https://indeep.jp/impossibility-of-making-up-the-shortfall-with-venezuelan-crude-oil/
<転載開始>
ベネズエラ産の原油をアメリカの石油備蓄に加えることが理論的に不可能な理由
今日(8月31日)以下のような報道がありました。
米、ベネズエラ産石油で戦略備蓄補充へ=トランプ氏
ロイター 2026/08/31
トランプ米大統領は30日、ベネズエラとの間で最近締結された合意に基づく石油を、戦略石油備蓄の補充に充てると述べた。
同備蓄は世界的な供給混乱や燃料価格の上昇に対応するため大幅に取り崩されており、21日時点で44年ぶりの低水準近くとなっている。
トランプ氏は交流サイト(SNS)への投稿で、補充プロセスが間もなく始まると述べ、ベネズエラ産石油を「ベネズエラから米国国民への贈り物」と表現した。
この短い報道だけ読みますと「なるほど、そういう手があるか」と思う場合もあるかもしれません。
そして、上の報道にありますように、現在のアメリカの石油備蓄は「 44年ぶりの低水準」となっています。
2020年8月から2026年8月までのアメリカの石油備蓄(SPR)在庫の推移
Bloomberg,@chigrl
これに対して、
「アメリカは、ベネズエラ産石油で戦略備蓄補充をする」
というようにトランプ氏は述べているのですが、
「それは無理」
であることは明白なのです。
上のロイターの記事を書いた方もそれはわかっているはずです。
まず、アメリカ産の原油とベネズエラ産の原油では、原油の性質(品質規格)がまったく異なるので、「アメリカのタンクに入れることができない」のですね。
米Yahooファイナンスに「トランプ大統領はベネズエラ産原油が米国の戦略備蓄を補充すると述べているが、現実にはそれは当てにならない」という記事が出ていましたが、簡単に書きますと、以下の理由で、ベネズエラの原油をアメリカでそのまま備蓄に回すことは不可能なのです。
アメリカの戦略石油備蓄には厳しい品質規格が設けられており、ベネズエラ産原油はこれを満たしません。
ベネズエラの原油をSPRに使えない理由
出典:alterna.co.jp など
・粘度と比重(超重質油):アメリカの備蓄タンクが求めるのは、サラサラして扱いやすい「軽質〜中質原油」であるのに対して、ベネズエラ産の大部分の原油は糖蜜のようにドロドロとした「超重質原油(ヘビーな原油)」。これをそのまま地下の備蓄基地に入れると、回収や移送が非常に困難になる。
不純物の多さ(サワー原油):ベネズエラ産は硫黄分や重金属の含有量が非常に高い「サワー原油」と呼ばれるもので、不純物が多い原油を長期間備蓄すると、タンクや配管設備を腐食させるリスクがある(むしろタンクにダメージを与える)。
ベネズエラの原油は以下のようなネバネバとした(チョコレートのような)原油です。
ベネズエラの原油
結局、ベネズエラ産の原油をアメリカの備蓄に使うためには、「どこか他の原油と交換して使う」しかないわけで、たとえば、アメリカのメキシコ湾岸の製油所に直接売却して、同じ量をアメリカの備蓄タンクに納入してもらう、というような方法が主流となりそうな感じです。
しかし、こんなことより、もっと大きな問題があって、
「ベネズエラ産の原油の産出量では、アメリカの備蓄タンクを満たすことは短期間では不可能」
なんです。
ベネズエラ産の原油でアメリカの備蓄を元に戻すには10年かかる
ベネズエラの現在の原油生産量は、日量約 100万〜 125万バレル程度とされていて、そのうち、輸出に回せるのは、50万から 80万バレル程度。
そして、アメリカで不足している原油の量は「 4.2億バレル」です(元の満杯状態の 7億バレルに戻すためには)。
ここから先は、ちょっと計算ができなかったので、AI に計算してもらいましたが、簡単にいうと「満杯にするまで、5年から 10年かかる」ということになります。
AI の回答
仮にベネズエラから輸出される日量約 50万バレルをすべて国内の消費に回さず、すべて米国の備蓄タンクに注ぎ込み続けたと仮定します。
・4.2億バレル ÷ 50万バレル/日 = 840日(約2年3ヶ月)
実際には、アメリカ国内の製油所がガソリンやディーゼルを作るためにベネズエラ産原油を消費しているため、そのすべてを備蓄に回すことは不可能です。
そのため、現状のペースのままでは、備蓄を回復させるまでに5年〜10年以上かかる計算になります。
10年といったら、もう今の形でのアメリカが残っているのかどうかという頃ですが、その頃になって、初めて備蓄が元に戻るのです。
ベネズエラは、もともと大産油国ですが、管理上の問題、アメリカによる経済制裁、そして極度の資金不足などにより油田の設備やパイプラインが完全に破壊・老朽化しています。
そして、これをかつてのような高い生産能力に戻すには、日本円で数十兆円規模の投資と、数年から 10年単位の歳月が必要で、どちらにしても、それを達成するのは難しい話であり、結局、
「短期間でアメリカの石油備蓄在庫を復活させるのは無理」
だということは、わりとはっきりしているのです。
いつものトランプ氏の口から出てくるアチャラカ系の話のひとつだとはいえ、結局、現状では、アメリカの石油備蓄が減り続けることを(少なくとも短期間で)止めることは、ほぼ不可能な状況になっています。
燃料の問題はどこの国でもシビアで、農業や輸送に非常に重要なディーゼル燃料は、
・アメリカでは在庫が過去最低に(翻訳記事)
・ロシアでも極端なガソリンとディーゼル不足(翻訳記事)
・イランでも燃料不足が深刻化(翻訳記事)
というようなことになっていて、これらの国はすべて産油国であるにも関わらず、燃料が枯渇しつつある。
産油国がこうであるなら、産油国ではない国が次第に影響を受けないとは考えにくいです。こういう状況が他国に伝わっていかないとは考えられず、9月からは、燃料の問題(価格や不足)はさらに拡大すると見られます。
なお、ロシアでもイランでも「原油がない」のではなく、
「ガソリンやディーゼルなどに精製する能力が限界に達している」
ようです。
米国カンバセーション誌は次のように書いています。
…同時に、原油をディーゼル燃料やガソリンなどの製品に精製する施設である製油能力も極めて深刻な打撃を受けている。
ゴールドマン・サックスの推計によると、爆撃を受けたロシアの製油所や、ホルムズ海峡や黒海から出荷できない製品を含め、世界の製油不足量は 1日あたり 650万バレルに達する。
今後、エネルギーインフラの破壊が進むにつれ、より深刻な危機を回避することはますます困難になるだろう。しかも、冬はそう遠くない。
原油価格のことがよく言われますが、「一般の社会で原油を使うということはない」というのが現実で、すべて、そこから精製された石油製品としての用途です。
その石油製品であるガソリンやディーゼルが主要国から不足しつつあるというのが現状で、今後、こらの価格の上昇は避けられません。
また、日本の物流は 9割以上がディーゼル車であるトラック輸送ですが、当然、これは「さまざまな商品価格」にも反映してくるわけで、かなり厳しい近い未来が予想されます。
また、これは先ほどのアメリカの原油備蓄にベネズエラ産の原油が合わないというのと、また逆のような話なんですけれど、
「アメリカ産のサラサラした(超軽質)原油は、ディーゼルの精製に向いていない」
のです。
nippon.com の記事より
精製工程では、原油は常圧蒸留装置に供給され、沸点に応じて様々な製品に分離される。原油が加熱されると、重油などの最も重い留分は、温度が最も高い塔の底部で凝縮する。
塔の上部では温度が低くなるため、灯油、軽油、バンカーA油などの中程度の留分が凝縮する。蒸気が最も冷たい最上部では、液化石油ガスやガソリンなどの最も軽い製品が、ほぼ一定の比率で回収される。
中東産の中質原油は、これらの留分を最もバランスよく生成するため、日本は何十年にもわたり、その特性を活かすべく精製技術を改良してきた。
日本のように燃料を多く必要としている国家には、中東産の原油が最適なんです。
今、日本はアメリカから原油の輸入などをしていますけれど、このままだと、日本の燃料のバランスが崩れる可能性があります。
中東産の原油の供給の今後はわかりません。
最近、ホルムズ海峡を通過するタンカー数が「劇的に改善した」というような報道を見たことがありますが、データを見ると以前(イラン戦争以後)と同じか、さらに少なくなっています。
今日の米ロイターの報道の記事のタイトルは「ホルムズ海峡通航、週末1日5隻に減少」でした。海峡は閉鎖されたままです。
ホルムズ海峡を通過した船舶数の推移(週平均)
Steve Rattner
イランとアメリカの間の戦争が今後激化するかどうかはわかりません。しかし、激化してもしなくとも、この石油製品の高騰は続いていくと見られますし、それはあらゆる物価を押し上げ、つまり、さらなるインフレということになっていくのだと思われます。
今の日本の雰囲気は平和な感じですけれど、平穏な状態がいつまで続くのかは不透明ではあります。
何だか、さりげないロイターの記事に反応して書いてしまいましたけれど、あらゆる状況は決して良い方向には向かってはいないです。
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<転載終了>



特に原油問題は理論と実務を知った者は、1970年代のバレル1-2ドル時代のオイルショックは日本は騒いだが米国は精油問題とぺトロドルによるフィアットドルを持ち上げる本質を理解しそのドルは消滅寸前だ。
ショック以降原油価格はたちまち30ドルー50ドルー100ドルを超え、無限の埋蔵量のオイルシェルの掘削採算の可能性を見出し、更に採算とリスクにより原発は実現されない状況を日本政府に欺瞞とミスリードをさせ国家破滅を誘導させ力量は大だ。
今回は前者の問題で、精油などの技術は千代田化工等にあるから、救われる神もあれば(魔女ヒラリーはトランプに代替され、高市と小池は救われた)、全体の石油価格は下落しDSに一撃を加える移行期になる。益々原発は採算に乗らず老炉は生かされ爆発寸前かな?自然エネルギーは石油と競合出来る。
genkimaru1
が
しました