マスコミに載らない海外記事さんのサイトより
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2026/09/post-6052eb.html
<転載開始>
サルマン・ラフィ・シェイフ
2026年9月13日
New Eastern Outlook

 軍高官に対し国防総省がポリグラフ検査を異例の頻度で実施しているのは単に情報漏洩者を捜索するためだけではない。組織への忠誠心より大統領への忠誠心が益々重要視されるようになり、最終的にアメリカの没落を加速させる可能性があるという警告なのだ。

 

 忠誠心が試される時

 機密情報漏洩をアメリカ政府が調査すること自体は本質的に異例なことではない。国防総省には、特に戦時中は機密情報を保護する義務がある。異例なのは、今回の調査の規模と背景と政治化の度合いだ。対イラン戦争、特にアメリカ兵器備蓄の減少に関する報告に関する漏洩調査の一環として、8月に統合参謀本部の約50名(軍人および文官職員)がポリグラフ検査を受けた。機密情報を保護するための調査が必要だったとして、国防総省は、この調査を擁護している。

 だが、この事件の意義は、ポリグラフ検査自体にとどまらない。調査対象となっている人々は、アメリカの軍事力と限界について、国の政治指導部に助言する責任を負う組織の一員だ。もし将校たちが、好ましくない評価を伝えることで、調査や出世への影響、あるいは不忠の烙印を押される可能性があると考えるようになれば、問題はもはや単なる機密保持ではなくなる。大統領に届く軍事助言の質に関わる問題になる。究極的に、アメリカが実際軍事力を行使して外交政策の狙いを達成できる範囲に関わる問題になる。

 大国が影響力を失うのは、ライバル国が強くなった時だけではない。自国の制度への信頼が低下したり、同盟諸国が将来的に頼れなくなる可能性に備え始めたりした場合も、影響力を失う可能性がある。

 この区別は、健全な軍民関係の根幹をなすものだ。文民統制は、軍が合法的命令に従うことを要求する。あらゆる政策決定に職業軍人が同意するよう要求するものではない。実際、専門的軍事官僚機構の価値は、作戦が戦略的に費用がかかりすぎたり、作戦上困難または不可能になったりした場合、それを政治指導者に伝えられる点にある。この原則は、ピート・ヘグセス国防長官の下で益々揺らいでいるように見える。彼が長官に就任して以来、陸軍、海軍、空軍の最高位の将校を含む少なくとも20人の将軍、提督、および上級文民国防官僚が職を辞した。解雇された者もいれば、早期退職を強いられた者や辞任した者もいる。
 人事異動自体が政治化の証拠になるわけではない。大統領は常に上級司令官を交代させてきたし、国防長官は常に国防総省を再編成してきた。だが、そのパターンは重要だ。それは、上級将校団の再編に向けた積極的な取り組みや情報漏洩疑惑の調査やイデオロギー的・個人的忠誠心の公的強調と並行して起きているのだ。従って、軍が文民統制を拒否する危険性があるわけではない。むしろその逆で、専門的判断が要求する場合でも、将校たちが文民統制に異議を唱えるのを益々躊躇するようになる危険性があるのだ。命令に従う軍の指導部が必要なのだ。大統領が聞きたいと思うことだけ言う軍指導部は不要だ。

 アメリカの力の限界

 皮肉にも、専門的軍事助言に対するこうした圧力は、ワシントンが最も必要としているまさにその時に生じている。対イラン戦争は、その力を長期にわたり維持する物質的限界を露呈させた。中東での大規模作戦を継続すれば、他地域でのアメリカの能力が弱体化する恐れがあると上級軍司令官たちがヘグセスに警告したと報じられている。これは必ずしもアメリカの軍事的優位性が消滅することを意味するものではない。より重要な問題は、その持続可能性だ。

 軍事力とは単に標的を破壊する能力だけを指すのではない。消費した物資を補充し、他の場所での即応体制を維持し、次の危機に備えながら、破壊活動を継続できる能力でもある。今日発射されたミサイルは明日は使用できなくなる。ある戦域に投入された空母は、同時には別の戦域を増援できない。ある紛争で使用された防空迎撃ミサイルは、別の紛争の部隊を守れない。アメリカのグローバル戦略は、これら全てを同時に実行できるという前提を益々強めてきた。イラン戦争はこの前提を試しており、米軍はこれまで経験したことのない重圧にさらされているが、対応は失敗に終わっている。これはアメリカだけでなく、アメリカの軍事力に依存する全ての国々にとって重要な問題だ。

 同盟が取り引きに変わる時

 国際的影響は既に顕在化しつつある。アメリカの世界的な力は、軍事力のみに依存してきたわけではない。1945年以来、ワシントンは同盟を通じて、その力を増幅させてきた。NATO、アジアにおける二国間安全保障条約、情報協力、海外基地や軍備協力関係により、アメリカは他国が容易に模倣できない規模で力を投射することが可能だった。だが同盟関係には、アメリカの約束が永続的で予測可能だでという信頼が不可欠だ。その信頼は、同盟国に対するトランプ政権の益々取り引き的な姿勢で試されている。この姿勢は、ホワイトハウスと国防総省間でアメリカが直面している深刻な危機と直接結びついている。

 9月3日、アメリカがウクライナに以前供与した軍事援助と弾薬で、負担を欧州諸国に求める意向をトランプ大統領が示した。彼は以前の無償援助を批判し、同盟国への武器販売は再開するものの、アメリカは当面、自国弾薬備蓄の再構築を優先すると述べた。

 欧州の防衛費増額を求めることに不合理な点はないかもしれない。問題は、負担分担と遡及請求の区別にある。負担分担は、安全保障を共同責任として扱うことで同盟を強化する。軍事援助を請求の対象とするのは、同盟を商取り引きとして再定義する危険性がある。この区別は、長期的影響を及ぼす可能性がある。アメリカの資源が無制限だとは考えられないことを欧州各国政府は既に理解している。アメリカの兵器備蓄が枯渇しているため兵器供給を停止する可能性があり、同盟国はいずれ過去の援助に対するワシントンへの返済を求められる可能性があるとワシントンが示唆すれば、欧州諸国は自国の防衛産業と能力への投資を増やす明確な動機を持つことになる。アメリカにとっての問題は、同盟諸国がワシントンに頼らずに自衛する方法を学べば学ぶほど、アメリカの安全保障上の重要性が低下することだ。

 しかも、ヨーロッパだけが注目しているわけではない。日本、韓国、オーストラリアや他のアメリカ同盟諸国は、アメリカの軍事的責務と国内での必要性との間の緊張関係をワシントンがどのように管理していくのかを注視しているはずだ。まさにこの点で、国防総省の危機は世界的問題になる。アメリカは兵器を補充できる。防衛生産を拡大できる。新たな将軍を任命できる。国防総省を再編成できる。だが、遙かに困難なのは、組織の信頼性と同盟諸国との信頼関係を再構築することだ。

 国防総省内部での昇進基準として、個人的忠誠心が益々重要視されるようになれば、代償はワシントンにとどまらない。大国が影響力を失うのは、ライバル諸国が強くなった時だけではない。自国組織への信頼が失われ、将来的に頼れなくなる可能性に同盟諸国が備え始めた時も影響力を失う可能性がある。従って、ワシントンが直面している問題は、トランプ政権下の国防総省が政権への忠誠心を強制できるかどうかだけではない。一人の大統領への忠誠心を中心に構築された軍隊が、何世代にもわたり、アメリカの国力を支えてきた専門的判断力や組織の継続性や同盟国からの信頼を提供し続けられるかどうかだ。

 将軍間の意見の相違があっても超大国は存続できる。だが将軍たちが意見の相違を恐れ、アメリカの絶対的な信頼性が失われた世界を想定して同盟諸国が計画を立て始める状況下で、超大国が存続できるかどうかは遙かに不確実だ。

 サルマン・ラフィ・シェイフは国際関係およびパキスタンの外交・国内問題のリサーチアナリスト

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/09/13/the-pentagon-crisis-trump-wants-regime-loyalty/

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