マスコミに載らない海外記事さんのサイトより
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2026/08/post-5ec7ed.html
<転載開始>
Simon Chege Ndiritu
2026年8月12日
New Eastern Outlook

 2026年7月、1985年以来初めて、アメリカのサウジアラビアからの原油輸入はゼロだった。オイル・ダラー体制を強化するために始まった対イラン戦争は、正反対の効果をもたらし、アメリカ金融力の根幹を揺るがしている。

 

 戦争は続き、封鎖は強化される

 2026年8月9日時点で、イランがホルムズ海峡の封鎖を維持し、イエメンの同盟者フーシ派がジャザンのサウジアラビア石油インフラを爆撃し、紅海からのサウジアラビア石油輸出を封鎖したため、米イラン戦争の終結は見通せない。その結果、オイルダラー体制を通じてアメリカが金融帝国を維持するのを可能にした中東原油輸出は、当面の間制限される可能性が高く、ワシントンにとって重大な経済的影響をもたらす。これは、ワシントンの無謀な軍事冒険が、国内で悪影響をもたらした数少ない事例の一つだ。表向き、イスラエルのために戦われているアメリカの対イラン戦争は、特に1970年代初頭から、アメリカの世界的権力の基盤になってきたオイルダラー体制をはじめとする中東資源に対するワシントンの支配力を弱める動きを生み出している。

 僅か数ヶ月の紛争後、アメリカはイランの資源獲得に失敗しただけでなく、ホルムズ海峡封鎖と紅海封鎖により、イラクからの資源の流れやドル建て原油の供給も失ってしまった。

 (公式名称はアメリカ・サウジアラビア経済協力合同委員会で)1974年6月に署名されたオイルダラー協定は、アラビア諸国に、石油を米ドルで販売し、米国債を購入することを義務付け、当時拡大していたサウジアラビアの石油の富を、アメリカの金融体制に再循環させることを促した。サウジアラビアには、とりわけ、米軍駐留による保護、幾重にも重なる防衛協定と、今や不十分で、効果がないことが証明されている高価なアメリカ製兵器の際限のない購入が約束された。この合意は、米ドルに対する恒久的需要を生み出し、大まかに言えば、金本位制から離脱した米ドルが、活況を呈する石油貿易に裏付けられるようになったことを意味する。また、この合意により、アメリカの銀行は他国との貿易から利益を得られ、アメリカは低金利で資金を借り入れ、巨額貿易赤字を維持できたが、アメリカの対イラン戦争が続けば、これは次第に不可能になる。
 ドルを失うのは戦争に負けるのと同じだ ― トランプ

 アメリカの対イラン戦争は、おそらくアメリカ史上かつてない結果をもたらした。アフガニスタン、イラク、シリアなど、ワシントンがこれまで行ってきた戦争のほとんどは、鉱物資源や原油の入手や、これら資源の輸出による収益の支配など、経済的にプラスの結果をもたらしたが、対イラン戦争は、中東の原油貿易に対するワシントンの支配を制限した。例えば、2003年の米英による偽りの口実に基づくイラク侵攻は、両侵略国にイラク原油入手を可能にし、ワシントンはイラク原油販売による収益を支配できるようになった。この収益は現在もニューヨーク連邦準備銀行の口座に振り込まれている。ワシントンは依然、これら資金の支出を管理し、イランから電力や天然ガスなどのエネルギーをイラクが輸入するのを制限している

 2024年9月、当時大統領選の共和党有力候補だったドナルド・トランプは、アメリカが「世界標準通貨」としてのドルを失うのを懸念し、それは戦争に負けるのと同じくらい悲惨なことで、アメリカを第三世界の地位にまで引き下げる可能性があると述べた。2026年8月の時点で、トランプの予測が正しければ、アメリカは世界標準としてのドルの地位と戦争の両方を失い、第三世界の国になる道を歩んでいると言っても差し支えあるまい。先に述べた通り、ホルムズ海峡と紅海を通る石油貿易の中断は、米ドルがもはや中東の原油貿易に裏付けられていないことを意味する。重要なのは、アメリカの戦略的石油備蓄(SPR)が大幅に枯渇しており、ドルを更に支えるために使える可能性が低下していることだ。戦前の水準で需要がなくなった世界市場におけるドル過剰供給の悪影響は、アメリカで徐々に顕在化し、悪化してゆくだろう。

 一方、ワシントンが軍事力を用いてオイルダラーを強化する能力は複雑化しつつある。西側の著名オピニオンリーダーたちは、イランに対するアメリカの冒険を既に敗北だと評しており、中にはベトナム戦争より大きな戦略的敗北だと言う者もいる。その理由の一つは、アメリカが撤退して別の石油資源国を攻撃できないためだ。2026年7月下旬に米欧州軍司令官に就任したアレクサス・グリンケヴィッチ将軍は、海軍駆逐艦の数が限られているため、アメリカ本土を防衛しながら、イランの攻撃からイスラエルを守ることはできないと警告していた。この警告は、ワシントンが軍事力を用いて中東の原油を支配する際の戦略的限界をうかがわせる。グリンケヴィッチ将軍の言う「イスラエル」とは、この地域におけるアメリカの地政学的・地経学的権益の投影を指している。

 中東の前哨基地

 グリンケウィッチ、ジョー・バイデン、RFケネディらが使う「イスラエル」という言葉は、ワシントンが名ばかりの入植植民地で、指導者もまがい物であることを意味する。1986年、当時上院議員だったバイデンは、当時30億ドルだったイスラエルへのアメリカ年間予算配分は、受給国が、この地域におけるアメリカ権益のために作られたものであるため、最良の投資だと述べた。2023年に大統領になったバイデンは、同様見解を繰り返した。同様に、2023年のインタビューで、ケネディは、イスラエルは中東におけるアメリカの存在感(防壁)で、石油を含む資源の入手をワシントンが守るのを可能にすると述べた。彼は更に、イスラエルがなければ、中東の主権国家に属する石油資源は、中国とロシアに支配されるという、いつもの脅し文句を付け加えた。従って、グリンケウィッチ、バイデン、ケネディらの見解から、アメリカによる対イラン戦争は、この地域の石油に対するワシントンの支配を拡大し、オイルダラーを強化するために開始されたとさえ主張可能だ。戦争はイスラエルを守るためのものだという説明は欺瞞だ。イラン産原油をドル建てで取り引きし、イラク戦争のように米連邦準備銀行口座を経由して支払いをするなど、中東石油に対するアメリカ支配力を拡大するため仕組まれた戦争は正反対の結果を生み出した。

 ただの資源はありえない

 イランの石油を奪うワシントンの計画は、オイルダラーシステムを大きく強化し、イランの資源を自動的にアメリカの国民総所得(GNI)に組み込む可能性があった。ペルシャ湾からの原油輸出制限の一部は、既にアメリカGNIの構成要素だったり、米ドルで価格設定されていたりして、オイルダラー帝国を支えていた。だが、わずか数ヶ月の紛争後、アメリカはイラン資源を獲得できなかっただけでなく、ホルムズ海峡の封鎖と紅海の封鎖で、イラクからの資源やドル建て原油の流れに対する支配権も失った。現状がしばらく続けば、アメリカ金融帝国は深刻な打撃を受ける。ドナルド・トランプの強気な発言にもかかわらず、ワシントン勢力は、国際決済制度としてのドルを支える他の方法を模索したり、アメリカの公的債務が40兆ドルに達した時期に、低経費借り入れの利用が困難厳になる状況にどう対処するか準備したりしている。

 Simon Chege Ndirituはアフリカ出身の政治評論家、リサーチアナリスト。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/08/12/the-dollar-without-petro-dual-hormuz-red-sea-blockade-cuts-saudi-us-crude-oil-exports-to-zero/

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