はどのように脳へ影響するのか

 

著者らは、スパイクタンパク質やその断片が神経系へ影響する経路として、いくつかの仮説を挙げています。
 

 

 血液脳関門の障害

 

脳には、血液中の物質が簡単に入り込まないようにする「血液脳関門」という防御機構があります。

血管内皮の炎症や障害によって血液脳関門の機能が低下すると、通常は脳へ入りにくい物質が通過しやすくなる可能性があります。

著者らは、スパイクタンパク質に伴う血管内皮障害や炎症が、血液脳関門に影響を与える可能性を論じています。
 

 

 エクソソームによる運搬

 

エクソソームとは、細胞から放出される非常に小さな袋状の物質です。

内部にタンパク質や脂質、RNAなどを入れ、ほかの細胞へ運ぶ役割があります。

論文では、スパイクタンパク質やプリオン様タンパク質がエクソソームに取り込まれ、離れた組織へ運ばれる可能性が検討されています。

 

 

 免疫細胞による運搬

 

単球やマクロファージなどの免疫細胞がスパイクタンパク質を取り込み、体内を移動する可能性についても触れられています。

このような免疫細胞が、組織間を移動する「運び屋」のような役割を果たすのではないか、という仮説です。

 

 

 神経を介した移動

 

神経変性疾患では、異常タンパク質が神経細胞から神経細胞へ移動しながら広がる可能性が指摘されています。

著者らは、嗅神経や迷走神経などを介して、末梢から中枢神経系へ影響が及ぶ可能性についても論じています。

ただし、これらの経路が最初から最後まで人間で確認されたわけではありません。

 

 

正常プリオンタンパク質は「悪者」ではない

 

「プリオンタンパク質」と聞くと、すべて有害なものだと思われるかもしれません。

しかし、正常なプリオンタンパク質は、人間の体内に普通に存在しています。

正常プリオンタンパク質には、

・神経細胞の保護
・酸化ストレスへの対応
・細胞膜での情報伝達
・金属イオンの調節
・シナプス機能
・免疫機能

などに関与する可能性があります。

問題になるのは、正常プリオンタンパク質が異常な立体構造へ変化し、凝集し始めることです。

論文では、スパイクタンパク質が正常プリオンタンパク質の働きや構造に影響する可能性についても考察されています。

 

 

インスリン抵抗性との関係

 

 

この論文では、インスリン抵抗性についても大きく取り上げています。

インスリン抵抗性とは、インスリンが分泌されていても、細胞が十分に反応しにくくなった状態です。

糖尿病や肥満、メタボリックシンドロームなどと深く関係します。

インスリンは血糖値を下げるだけのホルモンではありません。

脳内でも、

・神経細胞の生存
・エネルギー代謝
・記憶
・シナプス機能
・タンパク質の処理

などに関係しています。

著者らは、インスリン抵抗性があると、異常タンパク質の分解や細胞内の品質管理がうまく働かなくなり、プリオン様タンパク質の蓄積に対して弱くなる可能性を指摘しています。

つまり、

スパイクタンパク質によるストレス

インスリン抵抗性

加齢

慢性炎症

タンパク質分解機能の低下

といった複数の条件が重なったときに、神経変性のリスクが高まるのではないか、という考えです。

ただし、この仮説を直接証明する人間の臨床データは、この論文では示されていません。

 

 

ヒートショックタンパク質とタンパク質の品質管理

 

 

細胞内では、タンパク質が正しい形に折り畳まれるように、さまざまな仕組みが働いています。

その一つが「ヒートショックタンパク質」です。

ヒートショックタンパク質は、タンパク質の折り畳みを助けたり、異常なタンパク質を修復したり、分解へ誘導したりする役割があります。

著者らは、特にHsp70などの働きが低下すると、異常タンパク質が処理されにくくなり、プリオン様凝集が起こりやすくなる可能性を論じています。

加齢、代謝異常、慢性炎症、酸化ストレスなどが重なると、細胞の品質管理能力が低下します。

そのような状態では、外部から新たなタンパク質ストレスが加わった場合に、凝集が進みやすくなるかもしれないというわけです。

 

 

クロイツフェルト・ヤコブ病の症例報告

 

 

論文では、新型コロナ感染後や新型コロナワクチン接種後にクロイツフェルト・ヤコブ病を発症した症例報告も紹介されています。

クロイツフェルト・ヤコブ病は、認知機能や運動機能が急速に低下する、非常にまれなプリオン病です。

 

以前、ブログでコロナワクチン接種後に生じた急速に進行するヤコブ病について書きました↓

 

 

 

 

 

こちらの記事には4回目のコロナワクチン接種後、10日ほどで発症し休息に進行し3ヶ月ちょっとで亡くなった56歳男性歯科医の先生の話を書いています↓

 

 

 


 

 

感染由来とワクチン由来のスパイクタンパク質

 

 

この論文では、自然感染だけではなく、mRNAワクチンによって体内で作られるスパイクタンパク質についても詳しく論じています。

著者らは、

mRNAが分解されにくいよう修飾されていること


・コドン最適化が行われていること


スパイクタンパク質を安定化させる変更が加えられていること


・脂質ナノ粒子によってmRNAが運ばれること


・繰り返し接種によって再曝露が起きること

などを理由に、ワクチン由来のスパイクタンパク質がプリオン様病態に関与する可能性を主張しています。

ただし、ここは著者らの推論が多く含まれる部分です。

自然感染ではウイルスが増殖し、スパイクタンパク質以外のウイルスタンパク質も作られます。

さらに、

・強い全身炎症
・発熱
・低酸素
・血栓形成
・血管内皮障害
・自己免疫反応

なども起こり得ます。

したがって、感染由来とワクチン由来の影響を、スパイクタンパク質の量だけで単純に比較することはできません。

 

 

神経だけでなく血液凝固への影響も考察

 

この論文は、神経変性疾患だけを扱っているわけではありません。

スパイクタンパク質のプリオン様・アミロイド様の性質が、血液凝固にも影響する可能性を論じています。

異常なタンパク質構造がフィブリンなどの凝固関連タンパク質に作用し、通常とは異なる血栓構造の形成に関与するのではないか、という仮説です。

血流が障害されれば、神経組織への酸素や栄養の供給にも影響します。

著者らは、

・タンパク質の異常凝集
・血管内皮障害
・血液凝固異常
・慢性炎症
・神経炎症

が互いに関連し合う可能性を考察しています。
 

 

 

まとめ

 

この論文は、スパイクタンパク質がプリオン病を起こすと証明した研究ではありません。

また、特定の神経変性疾患だけを扱った論文でもありません。

論文が示しているのは、

スパイクタンパク質が持つ可能性のあるプリオン様・アミロイド様の性質が、タンパク質の異常凝集、神経炎症、血管障害、凝固異常、代謝異常などを介して、将来的な神経変性疾患に関与する可能性がある

という仮説です。

基礎研究の知見をつないだ仮説であり、人間での因果関係はまだ確立していません。

だからこそ、感情的に断定するのではなく、

本当に長期的な影響はないのか

プリオン病やプリオン様神経変性疾患の発症率に変化はないのか

を、今後も慎重に調べ続ける必要があると思います。

 

「絶対に起こる」と決めつけるのでもなく、

「絶対に起こらない」と切り捨てるのでもなく、

臨床現場で起きていることを記録し、科学的に検証していく。

それが医療に求められる姿勢ではないでしょうか。


<転載終了>