マスコミに載らない海外記事さんのサイトより
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2026/08/post-2285fa.html
<転載開始>
2026年8月10日
ラリー・C・ジョンソン
SONAR21

今週末のインタビューで、アメリカのスコット・ベッセント財務長官が、ホルムズ海峡は二年以内に「どうでもよくなる」と述べたのは、現在海峡を通過するエネルギーの半分以上が地下パイプラインに迂回されるためだ、というものだったが、それは絵空事だった。ベッセント長官は、湾岸アラブ諸国が石油パイプラインを急速に建設しても、イランがホルムズ海峡を地政学的な影響力として利用する能力が消えるわけではないのを理解していない。確かに資本は要衝を嫌うし、湾岸産油国は実際に要衝を迂回するパイプライン建設を競っている。サウジアラビアは東西石油パイプラインを拡張し、UAEはフジャイラ迂回路をより重視し、イラクは長らく休止していた陸上輸出回廊を再び活用し始めている。シェブロンは、イラクからシリア地中海に至るハディサ・バニヤス線を復活させることさえ検討している。
ベッセントの石油パイプライン構想は、イランの力を弱める巧妙な方法に思えるが、ペルシャ湾の本当の経済的重要性や、イランが今後何年も持ち続けるだろう影響力を彼は理解していない。ベッセントはホルムズ海峡を石油問題として捉え、パイプライン網(いかに野心的なものであれ)が石油問題を解決すると考えている。だがホルムズ海峡は世界で最も重要な石油の要衝というだけではない。そこは、パイプで輸送できない、他の場所で迅速に代替調達できない特殊な物資群にとって唯一の海上輸送路で、その供給途絶は既に食料、半導体、重工業など、様々な分野で目に見える経済的損害をもたらしている。原油の迂回路を建設し、海峡は「どうでもよい」と宣言することは、一つの物質の輸送量を全ての輸送量と混同しているに等しい。
その証拠は仮説ではなく、過去5ヶ月間の記録だ。
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2026/08/post-2285fa.html
<転載開始>
2026年8月10日
ラリー・C・ジョンソン
SONAR21

今週末のインタビューで、アメリカのスコット・ベッセント財務長官が、ホルムズ海峡は二年以内に「どうでもよくなる」と述べたのは、現在海峡を通過するエネルギーの半分以上が地下パイプラインに迂回されるためだ、というものだったが、それは絵空事だった。ベッセント長官は、湾岸アラブ諸国が石油パイプラインを急速に建設しても、イランがホルムズ海峡を地政学的な影響力として利用する能力が消えるわけではないのを理解していない。確かに資本は要衝を嫌うし、湾岸産油国は実際に要衝を迂回するパイプライン建設を競っている。サウジアラビアは東西石油パイプラインを拡張し、UAEはフジャイラ迂回路をより重視し、イラクは長らく休止していた陸上輸出回廊を再び活用し始めている。シェブロンは、イラクからシリア地中海に至るハディサ・バニヤス線を復活させることさえ検討している。
ベッセントの石油パイプライン構想は、イランの力を弱める巧妙な方法に思えるが、ペルシャ湾の本当の経済的重要性や、イランが今後何年も持ち続けるだろう影響力を彼は理解していない。ベッセントはホルムズ海峡を石油問題として捉え、パイプライン網(いかに野心的なものであれ)が石油問題を解決すると考えている。だがホルムズ海峡は世界で最も重要な石油の要衝というだけではない。そこは、パイプで輸送できない、他の場所で迅速に代替調達できない特殊な物資群にとって唯一の海上輸送路で、その供給途絶は既に食料、半導体、重工業など、様々な分野で目に見える経済的損害をもたらしている。原油の迂回路を建設し、海峡は「どうでもよい」と宣言することは、一つの物質の輸送量を全ての輸送量と混同しているに等しい。
その証拠は仮説ではなく、過去5ヶ月間の記録だ。
オイル・バイパスの計算は既に簡単な部分だが、それでも終わらない。
パイプラインが対象とする商品から見てゆこう。ここでも代替は不完全だ。通常、ホルムズ海峡を通過する原油、コンデンセート、石油製品は約2,000万バレル/日で、これは世界の石油消費量の約5分の1に相当する。既存のバイパス輸送能力は合計で約470万バレル/日だ。このギャップを埋めるには、一つの主要パイプラインではなく、現在または最近まで紛争が続いていた地域を横断する冗長なネットワーク全体を、数年かけて構築する必要がある。ベッセントの二年という見通しは、こうした状況を考えると楽観的で、最も好ましいシナリオだ。なぜなら、原油は実際パイプラインが輸送するように設計されているホルムズ海峡唯一の貨物だからだ。
湾岸地域で生産されるその他の物資は、パイプラインで輸送できる貨物ではないが、これらは世界経済にとって極めて重要なものだ。
LNG:ラアス・ラファーンから東京へのパイプラインは存在しない
世界の液化天然ガス貿易の約5分の1はホルムズ海峡を通過し、その大部分は世界第2位のLNG輸出国であるカタールからのものだ。イランの攻撃により、世界最大のLNG輸出施設、カタールのラアス・ラファーン複合施設が損傷し、カタール・エナジーが3月初旬に不可抗力を宣言した際、1日あたり約100億立方フィート、世界のLNG取引量の約20%に相当する供給が停止した。Kplerのタンカー・データによると、約2か月間、LNGを積んだタンカーが海峡を通過することはなかった。
影響は湾岸地域から遠く離れた地域にも急速に及んだ。世界銀行の天然ガス価格指数は僅か一ヶ月で24%も急上昇した。液化天然ガス(LNG)が欧州の限界価格を左右することが多いため、欧州のベンチマーク価格は2026年までに約25%上昇すると予測されている。カタールからの貨物の圧倒的大多数を受け入れているアジア地域は、スポット市場で契約済みの供給を代替しようと買い手が殺到したため、最も大きな打撃を受けた。
パイプラインでは解決できない問題がここにある。LNGはカタールから陸路で輸送できないのだ。液化ガスは定義上、海上輸送される製品だ。日本、韓国、インドへ海を越えてパイプラインで輸送できないからこそ、液化する必要があるのだ。そして、このギャップを埋めるのに十分な規模の生産者アメリカでさえ、それができない。アメリカで新たな液化ターミナルを建設するには何年もかかり、数十億ドルも費用がかかる。EIAは、アメリカの輸出量はカタールからの不足分をほんのわずかしか補えないと予測しており、実質的新規生産能力はせいぜい2026年後半まで少しずつしか増加しない。原油迂回経路は大阪のLNG購入者にとって何の役にも立たない。そもそも迂回経路など存在しない。
尿素とアンモニア:あらゆる農場に影響を及ぼす肥料ショック
湾岸地域は単なるエネルギー拠点ではない。世界有数の肥料生産地で、ホルムズ海峡は、それら肥料を必要とする農地に届ける重要な経路となっている。中東は世界の尿素輸出量の約4分の1を供給しており、海峡閉鎖により世界の海上肥料貿易の約3分の1が危機に瀕したという試算もある。イランはアンモニア生産を停止し、カタールはラアス・ラファーン原発事故後、尿素、アンモニア、硫黄の生産を停止した。
価格の反応は激しかった。尿素は4月に1トン当たり850ドルを超え、2月から約80%上昇し、2022年以来の高値をつけた。世界の尿素価格はピーク時にはほぼ倍増した。アンモニアは数週間で40%近く急騰し、世界のアンモニア貿易の約24%は通常ホルムズ海峡を通過する。フィッチは2026年のアンモニアと尿素の予測を約4分の1引き上げ、窒素肥料がどの製品カテゴリーより大きな打撃を受けると警告した。
価格チャートとは異なり、下流への影響は累積する。アンモニアの約80%を湾岸諸国から調達しているインドでは、アンモニアを原料とする国内生産が停滞し、工業用ガスの配給制により、毎月数十万トンの尿素生産量が失われた。アメリカ農家は、肥料価格が高騰し、ディーゼル燃料が1ガロン5ドルを超える最悪のタイミングで春の種まきを迎え、衝撃を受けた。天然ガスは窒素肥料価格の約80%を占めるため、LNGの供給途絶と肥料の供給途絶は互いに影響し合い、原油パイプラインでは及ばない二次的影響を及ぼす。肥料が不足し高騰すると、最終的な代償は、湾岸諸国から原油を1バレルも購入したことのない国々の作物の収穫量と食料価格に反映される。
硫黄とDAP:リン酸連鎖の陰で静かに作用する要素
硫黄はめったにニュースの見出しにならないため、その混乱はまさに教訓になる。硫黄は湾岸諸国のガス処理の副産物で、リン酸肥料や無数の工業過程にとって不可欠な原料だ。カタールの硫黄生産が停止し、地域全体の供給が滞ったことで、年初から価格はほぼ倍増した。これはリン酸二アンモニウム(DAP)にも直接影響を与えた。DAP価格は、供給逼迫と硫黄価格の上昇に加え、中国が輸出を制限したことで、4月に10%以上上昇した。中国は硫黄輸入の約半分を中東に依存している。
注目すべきパターンはここにある。ホルムズ海峡の混乱は、単一のクリーンな供給不足を引き起こすのではなく、相互に関連する化学反応を通じて連鎖的影響を生み出す。ガスからアンモニアへ、アンモニアと硫黄から最終肥料へ、そして物理的供給不足に加えて輸出禁止措置が重なる。原油輸送パイプラインは、これら連鎖のいずれにも関与しない。
ヘリウム:代替品も代替策もない商品
ヘリウムはベッセントの盲点を最も如実に示す例だ。ヘリウムの場合、パイプラインの議論は単に不十分なだけでなく、そもそも適用できないためだ。
カタールは世界のヘリウム供給量の約3分の1を占めており、ラアス・ラファーンにあるLNG処理施設で副産物として抽出されている。3月の攻撃と海峡封鎖により、世界のヘリウム生産量の約30%が停止し、被害状況の評価では、一部インフラの完全復旧には、数週間ではなく数年かかる可能性が示唆されている。アメリカ販売業者が不可抗力を発動し、配給制を開始し、医療機関を優先し、追加料金を上乗せしたためスポット価格は急騰した。
ヘリウムは合成できない。有限で再生不可能なガスで、半導体製造、高度なチップ・パッケージング、MRI装置や、AI主導のデータセンター需要が急増している今、あらゆる大容量ハードドライブの密閉された内部など、重要な用途で代替品はない。シーゲイトとウェスタンデジタルは年間供給量と20~30%の値上げを報告し、韓国半導体メーカーは在庫が約6か月分しかないと報じられている。
カタール産ヘリウムは全て、船でホルムズ海峡を経由して国外へ送られる。パイプラインによる代替経路も、陸路も、迂回路も存在しない。世界第2位のヘリウム生産拠点からヘリウムを運び出す唯一の手段は、幅わずか33キロのこの海峡だけだ。たとえ明日、粗雑なパイプライン網が完成したとしても、台湾の半導体工場にヘリウムを1リットルたりとも運ぶことはできない。
枠組みが重要な理由
だからといって、迂回パイプラインが悪い考えだというわけではない。世界が単一の原油輸送拠点に依存する度合いを減らすのは賢明で、市場主導の冗長性こそ、まさに望ましいものだ。ベッセントが指摘する通り、資本はリスクを回避するために迂回するもので、イランが海峡を兵器化することで自らの戦略的孤立を加速させているのは事実だ。
だが「ホルムズ海峡はどうでも良くなる」という主張は甚だしく誤解を招く。この水路の本当の戦略的重要性は、液化天然ガス(LNG)、尿素、アンモニア、硫黄、ヘリウムといった、物理的に海上輸送され、湾岸の少数施設に集中し、迅速な再調達が不可能な一連の商品の共通輸出拠点としての役割にある。これらの商品は過去5ヶ月間、現実世界でそれぞれ混乱に見舞われ、そのたびに価格ショックや下流への損害が発生しており、原油パイプラインでは防げないのだ。
現在の市場状況がこの点を裏付けている。8月初旬時点で、ブレント原油は80ドル台半ばで取り引きされ、ホルムズ海峡を巡るニュースを受けて上昇していた。数ヶ月にわたる断続的交渉にもかかわらず、戦争リスク・プレミアムは縮小する気配を見せておらず、その過程でアメリカの戦略石油備蓄は1980年代以来の最低水準にまで減少した。このプレミアムは、海峡を通過する原油だけでなく、海峡が運ぶあらゆる物資を業者が価格に反映させていることを示している。LNGタンカー、アンモニア貨物、硫黄輸送、ヘリウム・ボンベ(いずれもパイプラインでは送れない)の輸送計画が策定されるまでは、ホルムズ海峡は決して、どうでも良い存在にはならない。
パイプラインは原油を輸送できる。だがホルムズ海峡が運ぶ他の物資を輸送することはできない。そして、まさにそのその他の物資こそが、今静かに世界経済の様相を一変させているのだ。
貴重なご支援で、記事をお読みいただいたり、コメントをお寄せいただいたりすることに心より感謝申し上げます。購読料は一切いただいておりませんし、広告も掲載しておりません。私が取り上げている主題に関心のある方全員に、記事をお読み頂きたいと考えております。ご寄付をご希望の場合、こちらのリンクをご覧ください。
記事原文のurl:https://sonar21.com/scott-bessents-delusional-oil-pipe-dream-to-defeat-iran/
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植草一秀の『知られざる真実』
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パイプラインが対象とする商品から見てゆこう。ここでも代替は不完全だ。通常、ホルムズ海峡を通過する原油、コンデンセート、石油製品は約2,000万バレル/日で、これは世界の石油消費量の約5分の1に相当する。既存のバイパス輸送能力は合計で約470万バレル/日だ。このギャップを埋めるには、一つの主要パイプラインではなく、現在または最近まで紛争が続いていた地域を横断する冗長なネットワーク全体を、数年かけて構築する必要がある。ベッセントの二年という見通しは、こうした状況を考えると楽観的で、最も好ましいシナリオだ。なぜなら、原油は実際パイプラインが輸送するように設計されているホルムズ海峡唯一の貨物だからだ。
湾岸地域で生産されるその他の物資は、パイプラインで輸送できる貨物ではないが、これらは世界経済にとって極めて重要なものだ。
LNG:ラアス・ラファーンから東京へのパイプラインは存在しない
世界の液化天然ガス貿易の約5分の1はホルムズ海峡を通過し、その大部分は世界第2位のLNG輸出国であるカタールからのものだ。イランの攻撃により、世界最大のLNG輸出施設、カタールのラアス・ラファーン複合施設が損傷し、カタール・エナジーが3月初旬に不可抗力を宣言した際、1日あたり約100億立方フィート、世界のLNG取引量の約20%に相当する供給が停止した。Kplerのタンカー・データによると、約2か月間、LNGを積んだタンカーが海峡を通過することはなかった。
影響は湾岸地域から遠く離れた地域にも急速に及んだ。世界銀行の天然ガス価格指数は僅か一ヶ月で24%も急上昇した。液化天然ガス(LNG)が欧州の限界価格を左右することが多いため、欧州のベンチマーク価格は2026年までに約25%上昇すると予測されている。カタールからの貨物の圧倒的大多数を受け入れているアジア地域は、スポット市場で契約済みの供給を代替しようと買い手が殺到したため、最も大きな打撃を受けた。
パイプラインでは解決できない問題がここにある。LNGはカタールから陸路で輸送できないのだ。液化ガスは定義上、海上輸送される製品だ。日本、韓国、インドへ海を越えてパイプラインで輸送できないからこそ、液化する必要があるのだ。そして、このギャップを埋めるのに十分な規模の生産者アメリカでさえ、それができない。アメリカで新たな液化ターミナルを建設するには何年もかかり、数十億ドルも費用がかかる。EIAは、アメリカの輸出量はカタールからの不足分をほんのわずかしか補えないと予測しており、実質的新規生産能力はせいぜい2026年後半まで少しずつしか増加しない。原油迂回経路は大阪のLNG購入者にとって何の役にも立たない。そもそも迂回経路など存在しない。
尿素とアンモニア:あらゆる農場に影響を及ぼす肥料ショック
湾岸地域は単なるエネルギー拠点ではない。世界有数の肥料生産地で、ホルムズ海峡は、それら肥料を必要とする農地に届ける重要な経路となっている。中東は世界の尿素輸出量の約4分の1を供給しており、海峡閉鎖により世界の海上肥料貿易の約3分の1が危機に瀕したという試算もある。イランはアンモニア生産を停止し、カタールはラアス・ラファーン原発事故後、尿素、アンモニア、硫黄の生産を停止した。
価格の反応は激しかった。尿素は4月に1トン当たり850ドルを超え、2月から約80%上昇し、2022年以来の高値をつけた。世界の尿素価格はピーク時にはほぼ倍増した。アンモニアは数週間で40%近く急騰し、世界のアンモニア貿易の約24%は通常ホルムズ海峡を通過する。フィッチは2026年のアンモニアと尿素の予測を約4分の1引き上げ、窒素肥料がどの製品カテゴリーより大きな打撃を受けると警告した。
価格チャートとは異なり、下流への影響は累積する。アンモニアの約80%を湾岸諸国から調達しているインドでは、アンモニアを原料とする国内生産が停滞し、工業用ガスの配給制により、毎月数十万トンの尿素生産量が失われた。アメリカ農家は、肥料価格が高騰し、ディーゼル燃料が1ガロン5ドルを超える最悪のタイミングで春の種まきを迎え、衝撃を受けた。天然ガスは窒素肥料価格の約80%を占めるため、LNGの供給途絶と肥料の供給途絶は互いに影響し合い、原油パイプラインでは及ばない二次的影響を及ぼす。肥料が不足し高騰すると、最終的な代償は、湾岸諸国から原油を1バレルも購入したことのない国々の作物の収穫量と食料価格に反映される。
硫黄とDAP:リン酸連鎖の陰で静かに作用する要素
硫黄はめったにニュースの見出しにならないため、その混乱はまさに教訓になる。硫黄は湾岸諸国のガス処理の副産物で、リン酸肥料や無数の工業過程にとって不可欠な原料だ。カタールの硫黄生産が停止し、地域全体の供給が滞ったことで、年初から価格はほぼ倍増した。これはリン酸二アンモニウム(DAP)にも直接影響を与えた。DAP価格は、供給逼迫と硫黄価格の上昇に加え、中国が輸出を制限したことで、4月に10%以上上昇した。中国は硫黄輸入の約半分を中東に依存している。
注目すべきパターンはここにある。ホルムズ海峡の混乱は、単一のクリーンな供給不足を引き起こすのではなく、相互に関連する化学反応を通じて連鎖的影響を生み出す。ガスからアンモニアへ、アンモニアと硫黄から最終肥料へ、そして物理的供給不足に加えて輸出禁止措置が重なる。原油輸送パイプラインは、これら連鎖のいずれにも関与しない。
ヘリウム:代替品も代替策もない商品
ヘリウムはベッセントの盲点を最も如実に示す例だ。ヘリウムの場合、パイプラインの議論は単に不十分なだけでなく、そもそも適用できないためだ。
カタールは世界のヘリウム供給量の約3分の1を占めており、ラアス・ラファーンにあるLNG処理施設で副産物として抽出されている。3月の攻撃と海峡封鎖により、世界のヘリウム生産量の約30%が停止し、被害状況の評価では、一部インフラの完全復旧には、数週間ではなく数年かかる可能性が示唆されている。アメリカ販売業者が不可抗力を発動し、配給制を開始し、医療機関を優先し、追加料金を上乗せしたためスポット価格は急騰した。
ヘリウムは合成できない。有限で再生不可能なガスで、半導体製造、高度なチップ・パッケージング、MRI装置や、AI主導のデータセンター需要が急増している今、あらゆる大容量ハードドライブの密閉された内部など、重要な用途で代替品はない。シーゲイトとウェスタンデジタルは年間供給量と20~30%の値上げを報告し、韓国半導体メーカーは在庫が約6か月分しかないと報じられている。
カタール産ヘリウムは全て、船でホルムズ海峡を経由して国外へ送られる。パイプラインによる代替経路も、陸路も、迂回路も存在しない。世界第2位のヘリウム生産拠点からヘリウムを運び出す唯一の手段は、幅わずか33キロのこの海峡だけだ。たとえ明日、粗雑なパイプライン網が完成したとしても、台湾の半導体工場にヘリウムを1リットルたりとも運ぶことはできない。
枠組みが重要な理由
だからといって、迂回パイプラインが悪い考えだというわけではない。世界が単一の原油輸送拠点に依存する度合いを減らすのは賢明で、市場主導の冗長性こそ、まさに望ましいものだ。ベッセントが指摘する通り、資本はリスクを回避するために迂回するもので、イランが海峡を兵器化することで自らの戦略的孤立を加速させているのは事実だ。
だが「ホルムズ海峡はどうでも良くなる」という主張は甚だしく誤解を招く。この水路の本当の戦略的重要性は、液化天然ガス(LNG)、尿素、アンモニア、硫黄、ヘリウムといった、物理的に海上輸送され、湾岸の少数施設に集中し、迅速な再調達が不可能な一連の商品の共通輸出拠点としての役割にある。これらの商品は過去5ヶ月間、現実世界でそれぞれ混乱に見舞われ、そのたびに価格ショックや下流への損害が発生しており、原油パイプラインでは防げないのだ。
現在の市場状況がこの点を裏付けている。8月初旬時点で、ブレント原油は80ドル台半ばで取り引きされ、ホルムズ海峡を巡るニュースを受けて上昇していた。数ヶ月にわたる断続的交渉にもかかわらず、戦争リスク・プレミアムは縮小する気配を見せておらず、その過程でアメリカの戦略石油備蓄は1980年代以来の最低水準にまで減少した。このプレミアムは、海峡を通過する原油だけでなく、海峡が運ぶあらゆる物資を業者が価格に反映させていることを示している。LNGタンカー、アンモニア貨物、硫黄輸送、ヘリウム・ボンベ(いずれもパイプラインでは送れない)の輸送計画が策定されるまでは、ホルムズ海峡は決して、どうでも良い存在にはならない。
パイプラインは原油を輸送できる。だがホルムズ海峡が運ぶ他の物資を輸送することはできない。そして、まさにそのその他の物資こそが、今静かに世界経済の様相を一変させているのだ。
貴重なご支援で、記事をお読みいただいたり、コメントをお寄せいただいたりすることに心より感謝申し上げます。購読料は一切いただいておりませんし、広告も掲載しておりません。私が取り上げている主題に関心のある方全員に、記事をお読み頂きたいと考えております。ご寄付をご希望の場合、こちらのリンクをご覧ください。
記事原文のurl:https://sonar21.com/scott-bessents-delusional-oil-pipe-dream-to-defeat-iran/
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植草一秀の『知られざる真実』
高市戦争推進内閣を潰そう今朝の孫崎享氏メルマガ題名
「北方領土は歴史的にも国際法上も我が国固有の領土だ」との高市首相発言が如何に間違っているか、その解説:ポツダム宣言、降伏文書、サンフランシスコ平和条約、1945年8月スターリン・ルーズベルトの交信等の提示
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