荒川央 (あらかわ ひろし)さんのサイトより
https://note.com/hiroshi_arakawa/n/nd038de345080
<転載開始>

多くの人にとってコロナ騒動、そしてコロナワクチンとはもはや過去のものであり、むしろ忘れてしまいたいものですらあるかもしれません。そういった中、改めてmRNAワクチンがどういうものかについて積極的に調べたりなどする人は少ないでしょう。事実上、製薬メーカーやmRNA研究者にとってもコロナワクチンの市場価値自体はすでに言わば「オワコン」です。今や彼らのターゲットは、他の感染症に対するmRNAワクチンや、癌などの病気に対するmRNA製剤のマーケットです。



mRNAワクチンとmRNA製剤

さて、少し前にイーロン・マスクがX (旧Twitter) 上で、モデルナ社がプレスリリースした癌mRNA製剤についての投稿を引用しながら、期待感をあらわにした発言をした事が話題になりました。モデルナ社の株価もそれにつれて高騰しています。これは個別化ネオアンチゲン療法についてのものです。

「新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の流行中には明らかな誤用があったにも関わらず、mRNAは病気の治療において非常に大きな可能性を秘めている。人工mRNAは、病気の治療を本質的に「ソフトウェアの問題」として捉えるものである。」 - Elon Musk (イーロン・マスク) -

「5歳児にも分かるようにその仕組みを説明してくれ。 兆単位のmRNAを9回注射して、細胞にがんペプチドを発現させるように教え、免疫系がその後、腫瘍を殺す事を決め、修正されたあなたの細胞を殺さない事を願うんだ。 この戦略には根本的な欠陥がある。 もしそれが「疾患をソフトウェアの問題に変える」のならば、そのソフトウェアとは自己破壊ウイルスだ。」
- Kevin McKernan -

一般の人々へのコロナワクチンの大量接種が始まった2021年、CDCはワクチンの定義を変更しました。それまでは「特定の病気に対する immunity (免疫) を作る製剤」や「感染症予防を目的とするもの」をワクチンと呼んでいましたが、以後は「病気に対する immune response (免疫応答) を刺激する製剤」に対してもワクチンと呼ぶようになったのです。そのため、現在では治療用製剤や新しいプラットフォームまでもが広義のワクチンに含まれるようになりました。そういった流れの中で、今回の個別化ネオアンチゲン療法が「癌ワクチン」と呼ばれているのは、伝統的定義のワクチンとしてではなく、治療ワクチンという拡張用法に乗っかっているからです。しかしながらここでは「mRNAワクチン」ではなく「mRNA製剤」と呼ぶ事にします。

個別化ネオアンチゲンmRNA製剤とは何か

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図1 
https://irp.cdn-website.com/89dd0539/files/uploaded/P219_SMR+2025_Neoantigens+Poster+(2).pdf

Intismeran autogene (mRNA-4157/V940) とは、モデルナ社とメルク社が共同開発中であるmRNAベースの個別化ネオアンチゲン療法 (individualized neoantigen therapy, INT) であり (図1)、主に高リスクメラノーマ (皮膚がん) の術後補助療法として、Keytruda (pembrolizumab、抗PD-1抗体) との併用による第2相・第3相試験が行われています。それぞれのmRNA製剤は患者自身の腫瘍サンプルを用いて、患者の腫瘍に固有の変異「指紋」(mutational fingerprint) に基づいて作製されます。このように個別化ネオアンチゲン療法とは文字通り患者への個別化 (personalized) が大きな特徴となります。

ネオアンチゲン

ネオアンチゲン (neoantigen) とは、癌細胞特有の体細胞変異によって生じる新規のタンパク質の断片であり正常細胞には存在しません。これらの断片は免疫系には「非自己」として認識され、排除の対象となります。そしてDNA修復の異常は癌細胞の特徴でもあり、ミスマッチ修復欠陥や高腫瘍変異負荷の腫瘍ではネオアンチゲンを生じやすくなります。しかしながら、癌細胞は新たな変異によりネオアンチゲンの配列を変化させたり、また染色体異常によって癌細胞がネオアンチゲン発現を失う事もあります。これは腫瘍が免疫監視から逃れるメカニズムでもあります。

T細胞による抗原認識のしくみ

抗体やT細胞受容体が認識するのは、標的タンパクの中のごく一部 (エピトープ) だけです。けれども、抗体とT細胞の抗原認識の仕組みには大きな違いがあります。抗体はタンパクそのもの (エピトープを含む) に結合できますが、それに対しT細胞はタンパクの中から抗原ペプチドを正しく切り取り、専用のMHCに乗せなければ抗原エピトープに結合できません。MHC (major histocompatibility complex、主要組織適合遺伝子複合体) とはT細胞に抗原ペプチドを提示するタンパクですが、このタンパクは遺伝子変異の個人差が大きいのです。例えば臓器移植の適合者 (MHCのタイプが同一) を見つける事が難しい理由には、MHCにはたいへん多くの種類があり、それぞれのMHCに個人差 (個体差) があるためです。また、たとえ同じペプチドであっても人によってはMHCに乗らず、T細胞における認識のされ方も個人ごとに異なります。

例え話をします。Bさん (B細胞 = 抗体産生細胞) とTさん (T細胞) という人が居て、彼らは二人ともいちご (抗原エピトープ) が大好物です。本来同じ物が好きな二人ですが、Bさん (B細胞) の好みはより単純です。いちごそのものはもちろん、いちごパフェでも、いちごが乗ったショートケーキでも、いちご大福でも、あるいはいちごジャムでも、いちごさえ入っていればBさんはそれを喜んで食べます。(自然なタンパクが抗原エピトープを共有する事はまれなのですが、例えばFLAGタグを融合した合成タンパクに対する抗FLAG抗体の例があります。)

実際の抗体検査においてはB細胞すら必要ありません。抗原と結合する抗体が存在するかどうかを知るには、抗体を含む血液などを調べるだけで十分です。これは、Bさん (B細胞) 本人に直接尋ねなくとも、彼の注文履歴 (抗体) の状況からいちごが好きという嗜好が容易に推測されるようなものです。

一方、Tさん (T細胞) はこだわりの強い美食家です。彼はいちごそのもの (抗原ペプチド) だけを好み、さらにはそのいちごがぴったりと合う専用の皿 (MHC) に乗せられていなければ食指を動かさないのです。ところが皿にはたくさんの種類がある上、いちごに他のものが付属しているだけでも好みから外れてしまうため、いちごパフェにもいちごの乗ったショートケーキにもいちご大福にも彼は関心を向けません。そのため、状況からだけはTさんがいちご好きだとはなかなか推測してもらえないのです。T細胞の抗原特異性を特定する事は容易ではありません。

個別化mRNA製剤の製造プロセス

個別化mRNA製剤における製造プロセスとは、
1. 患者の腫瘍組織と正常組織 (血液など) から全エクソーム ※ とRNAの配列を決定する。
2. 患者の癌に特有の体細胞変異 (ネオアンチゲン) を同定する。
3. 患者のHLA型などを考慮した独自アルゴリズムで、免疫原性が高いと予測されるネオアンチゲンを最大34個まで選択し、ランク付けをする。
4. それらをコードする単一の合成mRNAを設計、製造する。
5. 脂質ナノ粒子 (LNP) に封入して製剤化する。

( ※「エクソーム (exome)」とは「エクソソーム (exosome)」と名前が似ていますが、別のものです。遺伝子の配列情報の中でmRNAを構成する部分がエクソンであり、エクソンの総体がエクソームです。) 

こうしたmRNA製剤とは、各患者ごとに1ロットずつ個別製造されるいわばオーダーメイド生物製剤です。投与方法は筋肉内注射 (1 mg、3週間ごと) で最大9回 (3週間ごと) の接種であり、併用されるKeytrudaは通常400 mgを6週間ごと (最大約1年) の投与になります。

では、患者の個別治療に使われるmRNA製剤は果たして「安全」で「効果的」なものなのでしょうか? 以下、理論的に予測できる問題点を考察していきます。

ネオアンチゲンの大部分は「自己配列」

個別化mRNA製剤の製造プロセスにおいては、患者の腫瘍組織 (生検) と正常細胞 (血液など) からシークエンシング (全エクソームとRNA) を行い、腫瘍特異的な変異を特定します。同時に、その患者固有のMHC (HLA: Human Leukocyte Antigen、ヒトのMHC) タイプをタイピングします (クラスI: HLA-A/B/C、クラスII: HLA-DR/DQ/DPなど)。そして、各候補ペプチドがその患者の特定のHLAにどの程度強く結合するかは機械学習ベースのアルゴリズムによって判断されます。各ネオエピトープは約75ヌクレオチド (約25アミノ酸) でコードされます。全体のオープンリーディングフレーム (ORF) は最大34個のネオエピトープを連結したものです。ネオアンチゲンはAIアルゴリズムによる「予測」によって選択されます。予測精度の検証は容易ではありません。また、実際に患者体内でそのペプチドがMHCに提示され、T細胞応答を誘導したかどうかについては、 投与後にELISpot法などで一部しか検証されていません。

ネオアンチゲンにおける変異の種類にはミスセンス変異 (SNV)、インフレーム indel、フレームシフト、遺伝子融合などがありますが、この中でもっとも多いのがミスセンス変異であり、変異するアミノ酸は1つだけです。ネオエピトープ (約25アミノ酸) のうち変異が1アミノ酸である場合、96% (24/25) は自己タンパクと同一です。このため、ネオアンチゲンが自己免疫疾患を誘発するリスクは否定できません。

細胞内プロセシングの不確実性 (ジャンクションエピトープなど)

mRNAは細胞内で翻訳され、その後に細胞内のプロテアソームで切断されます。ネオアンチゲン選択アルゴリズムはプロテアソーム切断予測、HLA結合親和性、発現量などを総合評価した結果、提示されやすい配列を優先したものです。治験ではネオアンチゲン特異的T細胞応答は投与後の一部の患者で確認されています。しかしネオアンチゲンは必ずしも期待どおりの境界で正確に切断されるとは限りません。 ネオアンチゲンペプチドの切断は自然な細胞内抗原処理経路に依存する設計のため、もとより完璧な制御などはできません。そもそもプロテアソーム切断自体が確率的なものであり、常に正確な境界位置が選ばれるわけでもありません。そのため、不完全な切断やジャンクション由来のペプチドが生じ得ます。その意図しない産物の可能性とは主に、ジャンクションエピトープ (隣接する2つのネオアンチゲンの境界をまたぐ新規のペプチド配列)、不完全なプロテアソーム切断産物、翻訳の異常 (フレームシフト、代替開始コドンの使用) などです。そしてこれらは未知の有害事象の原因となる可能性があります。実際に臨床製造品ごとに、すべての提示ペプチドが正しく切断されるかどうかを投与前に検証する事などは困難です。

MHCでの抗原提示とT細胞活性化のメカニズム上の問題

細胞障害性T細胞の活性化にはMHCクラスI上に提示された短いペプチド (通常8〜11アミノ酸) が、ヘルパーT細胞の活性化にはMHCクラスII上のペプチド (通常13〜25アミノ酸) が必要です。このようにクラスIとクラスIIに提示されるペプチドは、通常それぞれ異なる長さと配列を持ちますが、同一の長い抗原配列からどちらのペプチドも生成する事ができます。合成ネオアンチゲンはMHCへの提示されやすさをアルゴリズムで判断しますが、実際に各ペプチドがその患者のMHCクラスI・IIに提示され、適切なT細胞を誘導するかに関しては、投与前の検証は困難です。ペプチドがMHCに提示されなければT細胞活性化は期待できません。

自己免疫疾患を誘発する複数の理論的経路

T細胞受容体はペプチド上の全てのアミノ酸を認識するわけではありません。変異アミノ酸以外のアミノ酸のみ (=自己エピトープそのもの)を認識する細胞障害性T細胞やヘルパーT細胞が活性化する可能性もあります。T細胞受容体はペプチドの特定のアミノ酸残基 (の特に中央付近や接触面) を主に認識する事が多いのですが、変異アミノ酸以外の自己由来部分 (野生型配列) のみを強く認識するT細胞が存在した場合、ネオアンチゲンとして設計したペプチドが実質的に「自己エピトープそのもの」として機能し、自己反応性の細胞障害性T細胞やヘルパーT細胞を活性化させるリスクが生じます。ネガティブセレクション (胸腺での自己反応性T細胞の除去) とは決して完全なものではなく、末梢には低親和性〜中親和性の自己反応性T細胞が残存しています。そのため、これらの細胞がネオアンチゲンmRNA製剤によって増幅されたり、チェックポイント阻害薬 (Keytrudaなど) との併用により抑制が外されると、自己組織への攻撃に繋がる恐れがあります。

理論的な自己免疫疾患のリスクの原因としては、ネオアンチゲン内の自己配列の認識やエピトープスプレッディングなどが考えられます。ネオアンチゲンの変異以外の部分を認識するヘルパーT細胞が活性化した場合、そのヘルパーT細胞は自己抗原を認識するB細胞を活性化するかもしれません。個別化ネオアンチゲンmRNA製剤の抗原ペプチドは膜タンパクとは限りませんが、膠原病の原因となる物質が核タンパクである場合も多い事からも、細胞内で発現するタンパクでも自己抗体による自己免疫疾患の原因となる可能性があります。

T細胞の抗原特異性の解析は技術的にも難しいため、自己反応性T細胞による自己免疫疾患には未知のものも多く、「検出の穴」が生じます。T細胞による自己免疫疾患を網羅的に診断する事はできないのですが、そもそも診断方法が確立されている自己免疫疾患自体が限られています。治験で測定されているのは主に既知の免疫関連有害事象やCTCAE (Common Terminology Criteria for Adverse Events、有害事象共通用語規準) 基準に基づくものであり、「報告されていない」=「起きていない」というわけではありません。適切な診断法がなければ「見えない副作用」が存在する可能性を否定できず、「既知以外の自己免疫疾患」を見落す恐れもあるでしょう。

免疫チェックポイント阻害薬併用による増幅リスク

本来、チェックポイント阻害剤による癌免疫療法は、ネオアンチゲンを発現する腫瘍細胞を攻撃するためのものです。これは腫瘍が利用する抑制経路を選択的に遮断し、ある意味「免疫系の暴走」を誘発する手法とも言えます。けれども腫瘍細胞だけではなく、健康な細胞の中にも免疫チェックポイントを発現し、免疫系の攻撃を免れているものもあります。抗PD-1抗体はこのブレーキを外す事により腫瘍に対する攻撃を強めますが、同時に正常な自己寛容の一部も解除してしまうのです。

そして、個別化ネオアンチゲンmRNA製剤の有効性が主にKeytrudaとの併用で示されている点は、「mRNA製剤自体の力」ではなく「チェックポイント阻害による免疫暴走の増幅」に依存している可能性を示唆しています。実際に、個別化mRAN製剤単独投与のデータ自体が非常に限られており、その事が純粋なネオアンチゲンによる抵腫瘍作用への寄与を曖昧にします。

「一人一製剤」である事の原理的な問題

個別化ネオアンチゲンmRNA製剤は個人ごとに遺伝子配列が大きく異なる遺伝子製剤です。個人ごとの体細胞変異を標的にしているため、一卵性双生児ですら同一のmRNA製剤を適用できません。そのため、各々の個別化ネオアンチゲンmRNA製剤については比較対象となるコントロールを個別に設定する事自体が不可能です。免疫応答の強さ(どのネオアンチゲンが実際に効いたか)も患者ごとに大きく異なるため、平均的な結果が個々の患者に当てはまるとは限りません。ある患者の製剤は強く効く、別の患者の製剤はほとんど効かない、ある製剤は副作用が出やすいといった事態が理論的に起こり得る上、その患者に起きた有害事象が「その人のネオアンチゲン特有のもの」なのか「プラットフォーム全体の問題」なのかを切り分けるのが困難なのです。ここでの本質的な問題とは遺伝子配列の違いによる「個人別有害事象」です。つまり個別化ネオアンチゲンmRNA製剤とは、患者ごとに配列が大きく異なる遺伝子製剤であり、従来の医薬品のような再現性のある安全性評価が本質的に困難なものなのです。

オーダーメイドmRNA製剤は高コスト

オーダーメイドmRNA製剤は、ディープシーケンシング、ネオアンチゲン選択、GMPレベルの個別mRNA合成、LNP製剤化、品質検査などを含めると、非常にコストの高い治療法です。現時点で1人あたりの製造コストは少なくとも10万ドル (約1600万円) を超えると見積もられており、Keytruda (年間約10万ドル程度) との併用ではさらにコストがかかります。最終的な治療費は20万ドル (〜30万ドル) (約3200〜4800万円) 規模にもなると推定され、医療費負担も甚大になり、費用対効果の面においても大きな疑問が残ります。

治験でどこまで検証できるのか

個別化mRNA製剤の治療においては最大34個という多めの候補のネオアンチゲンを入れ、その中の複数個が実際に機能すれば十分であるという「セットでカバーする」方針が前提となっています。結果として、治験では予測の「当たったもの」と「外れたもの」が混在したセットを患者に投与しながら、最終的に集団レベルでの「再発が減ったかどうか」という臨床結果だけをもって良し悪しを判断しているのです。これは、中身の異なるたくさんの候補をまとめて「効いたように見えるかどうか」を測っているに過ぎません。

ネオアンチゲンペプチドが実際にどう切断されるか、本当に提示されるか、T細胞が反応するか、を製剤が投与される前に一つ一つ確認するのは容易ではありません。そして投与された結果、多くの場合、34個のペプチドの切断部位、MHC提示、CD4/CD8のどちらが反応したかなどの機序は最終的にも不明のままです。また、予測外れのペプチドが意図しない免疫応答 (自己反応性を含む) を起こしたとしても、その診断は難しいでしょう。

そもそも活動性自己免疫疾患や免疫抑制状態の患者が除外されているため、治験集団は「比較的に免疫系が整っている患者」に偏っています。従って、実際の臨床現場で使われた場合のリスクを過小評価している可能性があります。現実として有害事象や再発による離脱が発生していますが、個別化製剤であるがゆえに、「その患者固有のネオアンチゲンセットが原因で起きた離脱」なのか「プラットフォーム全体の問題」なのかを区別できません。離脱者を解析から除外・打ち切り処理する事で、有効性が過大評価されるバイアスが入りやすい構造になっているのです。

つまり、患者ごとに完全に異なるmRNA製剤を投与しながら「同じ治療法」として統計解析しているのです。製剤間のばらつきが大きいネオアンチゲンmRNA製剤では特にその問題が顕著です。効果の強い製剤と弱い製剤、毒性の高い製剤と低い製剤が平均化され、全体として「有望である」との結果ありきで結論づけられる懸念があります。

コロナワクチンからの教訓

コロナワクチンは歴史上初めて一般の人々に大量投与された遺伝子製剤であり、接種直後はもとより接種から時間をおいて、懸念されていた様々なリスクが具現化してきました。mRNAの発現期間は当初謳われていたよりもはるかに長引く場合があり、実際、接種から2年後においても接種者の体内からワクチン由来のスパイクタンパクの発現が確認されている症例も報告されています。

この製剤にはコロナワクチンと同様に、修飾mRNAを脂質ナノ粒子 (LNP) で封入する技術が用いられています。そのため共通して指摘され得る懸念は以下のようになります。

  1. mRNAの細胞内での発現が想定より長期化する可能性。

  2. 製造工程に由来するDNA鋳型が混入する可能性。

  3. 頻回投与 (ここでは最大9回) による抗原の累積的曝露と免疫系への負荷。

  4. LNP自体の生体内分布や炎症誘発性。

  5. 細胞へ導入されたmRNAが免疫系の攻撃の的を産生し、抗体やT細胞の攻撃の対象となる可能性。

これらの問題は排除しきれない不確実性として存在し続けています。

個別化mRNA製剤の理想とリスク

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図2

個別化ネオアンチゲンmRNA製剤の機序の理想とは、1) ペプチドが正確に切断され、2) 34種全てのペプチドがクラス I、II両方のMHC上に提示され、3) それらがヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞の両方を活性化し、4) 細胞障害性T細胞が腫瘍細胞を特異的に攻撃するというものです (図2)。しかしながら、AIのアルゴリズムによって予測されたペプチドがMHC上に提示されるとは限らず、その場合、T細胞活性化は期待できません。ネオアンチゲンペプチドのほとんど (最大96%) は自己タンパクと同一ですので、すなわち常に自己免疫疾患を誘発するリスクが表裏一体です。ペプチドの切断失敗は意図しないペプチドを生じさせ、それらが予期せぬ有害事象の原因となります。そして何よりも最大の問題とは、配列の異なる遺伝子製剤を各個人に投与する事です。これは人によって異なる有害事象を生む恐れがあり、検証や再現ができない「人体実験」となりかねないのです。

参考文献
1) Weber JS et al. Individualised neoantigen therapy mRNA-4157 (V940) plus pembrolizumab versus pembrolizumab monotherapy in resected melanoma (KEYNOTE-942): a randomised, phase 2b study. The Lancet. 2024.
2) SMR 2025 Poster (P219):https://irp.cdn-website.com/89dd0539/files/uploaded/P219_SMR+2025_Neoantigens+Poster+(2).pdf


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*記事は個人の見解であり、所属組織を代表するものではありません。


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