https://tanakanews.com/221027china.htm
<転載開始>
2022年10月27日 田中 宇
中国で、権力者の習近平が、自らの独裁権力をさらに強めている。独裁政党である中国共産党は、1970年代に毛沢東の個人独裁体制が崩れてトウ小平が権力に就いてから、2012年に胡錦涛(トウ小平の最後の弟子)が権力を降りて習近平と交代するまで、覇権国である米国から工業技術や資本を供給されて米製造業の下請けとして経済発展させてもらう見返りとして、(共産党上層部内だけの)民主主義や、リベラル主義(少しの言論の自由)、市場主義(資本主義。改革開放路線)など、米国に気に入られようとする政治経済体制を採用・演出していた。1970年代末から2012年まで、共産党は党内民主主義を重視して党上層部が合議制の集団指導体制を採用し、個人の独裁が禁じられていた。権力者の任期も2期10年に定められていた。だが、2012年に権力の座についた習近平は、これらのトウ小平路線を次々と壊し、個人独裁を強化している。 (China After The Party Congress: What Now?) (Former China President Abruptly Escorted From Party Congress)
習近平は先日の党大会で、権力者(党書記、国家主席、党軍事委主席という3職を兼務する者)として3期目に入ることを決議させた。後継者を示唆せず、終身独裁者として4期目もやりそうだ。トウ小平路線を継承してきた元権力者の江沢民や朱鎔基は党大会に呼ばれず欠席になり、胡錦涛は党大会に呼ばれて習近平の隣に座らされたものの、党大会の閉会式で粛清的に強制退場させられる茶番劇の犠牲になった。習近平は、制度的にも象徴的にも、トウ小平路線の破壊をこれみよがしにやっている。習近平は、集団指導体制を壊して自分の子分ばかりで上層部を固め、米国との対立を辞さず米英批判を強め、言論の自由を減らし、経済も国家主義を導入して市場主義を制限し、党による規制強化(習近平路線)を批判したアリババのジャック・マーを見せしめとして処分(永久軟禁?)した。習近平政権は、経済米国化の一環として発生してきた株価や不動産などの金融バブルを積極的に潰す策もやり続けた。習近平の独裁強化は、政治経済的に米国と仲良くして中国を発展させてきたトウ小平路線に対する破壊活動の一環として進められている。 (中国の意図的なバブル崩壊) (West's ‘rules-based order’ not clearly defined - Chinese think tank expert)
日米のマスコミ権威筋は、習近平の独裁強化策を「権力欲におぼれた愚挙」と単純化して決めつけ、「独裁は悪だ」という善悪観のみで喧伝している。以前からの中国敵視のプロパガンダの上にそれが載せられ、多くの人が喧伝を軽信している。分析など要らない。だって、独裁は悪いことでしょ。悪人の言い訳なんか聞きたくない。という感じ。プーチン=悪。習近平=悪。中露は必ずや失敗する。悪だから。そういう観点で、ことさらグロテスクに、失敗方向が誇張されて喧伝されている。だが、麻薬中毒的な善悪論をいったん離れ、習近平の独裁強化とトウ小平路線の放棄・破壊をまっとうな戦略として見ると、これが今後の中国を強化・発展させる策かもしれないと思えてくる。米覇権側(米欧日)が、習近平をグロテスクな極悪として描くほど、むしろそれが習近平の策の本質を見えなくさせる目くらましとして機能し、気がついたら米国覇権が崩壊して中国(中露など非米側)が生き残って台頭する多極化になっている、という展開になりそうだ。プーチンだけでなく習近平も「偽悪戦略」を採っている可能性がある。 (プーチンの偽悪戦略に乗せられた人類) (The World Reacts To Chinese Dictator Xi Jinping Purging Former Leader On Camera: ‘Chilling And Orwellian’)
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