みのり先生の診察室さんのサイトより
https://ameblo.jp/drminori/entry-12974757371.html
<転載開始>

医師サイトで紹介されていた衝撃的な論文をご紹介します↓

 

https://academic.oup.com/eurheartj/advance-article/doi/10.1093/eurheartj/ehag447/8725569?login=false

 

 

私たちの生活のあらゆる場所に存在するプラスチック。

食品の容器、ペットボトル、ビニール袋、衣類、日用品など、プラスチックを全く使わずに生活することは、ほぼ不可能と言ってもいいでしょう。

そんなプラスチックが細かく砕けたものを「マイクロプラスチック」、さらに小さなものを「ナノプラスチック」と呼びます。

近年、これらの微細なプラスチックが、海や土壌だけでなく、人間の血液や臓器からも見つかるようになってきました。

そして今回、非常に気になる研究が発表されました。

なんと、急性心筋梗塞を起こした患者さんの冠動脈を流れる血液から、マイクロ・ナノプラスチックが高い頻度で検出されたというのです。

急性心筋梗塞患者の84%から検出

 

この研究では、冠動脈造影検査を受けた61人が、次の3つのグループに分けられました。

・急性心筋梗塞を起こした人
・慢性の冠動脈疾患がある人
・冠動脈に明らかな異常がなかった人

そして、冠動脈の中を流れる血液や、腕や脚などの末梢の血液を採取し、マイクロ・ナノプラスチックが含まれているかどうかを詳しく調べました。

その結果、プラスチックが検出された割合は、

急性心筋梗塞群 84.2%
・慢性冠動脈疾患群 40.0%
・冠動脈に異常がない群 31.8%

でした。

急性心筋梗塞を起こした患者さんでは、ほかのグループと比べて、明らかに高い割合でプラスチックが検出されていたのです。

しかも、単に「見つかった人が多かった」というだけではありません。

急性心筋梗塞患者では、検出されたプラスチックの量も多く、種類も多い傾向にありました。

 

 

最も多かったのはポリエチレン

 

検出されたプラスチックの中で、特に多かったのがポリエチレンでした。

ポリエチレンは、

・食品包装
・ビニール袋
・容器
・ボトル
・各種日用品

など、私たちの身の回りで大量に使われているプラスチックです。

プラスチックが検出された人のうち、実に97%からポリエチレンが見つかったと報告されています。

私たちが日常的に接しているプラスチックが、いつの間にか非常に小さな粒子となり、体内に入り込んでいる可能性があるということです。

 

 

末梢の血液より冠動脈の血液で濃度が高かった

 

さらに注目したいのが、同じ患者さんでも、手足などの末梢血より、冠動脈を流れる血液のほうが、プラスチック濃度が高かったという点です。

冠動脈とは、心臓の筋肉に酸素や栄養を送っている重要な血管です。

その冠動脈の中でプラスチック濃度が高かったという結果は、非常に気になります。

ただし、この研究だけでは、

プラスチックが冠動脈の病変に集まったのか、

心筋梗塞が起きたことによって血流や炎症が変化し、結果として高くなったのか、

そこまでは分かりません。

ここは冷静に見なければなりません。

 

 

炎症反応も高かった

 

急性心筋梗塞患者では、IL-6やTNF-αといった炎症に関係する物質も高くなっていました。

マイクロ・ナノプラスチックについては、これまでの基礎研究や動物実験で

・酸化ストレスを起こす
・免疫反応を刺激する
・血管の内側を傷つける
・脂質代謝を乱す
・動脈硬化を促進する

といった可能性が指摘されています。

つまり、体内に入ったプラスチックが炎症を引き起こし、血管を傷つけ、動脈硬化や血栓形成に関与する可能性は十分に考えられます。

ただし今回の研究は、プラスチックが炎症の直接的な原因であることを証明したものではありません。

あくまでも、プラスチックが多く検出された人で、炎症や心筋梗塞が重なっていたという研究です。

 

 

喫煙やPM2.5との関連も

 

この研究では、喫煙や大気汚染との関係についても調べられていました。

急性心筋梗塞患者では、PM2.5への曝露が多く、喫煙歴のある人ほどプラスチックが検出されやすい傾向にありました。

特に、喫煙歴があり、なおかつ高い濃度のPM2.5に曝露していた人では、全員からマイクロ・ナノプラスチックが検出されました。

複数の因子を調整した分析では、喫煙歴がある人は、ない人と比べて、プラスチックが検出される可能性が高いという結果も出ています。

タバコのフィルターにはプラスチック素材が使われています。

また、喫煙によって肺のバリア機能が傷つけば、微細な粒子が体内に入りやすくなる可能性もあります。

喫煙はそれ自体が心筋梗塞の大きな危険因子ですが、もしかするとプラスチック曝露という面からも、心血管に悪影響を与えているのかもしれません。

 

 

この研究から「プラスチックが心筋梗塞の原因」とは言えない

 

ここはとても大切なので、はっきり書いておきたいと思います。

今回の研究は、心筋梗塞患者の冠動脈血中にプラスチックが多かったことを示した研究です。

しかし「プラスチックが体内に入ったから心筋梗塞になった」と証明した研究ではありません。

心筋梗塞が起きた結果、炎症や血流が変化し、プラスチックが集まりやすくなった可能性もあります。

また、対象となった人数は61人と少なく、急性心筋梗塞患者も19人です。

そのため、この研究だけで結論を出すことはできません。

ただ、それでも私は非常に重要な研究だと思います。

なぜなら、生きている患者さんの冠動脈から直接血液を採取し、そこにマイクロ・ナノプラスチックが存在していることを確認したからです。

 

 

プラスチック汚染は環境問題だけではない

 

これまでマイクロプラスチックというと、海洋汚染や魚、鳥、海洋生物への影響が主に語られてきました。

しかし今や、プラスチック汚染は単なる環境問題ではありません。

人間の血液、肺、胎盤、血管、さらには動脈硬化のプラークからも検出される時代になりました。

そして今回、心筋梗塞患者の冠動脈血から高い頻度で見つかった。

これは、私たち自身の健康問題として考える必要があるのではないでしょうか。

 

 

完全に避けることは難しいけれど

 

現代社会でプラスチックを完全に避けることは難しいです。

けれども、日常生活の中で減らせる曝露はあります。

たとえば、

・熱いものをプラスチック容器に入れない
・プラスチック容器のまま電子レンジで加熱しない
・ペットボトルを高温の車内に放置しない
・食品保存にはガラスやステンレスを選ぶ
・古くなったプラスチック製品を使い続けない
・使い捨てプラスチックを減らす
・喫煙しない
・大気汚染の強い日は換気や外出時間を工夫する

といったことはできます。

大切なのは、極端に怖がることではありません。

今分かっていることと、まだ分かっていないことを分けて考えながら、できる範囲で曝露を減らしていくことだと思います。

 

 

従来の心筋梗塞のリスクだけでは説明できない時代へ

 

心筋梗塞の危険因子としては、

・高血圧
・糖尿病
・喫煙
・肥満
・運動不足
・慢性炎症

などが知られています。

けれどもこれからは、大気汚染や化学物質、マイクロプラスチックなど、環境から受ける影響についても考える必要があるのかもしれません。

人間の体は、外の環境と切り離されたものではありません。

私たちが作り、使い、捨ててきたものが、巡り巡って自分たちの体内に戻ってきている。

今回の研究は、その現実を突きつけているように感じました。

まだ小規模な研究です。

だからこそ、今後さらに大規模で長期的な研究が行われることを期待したいと思います。

少なくとも、

「体内に入っても何の問題もない」

と簡単に片付けてよいものではないでしょう。

環境を守ることは、結局、自分たちの体を守ることにもつながるのだと思います。


<転載終了>